宇宙戦艦紀伊   作:アオトル

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本当、堅苦しいのって苦手なのよねぇ。


今回の話は、”研究”に関する報告ね。

私って本当、色々しているから大変なのよ。



第2話 研究報告

カ二号作戦から数か月後

 

 

:極秘研究施設:

 

 

 

「…以上が研究の成果です。完成した新装甲、シールド発生装置、ハイパードライブエンジンは、これから運用試験を行った後、改善点を洗い出し、最終的に実用可能レベルにまで改良していきます。 装甲やシールド発生装置は1年も有れば完全なモノを提供可能です。ですが、ハイパードライブエンジンに関しては物が物である為、実用化に至るまでにそれなりの年月が掛かります。早くて3年、慎重を期すのであれば5年ほど掛かります。」

 

藤堂極東管区行政長官「うむ、ご苦労。十分な成果だ。ハイパードライブエンジンに関しては君の言う通り慎重に行ってくれ。」

 

「有り難うございます。」

 

藤堂「それからもう一つ。先の作戦が成功したのは君のおかげだ。人類を代表して感謝を述べさせてもらおう。ありがとう。芹沢 光 国連科学技術局長官。」

 

ヒカリ「いいえ、藤堂長官。それは私だけの成果ではありません。確かに作戦の大筋を考えたのは私です。しかし、それを成功させるには現場の人間に相応の実力がなければ意味が有りません。それに、船の改装にも多くの方々に協力していただきました。このどれかが欠けていたら作戦は成功しなかったでしょう。私だけが称賛されるのは彼らに申し訳が立ちません。」

 

藤堂「ふむ、なるほど。それは確かに一理あるな。では改めて。君達のお陰で作戦が成功した。ありがとう。」

 

ヒカリ「どういたしまして。我々も頑張った甲斐が有るというものです。」

 

藤堂「うむ。」

 

ヒカリ「そういえば芹沢軍務局長。」

 

芹沢「何だ。」

 

ヒカリ「先日、プロトン魚雷と侵蝕魚雷の生産が開始されました。侵蝕魚雷の方はプロトン魚雷程生産することはできませんが、どちらも1か月以内に納入が可能です。宇宙機雷ライトンR30マインはこの二つの魚雷と違い、数をそろえる必要が有るので運用可能状態まで(そろ)えるのに1年と少し位の期間が必要になります。」

 

芹沢「うむ、ご苦労。あの二つが有るだけでも戦況は変わるだろう。」

 

ヒカリ「えぇ、そうですね。”上手く扱えたら”の話ですが。」

 

芹沢「…分かっている。」

 

藤堂「本当に何から何まで助かっているよ。」

 

ヒカリ「有り難うございます。」

 

沖田「君には感謝しているが、しっかり休んでいるのか?さっき説明したもの以外に、例の計画や個人的な研究もしているそうじゃないか。大丈夫なのか?」

 

ヒカリ「ご心配には及びません。休みはしっかり取っています。」

 

沖田「そうか。それならばいいが。」

 

ヒカリ「ところで話は変わりますが、先の作戦で使用した戦術は多用しない事をお勧めします。」

 

芹沢「なぜだ。」

 

ヒカリ「理由はいくつがございます。まず、第一に質の差です。相手は我々が観測可能な領域外。遥か彼方からこの太陽系にやって来る事が可能な技術を有しています。今回勝てたのは運良く、使用された新兵器が敵に通用するモノだったからに他ありません。」

 

沖田「うむ。確かに奴らとの技術の差は大きい。それは、これまでの戦闘で嫌というほど理解している。」

 

ヒカリ「次に、彼らはバカではないという事です。次からは間違いなく対策を取って来るでしょう。我々は彼らに”地球人は手強い”と認識させたのですから。」

 

藤堂「なるほど。」

 

ヒカリ「最後は戦場です。今回の戦場は火星。絶対防衛線でした。所謂(いわゆる)、背水の陣と言える状況です。作戦で使用された陣形は攻撃的で尚且つ、後ろを気にしないモノです。今回は火星が後ろに有ったので良かったですが、それが無い空間では逆効果になります。」

 

芹沢「なるほど、理解した。」

 

ヒカリ「有難うございます。」

 

ヒカリ「あぁ、それからもう一つ、報告が有ります。」

 

藤堂「まだあるのかね。」

 

ヒカリ「はい。今日はこれで最後です。」

 

藤堂「それで、内容は?」

 

ヒカリ「回収した敵艦の残骸を調査した結果。敵に関する情報をいくつか入手しました。」

 

芹沢「それは本当か!」

 

ヒカリ「はい、事実です。これから説明しますので、こちらの資料をご覧ください。」

 

そう言いながら3人に資料を渡す。

 

ヒカリ「まず。敵はガミラスという名の巨大な星間国家です。解読した情報にはガミラス帝国とあったので、おそらく独裁政権だと思われます。」

 

藤堂「ふむ。独裁か。我々にとっては嫌な思い出しかないな。」

 

ヒカリ「私も同感です。話を戻しましょう。彼らの兵器は我々よりも上でしたが、それよりも重要なモノを見つけました。」

 

芹沢「それは何だ。」

 

ヒカリ「エンジンです。解読した情報によると、彼らが”ゲシュ=タム機関”と呼称するエンジンはワープ航行を可能にする機関の様です。」

 

芹沢「ワープだと⁉」

 

ヒカリ「はい。当初から敵はワープ航行技術を有しているのではないかと噂されていましたが、それが今回、確かなモノとなりました。現在、部下と共に調査を行っています。」

 

沖田「ふむ。そうなると、ワープを用いた地球本土への直接攻撃の可能性も考えなければならんな。」

 

ヒカリ「それから最後に、現在相次いで降り注いでいる隕石は、遊星爆弾と呼ばれるガミラスの兵器だということが分かりました。」

 

沖田「そうか。これで確定したな。」

 

ヒカリ「そうですね。今出せる情報はこのくらいです。まだ解読できていない情報も有りますので解読を急いでいます。」

 

藤堂「うむ。想像以上の成果だ。君には…、ゴホン。君達には本当に感謝している。有難う。」

 

ヒカリ「当然の事をしたまでです。」

 

藤堂「それでもだよ。さて、それではそろそろお暇するとしよう。」

 

ヒカリ「本日はわざわざ足を運んでいただき、有り難うございました。」

 

 

 

:芹沢 光 執務室:

 

 

三人が帰った後。執務室で一人、光は研究結果を纏めた資料を読んでいた。

 

「さて、少しではあるけど確かに歴史が変わったわ。これならこの計画も実現できそうね。」

 

芹沢ヒカリは転生者である。生前は男だったが女性として転生した。転生の際に、健康な体と天才頭脳を得た彼女は自身の夢の為に行動していた。因みに、男だった時の記憶は記録として保有している。その夢というのが、

 

「私の考えた最強の艦隊、或いは地球 ねぇ…。いいえ。”私”ではなく”俺”かしら。」

 

夢。正確には彼女ではなく、彼女の前世の男が考えていたモノだ。今の彼女は特にこれといった夢は無く、『己の才能で人類の未来に貢献できればいいかな』、位の感情しか持っていない。 これは彼女が生まれながらの天才であるが故の弊害だった。 彼女の中身が前世のままであったなら、与えられた才能に喜びを感じ、第二の人生を謳歌できた事だろう。 だがそうではない。 彼女は男だった前世の”記録”を有しているだけの(れっき)としたこの世界の住人なのだ。  物心がついた時からなんでもできたという事は、幼い頃の彼女にとって残酷な事だった。 それでも彼女は、自身に才能を与えた男に感謝の意を示し、お礼として、彼の夢を(かな)えようと行動し始めた。もっとも、それ以外にやる事が思いつかなかった事や、人類の為にもなると考えたからでもあるのだが。 その結果、彼女は国連科学技術局長官に就任する事になった。

 

「それにしても、前世の私が考えた最強の艦隊・地球て本当、幼稚なのよね~。別に悪くわないんだけど、才能が無いの丸出しなのよね。どんなものにも相性や組み合わせが有る。なのに、その辺りを考えずに強力なシステムをありったけ搭載する。そんなことしても最強の(ふね)なんてできないのにねぇ。」

 

彼女の考える最強の地球と艦隊構想は、前世の自分が考えていたモノを軸に、大幅な変更が()されていた。これは前世の考えが彼女の言う通り、単純にシステムを詰め込んだだけのモノだったからだ。そこに、システム同士の相性や組み合わせ等は一切考慮されていなかった。

 

「まぁ、当然と言えば当然かしら。才能が無かったから天才頭脳なんてモノを求めたんでしょうし。でもやっぱり単純よねぇ。多少は制限を設けてほしかったわ。まぁ、物語が滅茶苦茶にならないようにする為の世界の修正力か、或いはテレサの干渉か。どれだけ頑張っても波動エンジンは作れないのよね~。ただ、”(わか)らない”じゃなくて正解を()()()()隠されている感じだから理解が及ばないってわけじゃないんでしょうけど。まぁ、今は回収したガミラス艦のゲシュ=タム機関で我慢するしかないわね。」 

 

「にしても、”生まれながらの天才”なんて、本人からすれば世界の全てがつまらないモノになるって事に気づかなかったのかしら。いや、思いついたけど状況をイメージできなかったから大丈夫と思ったのか…。たぶん後者でしょうね。」

 

はぁ~とため息をこぼす。

 

「まぁ、過ぎたことを悔やんでも仕方ないわ。別に有ると困るってわけじゃないし。それに、今は面白そうなのが居るしね。」

 

そう考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「失礼します。」

 

「噂をすれば何とやら、てね。入っていいわよ。」

 

「芹沢長官。こちらの資料を届けてほしいと頼まれたのでお持ちしました。」

 

「あら、ありがとう。後で目を通しておくわ。そこに置いといてちょうだい。」

 

「分かりました。」

 

「というか、そういう堅苦しいのはやめてよ。いつも言ってるでしょ。ましろ。まぁ、時と場所は考えないといけないけど、今はその時じゃないんだから、肩の力抜きなさい。」

 

「そうだよ、シロちゃん。普段からそんなに堅苦しかったら大変だよ?ちゃんと息抜きしないと。ね。もかちゃん。」

 

「そうだね、ミケちゃん。宗谷さんは少し、気を張り過ぎじゃないかな。」

 

宗谷(むねたに) ましろ「そういうわけには。ていうか、貴女達が緩すぎるんです!」

 

(みさき) 明乃(あけの)「大丈夫だよ、シロちゃん。ちゃんと切り替えが出来ていたらそれで良いんだよ。」

 

ヒカリ「いいじゃない、ましろ。切り替えは大切よ。でないと、ここぞという時に的確な判断が出来なくなるわ。常在戦場の心構えは立派だけど、ほどほどにね。それに、何よりつまらないわ。」

 

ましろ「それが貴女の本音でしょう。」

 

もえか「光さんはそういう人だから…。ましろさんも諦めた方がいいよ。その方が楽だから。」

 

ヒカリ「ちょっと。もえか。それ、どういう言う意味よ。」

 

もえか「ふふ、そのままの意味です。」

 

ましろ「なるほど。参考になります。」

 

ヒカリ「もえか、どうしてくれるのよ。ましろが学習しちゃったじゃない。」

 

ましろ「貴女は私を何だと思ってるんですか…。」

 

ヒカリ「からかい甲斐(がい)の有る面白い奴。」

 

ましろ「もうやだ、この人。」

 

明乃「あははは。」

 

もえか「光さん。用も済んだので私たちはそろそろ失礼します。」

 

ヒカリ「あら、もう行くの?」

 

もえか「えぇ、まだやる事が残っているので。」

 

ヒカリ「なら仕方ないわね。頑張りなさい。」

 

もえか「はい、それでは失礼します。」

 

明乃「じゃあね。ヒカリちゃん。」

 

ましろ「失礼します。」

 

 

三人が退出た後。

 

 

「やっぱり、面白いわね。特にましろ。いじり甲斐があるわ。」

 

「さて、資料の内容は何かしら。」

 

 

ヒカリは届けられた資料を読み進めていく。

 

 

「…なるほど。亜光速試験船イザナミの各種実験とスペシウム弾頭弾、ナノマテリアルの生成は成功。シルバーシャークGやユニオンコアなんかはもう少し時間がかかりそうね。」

 

読み終えた資料から目を離す。

 

「それにしても、原作より2年も早くカ二号作戦が実行されたのは幸運だったわ。おかげでまだ地球には余裕が有る。もし、原作通り2198年に実行されていたら、遊星爆弾の影響で地球は今ほどの余裕は無かったでしょうね。」

 

「まぁ、お陰で”俺の考えた最強”に必要な技術は既に幾つか研究を終了している。 そういえば私、イズモ計画にも関わっていたから、今思えば本当にギリギリね。」

 

「それでも、何としてもやり遂げたいわね。」

 

ヒカリは改めて、人知れずそう誓った。

 




最後まで読んでいただき有り難うございます。

面白いと思っていただければ幸いです。


今回の話で新たにタグを追加します。

今回の話に登場したネタを順に、
スターウォーズから、ハイパードライブエンジン、シールド発生装置、プロトン魚雷。
蒼き鋼のアルペジオから、侵蝕魚雷、ナノマテリアル、ユニオンコア。
ウルトラマンメビウスから、宇宙機雷ライトンR30マイン、亜光速試験船イザナミ、スペシウム弾頭弾、シルバーシャークG。
ハイスクール・フリートから、宗谷 ましろ、岬 明乃、知名 もえか。
以上です。


主人公の名前は、ウルトラマン界の天才、ウルトラマンヒカリから取っています。
変身者のセリザワ・カズヤの芹沢と、ウルトラマンヒカリのヒカリです。
そして偶然ですが、ヤマトには同じ”芹沢”がいるので、主人公は芹沢軍務局長の娘という設定です。
主人公の人格モデルはMuv-Luv Alternativeより、香月 夕呼です。
※あくまでもモデルです。


:感想返信のコーナー:

本作のカ二号作戦は原作の2年前、2196年2月20日に実行されました。

前話の誤字報告、有難うございました。
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