男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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第五章 変
呼水と和成の指示


名を知らぬ者がいない程に有名なIS“白騎士”、その性能は今でも語り種になるほど。

だが、操縦者は誰だったのか。憶測は飛ぶが特定されていない存在、まことしやかに流れる噂ではブリュンヒルデたる千冬だと言われてる。

 

「白騎士、正確にはその操縦者の残留思念から託されたこのデータ群。

 解析には時間がかかりましたが……」

 

サキモリは悩む、その中に含まれていた映像をマスターたる和成に見せるべきかどうかを。

だがすぐに見せるべきだと結論付けた、千冬の面談は“コレ”を見た上ですべきと判断したからだ。

 

「今回だけでなく過去から因縁が……、こういうのを運命の悪戯というのでしょう。

 では早速、マスターをこちらにお呼びしてから見ていただく。

 夢では飛び起きてしまう可能性があるので」

 

こうして和成はとある事実を知ることになる。

 

◇◆◇

 

朝、目を覚ました真耶は和成の様子がおかしことに気づいた、顔色があまりにも悪いのだ。

それから然程経たず、いつもより早く目を覚ました和成は開口一番、何か耐える様に真耶にこう伝えた。

 

「山田先生……、今日は体調がすぐれませんので休ませていただきたいんです。

 それと……、サキモリ、関係者全員のコア人格に連絡して通常に戻して欲しい。

 約束を反故にしたなら今回の経験でそれぞれのコア人格が罰を与えられるから……。

 山田先生にはそれも伝えていただきたいのです」

 

まだ千冬の面談が終わっていない状況での処置解除には思うことがある真耶だったが、それよりも和成の体を気づかう方を優先した。

 

「わかりました、本当に体調がすぐれない様ですし、ゆっくり休んで下さいね。

 処置の解除については私から伝えておきますので安心して任せて下さい」

「お手数をおかけしますがよろしくお願いします」

 

その後、真耶は和成を気にかけて保健室に同行、熱があるとのことで静養に努めることになった。

 

◇◆◇

 

いつの間にか甲龍の待機形態が元に戻っていると気がついた鈴はプライベートチャネルで問いかけてみると全員のISが元に戻っていることがわかった。

 

(認めるまでに死んでしまう可能性を考えて解除した? それとも信じてるっていうアピール?

 和成だからね、どっちもありそうだわ)

 

そうだったら嬉しいと鈴は感謝していた、そして礼をと思ったところで教室に和成がいないことに気づく。

 

「珍しいわね、この時間になっても和成がいないなんて」

「そう言れればそうだな、もうすぐSHRが始まるぞ? ISのことといい何かあったか?」

 

話しかけられた箒も不審に思ったがそうこうしているうちに時間になり、二人が教室に入って来た。

 

「皆さん、おはようございます。崎守くんは熱を出して今日はお休みです。

 今朝、保健室に連れて行きましたが大事には至って無いとのことでした」

 

それを聞いて鈴は安心した、体調が悪いのは良くないが大事には至っていないと言う言葉に。

 

◇◆◇

 

放課後、関係者を集めて真耶は説明していた、こうなった経緯と和成の考えを。

 

「……という事で一応解除となっていますが何かあれば、それぞれのコア人格の意思で逆戻りです。

 信じて解除した崎守くんの気持ちを無駄にしてはいけませんよ」

 

楯無は昨日の今日でどんな顔をすればいいのか悩んだが、とりあえずお見舞いに行くことだけは決めた。

真耶と本音は言われなくても当然そうする。

 

逆に困惑したのは千冬だ、まだ面談すら済んでいないのにどういうことかと不審に思う。

そして、その点に関しては真耶も一緒だった。昨日レポートを見ながら今日に備えていたことをよく知っているからだ。

 

「とりあえずみんなでお見舞いに行きましょうか、容体も気になるしね?」

「うん、そうだね。もしかしなくても今回の面談で心労をかけたのは間違いない。

 それで体調を崩したんだと僕は思うんだ」

「あり得る話だな、良くも悪くも和成の意志ではなくサキモリ達がしたことだ。

 人様の命を握っているというのは大きなストレスになるだろう」

 

楯無、シャルロット、箒と会話は続いて行く。

 

「そうですわね、わたくしは事情があって既に解除されてはいましたが……。

 やはり自分に置き換えても心労は避けられませんわ」

「……うん、私もそう思う。崎守くんは優しいから辛かったかも知れない」

「うむ、確かに和成は優しいやつだからな、気が気でなかっただろう。

 私も同意するぞ、というか本当に心配だ」

「ま、当然よね。じゃあさっさと行きましょうか」

 

セシリア、簪、ラウラと来て鈴が締めると7人は頷き、それを見聞きしていた真耶は嬉しかった。

やっとみんなに和成の気持ちが届いたと言うことに。

 

そんなタイミングでノック、この生徒指導室に? と千冬は不審に思うもドアを開けて驚いた。

 

「全員揃っている様で丁度良かった、“私”はもう元通りだから心配無用ですよ」

 

そう言って入って来たのは、顔色の戻った和成だったのだから……。




おや?和成の一人称に変化が……。

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