……いえ冗談です。このB級小説の行く末はしっかりと終わらせる算段はありますので。ではどうぞ。
PM01:42
ロドス号 セクター「RIー7」
「ドクター、こちらです」
「サイドはどこに?」
「この辺りで待っていると言っていましたが……あそこです」
指さしたところには確かにあの作業着のサルゴン人がいる。自販機で作業をしていた時とは違いジャケットは脱いで床に置いてある。いや、誰かに被せられている。
「連れてきたぞ! サイド!」
「……あ、来てくれたんですね」
「急にドクターを呼んでほしいって言われたから何かと思えば……医療部に知らせればいいだろう? わざわざ……」
「すみません。でもこれはドクターたちに知らせておいた方がいいでしょう。それに、これは倒れているんじゃないんです」
「ん? だがこれはどう見ても倒れているだろう?」
「……寝ているな」
「寝ている?」
「流石ドクター! よくお分かりになりましたね……」
「よく世話になっているからね……」
屈んだドクターはサイドににべもなく返す。とはいえ見た目は行き倒れているようにしか見えない。くの字の体勢で涎をたらし、床に横たわっていたら誰でもそう思うはずだ。
「見た感じ技術者か? 二人ともこの人を知っておいでで?」
「ええ、この人は……その……」
「……優れた技術力とアイデアを持つメカニストだ」
「そうです。そしてドクターの今関わっている事件にとても役立つと思いまして!」
「技術者さんがこんな所で午睡をとっているとは……、とんだ社畜……いえ、非常にお疲れのようですね。ですがその……立てますか?役に?」
「できるだろう」
寝息を立てていることを確認しながらドクターは尋ねる。
「どうやって見つけた?」
「修理が終わった帰りに見かけたんです。まさか廊下で倒れているだなんて。それですぐにブレナンさんにドクターを連れてくるよう頼みました」
「ファインプレーだよ、サイド。ところで彼女を起こそうとしてないよね?」
「いえ、起こそうとしました」
「え?」
「……え?」
思わず見つめ返したサイドは確認しようとする。ひょっとして余計なことをしてしまったんだろうか。そう思っていそうな反応だった。
「いえ、あの、えっとですね……メイヤーさんを揺さぶって起こそうとしたんですが一向に起きないんですよ。それで大変失礼ながら肩を叩いて起こそうとしたんですけどダメでした。それでドクターが来るまではそのまま待っていたんです」
「起こさなかったのか。それは良かったよ」
「……ドクター? いったいどういう事なんですか?」
「ブレナン! さっきの作業着を貸してくれないか?」
「……? ええ、いいですけどどうするおつもりで?」
一体何をしようとしているのかよく分からないとサイドがドクターを見ると、先ほど殺人飲料がかかった作業着を腕にぐるぐる巻きにしている。
「二人とも離れていてくれ。これからメイヤーを『起こす』」
「『起こす』?」
訝しんでいる中、ドクターは作業着を巻き付けた腕で頭を抱きかかえようとした。
ガブッ!
「うわあぁぁ!」
先ほどまで寝ていたメイヤーが瞬間、ドクターの手に嚙みついた。凶暴猟犬もかくやのすごい力で噛みついており、噛まれた腕からはギリギリという音も漏れてくる。
「うえっ! 何これ!」
しばらく噛んでいた腕からぱっと離れて、床に倒れた。あまりに衝撃的な一連の流れに、外野は呆然としていた。えずいているメイヤーを脇目で見ながら作業着を返していくドクター。
「ゲホッ! ゲホッ!」
「これだからキミをベッドへ寝かしつけるのはやめたんだよ。作業着をありがとう」
「……は、ハイ」
「……ッ! ……—ァ! ゴフッ!」
「さ、さすがはドクターですね……感服します……」
「そろそろ聞きたいんだがメイヤー……。あー、もう少し待つか?」
「グフッ……ッ……ハァ。あーもう! 死にかけるとこだったー」
這い蹲っていたがようやく落ち着きを取り戻したメイヤーは、注意深く周囲を見回す。
「あれ? ドクター?」
「そうだ」
「どうしてここに?」
「私が聞きたいよ……一体どうしてこんなところに?」
「こんなところって……あれ!? ウソ! ラボじゃない!?」
「嘘じゃない。さっきまで訓練室にいて、それからロドス艦内を歩いていたんだ。ミーボと一緒にだ」
「最終調整しようと思ってそれで……」
「それから先の事は?」
座りなおししばらく顎に手をあて唸っていたが、
「う~んダメ、全然思い出せないな……」
「この前私が来たときは? 今日訓練場であったことは思い出せるか?」
「この前? 確か珍しくドクターがお昼に来た時だよね? 普段なら夜遅くだったりするからよく覚えているよ!」
「お昼? あの時は深夜帯だぞ?」
「いやいや! そんなことないって! だってあの時は1時……あ、そうかあの時AMなのか。PMじゃなくて」
「あの時最後に私が言った言葉を覚えているか?」
「えと、『期待しているよ。君は大事なオペレーターだから』。だよね?」
「スゥ──ー」
「アレ? ドクター深呼吸?」
「ウルサスの皇帝であろうと解決できなさそうな問題が見つかっただけだ」
「それにしても人間の認知能力って不思議だよね! 忘れていたことを何かの拍子に思い出したり、逆に……」
「覚えているはずの事を覚えていなかったり、か」
そういって微かな瞳が伏せられる。伏せるバイザーがメイヤーの瞳を映した。目のハイライトは戻ってきているが、瞳孔にはまだ異常が残っているようだ。左右の瞳孔の開き具合が異なっていることにドクターは気付いていた。
「頭は大丈夫か。これからミーボを止めるために使ってもらうぞ」
「え? ミーボって? あれ、どうしていないの?」
「どうして? ……まさか君が、ミーボをどう改造したか忘れたわけではないよね?」
「それはないよ! ドクターのお陰で出来た様なものだし……ただちょっと思い出すきっかけがないと難しいよ。……今回のミーボは『特別製』だから」
「私のお陰? 『特別製』?」
ドクターが右手を擦りかけた時、小走りで駆け寄ってきたブレナンが話を遮ってすぐに話す。
「ドクター、お話の途中失礼しますが向こうに……」
「来た!」
サイドの悲鳴があがる。見るとロボット犬のようなものがこちらへ走り寄ってきている。
「ドクター避けて下さい!」
「え! ミーボ!?」
素早く走ってきたのはあの機関車の頭を付けたメカカワウソだった。赤く目を光らせた姿はまさに殺戮機関車のソレである。目の光が残像を残すほど素早い身のこなしでブレナンへ飛び掛かった。身体を打ち付け、重い機体がのしかかる。馬乗りにされた者の前にはあの顔が笑っていた。
「何っ!」
まずトーマスの顔が内側に隠れた。次に黒い円筒部分が細かく分割され首元にしまわれる。そして機関車の頭があったところには犬の骸骨のような黒い大顎が現れた。
至近距離でその変貌を見届けたブレナンは驚きの余り言葉を失っていた。顔が痙攣し、口が言葉を拒む。そんな様子に対して大顎は大きく広げ目の前で嚙み鳴らした。ガキッと軽くはないその響きにようやくブレナンは恐れを思い出した。
「わわっ! 噛みついてくるっ!」
「メイヤー! ミーボを!」
「え? これ!?」
これ以上来ないように頭を抑え込むが、ロボットは止まらない。ゆっくりと着実に首元へ迫っていた。メイヤーの目が指の隙間で白黒させている。
「助けてくれ! やられる!」
「急げ! とにかく止めろ!」
「あぁぁ……待ってドクター! 今停止スイッチを入れるから抑えてて!」
ドクターが抑え、メイヤーが止めにかかる。彼らの接近を察知したミーボと呼びたくないナニカは素早く飛びのき距離をとった。
「やばい! サイド、来るな! 離れてろ!」
「あれ? 何かヘンじゃない? 私のミーボ!」
「最初から狂ってたろ! 言わなかっただけで! ほら今も!」
距離を通ったミーボの胸元が光り出した。よく見ると光を放っているのはさっきまで顔だったところだ。顔全体の隙間という隙間から赤い光が漏れ出ているさまは軽く恐怖ですらある。と、何の前触れもなく突然変形を始めた。
まず胴体が進展する。それに続いて小さい前足が変形し大きな腕の形の装甲を展開させる。その次には後ろ足が立ち上がり、二倍ほどの長さになる。そして装甲が包み込むように変形を完了した。
変形ミーボはややもせずに立ち上がった。その見た目はまさに……
「人型ロボットだと!?」
小人サイズのロボットがそこに立っていた。ドゥリン族サイズの青っぽい体に黒い大あごを装着した出で立ちはどこかロボット映画を想起させる。そうだ、確か極東の映画だ。某司令官の息子が乗る巨大メカに似ている。
「やっぱりメイヤーはどこか代償にしてるところがあるな?」
「へ? 何言ってるのドクター!? いやそうじゃなくて!」
膝をついた状態のミーボを見たメイヤーが警告を発した。
「突っ込んでくる!」
クラウチングスタートを切った違法改造ミーボは恐ろしい瞬発力で彼らの懐へと飛び込む。そして辺りが光と衝撃に包まれた。
~おまけ~ミーボを作った時のメイヤーが考えていたこと
―――脳内会議の様子
メイヤー『私の可愛いミーボたちもリニューアルしてあげたいな!斬新な機能で変形機構でも付けてあげようかな?』
保守的なメイヤー『ちょっと待った!そんなことよりも基本的な動作をアップグレードさせないと!遊び心は動作で表現すればいいじゃん!』
急進的なメイヤー『そんなのつまんないよ!やっぱりメカはロマンを求めてなんぼでのものだよ!二足歩行で人間とそん色ない変形ロボに改造しよう!ほらアニメなんかに出てくるロボみたいにさ!』
良心的なメイヤー『ねぇみんな、そろそろ休憩した方が……』
ロマンを追いかけるメイヤー『その程度でロマン?ふざけないでよね!本当のロマンはマウント式のレールガンを装備させたミーボ一択でしょ!小柄で潜伏しながら複数方面からの狙撃もよし、ファランクス陣形で密集砲撃させるもよし。うん!これしかないよね!』
乙女なメイヤー『やだよ!ドクターはミーボの事とても可愛らしいって言ってくれたんだから、これ以上付け足す必要はないでしょ!?もし付け足すなら、可愛くないと、イヤだから…』
良心的なメイヤー『もうそろそろ寝ないとまずいって!これ以上行くと引き返せなくなっちゃうよ!』
斜に構えたメイヤー『いや脳内でこんな会議が開かれている時点でもう手遅れでしょ』
良心的なメイヤー『いや、それはそうだけど……ハァ、やっぱもういいか』
良心を諦めたメイヤー『それで、みんな主張してるけどどうまとめるの?』
保守的なメイヤー『今作っているのは私のものだよね。やっぱり一番穏当かな?』
急進・ロマン『『それはダメ!そんなつまんないものよりも私の改造案が優れてる!』』
最初のメイヤー『でも変形機構にチャレンジしたいし……うーん……』
乙女なメイヤー『可愛いのじゃなきゃイヤだー!』
斜に構えたメイヤー『もうナニコレ。収拾がつかないじゃん』
複製されたメイヤー『私の代わりなんていくらでもいるもの』
良心を取り戻したいメイヤー『もう!一旦落ち着いてー!』
(全員目をパチクリさせる)
良心が戻りかけたメイヤー『みんなの案はいいと思っているよ。でも今のままだっていいじゃない。これ以上改造しなくても、ミーボはミーボだよ。たまには改良の事ばかり考えるのはやめてゆっくり休むべき……』
斜に構えたメイヤー『待って!ドクターが何か言われるぞ!』
全員『!』
(ドクターの言葉に傾聴する)
ドクター?『皆さんの気持ちは分かる。そしてそれぞれが実現困難なのも分かる。だからといって諦めていいのだろうか?諦めたらそこで試合終了だ。ミーボは改造すべきなんだ』
始祖のメイヤー『でも、一体どうやって?』
ドクター?『困難に当たれば結集するのが人の力。だからアイデアも全部結集させればいい』
保守的なメイヤー『起動動作の向上も?』
ドクター?『そうだ』
急進的なメイヤー『2足型の変形メカの開発も?』
ドクター?『そうだ』
ロマン主義なメイヤー『レールガンも?』
ドクター?『そうだ……といいたいが難しいだろう。だが武器と言ってもそれはレールガンに限った話じゃないはずだ』
乙女なメイヤー『その……可愛らしい……とか?』
ドクター?『もちろんだ。全部採用だ。だがまだこれだけでは足りない。いったん外へ出るといい。気分転換でアイデアも出てくるだろう』
(メイヤー外出中)
最初のメイヤー『あっ、ごめん。ぶつかった』
良心的なメイヤー『声小さいよ。もう相手行っちゃったじゃない』
複製されたメイヤー『あ、でも何かを落としていったよ。これは、何?』
名探偵なメイヤー『待てよ……ッ!そうか!全てがつながったぞ!これで改造計画が一つに繋がった!』
急進的なメイヤー『さすが名探偵だね!よしこうなったらすぐにでも作るぞ!』
ほぼ全員『異議なし!』
良心に訴えられなかったメイヤー『もうこんな時どんな顔すればいいか分からないよ……』
複製されたメイヤー『笑えばいいと思うよ』
もうやけなメイヤー『もう笑ってるよ。もう。やればいいんでしょ?』
大分忙しくなってきているため更新が出来るかも怪しいところですが、何とか今月中に次の話を投稿できるようにしますので、次回をお待ちください。では。