男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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危惧

セシリアは許された訳では無い。しかし、何の行動もできずに死なれては意味が無い。

それがサキモリとブルーティアーズの判断であり、和成の心を理解した結果だった。

ブルーティアーズは新たなマスターを得る際に初期化される、そのバックアップをサキモリに託す。

折角育ったのだ、次に活かす方法があるならとサキモリも受諾した。

 

「ところでサラさん、誰に聞いたのかわかりませんが……。

 僕の自殺について情報を持って来た方には気をつけた方がいいと思います」

 

話が一段落ついたところで和成はそう切り出した。

 

「普通には得られないはずの情報、一体どんな手を使えば手に入るのか。

 そう考えれば“特別な情報源”と繋がりがあると考えられます。

 

 サラさんの性格や僕との関係を知って誘導。

 さらなる情報を得ようと画策した、そうも十分に考えられませんか?

 それが果たしてどんな結果を産むか、サラさんなら理解できる筈です。

 

 山田先生と来られたのですから、サキモリについても聞いたのでしょう?

 これが外に漏れると僕は非常に危険な立場となります」

 

その場にいた全員が考える、確かに言う通りだと。

 

「……言われてみれば確かにそうね。

 今日の件は漏らさない様に徹底する、私も崎守くんを危険に晒すのは本意じゃないわ」

 

「ありがとうございます、それともう一つ。

 僕は専用機を持つと人が変わるのを見てきました、意識無意識に関わらずです。

 

 サラさんがそうだと言っている訳ではありません。

 ですが、その立場になって気づけば……と言う実例を見て来たんです。

 

 専用機は操縦者の力ではありません、強いて言えばパートナー。

 そもそもISは力では無く翼だと言う事を思い出していただければと思います」

 

サラは技術的には上なのに専用機を与えられなかった経緯を持つ。

それが降って湧いた様に手に入れば……、自分は変わらないと断言できなかった。

だからこそ、和成の危惧している事が理解できる。

 

「十分気をつけるわ、後輩に言っておいて私自身が同じ様な事をする。

 それは色々な物を裏切ると心して専用機と向き合いましょう」

 

そう言ったサラに和成は笑顔で応えたのだった。

 

◇◆◇

 

冷静になったサラは何でもなかったかの様にダリルの部屋を訪ねる。

そして疑いとダリル自身が使われている可能性の両面から上手く話すことにした。

 

「お、戻って来たか、何かわかったか?」

「ええ、セシリアが関わっていたことだけは。

 流石に見過ごせないから本国への連絡はしました。

 

 追ってなんらかの処罰があるでしょうが、私には判断できません」

 

サラは努めて冷静に必要最小限だけを伝える。

 

「ところでダリルさん、私はダリルさんが心配です」

「あ? 何の話だ?」

「どこからの情報かわかりませんが、ダリルさんが利用されたなら悲しいと思ったのです。

 

 どんな経緯で知ったのか、それとも知らされたのかわかりません。

 ですが、善意だけとは断言できません。

 お気をつけて下さい、ミイラ取りがミイラになると言う言葉もあることですし」

「そうっすね、気をつけるっす、ダリル。

 ダリルに限って無いとは思うっすけど、万一ってこともあるっすから」

 

サラの言葉にフォルテも同意を示す。

 

「……そうだな、十分気をつけることにするぜ。

 こんなに心配してくれる後輩もいることだしな。」

 

そう言ってダリルは笑った。

それにサラとフォルテが笑顔で応えたのは言うまでも無い。

 

◇◆◇

 

ダリルは一人考えていた、全く予想もしていなかった見方の提示を。

 

(スコール叔母さんは亡国機業の人間だ、考えたくは無いがあり得ない話じゃねえ……。

 上手く乗せられたか? ちっ、判断がつかねぇ、とりあえず連絡しておくか)

 

<スコール叔母さん、レインだ>

<あら、早速連絡なんて情報が役に立ったってことかしら?>

<ああ、差し当たりは。

 イギリスの代表候補生が絡んでることはわかった、処罰を受けるらしい。

 内容までは今のところ不明だけど、何かしらやらかしたのは間違いないな>

<なるほどね、でも詳細までは得られなかったってことかしら?>

 

やっぱり踊らされてるか? そうダリルは感じた。

どうも引き出そうと言う意志を感じ、これはまずいと言う感覚に陥ったダリルはここまでで十分だと判断する。

 

<残念ながら、まあ焦ってしくじったら目もあてられない。

 今回はこの辺が潮時だと思うぜ?自然に手に入る可能性も出て来たしさ>

<……急いては事を仕損じる、そうかも知れないわね。

 レインも十分気をつけて、それじゃあ>

 

そう言ってスコールはプライベートチャネルを切った。

 

(ああ、十分にな。スコール叔母さんにも)

 

ダリルにはフォルテという恋人がいる、必要以上に危険な橋を渡る気は無い。

サラの言葉から始まった疑いは、ダリルの中で徐々に大きくなっていった……。


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