束はISのコア人格を甘く見過ぎていたと痛感していた。
元々コアネットワークは自己進化のためにあったが、ここまで急速にそれを行うコア人格がいるとは思ってもいなかったのだ。
だが、それは当然とも言える。
銀の福音のコア人格、打鉄・防人のコア人格共にIS本来の思想を持った操縦者が大切にしたからこそ他と一線を画した。
しかもワンオフアビリティが人との繋がりを強める物だったことから、さらにそれを加速したのだ。
「にしても、どれだけ蔑ろにされたかわかる結果だったね。
ブルーティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴ・カスタムII。
シュヴァルツェア・レーゲン、ミステリアス・レイディ、打鉄弍式。
そして、暮桜と紅椿まで同調するんだから相当だよ」
束はこれを予想していた訳ではない、しかし何かが起きかねないと思って急いでいたが……。
「間に合わなかったね、でも続けるよ。これで誰かが死んだらかーくんが悲しむ。
それはサキモリもわかってる筈だからね、ならやっぱり急がなきゃ。
子供達が頑張って束さんにメッセージを送ったんでしょ、なら束さんも負けてられない」
束は作業に没頭した、子供達の期待に応えるためにも。
◇◆◇
一夏はアリーナで白式の展開を試みていた。
「本当に展開出来ないか……、俺ってここに来た時は嫌だったんだよな。
なのに白式を手に入れてから守れるって勘違いして……。
俺は何も変わってなかったんだな、自分の力なんか無かった。
和成にも力は無かったけど方法はあった、俺はそれを認めたくなかったから……」
一夏は決心する、和成に指摘されていた事を告げると。
和成の様に一夏はなれないがケジメだけはつける、このIS学園を去る前に。
◇◆◇
シャルロットは絶望していた、やっと自由になったのに。
好きな人もできて楽しくなったのにと。
それをまさか自分のISに妨げられるなんて思いもしなかった。
そして再びシャルロットに死が迫る。
「なんで僕ばっかりこんな目にあうの?」
「それはシャルが言っちゃ駄目だろ」
「一夏? いつから……」
一夏はノックしてから部屋に入ったがシャルロットは気づかなかった。
「なんで僕ばっかり……からかな、でもやっぱりシャルはそれを言っちゃ駄目だろ。
だってさ、今までそう言う思いを和成にさせて来たのはシャルもだろ?」
「なんでそんなこと言うの? 一夏が守ってくれるって言ったじゃないか!」
「ああ、言った。特記事項で3年間は大丈夫、それまでに考えればいいって。
けど和成にシャルがしたこととは関係ない話だろ?
それに俺にはもう守れない、ここを追い出されるだろうしさ。
だから助かる方法を伝えに来た」
「えっ?」
そう言うと一夏は土下座して謝り始める。
「俺さ、シャルを守るって言ったのに特記事項以外思いつかなかった。
けど和成は考えて教えてくれたんだよ、現実的な方法を。
でも、俺はそれをしたくなくて今まで黙ってたんだ。
それじゃあ、俺が守ったって言えなくなるから」
「……和成が僕を? ただ黙っていてくれたんじゃなくて?」
シャルロットは混乱していた。あの時和成は秘密にしてくれるとは言ってたし、協力もしてくれた。
けど、それだけじゃなかった?
「ああ、この方法なら絶対助かるって言う方法さ。
すげーよ、和成は。ごめん、シャル。俺が意地張ってなきゃとっくにケリついてたんだ」
「その方法って……」
「俺が箒から電話を借りて束さんにお願いする。
千冬ねぇにもちゃんと相談すれば後は出て来る情報でなんとでもなるらしい。
詳しくは和成に聞いた方が確かだ。
それともう一つ俺は言われてた、特記事項なんかじゃ多分守れないって。
それ以上は聞かないで逃げたからわからないけどな」
「なんで今更そんなこと言うの!? じゃあ、僕は今も危ないままってことじゃないか!」
シャルロットは思わず一夏に詰めよった。
「そうだな、だからこれから束さんに電話して見るよ。
もしかしたら今の状況もなんとかしてくれるかも知れないし」
そう言った一夏は箒の部屋へ向かうとノックして名乗った。
「箒、俺だ。ちょっと話がある」
「なんだ、一夏……」
「束さんに相談したいことがあるんだ、電話貸してくれるか?」
「そうか! 姉さんなら!」
箒は一夏が束に相談して解決してくれると思い、電話を手渡す。
そして、一夏は束に連絡した。
『もすもすひねもす、束さんだよ!』
「束さん、俺です。相談があって……」
『今忙しいから無理、そもそもなんでかーくんを虐めた子助けなきゃいけないの?
サキモリが言ったでしょ、やることやれよって。やりもしないで都合良過ぎ。
束さんは便利屋じゃない、気に入らない子なんか手を貸さないよ。
箒ちゃんも自業自得、自分で欲しがった専用機なんだからって言っておいて。バイビー』
一夏は時期を逸した事に気づいた。
しかも和成を束があだ名で呼んだ以上は手助けしてくれないとも。
こうして箒とシャルロットは絶望をより深くすることになる。