「え?」
金木が素っ頓狂な声を出してしまうのも無理は無い。胡散臭い女性に会ったと思ったら、いきなり目の前の景色が変わったのだから。
「とりあえず人がいそうな場所に行こう。森の中じゃどうにも出来ないし。」
とは言え方向などの宛は無く、直感任せに進む事しか出来ないのである。
「困ったな。1時間くらい歩いてみたけど一向に人の気配が無い。」
喰種の身である為餓死等の心配は当分無用だが、1つ問題があった。
「熊...だよね。」
そう、襲われたのだ。異様な程に発達した爪を持つ熊に似た生き物に。
「コレばかりは補給させてくれたジェイソンに感謝しないと。」
赫子を使う事はなかったが、油断は禁物。常に万全の状態を保っておかないと...。
「アナタは食べても良い人間?」
と言った傍から新手が現れてしまったようだ。
「...子供?」
「答えて欲しいのだー。食べても良い人間なのか?」
発言からして喰種かと疑うが、子供の容姿をしている為どうあしらうか悩む。
「僕を食べてもお腹壊しちゃうだけだよ?」
「お腹は丈夫な方だから大丈夫なのだ。つまり、食べても...良いのだ?」
どうやら答え方を間違えたようだ。明らかに殺意を持って僕を見ている。涎垂れてるし...。
「はぁ..。遊んでる暇はないんだけどな。」
「それじゃあいただきます!!」
「っ!?」
子供が出せる速度では無い勢いで突っ込んでくる。それを咄嗟に避ける金木。
「む〜。避けないで欲しいのだ。」
「食べられたくないからね。」
(子供だと思ったけど、多分さっきの熊モドキより強い。それに今の速度は羽赫の攻撃よりも速い!)
思考に浸っていると子供に懐に入られていた。
「あぶっ、ないなぁ。」
バックステップをして噛み付きをどうにか避ける。
「ちょこまかとムカつくのだ。」
「仕方ないか...。」
体勢を整えて子供をしっかりと視界に入れる。
(見えない速度じゃない。最悪噛み付かれても噛みちぎられる前に対応すれば良し、次間合いに入ったら容赦なく...。)
意識を切り替え、相手を無力化する方法を考える。
「また考え事だなんて余裕なのだ!」
そう言いながらまたも突っ込んでくる。
「シッ!!」
「あぐっ!?」
大きく口を開けて突っ込んできた子供に対して、カウンター気味に膝を顎に入れる。
「さて、色々聞きたいことがあるんだけど。喋れる?」
「あう〜...。」
涙目で此方を見る子供に罪悪感を感じるが、心を鬼にして質問する。
「まず君の名前は?」
「ルーミアなのだ...。」
「ルーミアちゃんね。じゃあココは何処?」
「幻想郷なのだ。そんな事聞いてくるって事は外から来たってことなのだ?」
八雲紫と言う女性に言われた事を思い出す。どういう方法かは分からないが、誘拐されたらしい。
「多分そうかな?じゃあ僕みたいな状況になったら何処に向かえばいいか知ってる?」
「博麗神社に行けばいいのだ。そこにいるれーむってやつに頼めば何とかしてくれるのだ。」
「博麗神社...。じゃあルーミアちゃん、案内とかしてくれる?」
「負けちゃったし仕方ないのだ〜。」
勝ったら僕が死んで負けたら案内って、なんてロウリスクハイリターンな勝負なんだと、心で愚痴りながら着いていく。
道中で幻想郷について色々聞いた。 まとめるとこうだ。
幻想郷は妖怪と人間が共存している。
元の世界とは切り離されている。
戻る方法は恐らく博麗の巫女に頼むか八雲紫に頼むしかない。
「色々教えてくれてありがとう。顎は大丈夫?」
「妖怪はすぐ治るから大丈夫なのだ。おにーさん強くてびっくりしたのだ!」
怪我をさせたというのに何故か懐かれてしまった。子供は嫌いではないから良いんだけど。
「ついたのだー!この階段を登れば博麗神社があるのだ!」
「ありがとう、助かったよ。」
「気にしないで欲しいのだ。あ、でもおにーさんを食べようとした事は内緒にしてほしいのだ。」
「分かった。約束するよ。」
なにか理由があるのだろう。見るからにしょんぼりした顔でそうお願いされたら流石に断れない。
「やっと登りきった。」
歩いて登ったとは言え20分近く登っていた気がする。
「ここが博麗神社。」
さぞかし凄い神社かと思っていたが、なんというか...寂れてる。
「いらっしゃい。参拝客かしら?素敵なお賽銭箱はアソコよ。」
いきなり巫女がお金をせがんでくるのはどうなんだろうか。そんな気持ちを押し殺し答える。
「ごめんなさい、参拝しに来た訳じゃないんです。ただ元いた世界に戻りたくて。」
と言うと見るからに嫌な顔をされてしまった。
「あっそ。それでアンタはどうやって幻想郷に来たのかしら?」
「八雲紫って人に連れて来られたのかな?」
表現として合ってるのか怪しいがそう伝える。
「ん〜。そうなると私の独断じゃあ無理ね。張本人を呼ぶしかないわ。」
さぞかし面倒だと言わんばかりの顔をして、目を瞑る。
「ちょっと霊夢?勝手に結界を緩ませないでちょうだい。」
「アンタが勝手に外の人間を連れてくるからでしょ。面倒臭いからさっさと戻してあげなさい。」
何をしたのかは分からないが、また何も無い空間から八雲紫が現れた。恐らくコレがルーミアちゃんが言っていた能力なのだろうか。
「それは無理よ。」
「何故ですか?」
勝手に連れてきて戻せないなんて、そんな身勝手な事は許せる筈もなく口を挟んでしまう。
「幻想郷の為になるし、貴方の為にもなるからよ。」
当たり前のことの様に告げる八雲紫に嫌気が差し、これ以上は無駄だと考える
「そうですか。そういう事なら...力ずくで。」
殺意を持って八雲紫に告げる。
「ちょっと!ここで暴れないでよね!」
不穏な空気を読み取った霊夢からストップが入る。
「貴方にとっても悪い事じゃないわ。幻想郷は力をつけるならある意味うってつけよ。」
確かにここならCCGの事を気にせず力をつける事が出来る。ただ不安要素はまだ沢山あるのも確か。
「貴方の居た世界で何かあった時にはちゃんと知らせるわ。住まいも霊夢の所で暮らせば問題ないでしょうし。」
「なんでこう話が勝手に進むのかしらホントに...。」
年頃の女の子と一緒に暮らすのはどうかと思うけど、条件自体はとても良い。ただ問題は、
「貴女を信用出来ない。勝手に連れてきて謝罪の一つもか無く、のうのうと現れた貴女の言葉をどう信じろと?」
至極当然の言葉だった。元の世界に帰れる方法が八雲紫に頼るしかないのも事実。故に強く当たれないできる状況だ。
「ふふふ...それもそうね。それについては悪かったと思ってるわ。それでも貴方にとって有益になると私は確信しているの。」
素直に謝罪を述べてくれるとは思わなかった。この人に踊らされている気がしてイラッと来るが...。
「なぜ確信しているのかは聞かないでおきます。」
「あら、残念。それで答えを聞いても良いかしら?」
「はぁ...分かりました。少しの間お世話になります。」
デメリットはあるが、メリットがかなり大きい。だがそれ以上にこの世界に興味が湧いたのが一番の理由だ。
「歓迎するわ、金木研。改めまして、妖怪の大賢者八雲紫よ。」
「どうも。金木研...ただの喰種です。」