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>> おそらく偶然とはいえ出てる名前ありオリキャラのモデルが○ロースと○ルトワと、揃って畜生なのなんかおもろい
→サッカー選手で畜生じゃない方が珍しいのでは?(ド偏見)
>> さすがにないだろうけれど。傑が後方腕組お兄さんしながら毎回有能変態紳士の動画見て駆の活躍確認してたら笑う。
→有能変態紳士ニキの動画は観てないけど、『城之内 健吾』という記者は駆と傑の認知の上で活動してます。プライベートな事には首を突っ込まず、テレビ放送のない試合があった際は現地映像を監督経由で渡しているので、スレには居ないけど城之内からの提供で動画は観ています。あくまでも撮影可脳なものだけですが。
17話『分岐』にて傑と駆のやり取りに使われていたU-15 東アジアサッカー交流会の映像がそれだったりします。
イラク戦では采配ミスが目立ちましたが、一先ず日本代表のアジアカップ決勝トーナメント進出にほっとしました。
コンディション不良だったり代表経験の不足が目立つ選手も居ますが、中六日という長期の休みと練習で慣れてもらえればと思います。納豆みたいな芝にも。
1月の間に2話以上の投稿と言いました。嘘じゃないです……嘘じゃ、ないです……ギリ、ギリ1月内なので……。
正月って凄いダラけてしまいますね。時間あるからとシナリオゲーに没頭してしまいました。
何とか時間確保して月に1話は投稿出来る様にしますので、今後とも宜しくお願いします。
「はっ、はっ……ぁ〜……」
───練習生を交えたレアル・マドリードの公開練習、三日目。
紅白戦を経てトップレベルの圧に向かい合った影響か、初日に比べて走り込みでの体力の消耗は軽減された様に感じる。
決して走法や距離・ペースを変えたわけでは無いが、精神的な余裕が駆には確かに存在していた。
続くシュート練習。キーパーが駆のやり方に慣れてきた為、二日目の様な百発百中の決定力は発揮出来なかった。
二日目の時ほど綺麗な落としではなかったのも理由の一つだが、淀みなく打てたシュートにさえ反応されたので、間違いなく慣れの影響は存在するだろう。
そして鳥籠を経て、三日目の紅白戦。
初日と同様に、先ずは既にレアルへと所属している選手達で構成されたチームの紅白戦。
「『ヴィニ、今日から最終日までの課題だが───』」
試合が進んでいる最中に、練習生として呼ばれた選手達にギダンから声が掛かる。これは昨日までの二日間では決して行われなかった事だ。
課題。四六時中スペイン語が流れる現地にて聴き慣れ始めた耳が捉えたその言葉を認識し、一人一人に提示される条件から、レアル・マドリードの選手として磨いてほしい所をこの二日間で編み出したと駆は察した。
「『シルバ、君には日によって条件を変えるが、今日の紅白戦2回を通して10回のドリブルチャレンジを要求する。ああ、成功と失敗の是非は問わないがね』」
「『……了解した』」
前半後半は無く、20×3でそれぞれが2戦出れる様にしている紅白戦。当然普段よりも出来るプレーの幅は限られる。
初日は4回チャレンジの3回成功、二日目は6回チャレンジの4回成功。これがレアル・マドリードにて発揮されたレオのドリブルの全てだ。
成功する確率の高いタイミングを見極めた上での仕掛けた回数。だが君はもっとやれるだろうと言わんばかりに10回を最低条件に位置付けたギダンに、レオは苦笑しつつ了承する。
「『カケル、君には先に質問だ』」
「『はい』」
「『嗅覚の言語化は可能かな?』」
「『視界内に捉えたボールの動き。回転数、浮き上がりの上昇。それとキーパーの動きによる弾きの方向やゴールポストに当たった場合が瞬時に頭の中で処理されて、導き出された立ち位置……と解釈しています』」
「『オーケー、君なりに言語化が出来ているならばそれで良い。ではそれを磨こう』」
「『……ええと』」
それが駆個人に課せられたものである、とは理解出来る。だが具体的にどうするべきかと悩んでいると、ギダンは続きを紡いだ。
「『君は今回、“嗅覚”で感じ取るよりも早く動く事を意識するんだ』」
「『嗅覚よりも早く……?』」
「『感覚的な話だからね、難しいとは思う。具体的に言うのなら……味方がミドルシュートを放つよりも早く、セカンドボールへの動き出しを始めてくれ。今回は合わせでフルトワと……3戦目の相手キーパーとなるエパには、それぞれキャッチングの禁止を提示するから、弾きの予測に集中できるだろう』」
駆は自分なりに“嗅覚”の言語化を出来ていた。それを経て出した結論は『どこを見るか』である。
ボールの回転や威力から推進先を導き出し、キーパーの力みから弾きの方向を予測する。とはいえそこまで厳密な組み立てを試合中に考えて結論が間に合うはずもない。
だから駆はそれを本能的に割り出しており、それが“嗅覚”であると解釈した。故に下手に思考を挟む事を意識的に避けて、ボールの位置とキーパーの立ち位置を視るタイミングを計る事で、“嗅覚”を必然に発揮させている。
しかし、“嗅覚”よりも早く判断をする。己の本能的行動を磨くという、思いもしなかった課題を提示されて駆は戸惑う。
「……」
「『言われていきなり行うのも難しいだろう。別に制限を掛ける訳ではない。プレー自体は普段通りで構わない。あくまでも意識する事が重要だ。ただ……暫くすれば、私がこの課題を君に提示した理由が分かる筈だ』」
了承の意を示すために頷く。
駆が認識した言葉が正しければ、『自由にやって良い、課題は意識するだけ』が結論だ。
(マンマークされた場合の対応? いや、それだと『嗅覚を磨く』っていう意味がない。暫くすれば分かる、か……)
この二日間、駆は紅白戦にてトータル4得点を獲得した。20分が一戦となる紅白戦で出場した4戦各1得点ずつの計算であり、これは今回の公開練習に於けるトップタイの記録だ。
ただ、先日までは駆に対してのマンマークが行われていなかった。その中で見出せていたチャンスを確実に沈めていたからこその4得点。これからは厳しくマークされるという宣告だろうかと、駆は思う。
だがそれは即座に否定。“嗅覚”はボールの最終地点を読む能力。マンマークで追いかけられれば、前提を早めたところで意味がない。
暫くすれば分かる。その言葉の解釈を広げて、ギダンが言外に伝えている事を読み解いていく。
(普段の感覚をそのまま続けていれば分かる、って事か。最初からやる事を強制しないなら、寧ろ分かるまでは続けた方がいいのかな)
そう判断し、本日の第1戦が終了した後に指定されたポジションに移動する。
「『フルトワ、次に指示を出すまで紅白戦ではキャッチング禁止な』」
「『おいおい、フットボールは定位置についてくれるパンチングマシーンじゃないんだぜ?』」
「『君のキャッチングセンスは世界一だが、弾きには不安を覚える部分が見られるからな。どう弾くか、それを君への課題としよう』」
「『まったく、それが無くとも世界一のキーパーだってのに随分と欲張りだ。オーケー、ギダン。貴方が次元の違う世界一を求めるならそれに応えよう』」
どうやら本当にキャッチングは禁止らしい。次の駆の相手キーパーを務める事になる選手へと続いて近付くギダンの背中を見送りながら、駆は思考する。
(……“結果”を求めるなら、下手に遠慮するのもダメだ。僕に対して『意識する』と言い、フルトワさんには『禁止する』っていうのは、間違いなく意図的に言葉を使い分けてる。課題の意味が分かるまでは、痛い所を突かせてもらおう)
そして始まる第二戦。
レオが早速ドリブルで仕掛けているのをフォローしつつ、レアルのサッカーへと溶け込んでいく。目立たない様に、あくまでもポゼッションに参加する一人だと認識させる様に。
やがてエリア外から放たれるシュート。コントロール重視で威力は低く、ラ・リーガ1部のキーパーともなれば余裕で届く。だがキーパーには弾きのみという縛りが課せられており、必然的に外へと追い出すか味方がいる場所へと弾くかの選択が迫られる。
普段の感覚で動いた為に、ボールは掌へと吸い込まれていった。指先を使った方がコントロールし易い為、一度キャッチングの判断を頭に過らせると咄嗟の修正が必要となる。
外に弾くには手の位置が微妙。味方がいる方向へと咄嗟に弾き───
「……ッ!」
当然、それを駆が見逃す筈がない。
混戦状態の中から最終地点を読んで飛び出した駆は、ボールが弾いた方向にいる相手DFの前に飛び込みボールをコントロール。ファーストタッチで完璧に体勢を整え、そのままゴールへと流し込んだ。
やり辛いと言わんばかりに口をへの字に曲げているフルトワの表情を視界の端に捉えつつ、駆はリスタートに備えて自陣へと戻っていく。
(体感してから改めて考えると、やっぱり“嗅覚”で感じ取るよりも早く……っていうのは難しいな。理屈を言語化してるだけで、結局は本能的な行動だし)
試合は再開。数分の間レギュラー陣のポゼッションで保有されたものの、ボールを奪って攻撃へと移る。
(味方がミドルシュートを放つよりも早くセカンドボールへの動き出しを始める……折角ギダン監督が具体的に提示してくれたんだ。試してみよう)
駆はポストプレーの体勢に入りながらパスを要求。グラウンダーで迫るボールを一瞬だけ視界に捉えてゴール方向へと顔を向けながらバックステップ。
背面トラップで受け取る。前日までの2日間で披露したのは1度だけで、まだ対処法を思いついていないのだろう。駆のマークに着いていたDFはファーストタッチで躱される事を警戒して間を空けている。そうなれば遠慮なくボールキープするだけだ。
脚にボールの衝撃を感じながら視野は前に。セカンドタッチでボールを横にずらしてパス体勢。淀みなく行われた動作にDFは対応が間に合わず、ダイアゴナルで走り込んできた右ウィングの選手にボールが渡る。
直後、駆は左脚の加速を使って即座にゴール前へと走っていく。右ウィングの選手はミドル体勢に入っていた。
(これはもう勘で判断するしか───)
ギダンが具体的に提示した『シュートを放つよりも早く』を実践。
だが。
「っ、逆……!」
左サイドに流れると予想し走り込むも、シュートコースは右。キーパーの弾きも当然その方向となり、ボールはサイドへと流れ味方の右SBが確保する。
(やっぱ普段の感覚じゃないとダメだな……シュートした瞬間こっちじゃないって分かった。これでどう嗅覚を磨けば……、……シュートした瞬間?)
SBがそのまま持ち運び、クロス体勢に入るのを確認。思考を遮断。ゴール前に集まる選手の位置を把握して、ボールが蹴られた瞬間の“嗅覚”に身を任せる。
高いボール、恐らく混雑とした状況を避ける為のクロス。ペナルティ・エリア内の左端に送られるボールをトラップしてシュート体勢。
(はや───いや、
DFがシュートブロックに入り込む。だが体は勢いに流れており、踏み込んで止まるのは不可能と直感的に把握。
ホイップキックの振りを溜めて、シュートブロックが過ぎるのを待つ。開いた脚の間を狙い放たれるシュートはゴールへと向かい、軌道変更されたコースに反応されるものの、弾き損ねたボールはラインを超えてゴール判定となる。
(……“嗅覚”を使うんじゃなくて、利用する……事も出来るのか。でもそれは『嗅覚を磨けたら』の話だ。『嗅覚を磨く方法』はまた別)
一息吐き、リスタートの為に移動しながら、遮断した思考を再開する。
駆は今まで“嗅覚”に身を任せてボールの行き先へと移動していた。しかし“嗅覚”よりも早くセカンドボールに対応しようとして位置が違うと認識した事で、マンマークに付かれた際に「わざと感じ取った地点と違う位置へ移動する事も出来る」と理解した。
でもそれは嗅覚を磨けた場合のメリット。結局は嗅覚を磨く方法が思いつかないとメリットだけ理解しても意味がない。
幸い今はキーパーにキャッチング禁止という縛りがあるが、普通はそんなものなど無い。ギダンの気紛れでキャッチング禁止は無くなるし、仮に練習生のいる公開練習最終日まで伸びたところで猶予は本日を合わせて四日のみ。
(実践して気付けた事もある。“嗅覚”よりも早く動ける余地があればそれを試して、普段の感覚でしか追いつかないなら身を任せよう。お手本に出来る選手がいない以上は磨く方法を手探りで探していくしかない)
改めて、方針を決める。
そうして進んでいく試合。広いコートでポゼッションをしようと思えば直ぐに終わってしまうような20分という短い時間の中で懸命に走り続ける。
練習生が各々、提示された課題へと挑戦。駆の決めた2得点をあっさりと返されて得点は並び、終了間際。レオがこの試合のラストプレーとなるドリブルを仕掛けに行った。
まだ若き中盤に、世界に名を轟かせるCB。いずれにせよ『レアル・マドリードが認める逸材』を二人躱してペナルティ・エリアの僅か外。
レオの死角から脚を出してドリブルを阻止。明確にボールに触っているので、ボール越しに引っ掛かり倒されるもレオのファールは無し。
これをクリアすればアディショナル・タイムがない以上は笛がなる。だが転がっていくボールの先には、駆が居た。
「────!」
極限まで高まった集中が、視界に真っ白な世界を映す。啓示が舞い降りたように見えた光の線は、交錯して倒れたレオとDFの上を通すように示されている。
それに従い放たれたシュートは、反応こそされても触れる事は叶わずにネットを突き刺した。
そして、笛が鳴り響く。
「……キーパーに縛りがあるとは言え、ハットトリックは流石だネ。駆」
「あはは……1点目はファーストプレーで迷いがあったと思うから、かなり隙を突いた様なゴールだけど」
世界最高峰のGKを相手にハットトリック。初日の
嬉しくはあるが素直に喜んでいいのか苦笑しつつレオに返事。
続く三戦目───駆個人としては本日二戦目になる紅白戦。5分の休憩の後にスタート。
休憩を挟んでいても駆の集中力は途切れていない。“課題”に向き合う必要はあるが、【
本能に身を任せ、スリーズのフィードパスに反応して抜け出す。ファーストタッチで完璧にボールを収めている。絶好調の駆には再び真っ白な空間が視えていた。
視界内に存在するDFブロックもキーパーも阻む事の出来ない道標に躊躇いなく脚を振るい。
「……っ!?」
後ろから差し出された脚に打ったボールが弾かれ、駆は驚愕の表情を溢す。
(【
だが、と。その時とは明確に違う感覚を頭の中で言語化する。
(ゼッケンドルフの時とは違って
より厳密に解析すると、U-17W杯でゼッケンドルフが駆を止めた時は、彼自身が極限の集中状態にあったからだ。気分の高揚や身体の好調具合などが最高潮に達しており、故にこそ追いついて
しかし、今のDFはそこまでの集中力は見えない。集中していない訳ではないが、あくまでもフラットな表情で淡々といつも通りの様に止めてきた感覚。
もちろん駆視点からの判断でしかないので内情は緊迫している可能性はある。だが。
(……視界内から意図的に外れてた、と思う。そこしかないと【
少なくとも、【
駆はこれまでよりも周りを意識して視野を広げる必要が出る。それは同時にゴールへの集中力を欠くことになり、100%のシュートコースを見出す事が出来なくなる。
もちろんこれがタダの偶然だと割り切って調子を維持する事も可能だろうが───
(あ……しまった、考え過ぎた)
好調を維持するには成功体験の連続、或いは高揚した夢中が必須になる。『止められた事』を考え過ぎてしまえばネガティブな意識が芽生えてしまい集中力が欠けるのは当然。
駆は大きく息を吸う。恐らく今日はもう真っ白な空間を目に映す事は出来ないだろう。確証はないが感覚的に理解する。
絶好調の逢沢 駆を見せる事が出来ない以上は課題に向き合うしかない。
DFの弾いたボールはラインを割っており、コーナーキックからリスタートとなる。
スリーズの放ったコーナーはニアサイドに落ちるボール。駆はそれを見て、広くスペースのあるファーサイドへと移動した。
味方がヘディングで競りにいくがDFとの接触により当たり損ねる。ミートしなかったボールは跳ねる様に流れ。
「……!」
そこには駆がいる。強い流れ弾をトラップでコントロールして、ニアサイドを警戒してキーパーが空けているファーサイドへと流し込もうと左脚を張り被り。
(っ、また!?)
先ほど【
(マンマークでコミットしてたなら分かるけど、競り合いの近くにいて直ぐにブロックに来れるような位置じゃなかった筈。“嗅覚”でボールの位置が分かってる僕なら兎も角───……ぁ)
暫くすれば分かる。
駆に課題を提示した時のギダンの言葉を思い出し、その意味を理解した。
(DF故の嗅覚……トラップの隙か……!)
駆の“嗅覚”はボールの最終地点を予測する事が出来る。だが当然、“移動”というのは必須だ。強いボールが流れてくればトラップでボールを落ち着かせる必要があるし、自分の地点とボールの転がる方向からして体勢を整える場面も出てくるだろう。
ダイレクトで打てない可能性が高い。それが“嗅覚”の隙。
とはいえ普通はそんなもの、隙と呼べる程の隙にはならない。駆はボールコントロールの技術こそ秀でている訳ではないが、即座にシュートを放つトラップは出来る。
でもプロには、世界最高峰のクラブのDFには、FWとは別の視点からボールの最終地点を予測する能力を保有する選手がいる。マンマークしてないにも関わらず駆の予測を封殺するという事は即ち、“嗅覚”と同等の予知能力を持っているということに他ならない。
もし“嗅覚”を磨き、『最終地点を読んで移動』ではなく『最終地点にいる』という状態を作れるのならば、トラップの必要すらなくダイレクトで打てるし、仮に追いつかれても何を選択するか思考する余裕が出来る。
同等の予知能力を有している以上、選択肢の多い方が有利なのは明白。今回の場合、DFは経験の多さから駆が何を選択するかの予測さえもしており、軍配は其方にあがる。
(……ギダン監督が僕に“課題”を出した時の言葉。僕が思ってるより、遥かに多くの意味が込められてるんだろうな)
「『おい、
「……!『はい、ラトスさん』」
本日最後の紅白戦で、駆の2度のシュートを妨げたDF───【潰し屋】と名高き世界最高峰DFの一人であるラトスに話し掛けられ、思考を止めて返事。
サイドラインを割ったボールを追い掛けてスローインでリスタートをしようとするSB。紅白戦の最中だ、そこまで時間を掛けるつもりはないだろう。
「『手短にいこう。
態度から「質問は受け付けない」と表れている。
先程まで思考していたギダンの言葉の意味の一つだろう。彼の独断か指示を受けたのかは分からないが、もしギダンの指示であれば、課題を出してきた今日というタイミングでわざわざ難易度の提示をしてくるのは初日・二日目、及び本日のハットトリックという結果からして『駆の能力は現状維持でも充分に通じる。途中からは通じなくなるだろうが、課題を熟せば通じ続ける事も出来るだろう』という意図だ。
だがギダンはあくまでも「意識する様に」という言葉で留めている。それは即ち、「どう選択するかは君に任せる」という意味に他ならない。
最初だけ通じる様な短命な選手となるか、長期的に活躍する選手となるか。
どうするかなど、考える必要もない。
「『
「『いいね、生意気なのはオレ好みだ。本番想定で行くとしよう』」
強気な笑みを浮かべて即答する駆に、彼も同じく笑みを浮かべた。
───スローインから再開したボールは一度DFまで戻される。試合は20分のみだ。後ろで回し続けるつもりはなく、縦パスが鋭く入る。
それと同時に、駆はオフサイドラインギリギリの位置からバックステップを一つ。DFから離れる素振りを見せ、重心が駆の方へと向くと同時にバックステップした方向とは逆へと加速する。
オフサイドラインを越えるよりも早く蹴り出されたフィードパスはDFの頭上を超えて、完璧なラインブレイクで駆はボールを受け取った。
場所はペナルティ・エリアの僅か外。エリア内まで侵入するのが定石ではあるが、今までのゲームスピードを考えれば追いつかれてシュートブロックされるという確信がある。
淀みなく体勢を整えて脚を張り被り。
「────ッ!!?」
背中に悪寒を感じ、脚を止めて膝を竦める。それと同時に振っていた脚へと衝撃が走った。
(躊躇いなく脚に───っ)
振りかぶった脚を完全に脱力させ、軸足を地面から離す。宙を舞う駆は咄嗟に受け身の体勢を取り、そのまま地面へと落ちた。
「駆っ!?」
「『おいラトス、激しく行き過ぎだ! 紅白戦というのを忘れるな!』」
短く、そして鋭く笛が鳴り、ファールによる試合の停止と審判を務めるコーチの言葉がコート内に響く。
寄ってくるレオに「怪我はしてないから大丈夫」と返しつつ手を借りて立ち上がりながら、駆は思考した。
(……わざとだ。多分止めようと思えば抜け出しの阻止すら出来ただろうに、
その証拠に、ラトスは駆の脚にスライディングで突っ込んだ際、見せていたスパイクの裏を引っ込めていた。接触したのは彼の脛と駆の横膝であり、駆がしっかり受け身の体勢を取れていれば怪我を負いにくい削り方。
いざという時にファール覚悟で止めに来る選手というのは今までにも存在していたが、ここまで露骨に削ろうとしてきたのはU-17交流会でのスウェーデン以外では経験した事がない。
「『さて、オレはお望みのものを披露しただけだ。まあ最初はお試しとして捉えて貰っても構わない。そこのアジア人の判断次第───』」
「『そのまま』」
調子に乗った判断であったと言うのであれば変えても構わない、と。そんな言葉を遮り、駆は強い視線を向けながら告げる。
「『そのままお願いします』」
「『……オーケー、ギダンが期待する新星を壊さない様に細心の注意を払った上でのプレーだ。オレも怒られ続けるのは嫌なんでね』」
「……」
裏を返せば、「絶対に怪我させないで駆を止め切る事が可能」であるという事だ。実際今回の露骨なファールを抜きにした2回のDFブロックでは、“嗅覚”への対処と【
深く息を吐き、主審をしているコーチに「止めてすみません」と声を掛けつつフリーキックでのポジション位置へと着く。
(残り10分……普通の試合より短い分、意図的に後ろで回し続けるのを避けてるからチャンスは多いけど、それでもゴールに迫れるのは良くて3回かな)
各々に提示された課題の事を考えれば、これから最終日までの紅白戦の最中に得れるチャンスはそう多くない。
(───追い込め。『嗅覚を磨かざるを得ない状況』に自分を追い込んで、少ないチャンスの質を高めていけ)
折角の世界最高峰のクラブの練習。全力で当たってくれるならば望むところ。
別に自国でトップの選手だからと呼ばれた訳ではない。プライドよりも挑戦意欲の方が遥かに高い。
(……不思議だ。レアル・マドリード相手に得点という結果を残せていた今までよりも、身体が昂っている感覚がある)
浮かべる笑みは獰猛に、目は鋭く。無意識に、本能的に浮かべるそれは、野生の獣の表情だった。
───もちろん、自分を追い詰めているからといって上手くいく筈がない。
その後に駆が“嗅覚”でボールを拾おうとも、完璧に抜け出そうとも、悉くをラトスに封殺される。激しいチャージではあってもファールにならないレベルのプレーで駆を抑え、第3戦はスコアレスのまま残り1分を切った。
(“嗅覚”よりも早く動き出して、
本日の第二戦、第三戦を通して【課題】を意識して動いた数々を思い出しながら思考する。
(偶然の経験を重ねて、拾えた時の感覚を染み付かせる……? 嗅覚を磨くって、本当にそれで良いのかな)
大きく間違ってはいないだろう。偶然拾えた時の理由を言語化する事が出来れば、確かな備えとなって一つの嗅覚という形で成立させる事は出来る筈だ。
だが。
(違う、気がする。それは“僕の嗅覚”じゃない)
度重なる経験が積み上げた“嗅覚”も、ストライカーとしての一つの武器なのだろう。だが駆の本能が見出す“嗅覚”のそれとは別種だ。
駆なりの言語化が出来ているなら───と、ギダンは言った。ならば“駆の嗅覚”を磨く方法が必ずある筈だ。それはきっと経験の積み重ねではない。
(レオ……課題の数は熟した筈だけどドリブルで行く気だ)
恐らくラストプレーになる。そんな場面での仕掛けはレオらしいといえばらしい。
駆はオフ・ザ・ボールで動きながら視界の情報を捌く。ラトスの位置、レオのドリブルスペース、キーパーの動き。
(多分、シュートまで───)
持っていける、と。そう確信して駆は動き出す。
「────」
レオは自らシュートまで持っていったが、キーパーにコースを読まれて弾かれる。勢いからしてサイドラインを割るだろう。
だがそこには、駆がいた。
(今……)
「打て、駆!」
「……!」
ファーストタッチでシュート体勢を作る。今までと同じ行動だが、明確に違う点が一つ。
ラトスが追いついていなかった。トラップする際にラトスを見て、何処に置けば彼が追いつかないかを判断する余裕があったからだ。
今までと同じ“嗅覚”の感覚───にも関わらず、今までよりも早く、今までよりも余裕があった。
その余裕が余計な思考を生んでしまい、駆にはシュートまでの間に僅かな淀みが出来る。
レオの声に反射して振るった左脚から放たれるシュートはキーパーに反応され、パンチングによって弾かれたボールがクロスバーを超えてしまう。
コーナーキック……と、コーナーフラッグに視線が向かうが、同時に笛が響いて紅白戦の終了を告げられる。
「……、……」
短く呼吸を繰り返し、身体の火照りを感じる中で思考を続ける。
(今のは明らかに“嗅覚”の感覚だったのに、今までよりも早く最終地点に
経験が急激に本能へと昇華された、なんて事はないだろう。急に出来た理由は必ず存在する。
(【課題】を意識した上でレオのシュート時のセカンドボールへと反応したのは初めてだったけど……レオだったから、じゃ理由としては弱い。レオと他の選手とで違う部分……他の選手よりも、レオのプレースタイルは実感して知っている。……そうだ、知ってる。事前知識が違う)
駆の今までの“嗅覚”は、簡単に言えば視界内の行動の予測だ。思考では追いつかないボールの回転や当たる角度なんかを無意識に計算するからこそ、単純な予測とは別種の“嗅覚”という言葉に変えられる。
もし事前知識があれば。つまり、
「……ぁ」
分かった、言語化が出来た。
だが笛が鳴ったのを意識する。紅白戦は終わりだ。言語化して理解が及んでも実践が出来ない。呼吸を繰り返しながら、視線をギダンへと向ける。
「『あの』」
「『ダメだ』」
もう少し伸ばす事は出来ないか。そんな気持ちを込めて話し掛けるが、それを予想していたかの様にギダンは即答する。
「『次のプレーで決められる。君がそう思おうとも、試合は笛が鳴れば終わりだ。正当な判断を下した審判に、君は自分の我儘で続けろと言うのか?』」
「……」
「『練習だからと、言いたい気持ちは分かるがね』」
あくまでも練習は本番の為。練習だからといって「まだ引き伸ばせる」という感覚を染み付かせてしまえば、いざ本番の時に後回しにする癖がついてしまう可能性がある。メリハリは大事だ。
ギダンの言う事は極めて正しい。ここで続けて欲しいのは駆の我儘でしかなく、仮に続けて怪我人でも出せば駆の責任となるだろう。
「『今の君がすべき事は、思い至った答えが正しいかどうかの振り返りだ』」
「『振り返り、ですか?』」
「『ああ。一回だけの成功は偶然である可能性が捨てきれない。だから強くイメージを反芻するんだ。そして「もしこの時にこうしていれば」という気持ちを強くしてこい』」
たらればを言えばキリがない。『もし』はifに過ぎないと良く言われる事ではあるが、ギダンはそうは思わない。
「『もしもの出来事を後悔にするのではなく、
ギダンは言葉を止め、一息溜めを作る。
これが駆だけへの言葉ではないと伝える様に周りを見渡しながら、紡ぐ。
「『だからこそ、それを出来る選手は輝ける。あくまでも持論だがね』」
後悔で止めず、強い欲求へと変換してこい。
たらればに対しての向き合い方の一つ。強い欲求による空回りという事もあり得るだろう。だからこそ、ギダンはそれを飼い慣らす事が難しいと言った。
だがギダンの瞳は、「君達なら出来る」と訴えかけている様に見える。
その強い眼を近くから見た駆は、言葉を頭の中で繰り返しながらコクリと頷いた。
───とは言え。
不完全燃焼、
また、ギダンの示す言葉は本番想定である場合である。
「『カケル、フルトワがキーパー練習に付き合って欲しいそうだが……どうする?』」
「『お願いします!』」
時間制限のない自主練習に関しては話が別だ。
スリーズから掛けられた提案に、駆は即答でイエスの返事を返した。
一応次回でレアル・マドリード練習生編は終わる予定。
その後は幕間かスレ回にして、選手権の話へと移行します。じっくりと試合描写をするのは1試合だけのつもりなので、そこまで長くはならないと思われますが。