男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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第四章 断
罪の代償


真耶は自分で言ったこととは言え、レポートの山に埋もれていた。

 

「反省してくれたのは喜ばしいのですが、この量は…。」

 

「まあ、人数が人数で私の想像以上の量ではあるな。

 しかも、ほぼ纏まって出て来れば溜まりもするだろう。

 

 私も協力するから早く片付けるとしようか、山田君。」

 

千冬の言葉に真耶は変わったことを実感していた。

真耶自身は人に押し付けるのを良しとしないが、このままではいつまで経っても反省した生徒が復帰できない。

 

「本当にすみませんがよろしくお願いします。」

 

「なに、今までのことを思えば当然だ。

 だが、まずは休憩してからにしよう、効率が落ちるからな。」

 

そう言ってコーヒーを淹れに行く千冬を真耶は嬉しそうに見ていた。

同じ教員として、責任感が芽生えた千冬を。

 

◇◆◇

 

ダリルと薫子は保健室に向かったが、話通り和成は寝ていた。

実際にはサキモリの搭乗者保護機能で意識を落としていただけなのだが。

 

「しっかし、いないと思ってた専用機持ちの一人が見舞いに来てるとはな。」

 

「あれは二組のクラス代表、中国代表候補生の凰さんですね。それと本音ちゃんも。」

 

「あー、虚の妹だったか?確か生徒会役員だろ、楯無の回し者か?」

 

その言いように流石の薫子も吹き出す。

 

「回し者って、普通にクラスメートですよ?本音ちゃんは。

 元々仲良かったので普通じゃないですか?」

 

「そうなのか?」

 

「そうなんですよ。」

 

ともかく大した収穫も無く薫子とダリルは分かれた。

薫子もダリルも無駄足になったのは言うまでもないが、鈴と本音は気が気でない。

 

「まさか新聞部が来るなんて甘かったわ。」

 

「ホントだね〜、これは何か手を打たないと不味いかも〜。」

 

保健室で二人がそんな会話をしているなんて思ってもいないダリル達だった。

 

◇◆◇

 

ダリルには保健室で収穫は無かったもののスコールと薫子から得た情報がある。

そしてこの情報を渡すべき人間を知っていた。

 

「サラ、ちょっとあたしの部屋に来てくれ。」

 

そう真剣な表情で言われたサラはフォルテが待つダリルの部屋に赴く。

そして、衝撃的な話を耳にした。

 

「崎守くんが!?」

 

サラには和成に恩があり、その恩返しに訓練を真耶が不在の時見ていた経緯がある。

その和成が投身自殺を試みた、何故か無傷らしいがそういう問題では無かった。

 

「原因はわかってるんですか?」

 

「断言できるものはないんだが…。

 薫子の話によれば楯無と一年の専用機持ち全員が織斑に惚れてるらしい。」

 

「で、同じメンバーが見当たらないって言うのは原因かも知れないってことっすか?」

 

沈黙…、そしてサラは立ち上がった。

 

「どこ行くっすか?」

 

「…フォルテは知ってるでしょ、セシリアが馬鹿な発言をして私にも影響が出た。

 その時、態々二年の教室まで来て崎守くんがフォローしてくれたってことを。

 

 今回もセシリアが絡んでいるなら私はイギリス代表候補生としてしなきゃいけないことがある。

 その確認に行くわ。」

 

そう言うとサラは振り返る事なく部屋を出た。

できれば無関係でいて欲しいと願いながら…。

 

◇◆◇

 

セシリアはレポートを提出済、結果が出るまではとチェルシーも残っていた。

 

「セシリア、いますか?サラです。」

 

ノックと共に聞こえて来たのは恩義ある先輩、サラの声。

入室を拒むなどできるはずもなかった。

 

チェルシーに頷くとドアを開け、二人は対面する。

 

「初めまして、私はオルコット家のメイド、チェルシー・ブランケットと申します。

 以後、お見知りおきを。」

 

「初めましてミス・ブランケット。

 私はイギリス国家代表候補生のサラ・ウェルキンと申します。」

 

二人の挨拶を待ってセシリアは主らしく指示する。

 

「チェルシー、紅茶の用意を。サラ先輩、こちらへどうぞ。」

 

「ええ、ご馳走様になるわ。」

 

そう言うとサラは席へ、チェルシーは紅茶の用意を始めたのだった。

 

◇◆◇

 

サラは紅茶を飲んで自身を落ち着かせていた、思い込みはいけないと。

今は冷静さと正しい判断力が求められるのだから、そしてサラはティーカップを置くと切り出した。

 

「ねえ、セシリア。

 とある所から得た情報なんだけど崎守くんが自殺したって知ってる?」

 

セシリアには答えられない、箝口令が敷かれているからだ。

しかし、その態度を見れば答えたも同然。

 

「知ってるのね、織斑先生からの箝口令ってところかしら。

 降格になっているぐらいだし、本当だった訳ね。」

 

その言葉にも答えることはできないセシリア。

 

「一つだけ教えて頂戴、原因に貴女は無関係よね?

 まさかあれだけの問題発言をしておいて、また国際問題になるような事をする訳がない。

 私はそう信じてるのよ、セシリア。」

 

サラの言葉はセシリアの心を大きく揺さぶった、思わず涙を零してしまう程に。

 

「そう、それが貴女の答えなのね…。

 残念だわ、セシリア。本国へ報告させてもらいます。」

 

「お待ち下さい、ウェルキン様!

 何卒、今回だけは何卒お許し願えませんか!」

 

チェルシーはそう嘆願する、しかし…。

 

「二人は知っているかしら、セシリアの発言で私がどれだけ迷惑を被ったか。

 そして、それを取り成してくれたのは崎守くんだということを。

 

 その崎守くんが自殺した一因がセシリア。

 なら、私はまた。いいえ、イギリスが世界から非難されるわ。

 

 最初から報告しておくべきだった。

 崎守くんの言葉で貴女を信じた私が愚かだったのよ。

 でも崎守くんに落ち度は無い。

 

 その崎守くんが守ったオルコット家は崎守くんを殺した。

 生きているからいい訳じゃない、二度あることは三度ある。

 私はもう間違えない、イギリス国家代表候補生としても一人の人間としても。」

 

二人には返す言葉が無かった、サラの言ったことは事実なのだから…。


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