ピッチの王様とエリアの騎士   作:現魅 永純

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 アジアカップは……はい、采配ミス以外に言う事がありせませんでした。なんでよりによって地上波放送の二つともあんな試合運びになったかな……。W杯予選では切り替えて欲しいですね。
 タケのCL決勝トーナメント初試合は残念ながら敗戦となりましたが、個人としては失点シーンのミスはあっても非常にキレッキレだったのでこれからに期待。契約延長ブーストを2ndレグのホーム試合で爆発させて欲しいところです。



39話『観察』

 

 

 

 

 トップアスリートに他の競技をやらせても、未経験とは思えない実力を発揮する事例が多く存在する。

 その一つの起因として、『眼が良い』という事が挙げられる。偏に眼が良いといっても内容は様々だ。視野が広い。動体視力が高い。純粋に遠くまで鮮明に捉える視力の高さ。空間認識能力。

 これらは全て別種の『眼の良さ』であり、一つ優れているからと言って他も優れているとは限らない。

 

 例えば視野が広くとも空間認識能力が高くない可能性がある。視界の内に入ってはいても、視界内の全ての動きを明確には捉えられないという事。

 例えば動体視力に優れていても視力が高い訳ではない可能性。近距離の動きを鮮明に映す事は出来ても遠くはぼんやりとしているという事。

 

 これらは鍛えてどうにか出来る範囲を超えており、先天的な才能の割合が多くを占める。

 そして、その中でも『動体視力』の優れた者こそ、トップアスリートとして輝く事例が多い。

 

 動きを鮮明に映すというのはそれ程までにアスリートとしてアドバンテージとなる。何故なら参考にする為の細かな情報を読み解く事が出来るから。

 もちろんそれを自身へと変換するには、身体能力やガタイの差を考慮した上でのイメージ能力が必要となる。動体視力以外の能力も相応に必要とはなるが、そもそも動体視力がなければそれを見極める事も出来ない。

 中には経験の積み重ねでプロのそれへと昇格させる者もいるだろうが、トップアスリートの大半はその点において非常に優れていると言って良いだろう。

 

 

 ───逢沢 駆も例に漏れず、非常に『眼が良い』と言えるだろう。

 “嗅覚”を言語化した彼は本来遅咲きとなる筈だった才能を早い段階で開花させ、自身の能力への理解を深めた。“嗅覚”を成立させる為の動体視力と空間認識能力を正しく理解する事で、『眼の使い方』についても考える様になる。

 類稀なる集中力の高さも相まって、細かな情報を読み解く『観察』という点に於いて、駆は優れている。

 

 とはいえ。他人の技を見て盗むには、自身にもそれを熟せるだけの能力が必要になる。

 観察力ではトップアスリートとも言えるモノを持っていたとしても、技量・身体では遠く及ばない。ことレアル・マドリードの中では底辺も良いところだ。

 

 故に駆は今回のレアル・マドリードの練習参加で、プロを観察して技を盗む事よりも自身のパフォーマンスを最大限発揮する事に着目した。身体能力で劣っていても、技量で身体能力を勝る事が出来ずとも、得点力だけは負けていないという自信がある。

 初日・二日目はそれを最大限に発揮出来たと言えるだろう。三日目の第二戦ではキーパーに縛りがあったとはいえ、この数日間で唯一のハットトリックを達成した。

 

 だがギダンから提示された“課題”。世界最高峰のDFがリーグ戦と同等の迫力で止めに掛かってきた事もあり、『嗅覚を磨く』という事に向き合う事となる。

 手探りで探り、ラストプレーで答えを見つけた。簡単に言えば『味方を知る』ということ。眼も使い方次第だ。観察力を技の吸収に使うのではなく、ただ知る為に使う。

 そして駆は四日目の練習へと臨み───

 

 

「『……ギダン監督、やはり昨日の時点で続けるべきだったのでは? あれでは自信を無くしてしまいますよ』」

 

 

 紅白戦を終え、シュート数0という記録。

 二戦を通してだ。枠内シュートも、枠外シュートも。ただゴールに向かって打つという行動を四日目の紅白戦で一度も行えていない事実に、コーチはギダンに視線を向けながら言い放つ。

 

 

「『そうかな? 私には寧ろ逆に見える』」

「『そうでしょうか』」

「『試合中の彼の集中力は、今までの比じゃない程に高かった。プレーには現れなかったがね』」

 

 

 今日の駆を試合の様に採点するならば、甘く見ても精々が5点だろう。*1

 レアル・マドリードのサッカーを崩す事はなかったが、今までの様に得点という形で評価を得られない以上は妥当と言える。負け試合ともなればそれすら下回る可能性もある。

 

 

「『私には“嗅覚”を磨く事が本当に可能かは分からないが……』」

「『え?』」

「『少なくとも、彼なりに答えを見つけたのは間違いないだろうな』」

「『ちょ、ちょっと待って下さい。出来るか分からないものを課題として提示したんですか?』」

 

 

 各々のプレースタイルに精通した者が課題を考え、当人に与える。なにもギダン一人で全てを考えているわけではなく、コーチを交えて与えるべき課題を挙げ、三日目に提示していた。

 駆に関しては精通している者がいなかったが、ギダンによる提案でピッタリの課題が与えられた───と思っていたのだが。当の本人は「え、課題が可能か自体分からんよ」と無責任に告げており、コーチは思わず口を出す。

 

 

「『だって私は嗅覚の感覚とか知らないし……助言出来る者もいなかった。ならハッキリと言えないのは仕方ないだろう? だから私はあくまでも彼自身に選択させた』」

「『それは……あまりにも無責任では? 選手達は監督を信じてプレーしてるんですよ』」

「『()()()』」

 

 

 ハンッ、と。鼻を鳴らして笑うギダン。

 言葉と共に飛び出た笑みが「そんな訳ないだろう」と言外に伝えていた。

 

 

「『工程(プロセス)が足りないな。言葉を自分の中で反芻し、それが納得のいくものであれば信じるに足る。あくまでも信頼とは己自身に依るものだ。言葉の責任は取るさ。だがそれによる成否は選択した本人のもの。それに……』」

「『……それに、何でしょう?』」

「『ノウハウによる成長は前例の域を出ない。我々が見たいのは次世代なんだ』」

 

 

 言葉を続けながらメモにペンを走らせていた手を止める。

 胸ポケットにクリップを差し込んで立ち上がり、紅白戦を終えた選手達の顔を見渡した。

 

 

「『少なくとも、彼はレアル・マドリードのプレーを問題なく熟していた。ここが疎かになるレベルでモチベーションが下がっていたのならば別の道を提示する必要はあるが、そうでないなら見守る。それが責任だ』」

 

 

 答えを見つけて、己のやり方を実践していたのだろう。ならば下手な口出しは妨げる結果になりかねない。

 そうしてギダンが見守る中、駆は───

 

 

「……、……は」

 

 

 浅く呼吸を繰り返して息を整える。

 試合を振り返り、そして()()()()()

 

 

「打つの、忘れてた……!」

 

 

 ───溜めた悲痛な(アホらしい)叫びが唐突に響き渡る。

 

 四六時中スペイン語が流れる中で耳は既に慣れていたが、やはり反射的に飛び出る言葉は日本語。

 唯一聴き取り喋れるレオがそれを耳にして「嘘だろおい」と驚愕の視線を向け、近くを通ろうとした選手がビクリと肩を震わせてる事など気にしようともせずに、駆はグルグルと目を回しながら思考を続ける。

 

 

(味方のシュート時に動かず観察に徹したからセカンドボールへの反応が出来なかった……()()()()()()()()()()、昨日決めた事だ。けど、んぐぬぅ)

 

 

 試合を振り返り、一番の反省点を頭の中で挙げた。

 

 

(観察に集中し過ぎて、FWとしての動きが疎かになり過ぎた……!)

 

 

 つまるところ。

 打つのを忘れたというのは正確には違う。いざゴール前という時に他の選手の動きに集中をし過ぎてFWとしての動きをしていなかった。打つための動き出しを忘れていた、が正しい。

 

 

「ぬがぁああ……っ」

 

 

 言葉にならない呻き声。

 そんな駆を見て、コーチは思わず言葉を溢す。

 

 

「『……本当に大丈夫ですか、あれ』」

「『大丈夫じゃないね。うん』」

 

 

 駆は(下手くそだが)問題なくスペイン語を喋り聴き取れる様になっている為、レアル側は通訳を用意していない。だから駆が日本語で何を言っているのかは分からないが、その様子にギダンは先ほどの言葉を速攻で撤回していた。

 

 

「〜〜〜〜っ、『フルトワさん! 今日この後のシュート練習付き合ってくれませんか!?』」

「『え、嫌だ』」

「『そんなぁ、昨日はしてくれたのに……』」

「『だって今のお前に付き合ったら100本は打たれそうだし』」

「『そんなまさか!』」

 

 

 心底嫌そうな表情で駆の提案を拒否するフルトワに、心外だと言わんばかりに言葉を紡いだ。

 

 

「『150───いや180は付き合ってもらいます!』」

「『減らすんだよ、普通その繋ぎ方は減らすんだよ。交渉という言葉を知らないのかお前は』」

「『練習サボった訳じゃないんだから疲労もあるだろう? せめて本数は減らしな』」

「『す、スリーズさんは……』」

「『すまないがパス。今日は妻との約束があってね』」

 

 

 二人のやり取りに口を出すスリーズへと駆が問い掛けるも、彼は先約があるからと拒否。

 ぐぬぬと古典的な悔しがり方をしてフラストレーションの発散をどうすれば良いかと悩む駆に、レオが苦笑気味に話しかけた。

 

 

「『ボクで良ければ付き合おうか?』」

「『レオ……凄い助かる!』」

「『オレも一緒にいいか?』」

「『ラトスさん、良いんですか!?』」

 

 

 レオの言葉にパァっと表情を明るくし、続くラトスの発言に驚愕しながら確認。

 すると彼は意地悪そうに口の端を釣り上げながら言葉を紡いだ。

 

 

「『ああ、どこぞのクソ生意気な坊主が随分と大人しかったせいで今日は体力余ってんだ。オレが満足したら帰るが構わないな?』」

「『もちろんです!』」

 

 

 嬉々として言葉を返し、駆はこの後のグラウンドの使用許可を貰おうとギダンの方へと駆けて行く。

 肩を竦めるラトスを目の端に捉えながら、レオは思考。

 

 

(……会った時はアスリートとしてそれなりに成熟している雰囲気があったが……なんというか、実際は随分と弟気質だな。どっちも意図してない素の性格だから、妙にベテラン組に好かれるというか。特別コミニュケーション能力が秀でている訳ではないんだけど)

 

 

 許容範囲(パーソナルスペース)が広い訳ではない。ただ本来ならば境界線にある“壁”というのが非常に低く、一度入り込むと自然と話している。

 精神性はアスリートながら、オンとオフがハッキリしており、オフの時の性質は弟としてのそれだ。年上に対して年下としての接し方だから、そのギャップがベテランである程に受けるのだろう。

 

 

(オン・オフがハッキリしているにも関わらず、それがどっちも天然であるのだから恐ろしい。舞衣はある程度自覚があっての行動だからな……)

 

 

 本人にとっての『特別な関係』はあっても、人種を全く意識してないから駆からの好感度は分け隔てなく、下部組織(カンテラ)の選手達からの受けが悪い訳でもない。馴染み方が契約した選手のそれに感じると言い換えても良いだろう。

 

 

「……ちなみに駆、ボクも満足したら帰って良いかイ?」

「レオはダメ」

「だと思っタ」

 

 

 ギダンにコートの使用許可を貰って戻ってきた駆の返事に、レオは「この特別はいい意味で捉えて良いのか」と微妙な表情を晒しながら思った。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

 ───五日目。

 たった一日では選手全体の“癖”を把握することは出来ず、この日も観察に徹する事が多い。

 得点を奪う事は叶わなかったが、シュート本数は4本。内3本は枠内と、先日の反省を活かしてFWとしての働きは出来ていた。

 四日目で把握出来ていた味方のシュートに合わせた“嗅覚”の成功確率は40%と言ったところで、普段の導かれる“嗅覚”に比べると精度は低い。打つ前に脳内で動きの計算が行われているから、そこに違いが出れば噛み合わないのも当然だろう。ここに関しては経験を増やして知識を蓄えていくしかない。

 

 

 ───六日目。

 この日からキーパーにはセービングに於ける“縛り”が解除され、キャッチングの使用も可能となった。今までは味方のシュート時、セカンドボールが第一候補にあった為に、その違いで少し戸惑う。

 キーパーがどのタイミングで跳べば、どう体勢を整えていればキャッチとパンチングを選ぶのかも予測する必要がある。それが出来ればカウンター対策に走るべきか、セカンドボールを拾おうと移動すべきかの区別も可能だからだ。

 

 シュート本数は3本。全て枠内を捉えてはいたが、フルトワの弾いた球は彼の近場でシュートコースが殆どなかった。“嗅覚”を持つストライカーへの対応がこの六日間で磨かれたのだろう。成長するのはプロも同じだ。

 本日もまた、得点を奪う事は出来なかった。“課題”を強く意識している影響もあるとは言え、リーグ戦と同等の迫力で向かい合う世界トップクラスのDFを相手にすれば、今までの駆だと無力化されてしまう事をヒシヒシと実感する。

 

 

 イメージトレーニングを増やし、映像を見返して眼に焼き付ける時間を増やし───そして、練習生を交えたレアル・マドリード公開練習の最終日。

 

 

「……ん?」

「どうしタ、駆?」

「兄ちゃんとセブンからメッセージが……あ」

 

 

 スペイン・マドリッド現地にて朝7時。ホテルのバイキング形式の朝食をレオと共に摂っていると、ズボンのポケットから携帯のバイブレーションが脚に伝わってくる。

 着信音ではないから電話ではない。設定した通知音からメッセージアプリによる連絡だろうと理解しつつ、マナーは悪いがとコソコソ隠す様にポケットから携帯を取り出し確認。

 

 その内容と添付された写真を見て、彼に言って良いものかと数瞬悩み携帯を見せる。

 

 

「えーと、レオ。全国高等学校総合体育大会(インターハイ)鎌学(ウチ)が優勝しました」

「ああ、決勝は確か今日だったネ。そうか、ハルも全国は選手登録が間に合っていた筈だが……負けてしまったカ」

 

 

 特に理由がある訳ではないがちょっとした気不味さから敬語になって伝える駆に、残念そうではあるが悔しがる素振りはレオにはない。

 決勝の開始時間はお昼。延長に持ち込んだ末の90分間*2で2-1の決着となった───というのがセブンからの写真付きのメッセージ。兄からは『優勝した。試合は母さんに録画して貰ったからそれで観てくれ』と簡素な文字列だけのメッセージだ。

 

 セブンのメッセージの方が詳しく書かれていたのでそちらに目を通していくと、先制点を奪ったのは鎌学。前半24分に鷹匠が奪ったが、アディショナルタイムに突入した前半終了間際の37分に蹴学の四季が決めて折り返し。

 後半は得点が動く事なく進み延長戦へ。延長前半では既にイエローを一枚貰っていた鎌学のDFがエリア外でのミドルシュートをハンドで止めた事による二枚目のイエローで退場はしたが、それで得点が動く事はなかった。

 そして延長後半入って直ぐに傑が決めて1点リードを守り切り、人数不利ながらも鎌学が優勝───というのが大まかな流れらしい。

 

 延長戦まで長引いた事、閉会式・授賞式その他諸々で時間を取られ、正午始まりながらこの時間での報告になったという事だ。*3

 

 

「これで君達の望みである高校三冠に一歩前進という訳ダ。プレミアにはベストメンバーで挑める以上、恐らく君達が奪うだろう。蹴学は出来たばかりで地域リーグだしネ」

「油断は出来ないけど」

 

 

 駆はそう言うが、心ではレオの言葉に同意する。世代別代表の招集が掛かるとしても、今年は精々がU-16 アジア大会だ。

 プレミアリーグの2試合程は空ける事になるだろうが、鎌学で呼ばれるとすれば駆と佐伯。傑と鷹匠が居れば易々と落とす事はないだろうし、今の勝ち点ペースからして片方でも勝てばファイナル進出は問題なく出来る。そこは現在の鎌学ベストメンバーで挑めるので、油断せず全力で挑めば勝ち取れるだろう。

 

 ともすれば───

 

 

「高校三冠に王手を掛けた君達を阻む事になるネ。面白くなってきたヨ」

 

 

 一番の壁となるのは間違いなく、四季や海外・ユース選手、そしてレオを擁する蹴学との選手権だ。

 今更鎌学がプレミアリーグを落とす事も、選手権を勝ち上がれない可能性もないだろうと断言するかの様な物言いに、駆は思わず苦笑してしまう。

 

 

「ン? ウィッチに返事は良いのカ?」

「僕の方はまだ終わってないからね。今はレアルの練習に集中したいかな。セブンとやり取りしてるとどうしても気が緩んじゃうから、返事は練習が終わった後にする」

 

 

 それはセブンも分かっているだろう。メッセージによる文末は返事を期待しているものではなく、区切りをつけて会話を終わらせる様な雰囲気だ。

 練習自体は午前中に終わるから、その後ならば日本時間でも丁度いいだろう。疲れて寝てない限りは充分にやり取り出来る。

 

 打ち込む様子もなくポケットに携帯を仕舞う駆へ問い掛けたレオにそう返すと、気合いを入れる様に頬を叩いて朝食の続きを進めた。

 

 

「……気合いを入れて集中を始めたところに凄く申し訳ないんだけどネ」

「うん?」

「トークのやり取りは気軽に他人に見せるモノじゃないヨ。ああ、これは君の為に言ってるんだが」

 

 

 レオが気不味そうに視線を逸らしつつ、駆が食べ物を飲み込むのを待ってから続きを紡いだ。

 

 

「彼女にも選手として活動する気があるんだし、その……避妊はしっかりナ?」

「…………ッッ!?!?」

 

 

 先日の練習終わりで行っていたトークの履歴がチラ見えしたのか。レオの言葉とその生暖かい視線と気不味そうな雰囲気の意味を理解して、駆の顔は一瞬で沸騰し真っ赤に染まる。食べ物を含んでいない時に告げたのはせめてもの気遣いだろう。

 プシューと蒸気を発しながら硬直した駆を見て、小さな声量でレオは呟く。

 

 

「……人畜無害な見た目だけど性欲は普通にあるんだネ

 

 

 なお駆には聴こえていたので耳に届いた瞬間に机へと突っ伏した。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

「『いやぁ、ハハ』」

 

 

 最終日の最終項目、紅白戦の三戦全てを終える。

 一部例外はあれど各選手2試合ずつの出場を経た結果を見て、ギダンは思わず笑みを溢してしまう。

 

 初日から決して手を抜いていた訳では無かったが、それでもツアーマッチ明けで練習生を交えた公開練習だ。ガチガチに戦術を固めてもいなかったし、リーグ戦に比べれば流す程度だったのは否定出来ない。

 それでも練習生がついていくにはかなり必死だった。

 そんな中で練習生を交えた最終日。彼らに対する激励の意味も込めて、現役のプロ達は(ラトスだけは三日目途中からではあるものの)全力を以てプレーしていたが───

 

 第一戦にて二得点。

 第三戦にて二得点。

 

 ラトスのプレーする試合に合わせて配置された駆は、二試合連続で二得点(ドブレーテ)の記録を残す。

 1試合の得点記録としては三日目第二戦の三得点(ハットトリック)に比べて下回る結果ではあるが、その後の試合から現役トップDFがリーグ戦も斯くやという迫力で止めに掛かっており六日目までは無得点が続いていた。それだけ隔絶した実力差があったという証明に他ならない。

 

 ラトスも日本への土産で手を抜いた訳ではなく、何ならこの一週間で最も集中力は高かったと言っていい。

 それでも尚、駆は二試合連続での二得点という結果を残す。一日での紅白戦トータル四得点はこの1週間で残した選手は駆以外に居ない。

 

 

「『……うん』」

 

 

 多くのレアルの選手に寄られ、頭を撫でられ背中を叩かれ可愛がられている様子の駆を見ながら、ギダンは呟く。

 

 

「『ホント、今すぐにでも国籍受け入れてくれないかなぁ』」

 

 

 今シーズンからでも充分に使えるレベルに達していると判断し、試合に出場させたい欲が出る。とはいえスペイン国籍のない18歳未満の海外選手と契約すれば規約違反になるだろう。

 微妙な表情ながらもワクワクした雰囲気を隠せないギダンは、今回の公開練習の映像を見せる事で国も判断を早めてくれないものかと、今後の活動方針を想像していた。

 

 

 

 

 

 

*1
サイトによって採点方式は異なるが最大値を10にして評価される事が多い。しかし評価10を貰うことはほぼない

*2
総体に於ける試合時間は35分ハーフ。延長は10分ハーフの為、トータルで90分となる

*3
スペインと日本の時差は約8時間である為、スペインでの朝7時は日本での15時に当たる





 最近はエロゲシナリオに時間を取られてましたが、買っていたサノ○ウィ○チとRID○LE J○KERが全ルート終了したので執筆時間が多少確保出来るようになりました。また他のやつ始めるかもしれませんが。
 月一投稿は出来るようにしますのでこれからもお願い致します。
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