感想返信
>>流石にあのゴールパフォーマンスに気付いたスレ民はいないか。いや、変態紳士ニキなら気付いて流した可能性も!?
→実は変態紳士ニキも含めてスレ民は誰も気付いてない状態です
>>これマジでブラジル戦を5-2で終わらせる宣言と誤解されて、駆の知らない間に全世界放送されてたとかなってる可能性ない?
→『逢沢 駆さん、試合結果をネタバレしてしまうww』みたいな感じでネタ扱いはされていますが、殆どの場合はハットトリックしたからこそのゴールセレブレーションと解釈されています
>>ちなみにレアル以外にリーガでもバルサとか、プレミアのビッグ6とかからは話くる兆候ないん??
→下部組織への勧誘はありますが、トップへの練習参加はレアルのみとなります。何より駆くんは駆くんで傑と鎌学でやりたい事もあるので、少なくとも一年の間は『鎌倉学館サッカー部』の一員から外れる訳にはいかないからこその練習参加という判断になります
>>えっ!有能変態紳士さんって
息子さんが亡きなって一時期グレてた記者さん?
→ッスゥ---....だ、誰のこと……っすかねぇ?
……なんで分かんだよ(小声)
はい。マジであっさりとバレてしまったので関連する話から始める事にしました。
という訳でスレ回は終わりましたが次スレが始まります。
……マジでなんで分かったんですかねぇ? 消去法?
【日本の】逢沢 駆を語るスレ3点目【怪物】
1:ショタコンではない名無しさん
前スレ
【日本の】逢沢 駆を語るスレ2点目【至宝】
http://itest.0ch.net.....football/20110111
逢沢 駆とは───
20××年生まれ(15歳)血液型O
ポジションCF(両ウィングも可)
鎌倉学館中学サッカー部活動所属
主な実績......中学二年時総体優勝・中学二年時総体得点王・中学二年シーズン全試合ハットトリック・中学総体最多得点記録・中学三年時U-17W杯優勝・中学三年時U-17W杯得点王
ここは応援スレです
まだ若い少年の心を傷つけないモラルを厳守した書き込みをお願いします
59:ショタコンではない名無しさん
レアルへの練習参加っていつ頃になるんかね?
60:ショタコンではない名無しさん
プレシーズンって事だから7月〜8月中旬の間なのは確実
61:ショタコンではない名無しさん
場合によっては高校総体は出れないって事か
62:ショタコンではない名無しさん
まあぶっちゃけ高校の一大会よりもビッグクラブに練習参加した方が実りあるあるら仕方ない
63:ショタコンではない名無しさん
寧ろ何で進学選んだんだろうな
クラブユースとか下手したらJ2部以下のリーグからはオファーあったんじゃない?
64:ショタコンではない名無しさん
兄の方にも言えるけど高校に拘る理由って無いよな
今年は鎌学一強確定じゃん
レベルの低い部活大会よりもどんどんステップアップしていくべきだと思うんだがな
65:ショタコンではない名無しさん
一度安定したレベルアップも挟まないと急激に成長すると怪我のリスクも相応に大きくなるからな
特に駆くんはまだ小柄で成長期の最中だろうし
66:有能変態紳士
その辺りは本人から答えが出る可能性もあるしインタビュー記事とか見逃さないようにしとくべきか
ちなみにインタビュー記事はまた後日出るみたいだぞ
時期的に高円宮杯のプレミアリーグでの今後の意気込みとかだろうけど
67:ショタコンではない名無しさん
変態ニキのリーク早くて助かる
68:ショタコンではない名無しさん
マジで有能
69:ショタコンではない名無しさん
プレミアは総体と同じで7〜8月期間の試合が無理そうかな
でもそれ以外は全部出れそう
70:ショタコンではない名無しさん
今の鎌学の戦術レベルは高いからな
高校三冠はかなりあり得る
71:ショタコンではない名無しさん
プレミアになってからの高校三冠は達成した事ないんだっけ
あり得るどころか今年の鎌学が取れなきゃどこが取れるんだって話だな
72:ショタコンではない名無しさん
プリンス昇格後から速攻プレミア取って高校三冠達成は日本史上最高の実績にはなる
海外行ってからはそこまで自慢にならないだろうけど鎌学にとっては有難い置き土産だろうな
73:ショタコンではない名無しさん
鎌学は大歓喜
他校は阿鼻叫喚
74:ショタコンではない名無しさん
中学からの進学組は確定としても今年の鎌学は外部入学から入部する人数も多そうだよなぁ
そんで一ヶ月以内で辞める奴も多そうだ
75:ショタコンではない名無しさん
高校は総体と選手権とって二冠達成のプレミア昇格
中学は総体準優勝に高円宮杯ベスト8
そりゃここまで好成績残す高校には行きたくなるよな
76:有能変態紳士
傑さん曰く「練習メニューは他校とあまり差はないと思います。明確に違うのは振り返りと言語化でしょうね。試合形式の練習を行う際にマネージャーに試合内容を撮影してもらって、練習後にミーティングを設けます。その時に撮影した映像から一部抜粋して、該当する選手がその時にどう考えてその行動を取ったのかを明確に言語化してもらう。そうすると改めてそのプレーが納得出来るものだったか、或いは他の選択を取れたのかを考える事が出来る」
特殊な部分があるとすればこれだな
77:ショタコンではない名無しさん
これいつのインタビューだ?
78:有能変態紳士
総体優勝後のスポーツ○○○の記事に載ってたインタビュー
79:ショタコンではない名無しさん
答えるの早いよ変態ニキ
駆くんの方の追っかけだから傑くんの方のインタビューはあんま知らなかったわ有難い
80:ショタコンではない名無しさん
そうなると練習メニューについていけないから辞めるってよりは他の部活生がいる中でしっかりと言葉を発する度量と言語化サッカーが合わないから辞めるって理由の人の方が多そうだな
コミュ弱の人は切り捨てられるかぁ
81:ショタコンではない名無しさん
そもそもそれで言葉を発せられないなら観客のいる試合で能力発揮出来ないからな
試合中にしっかり能力を発揮する自信も才能の一つよ
82:ショタコンではない名無しさん
練習メニューは他校とあまり差はないと思います(傑視点)
モニターに映る光がパッと消える。
すっかり温くなってしまったコーヒーで唇を湿らせ、苦味を舌に浸透し脳を覚ます。
今日やるべき事は終わったと伸びをする男性。
有能変態ニキ───改め、フリーライターの城之内 健吾は近くに置いてある新聞に手を伸ばした。
まだ販売はされていないが見本として貰った、自身の担当した記事。世界を微かに、だが間違いなく揺るがしたU-17W杯のゴール後セレブレーションの姿を大きく載せて連ねる文字に目を通し、ポツリと呟いた。
「中々に神経を使う作業だな、ネットは」
身元を特定されないように情報開示のタイミングに気を遣い、リアルの自分と繋がる情報を流さないようにし───と、本来好き勝手に吐けるネット掲示板という環境で神経を尖らせる行為に、思わず溜め息を溢した。
嘘を嘘と楽しむのもインターネット環境の一つの醍醐味。だが城之内という人間は一部界隈ではそれなりに知名度がある。万が一でも有能変態ニキと城之内 健吾とが繋がる情報が漏れて、それを目敏くネットの人間が見つけた場合、愉快犯が特定に身を乗り出す可能性も考えられる。或いは、既に特定しようと動いている人物もいるだろう。
メディアに関連する人間が掲示板に潜んでいて、特定の人物に熱烈状態というのは意外と洒落にならない。下手したら特定個人、つまり逢沢 駆へと迷惑を掛ける事に発展しかねない。
自暴自棄な時期ならばそれも一つのスクープとして考えていただろうが、今の城之内は出来るだけの安寧と称賛を彼に与えてやりたいと思っている。
かつては逢沢 駆を息子と重ねて見ていた。
もし自分の息子があの不運に見舞われなければ、あの様に世界へ羽ばたくことも出来たのではないかと。
世界から称賛を受ける事も出来たのではないか───だが彼が相手の故意なチャージで怪我をした事。それ以降変わりゆく彼の姿を見て、息子の幻影は消えていった。
変わっていく挑戦者の姿に、いつまでも幻影を重ねる事は失礼だと思ったから。息子の代わりではなく、1人の選手として認識を改める事にした。それが呼称を“くん”から“さん”へと変えたキッカケだ。
挑戦者の姿を綴るフリーライターとして、そして日本の至宝を応援する1人のファンとして、城之内 健吾は追いかける事にした。
「……にしても」
記事を一枚めくり、城之内はふと笑みを溢しながら呟く。
「ホント面白いな、彼は」
そこに綴られた、「日本にフル代表としてのW杯制覇を届ける為の足掛かりとして、高校三冠を第一歩にしたいと思っています」という大胆不敵な宣言に目を通しながら。
日本高校サッカー大会の一つである高円宮杯。その頂点リーグとも言えるプレミアリーグは、新一年の入学を迎えるよりも早く開催される。
まだ入学を迎えていない第一節。そして入学間も無く、部活動が活性化する前の第二節。
進学組は既にこの時点から鎌倉学館高校サッカー部の一員として活動を始めており、開幕後からベンチ入りを果たしている人物も少なくはない。
中でもU-17W杯で得点王の記録を残した逢沢 駆と、昨年度にU-15で実績を残してきた佐伯 祐介は最初からレギュラーとして迎えられており、先の二戦にも先発出場を果たしていた。
第一節の静名学園戦では駆は2Gの記録を残しており、佐伯はクリーンシートに大貢献。また続く第二節ではハットトリックを達成し、前大会プレミアリーグファイナル*1の優勝チームである横浜エルマーレスユースを相手に圧巻のパフォーマンスを披露した。
翌週には第三節が控える中で、平日の放課後は鎌倉学館高校サッカー部の新星を見定める期間へと突入している。
体力テストから始まり、個々の技術等の把握。
鎌学は現在強豪チームへと名を挙げたが、基準を満たしていないからと入部拒否を行う様な事は決してしていない。
来るもの拒まず去るもの追わずのスタンスが基本であり、そこに経験・未経験である事に頓着はないと言えるだろう。
既に入部希望時に居た人数からは減少しているものの、合格制度という訳ではないので残っている人数は多かった。
そして本日に至り、鎌学は週末のプレミアリーグ第三節の備えと鎌学以外から入部した(未経験を除く)部員の試合中での動きの確認を兼ねて試合形式の練習を行う事にした。
基本的なチーム分けは選手権を獲得した現二年・三年で構成された上級生チームと、新一年の中でも鎌学中等部から進学した人達で構成されたチーム。
進学校であるが故に不定期ではあるものの行なっていた高等部対中等部の延長線上のチーム分けだ。基本的なチームスタンスは今までのものを崩さず、各チームに進学以外から鎌学を選んで入部した新一年を無限交代制で試していく試合方式となる。
4月半ばのこの時期はまだ代表に呼ばれる事もない。暫くは鎌学に専念出来る期間である為、鷹匠も傑も含め完全なフルメンバーが揃っている。
このチーム分けともなれば必然、駆と傑は別チームとなるのだが。
「───チーム分けの説明は以上だ。何か質問のある奴は?」
「質問いいですかー?」
「……蝦夷だったな。言ってみろ」
蝦夷 巧。駆の“記憶”では特待で飛鳥の所属する葉蔭へと進んでいた同い年のFW。
全中長野予選で三年連続の得点王という記録を残してる逸材だ。だが特待を蹴って通常の受験で鎌学へと入部したというのは一年の中では話題になっている。それもあって傑も名前を覚えていた。
傑の発言の後に手を挙げる蝦夷に、その質問を許可した。
「プレミアの三節に備えるって事なら、傑さんと駆くんは同じチームでやった方がいいんじゃないですか?」
「新一年の戦術理解度を兼ねてのチーム分けだ。ここで結果を出してくれればプレミア三節の試合に即座に組み込む事も考えている。その為にバランスのいい組み分けがこれなんだ。何か他にあるか?」
「……特にないでーす」
「
「!」
「そうだな、蝦夷の意見も取り入れよう。今回の試合形式は前後半20分のハーフ1分で行うつもりだ。前半は先に言った通りのチーム分け、後半からは学年関係無しでメンバーをシャッフルする。無限交代制と言っても、出場時間が短くて実力が発揮出来ない奴もいるだろうが……その辺りに関しては悪いけど、今後の練習期間で同様の事を試していく。その間のアピールは自由だ」
話は終わりだと言い、メインで出場する新一年組にビブスを配布していく。進学組以外の部員はどちらで出るのかは自由だ。ゴール前でチャンスという場面を除き、1分毎にボールを外に出す事で交代時間を与え、交代希望者が出場選手の中から指名してその人物との交代を行う。
そして、試合は始まり一分と数秒。
予定通り外へと蹴り出されたボールとホイッスルの合図で交代時間の知らせを行う。が、誰も交代しようとする者はいなかった。それだけ、たった1分で披露された攻防は衝撃的だった。
2分経過。また交代する者はいない。
3分が経過し、ここで漸く1人───蝦夷が2・3年生組で構成されたチームの2トップの片方を指名し、試合に入っていく。
様子見し、イメージし、試合について行けると判断しての交代。
事実その実力は疑う余地もなく、レベルの高い鎌学の動きにしっかりとついていけていた。
だが、開始して10分。
全体の動きには問題なくついていけても、要所でレベルの違いを痛感する。
「く……」
(このパス、追いつけない…! 裏抜けも出来てる、取れれば絶好のチャンスの位置だ! ワザと追いつけないパスを出されてる訳じゃないのに……ッ)
一歩足りない。
(多分、これが逢沢 傑の許容できる
「蝦夷」
「! ……はい」
「もう少し下げた方が良いか?」
「───いえ」
もう少しレベルを下げた方がいいか。或いはもう少しパススピードを下げた方が良いか。そういった類の質問だろうと正しく認識した蝦夷は、『そうして貰った方がボールを持てる時間が増えて自分の実力をアピール出来る』と揺らいだ思考を強く拳を握る事で掻き消し、否定する。
これで甘んじて受け入れてしまえば、世界基準から遠く離れてしまうと本能が察したから。
「そのままで、お願いします」
「……分かった」
傑は頷き、離れていく。
自信を粉々に砕かれた。惨めささえある。でも意地だけは貫き通す。
流石に入部してすぐベンチ入りは無理かと蝦夷は苦笑しつつ、今出来る全霊をこの試合に投じた。
「ベンチ入りは確定だな」
「はい」
当人に聞こえる事はないが───ボールを外に出して微かに生まれる時間の中で、鷹匠と傑は話していた。
「誰も入ろうとしない交代制の中で入ってくる度量と溶け込める戦術理解度。あくまでも世界基準を目指す姿勢。熊谷監督も納得すると思います」
「ああいうのは下手に県予選で経験させるよりも、最初からレベルが高いところとやれるプレミアを見せた方が良いからな」
培ってきたモノが通じない感覚。
世界を経験している傑のパスには追いつけず、先読みで佐伯に封殺され、高さでは鷹匠に圧倒され、溢れ玉への“嗅覚”でさえも駆に及ばない。
自らが鍛え上げた武器を悉く封じられ、それでもなお高い基準を決して下げようとしない意思を、傑は認めた。
スコアは動かないままメンバーをシャッフルする後半へ。
結局交代しようとする人は蝦夷を除いて存在しなかった為、後半からは自然とボールが出るまでは継続する形となった。
そうして始まった駆と傑のコンビネーションは、圧巻の一言だった。
下手したら蝦夷の時よりも厳しいとさえ思えるパスを難なく受け取り、瞬く間に2点を奪い取る。その後に三年の意地と言わんばかりに鷹匠も1点を返した。
あっという間の出来事だ。蝦夷から時間感覚はなくなり、ホイッスルが耳に届いた事で20分の経過を理解する。
ミーティングを終える。
部活動は終了の時間を迎え、着替えて帰宅しようとする蝦夷。
(……1点すら奪えなかった。自分の事をもう少し出来るFWだと思ってたけど、世界レベルが4人もいるチームじゃ凡骨に成り下がる)
世代別に選ばれた経験のある4人を思い浮かべながら、自分とのレベルの差を如実に噛み締める。
特に───
(同じ事が出来ると思い上がってたなぁ)
同種、似たFWだと思っていた駆との差を。
テクニックやフィジカルに大きな差はない筈だ。鎌学でやってきた経験を考えればチームの馴染み具合が違うのも当然。
だがそれを差し引いても、傑のキラーパスを受け取る技量とセカンドボールへの嗅覚は自分と一線を画した何かを感じさせた。
頭の中で今日の練習でダメだった点を反芻し、次に活かすためのイメトレを───と、帰宅しながら続けようとしたその時に、耳に届くボールを蹴る音。
今日40分の試合に出れなかった人達の居残りだろうかと興味本位でグラウンドを覗きに行けば、駆がシュート練習をしている姿。
ホイップキックに超速の振り。どういう順番でやってるかは不明だが使い分け、際どいコースを狙っている。時折ポストに弾かれれば即座に反応して詰め寄り枠内へと流し込んでいた。
練習内容自体は至ってシンプルで、自分の武器を磨き上げていると言える。だがその前に。
「……昨日もだけど、オーバーワークじゃないのかな」
部活動の練習だってそこまで軽いものじゃない。寧ろ強豪チームらしいハードトレーニングとも言える。中学から運動部だった人でさえヘロヘロになる程度には体力を削るだろう。
特に今回は試合形式で40分間出続けていた1人だ。にも関わらず居残り練習までするのは流石に許容できる練習量を超えているのではないかと蝦夷は疑問を抱いた。
「あれ、蝦夷くん?」
「あ、美島さん」
美島 奈々。U-20女子代表での練習を経て即座になでしこジャパンへと繰り上がった女子サッカー界を賑わせるアイドル的存在。幼馴染である駆や傑からはセブンの通称で呼ばれている。
中学から続けていたマネージャーは辞めてはいるが、鎌学に女子サッカー部は存在しない。故に放課後に時間があればサッカー部の方にも顔を出す。流石に練習に混じる様な事はしないが、そのサッカー知識や中学の頃にマネージャーをやっていた事もあり、熊谷監督からは歓迎されている。
本日もサッカー部の方に顔を出していて、マネージャーの手伝いをしていた。
「……駆が気になる?」
「え?」
「似た様なプレースタイルだし、特別ライバル視してたりするのかなって」
「あはは、U-17世界大会の得点王をライバル視なんてそんなに思い上がってないよー。……差は痛感したけど。それよりも、幾ら世代別代表がない期間とはいえオーバーワークじゃないかと思って。覗いたのは偶然」
「ああ、なるほど」
セブンはバッグの中からiPadを取り出し、スワイプしてタップ。
何かしらのアプリを開いたのだろうと蝦夷が推測し突然どうしたのかと疑問を抱くと、ロードを待つ目的で操作せずにiPadを持ちつつ、質問する。
「蝦夷くんはGPSベストって知ってる?」
「GPS……ベスト?」
「最近プロの選手がユニフォームの下に着けるようになった、大胸筋サポーターみたいなの」
「あれってGPSなんだ。……そっか、最近の試合中の走行距離が明確になったりしてたのってそれが影響してるのか」
「そう。心拍データとかスプリントを数値化して見る事が出来る。それでこの中に駆の試合中のデータと、現在更新中のデータがあって……はい」
大きなブレのないグラフ。綺麗な並びで山なりを作っており、つまるところ平穏な心拍状態で練習を続けている事が表示されている。
次に目に映るのは現在も少しずつ更新を続けている数値。走行距離だ。約8kmと表示されており、高校サッカーの平均である走行距離へと届いていた、が。
試合中のデータ。恐らく今までの試合の中で最も高い数値を保存しているそこに表示された数値は驚愕の12.5km。これはプロサッカー選手の中でもかなり走っている数値だ。
蝦夷もU-17W杯の映像は観ていて駆が前衛守備に走るタイプというのは知っている。しかし自身が覚えている限りではここまで走っている記憶はない。
本当に試合中なのだろうかと疑問の眼差しを向ければ、セブンは察した様に笑いながら告げる。
「蝦夷くん、今「そんなに走ってたか?」って思ったでしょ」
「えーと……うん」
「前衛守備に走るタイプだけど、確かにそれだけならここまでいかないよ。でも駆はそれよりも、味方がボールを保持している時のオフ・ザ・ボールの動きが凄く多い」
「オフ・ザ・ボール……」
「傑さんがボールホルダーならどんな抜け出しでも視てくれるけど、現実問題としてチャンスメイカー全員が完璧なタイミングで出せるとは限らない。だから味方がどんなパサーだったとしても、相手の視界から消える動きを繰り返してパスを出すタイミングを何度も作り出してる。特に相方が鷹匠さんなら最前線で張ってくれて、コート前線を目一杯使えるからね」
オフ・ザ・ボールの動きは蝦夷もかなりしている方だ。だが走行距離にそれだけの影響が出るほど幅いっぱいに動く事は少ない。何故なら自分が点を取るためには最前列にいるのが一番の近道で、FWとして当然と認識しているから。
「まあ要は、駆としては毎回これが出来る程度の強度は確保しておきたいんだよ。休む時は休むけど、練習日は必要なスタミナを減らさない様にしてる」
「鎌学の練習でも足りないのか」
「そうだね。鎌学の練習も決してレベルが低いわけじゃないけど、駆にとっての基準はプロ。オーバーワークにならない様にはしても、着実にレベルアップできる様に。後はスポーツ栄養士の人から摂るべき食事の献立を作ってもらったりとか───ってその辺はいいか。だからまあ、オーバーワークにならない程度に管理してるから大丈夫ってこと」
「へぇ……ってうわー、たっか」
「……? あ、GPSベスト? FIFA公認のは凄く高いよ*2。駆の場合は怪我の一件でスポンサーから試運転も兼ねて補償してもらってるから、譲り受けてるみたいな形だけど」
「あはは、すごい世界を観てる気分だ」
中学の県予選で得点王を取って葉蔭というサッカー強豪高校の特待を貰っていたのが小さく思えてくるほどに、スケールが違っていた。
「……ん? なんでそれ美島さんが確認出来るの?」
「え? 複数台の接続が可能だから一応登録してるからだけど」
「いや、出来るとしても他人の身体機能の管理はちょっと重いかなって」
「そ、そうかな」
「ひょっとして……」
「………」
「───いや、どうでもいっか。オレには関係ない事だし」
「そ、そっか」
「ところで〜、美島さんがなでしこジャパンのスポンサーから受けれる恩恵に足装着タイプのGPSトラッカーってあったりするかな?」
「……後で確認しとくね?」
「いやー、凄くて優しい人が同級生にいるなんてオレってラッキーだなぁ!」
感性の違いからか、割と当然の様に駆の心拍を確認していたが、他人から見ると結構重いしそこから察せられるのか。墓穴を掘ってしまったとセブンは冷や汗を垂らして流し目に苦笑する。
機嫌良さそうにグラウンドに背を向けて帰宅していく蝦夷を見送り、セブンは駆の所へと寄って行った。
「……なんか機嫌悪くない? セブン」
「今日は夜の練習やめて海外サッカー観よっか、駆」
「え? うん、それで大丈夫だけど。……?」
「実況はスペイン語のみで語学も兼ねて」
「そうだね。レアルの練習参加で困らない程度には聴き取れるようになっておかないと」
「ベッドで一緒に寝っ転がってくっついて」
「う───んッ……!?」
「───という事で、再来週から始まる県予選に向けての合宿を1泊2日で行う事を頭に入れておいて下さい」
グラウンドの端で行われるミーティング。
ホワイトボードを用いて説明を行う男性───江ノ島高校サッカー部監督、岩城 鉄平はそこまで話をすると、周りと話し合ってる江ノ島サッカー部員達を数秒眺めた後に真剣な眼差しへと変わる。
「そして、次に話す内容が重要になります。ブロック予選が終わった一週間後、5月の下旬に差し掛かる日に、鎌学との練習試合を組む事が出来ました」
「……ま、マジっすか?」
「ええ、マジです。向こうは翌日にプレミアの第7節が控えているので、出来るのは30分ハーフの前後半1試合のみという内容ではありますし……何より、U-20の国際試合に傑くんと鷹匠くんが呼ばれているというのもあって、フルメンバーではありません。その条件で良ければとの事です」
鎌学から傑と鷹匠の2人がU-20に呼ばれているというのは前々から出ていた話だ。総体の期間中に代表選手が出ている事と、前回の総体及び選手権優勝校というのが重なり、今回の鎌学は神奈川県予選のスーパーシード*3に選ばれていて二次予選準々決勝。つまり県内ベスト8が確定してる状態からのスタートになっている。
だがそれを除いても、毎週行われるプレミアリーグで他校同様、下手したらそれ以上に疲れを抱えているチームと言ってもいい。そんな中で組んでもらう練習試合。同県内で勝ち上がれば戦う事になるとしても、江ノ島からしたら有難い話である。
「グラウンドは向こうの芝のピッチを借りて出来ることになっています。現状プレミアで全勝しているチームと戦えるのは貴重ですので、今の我々の精一杯をぶつける事にしましょう」
「あの逢沢 傑と鷹匠 瑛が抜けた鎌学なら、割と勝てそうなんじゃ……!」
「少なくとも、彼らがいないから勝てると思い上がっている内は負けは濃厚になるでしょう」
「うぇ」
「我々もまた、一年生を迎えて新たな江ノ島へと生まれ変わったばかりのチームです。誰々がいないからと考えていてはダメな余裕が生まれてしまう。大事なのは心待ちです。私達が戦うのは常勝強豪校、鎌倉学館であるという事をしっかり意識して下さい」
勝てそうだから勝つではなく、勝ちにいって勝つ。胸を借りて全力で勝ちましょう───と、そう締め括りミーティングを終えた。
そうして二週間後。江ノ島高校は無事二、三回戦を快勝で突破してブロック決勝へ。ブロック決勝で当たった辻堂学園の特殊な戦術───ロングスローによる速攻───に苦戦させられるも、勝利して二次予選へと駒を進めた。
それから約一週間後。江ノ島高校は鎌倉学館との練習試合の日を迎える。