男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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12月に入りましたのでリハビリが開始されました。
今までのような頻度での更新は時間の都合上、不可能ですがご容赦下さい。


残された者と動く者

真耶とセシリアが出て行った後、その場は静まりかえっていた。

その静寂を破ったのは千冬、この場にいる唯一の大人としての責任感からか。

 

「極論、あくまで極論だが山田君やオルコットの言い分は理解せざるを得ない。

 特に私はそうだ、何故なら隔離したと聞きはしたが私自身でそうした訳でないからな。

 お前達は私が隔離したと思っていたのだろう?」

 

千冬の言葉に頷く一同。

 

「今までが今までだからな。

 私がISと生身で戦えると知っていればそう思っても仕方ない。

 とはいえだ、人のことは言えないが確かに情報はあったのも事実だ。

 

 私自身に何かあれば織斑、いや弟がどうなるかという不安があってまたしても……。

 不確定な現状では崎守と同じ立場になるかも知れないと約束を反故にした。

 そうでなければ私は気づけただろうという確信があるんだ。

 だから私はお前達を責めたりなどできないし、しない。

 

 ただな? お前達は崎守と話して何かに気づいたのだろう?

 確かにオルコットは宣言があったのだからお前達の誰よりも冷静に考えられた。

 だが、それを免罪符にするのだけはお前達自身のためにならないと私は思う。

 酷な様だが私を含めてもう一度よく考え示していくしかあるまい。

 

 さ、今日はこれで解散、崎守には悪いがゆっくり落ち着いて過ごせるんだ。

 今日は何も考えず心を休めろ、考えるのはそれからにした方がいい。

 崎守については布仏妹に任せるのが一番だろうしな」

 

そう言うと千冬はそれ以上の言葉を飲み込んで全員を送り出したのだった。

 

◇◆◇

 

「ほうほう、ちーちゃんも随分と変わったもんだね。

 まあ、いっくんの事になると視野が狭くなるのは相変わらず。

 これはあれかなぁ、束さんが箒ちゃんが大事なのと一緒ってことか。

 執着って言う雰囲気は無くなってるんだよね、だからそう思ったんだけど」

 

束は“千冬の部屋”で一部始終を見ていた、そこからそう判断する。

 

「で、他は予想通りちーちゃんがやったって思ってた訳だけど。

 まあ今回はちーちゃんの言葉に免じて見なかった事にしておこうか。

 問題はあくまでこれからの行動次第、時間も長めに見るって決めたしね。

 

 さて面倒だから此処の整備室でちゃっちゃと片付けて帰ろっと」

 

そう言いつつ次々と拡張領域から取り出した資材や工具でブルーティアーズの汎用化パーツを造作も無く作る束だった。

 

◇◆◇

 

怒りや怨みは簡単に消える物では無いが、安らぎや幸せがそれを覆って緩やかに癒すことはある。

セシリアは今の和成がそう言う環境下にある筈だと考え、まず真耶に事情を説明することから始める事にした。

そして職員室を訪れたセシリアは真耶の下へ向かうと声をかける。

 

「山田先生、少しよろしいでしょうか? 和成さんの事でご相談が」

 

真耶はそれを聞いて早速行動したのだろうと察すると頷き、セシリアを自室へ招くことに。

部屋に入った真耶は単刀直入、セシリアにこう問いかけた。

 

「オルコットさんが何か行動を起こした、その報告と相談と言ったところですか?」

 

セシリアは以前の真耶から想像できない鋭さに舌を巻きつつも答える。

 

「はい、勝手ながら和成さんをイギリス国家代表候補生に推薦させていただきました。

 今のわたくしは一般生徒です。

 処罰を受け剥奪された身ですから祖国が動かしたとはならないと判断しました」

「崎守くんにイギリスの後ろ盾、現状では織斑くんが重視されているからですか……」

 

真耶はセシリアの考えにあたりをつける。

 

「恐らく今が最後のチャンスです、簪さんの件から考えても日本政府は信用できません。

 速やかに立ち回ればお姉様を救い出すのも可能かと。

 既に祖国では協議中で許可を勝ち取ると信頼できる筋から言質を取っています。

 和成さんの同意を得た後で発表前にお姉様の確保準備を済ませてしまえば……」

「日本政府はそれほど崎守くんを重視していないのでお姉さんの管理も甘いと。

 そして発表と同時に救い出して日本政府に文句を言う暇を与えない。

 なるほど、確かに妙案ですね。

 

 では会いたいと言う事ですか……」

 

真耶は和成の怒りと怨みの再燃を恐れていた、それが躊躇いとなって表情に出る。

しかし、それは和成にとって最も避けるべきことと十分理解しているセシリアは既に案を用意していた。

 

「いえ、この手紙を布仏さんに渡していただき読んで伝えていただこうかと。

 封蝋はまだですが、オルコット家の推薦とサラ先輩にも話をします。

 山田先生には見ていただいてから封蝋した手紙を手渡し説明していただこうと。

 わたくしはサラ先輩に話を通して参ります」

 

真耶はそれならば問題は無いだろうと素早く手紙を読み納得。

セシリアが封蝋した手紙を手に和成の下へと向かう。

 

勿論、セシリアがサラの下に向かったのは言うまでもなく、当然サラはその話を快諾どころか自身からの推薦状まで速やかに用意する歓迎っぷり。

こうして和成に後ろ盾をというセシリアと加わったサラの行動は何者にも阻まれる事なく進むことになる。

……未だ動かぬ者が何一つ知らないうちに。




真耶、セシリア、サラ、そしてイギリスが暗躍中。
ピコン♪ セシリアの理解者フラグポイントが増加w

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