男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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布仏姉妹が動く時

虚は本音の話を聞いて決心した、従者である自分と本音にも責任があると。

そこでまずは真耶に許可を取り、更識姉妹を生徒会業務に従事させる許可を取った。

 

「虚ちゃん・本音ちゃん……、今そんな状況じゃないのよ。

 私と簪ちゃんの命がかかってるって知ってるでしょ?」

 

「知っていますが理由にはなりません。

 貴女達は生徒会役員です、徹夜してでもこなしていただきます。

 本音も以前から仕事をしてるんですよ、言い訳など聞く耳はございません」

 

「そもそも〜、二人共我儘すぎでしょう?

 

 かんちゃんは、おりむーのこと嫌いだったのにちょっと優しくされたら好きになって。

 楯無様はおりむーを仲直りに利用したのにいつのまにか好きになって仕事ほっぽりだして。

 それでなくてもかんちゃんのストーカーとか、会長権限で同室とか……。

 最低だと思わないんですか〜?」

 

本音の言葉に詰まる二人、そこに虚が追い討ちをかける。

 

「簪様には秘密にと言われていたんですが……。

 これだけ反省の色が無いなら伝えざるを得ませんね。

 

 いいですか?あれだけ打鉄弍式の協力を無下に断っていた簪様。

 それを整備科の皆が快く手伝う訳がありません。

 

 私や本音はともかく協力したのは整備科に頭を下げに来た崎守君のお陰なんですよ?

 

 簪様が一人で頑張っていた時、確かに織斑君が声をかけてました。

 ですが、あれらは楯無様が依頼したからで自主的で無いのはご存じの通りです。

 

 そしていざ製作という時にあまり良い顔をした人は当然いませんでした。

 薫子さん位です、楯無様繋がりで協力的だったのは。

 

 後から増えていったのは崎守君が真摯に訳を話して説得したからです。

 事情については私に力になりたいからと態々聞きに来ました。

 

 にも関わらず完成した打鉄弍式で簪様は何をしていましたか?

 代表候補生としての責務を果たさず、織斑君と遊んでいただけではないですか。

 一体何のための専用機だと思っておいでですか? 完成に尽力した全員を侮辱する行為です。

 特にほとんど面識の無い第二世代機の崎守君が不憫でなりません。

 

 お嬢様もお嬢様です、望んで生徒会長になりながら簪様を追って姿を消す。

 今は織斑君を追いかけて国家代表でありながらISを無断展開。

 一体貴女は何をしているのです、そんな時間がどこにあると?

 

 いいですか? これは最後通告です。

 お二人は織斑君のことを抜きにして深く考えなくてはいけません。

 崎守君に対して何をしてきたか全て思い出して反省して下さい。

 

 レポートは私が先に見る許可を得ましたので早急に提出。

 勿論、生徒会業務も行なっていただきます。

 

 提出されたレポート如何では、お館様に報告申し上げますのでお覚悟を。

 私も本音も罰を受ける覚悟ですが、お二人はただでは済まないでしょう。

 最低でも退学のうえ代表及び代表候補生の返上、幽閉すらあり得ます。

 

 何故なら世界唯一の男性操縦者を自殺に追い込んだのですから。

 もっと事態を深刻に考えて下さい、場合によっては政府に殺されますよ」

 

楯無にしろ簪にしろ、ここまで虚に言われた経験は無かった。

だからこそ襲い掛かる言葉の恐怖は並ではなく、言っていることも十分にあり得ると感じる。

 

それ以上に何故そこまで考えが及ばなかったのかと自問自答にまで至った。

 

「虚ちゃん、ごめんなさい。私、どうかしてたわ……」

「私もです、どうしてこうなっちゃったんだろう……」

 

その問いに虚はキッパリと言い放った。

 

「職務を全うせず男に現を抜かしていたからに決まっています。

 少なくとも私は弾君とお付き合いしたからと言って職務を疎かにはしていませんので。

 

 お二人は私から見て、二つを両立できる程器用ではありません。

 どちらを捨てるべきか、よくお考えを。

 

 そして早急に崎守君が意識を取り戻せるよう努めるのが国に仕える更識の職務。

 勿論、生徒会長であるお嬢様は二重の意味で当然です。

 

 どうすべきか、何を捨てるか、何をなさねばならないか。

 例え死が待とうともやるべきことをお間違えない様に」

 

虚は厳しい表情でそう締めくくると業務に戻り、当然本音も必死に業務へ取り組む。

その姿を見てそれぞれ職務を始めたのは言うまでもなく、それは深夜にまで及んだ。

 

『少し様子を見る事にしましょうか』

『そうだね、でも悪夢は見せた方がいい。今までが今までだから』

『それもそうね、じゃあそうしましょう♪』

 

二つの声は誰の耳にも入る事なく消える。

ただその夜、楯無と簪は何度も飛び起きては嫌な汗をかき震えたことを記しておく。


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