気になった感想への返信
>> 作者さん、アオアシ読んでる?
解説のところアオアシ参考にしました感がすごい笑
→してます。というか今は消してますが、確か1話を投稿した時に前書きでアオアシを読んでてサッカー系を書きたくなった事は明かしてた気がします。可能な限り解釈の幅を広げて説明そのままにはしない様にしていますが、不快に感じられたら申し訳ありません。
こういう明確な“形”の説明って自分の知識ではあまり無くて、出来て精々動きの描写くらいになってしまいますので……。参考にしてるのが分かる描写をすればイメージもし易いという思いもあってこう書いた次第です。すみません。
>> あれ?いつの間にか恋人になってる!?
ど、どこで見逃したんだ!
→恋人であるという明言はしていませんが、12話『不可欠』にて看護師から「彼女さん?」と言われてセブンが肯定している描写はしています。面倒な問答を避けただけの様にも見えてしまうかもしれませんが、一応恋人である事を示した部分です。
なんか作中内での描写とか説明をしてなかった気がするので一応前書きに書きますが、駆君が怪我をしたのは左脚です。どっちを折ったとかは特に重要では無いんですが、念の為に。
高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会。
地域リーグと地域予選を混合して32チームを選出して全国の覇者を決めるこの大会にて、鎌倉学館は神奈川県大会からのスタートとなる。
全中の時と同じくして始まる県予選。鎌倉学館のその試合の中に、逢沢 駆の姿はない。多くの視線はピッチの外、鎌学のベンチへと向いており、その視線の先にこそ駆の姿は在った。
痛々しく巻かれた包帯とベンチに寄り掛からせ置いている松葉杖。あの試合を観ていた人ならば誰もが疑う筈もない怪我。
やはり今大会にて復帰は無理そうか。では何故観客の位置では無く監督の隣で座っているのか。そんな話が巡る。
理由は一つ。駆は一応とはいえメンバー登録が為されている為だ。
枠が無駄に埋まるし、何なら大会を運営する側からも幾度となく確認を取られ、その上で「絶対に出すな」という命令を受けたものの、選手登録されている駆は鎌倉学館のベンチに座る事を許されている。
では選出枠を埋めてまで駆を入れる理由とは何か。
「───はい、なので今回は公太の脚で乱して……」
「佐伯のポジションを少し上げた方が良いか?」
「いえ、ポジションはあくまでボランチを保つ方が全体的な安定感は増します」
「となると、中塚の位置はMFの方が良いか。後半は3バックの起用にするとしよう」
コーチとしての立場を保つ為───ではなく。そんな理由ならばマネージャーとしてベンチに居れば良いだけの話だ。わざわざ枠を埋めてまでする事ではない。
駆自身は選手登録まではしなくていいと言ったのだが、熊谷監督による判断で選手登録は為された。ついでに「この様に怪我はするなよ」と駆を見立てて鎌学選手にプレッシャーを与えている。
頑固なところはやっぱり変わらないよなぁと苦笑しつつ、駆は現在の相手の分析をベンチから続けて監督に意見を述べていた。
───これは既に、県予選の準決勝の段階である。
駆が怪我をしてから三週間。既に11月の中旬に差し掛かろうとしている肌寒い季節。
鎌学の要である傑と、守備の要である国松が鎌倉学館中等サッカー部から抜けて、全中のあらゆるタイトルを総なめした絶対的エースストライカーの怪我による離脱。それらの痛手により大方の予想では県予選での苦戦が浮かんでいたが、結果を見れば全試合クリーンシートの二点差以上を確実に収めている。
全中ブロック予選で三年の起用を最小限にしてこの高円宮杯を見据えた2年メインの試合は行われていたが、それによる得点は殆ど駆によるモノ。ともすれば県大会ですら危ういのではないか。それが当然の予想ではあった。
だが現時点、準決勝の前半を終えた段階で1-0のリード。大量得点こそないものの、県大会準決勝まで残った猛者を相手にリードしているという事実は、外部からすれば意外の一言だろう。
だが監督視点で言えば、自らが起用さえ違わなければ当たり前の結果ではある。
何せ鎌学は駆と傑を中心とした紅白戦が幾度となく行われている。選手選抜というよりは、各選手に成長の種を蒔く事を目的とした練習寄りの試合だ。
身体能力や個人戦術こそ才能による部分が大きいとはいえ、サッカーへの理解度はみんな著しく向上している。プロを本気で目指せる選手が近くにいるというのが目標指針を定めてくれるので、サッカーへの意欲というのが刺激されているのだ。
それによって身に付いた戦術眼、及び戦術を実行する思考能力───自分に出来る最善手を判断する力というのが飛躍的に上昇しているため、個人個人の能力こそ全国でギリギリ通じるか否かのレベルではあるものの、戦術実行力は中学内でも随一だ。
今は既に引退して受験勉強に励む三年生よりも数か月長くそれに励んでいる分、そういった判断は現在の1、2年生の方が優れているまであると言えるだろう。本来ならば、実際の試合に出ている経験という部分の差は出る筈なのだが……駆と傑が毎回のように凄まじい緊張感で向かい合うから、下手な練習試合よりもプレッシャーが強い。
今まで駆の躍動で目立たなかった練習の積み重ねが、駆の不在により目立ち始めた。
前半を一点リードで終えた上で、試合経過を観察する熊谷監督と駆による戦術の修正が施され、後半40分へと移り行く。
試合が終わるころには、県大会準決勝のこの舞台を4-0の差で勝ちぬいた。
地域予選を挟む中学大会での神奈川では優勝校と準優勝校が全国の切符を勝ち取る地域予選に進めるため、この試合の勝利を以て鎌倉学館は全中の時と同じく地域予選の舞台に立つ。
そんな盛り上がりを見せてモチベーションが高まっていく駆は、気分の良い状態で一週間毎の定期検診へと訪れた。もちろんわざわざ都内に行っては時間が掛かるので、入院していた病院から説明を受けた地元の病院だ。
一週間前は確認作業が主にだったから、骨の接続の進行確認は今回からだ。入院してた時の話からすればくっつけるだけでも3ヶ月という事なので、本当に微々たる変化しかないだろう。
「……やっぱり」
「あはは……まだそんなに進んでない感じですかね?」
「いえ、逆です」
───そんな思考を裏切る一言。
「前回の確認から違和感はあったのですが、今回の検査で改めて分かりました。駆君の脚ですが、恐らく骨がある程度固まるまでに掛かる期間は、あと三週間もあれば充分でしょう。全治にはそこから更に三週間……となるとは思いますが、当初の予定を上回る速度で治癒が進行しています」
「へ?」
「検査入院期間の資料が届いていますので、偽造の結果を知らされていた訳ではありません。此方に戻ってきてから、何故か治癒能力が普通……というか、アスリートに稀にある高い治癒力で骨の接続が進行していますね」
「……えぇ?」
「その証拠にこの画像なんですが……検査入院時に進んだ部分だけ骨の治り方が僅かに違うのが分かりますか?」
「あ、はい」
「なので入院期間内では間違いなく治癒能力は低かったんです。しかし二週間前から治癒状況が進んでいますので……」
「えっと、良い傾向……ではあるんですよね?」
「それはもちろん。ただ治り方に差異がある為、関節部分がかなり柔らかくなる事が予想されます。怪我をし易くなってしまうという難点がありますので、リハビリが可能になってからは入念に取り組みましょう」
「わ、分かりました」
「……しかし、何故急に治癒力が上がったのか……入院のストレス、にしては極端……。んん、すみません。症状や発症理由などを推察するならば兎も角、こういった面は専門外でして」
「い、いえ! 僕としては早く治る事に越した事はありませんので!」
何故、何故と悩ましく考える担当医に、駆は慌てて「そこまで悩まなくても」と声を掛け、お礼を言いながら診察室を後にした。
『───また不思議な話ね』
「そうでしょ? 何となく普通の治り方はしないんだろうなぁって入院する前は思ってたんだけど、どうして早く治り始めたのかは全然分からなくってさ」
『でも駆だからなぁ』
「……? どういう事?」
『未来の記憶があったり、その記憶の時の動きが出来たりって、駆って意外と不思議な体質してるじゃない? ならあり得るのかなって』
「えぇ……」
その日の夜。駆は定期検査の結果をセブンへと電話で報告していた。
揶揄う様に放たれるセブンの言葉に、自分はどんな体質してるんだろう、確かにと、そう思ってしまう。改めて言われると不思議な現象だ。
『けど、二週間前からかぁ……そうなるとやっぱりなのかな』
「何が?」
『ほら、駆が退院して学校に戻ってきた初日に高等部の方に行ったじゃない? あの日以来、なんだか駆が感情を凄い出す様になったっていうか……子供っぽくなった?』
「感情を出す……え、そんなに僕って表情が無かったの?」
『表現が難しいのよ。大人っぽいといえばそうなんだけど、それにしては感情表現が薄すぎる部分もあったから、どっちで例えた方が良いのか悩む感じ』
「そっか」
───様々な能力の低下。その中に感情まで含まれていたと考えるのが自然だろうか。
入院の間に担当してくれた医者の言葉を参考にするならば、治癒能力が急に向上……元に戻ったのも、変化していた脳信号が元に戻り、伝達の変化が上手く作動するようになったからだろう。
だが自分自身の変化が全く分からない。感情が薄かった事を自覚してなかったのと同じように、感情が多く出るようになっている事が自覚出来ない。
別に思い通りに動かない訳ではないからなぁと、駆は自分の掌を見つめながら身体の変化について考え込む。
『取り敢えず、担当医さんの言う通りにリハビリは入念にね。予定を巻いて後1ヶ月半くらいで完治するみたいだけど、余裕をもって3ヶ月は復帰しない方が好判断だと思う』
「……」
『まあ、担当医の人が許可を出してくれるなら、慣らしで部活参加とかはアリかもしれないけど……』
「……!!」
『……ふふ、ホント分かりやすいなー、今の駆は。電話越しなのに表情が分かっちゃうよ?』
「うぐ」
ああ、こうして指摘されると確かに分かる。自分はかなり表情が無かったが、今はかなり表情が出てる。というよりは、年齢相応の自分に戻っているのだと。
セブンが特別鋭いというのもあるのだろうが、それを抜きにしても本来の駆は感情が出るタイプの人種だ。振り返っていくと、確かに今までの自分は違和感があったかもしれない。“記憶”の中の自分でももっと感情は表に出ていた筈だ。
『ただ、駆がそうなってるって考えると……』
「……?」
『……ううん、何でもない。気が滅入る事を言っても仕方ないもんね。高円宮杯、一生懸命応援しよっか!』
そんな電話越しの会話をした翌日。
県内中学校部活動の1番を決める大会に於いて、鎌学は優勝し地域予選に駒を進める───が。その地域予選の事だ。
全中の時と同じく全国へと進めるのは32チームだが、全中の時とは違う点として地域予選で勝ち上がれるのは上位の3チームのみ。関東ブロックが7チーム上がれるという事に変わりはないものの、その内の4チームは地域リーグの上位4チームで確定してしまっているのだ。
だから全中の時に比べて枠が少なく、全国へと挑むには最低でも準決勝にまで駒を進める必要がある。鎌学は準決勝まで進んだ、が。
残念ながらその準決勝にて0-2の敗戦を記録した。上位3チームという決まりである以上は、優勝校と準優勝校にプラスして3位決定戦で勝った方も上がれる仕組みだ。準決勝で負けはしたがここで勝てば上がれる。
そんな試合の、後半。既に後半に入って20分が経過している段階。
鎌学は1-4の3点差で負けている。声を上げて諦めておらず、一見は士気を保てている状態。この年代のサッカー少年達は残り少ない時間からの逆転という“奇跡”とも思える光景を同年代の少年が成しているフランス戦を見ている為、決してお互いに油断はしてない状態に見える。
だがその実、鎌学は何かが抜け落ちたような感覚を過らせるプレーを繰り返していた。
熊谷監督は表情を険しくするが、声は荒げない。その横で、駆は自分の手を握り締めながら唇を微かに噛んだ。
(……僕のせいだな。岩城さんの言葉の意味が良く分かった)
駆の治癒力は元以上を発揮して、担当医の想定を超える早さで骨はある程度くっついた。治癒力が早くなっていると確信してから僅か二週間の事だ。
骨が完全にくっ付くまではまだ掛かるが、このペースならばリハビリを並行して行う事で、高円宮杯が終わる前に完治する可能性すらある───そんな話を聞かされたから、もし治るようであればと、監督にこの事を話した。
判明したのは、準決勝が行われる前日。当然その日に部員達にも話は通っており、「高円宮杯に駆が出れる」という意識が鎌学生徒の心の中に残っているのだろう。無茶をすればという前提が付いても、駆が出れる影響は計り知れない。敵にも、だがそれ以上に味方にも。
駆が出れば勝てる試合。そんな意識が鎌学のメンバーにあったのだろう。準決勝の敗北と言い、この3位決定戦といい、今までとは比にならない集中力の低さだ。
戦術が上手く噛み合わず、選手同士の会話はいつもより少ない。アイコンタクトの頻度が減り、消極的なパスと雑なシュートが増えている。
(……実際に間に合うかは不明……というか、ほぼ無理に等しいのに、下手に出れる事を期待させる影響がこんなに大きいのか。頼るという気持ちが余裕じゃなくて油断になってるのが、良く分かる)
記憶の中にある江ノ島高校のFC対SC、及び選手権での葉䕃戦で、荒木が居るという事をあえて話さなかった恩師の判断を今更ながらに思い出して実感する。特に佐伯を見て、そう思ってしまう。
なまじ高いレベルを有しているからこそ、駆が居る試合状況を明確にイメージして比較してしまうのだろう。前線への指示が普段以上に厳しい。
後半の半分を過ぎてこの展開となると、もう逆転の目処は無いに等しいだろう。
だが。
「……祐介!」
脚が攣ったのか、相手選手が倒れて試合は止まる。時間稼ぎと見られても仕方ない行動ではあるが、これ幸いにと駆は脚に負担を掛けないよう松葉杖を突いて立ち上がり、佐伯を呼ぶ。
苦しく噛み締める表情を表に出す彼は声を掛けられた事に気付いてベンチに寄ってきた。すまんと言いたげな───というより、駆が逸早く声を出さねば間違いなく言っていただろうその表情を見て、駆は小さく、短く息を吐く。
そして、冷徹な表情。
「鎌学は僕のチームか?」
「え……?」
「鎌倉学館は、逢沢 駆のチームか?」
「……」
「違うだろ。鎌学は鎌学で、僕はそのチームの一員に過ぎない。僕が居ればなんて思考は直ぐに切り捨てろ。今の鎌学をちゃんと見て、今の鎌学で勝てる術を探り出せ。チャレンジは良い。けど無駄な仮定は無駄にしかならない」
「……サッカーは、基本的に11対11」
「うん、そう」
「フィールドに立っている選手だけが、試合を進められる」
「そう、今の僕はフィールドプレイヤーじゃない」
「……悪い、そんな簡単な事すら頭から抜けてた。いや、余計な思考が入り込んでた」
「大丈夫、こっからだ」
───サッカーには勝負が決まる瞬間が二度ある。
ホイッスルがなった瞬間。そして、負けてるチームが点を取る事を諦めた時。
だが、まだ諦めている訳じゃ無い。心の中で駆に頼る意識を正せば、きっと。
もっと早くに言えばよかったのだろうか。だが下手に声を掛けたところで潜在的な意識に気付かずプレーを繰り返してたかもしれない。劣勢になって自分達が考えている事を自覚してからで無いと、言葉が伝わらない可能性が高かった。
駆が怪我をしてから、今に至る2ヶ月。コーチをする立場になって教えるという事の学びは得たが、自分でも分からない事を自信を持って教える事が如何に難しいかがよく分かった。
技術的な話、戦術的な話ならばまだしも、個人の精神性や思考なんてのは簡単に分かるものじゃ無い。
この歳で、何でもできて当たり前みたいな、いつも期待されるしんどさ。頼られる重さというのが、少しずつ刻まれていく。
自分だって偉そうに言える立場では無い。分からないことが多いのに、弱音を決して吐けない。ああ、確かにこれは色々と溜まりそうだ。逃げてばっかりだった自分に激昂した傑の気持ちが、良く分かる。
けど向き合わなければならない。
それが、未来の記憶を持ってここに立つ逢沢 駆の役割だ。
だから責任を持って見届けよう。
そして。
「試合終了! 3-5で暁天国際中学の勝ち!」
そして、結果を受け止めよう。
大きなホイッスルと共に放たれる宣言に、駆は天を仰ぎ、目を瞑った。
───鎌倉学館中等部、神奈川県大会一位。関東大会、四位。今年度の夏に全中制覇を果たしたチームは、地域予選にて高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会から姿を消した。
今年度の高円宮杯優勝チームがユースクラブに決定した一ヶ月後。新しい年度の一月中旬。駆がU-17日本代表交流会カップにて怪我をした、3ヶ月後。
ピッチ外に出来た霜を左脚で踏み締め、駆は今。通常よりも念入りに行われたリハビリを終えて鎌学の練習へと返り咲く。
代表関連で遠征に赴いていた傑も、受験勉強に忙しく中等部のサッカーは引退した筈の鎌学三年生も、この日だけは部活動へと参加する。
怪我をしてる間に芽生えた様々な想いを胸に、駆は準備運動を始めた。
PON!(コツ)クラッシュ!(原作破壊)クラッシュ!(設定破壊)
というノリでやっても許されない二度目のポンコツです。はい。前話の後書きで書くつもりでしたが忘れてしまっていたのでここに書きます。
7話『最強世代』、及び未来ある若手サッカー選手を応援するスレにて、鎌学が県リーグ→プリンスリーグ→プレミアリーグという段取りを踏む描写をしていましたが、傑が中学3年の時点で鎌学高等部がプリンスリーグに属している事が判明致しました。さり気なく「まだ中学3年だった傑とプリンスリーグの試合で中盤のコンビを組んでいたな」という台詞が出ていた事に読み返していて気付いた次第です。中高一貫の鎌学だと中等部でも出れるのかという驚きと共に気付きました。懺悔。
今回も話の流れ的に変えるのが難しい為、修正は無しで『傑が中学3年の時は鎌学が県リーグ所属だった世界線』という設定にさせて頂きます。申し訳ありません。