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>>傑がおじさん構文を駆使して駆を苦笑いさせるとこまで想像できた笑
→本当はおじさん構文を実際に載せたかったんですけど、絵文字が消えちゃうので載せれませんでした……。
エイプリルフール6日目───
というのはまあ冗談です。今作は多分季節・イベントネタは書かないと思います。少なくとも本編完結までは。
仕事の休憩時間が普段より確保出来たのでコツコツ執筆進めていたら早めの投稿が叶いました。もし暫く余裕が続いた場合、今月は2つも投稿出来ちゃいます! ……本当に余裕があればの話ですけどね?
「別格……まあ別格だな、逢沢の弟は」
U-16 日本代表。世代別に於けるアジアカップを舞台に駆け上がる、日本各地から集められた16歳以下のメンバー。
決められたルールの一つとして、U-16アジアカップの開催終了の目処となる10月までに生まれた高校2年生組に関しては招集外となる。10月生まれである逢沢 傑は今回の大会には出場不可だ。
そんな中で注目が集まるのは当然その弟。上の世代、昨年のU-17 W杯にて得点王へと輝き優勝に貢献した実績は記憶に新しい。
レアル・マドリードに見初められた実力は疑うまでもない。
だが───
「……修正力の無さも影響してるんだろうが、15分で4-0とはな」
誤解なきよう補足すると、駆の単身4得点いう訳ではない。彼個人で決めたのは1点のみであり、他3得点は別の選手二人が決めているものだ。
では何故ここまでU-16代表監督、櫻井 一青から良い評価を受けるのか。
U-16日本代表合宿、その初日。召集された当日、この日は駆の“記憶”と違わず、選手登録数を大幅に超える人数が集められていた。
これまた“記憶”の通り───メンバーに違いはあったものの───110人を10チームに分けて15分のミニゲームを行なっている。同じ高校の部活生であり代表召集された佐伯、U-17で一緒に召集されていた荒木・島・風巻とは別のチームに入れられて、だ。
これだけの実績を重ね疑う余地のない実力を兼ね備えた選手。当然周りが警戒しない筈がない。
純粋な能力を考えたら内定が決まっていると言える。だから今回のミニゲームに於ける採用基準は駆へと適応されず、別枠で考えていた。
つまり、『警戒されている中で何を残せるか』だ。警戒されてなお得点を奪う力があるに越した事はないが、何も得点に限った話ではない。
結果、駆は囮としての能力を十全に発揮。15分という短い試合時間に決して慌てず、味方のシュートコースを作りパスのスペースを作って味方のチャンスを幾度となく演出した。
そうして駆以外のチャンスが増え、まして3得点ともなれば「せめて自分がチャンスを潰して評価を上げてやる」という意識が相手守備には芽生える。そういった意識がマークに付いていた選手の頭に入った試合終盤に、決して見逃さない抜け出しで自らも点を奪う。
満点解答とさえ言える結果を残してしまえば、U-16 日本代表監督である櫻井も“別格”と評せざるを得ない。
「残すメンツから考えてフォーメーションは───」
駆の“記憶”と同じメンバーが残り───追加で駆の同チームで得点を決めた選手が入り29人にはなったが───初日を終えることになる。
そして恒例の初招集祝いで日比野は絶叫した。
「よ、よろしくー……」
「ん……よろしく」
割り振られた部屋では本来なら3人で過ごす形となるが、予定していた30人から1人引かれて29人から割ることになった為、どこかしらの部屋は2人となる。そんな部屋に駆は割り振られた。
U-17で一緒に戦った島と遠野に関してはおそらくコミュニケーションに問題なしと判断されたのだろう。“記憶”とは違って2人と同じ部屋になる事はなく、別の選手と過ごす事になる。
相手は世良だった。
世良 右京。“記憶”ではフランス留学で紆余曲折して鎌学のサッカー部に入部していたが、どうも湘南ブルーインパルスのユース昇格を受け入れてそこでプレーを続けているらしい。
どういう心境の変化かは定かではないが、それで彼の性格が変わったという訳ではないだろう。
ずっと語学勉強をしていて一言も口を利かない、なんて事を聴いた覚えがあるので気まずい。チーム間のコミュニケーションは大事だが将来に向かう気持ちも分かる。話し掛けて良いものかと挨拶だけを交わして悶々と思考を回していた。
「荷物、置かないの?」
「あ、うん。寝る位置はどうしようかなって」
「特に拘りが無いなら、オレが縁側で良い? 人の足音で目覚めたく無いんだよね」
「大丈夫だよ。僕って結構そのへん鈍感みたいで、あまり気にならないからさ」
「ふぅん……」
人当たりが良い、とまでは言わないが。そこまで刺々しい雰囲気ではなく、意外と普通に接してくれる。思えば“記憶”で絡む事もそこまで多くなかったから自分に対しての感情は知らないな、なんて考えながらやり取りする。
荷物を置き、鞄に仕舞っていた語学勉強用の本を開きながら会話を続ける。
「キミ、今日の紅白戦で獲ろうと思えばもう1点は奪えたんじゃない?」
「……うーん、どうだろう。確実とは言えないけど、序盤に下がって受けてのドリブル突破を図れば獲れた可能性はあるかも」
「アピールの場なんだから、それに挑むくらいの積極性はあっても良いと思うけどね」
(あれ、なんか普通に読み進めてるけど僕との会話と語学勉強を並行してる? 二カ国語の並列処理……まして会話と勉強じゃ内容も違うから凄く面倒な筈なのに)
変に会話を進めない方がいいのだろうか。いやだが話し掛けてるのは相手の方だし、なんて考えながら、今日の紅白戦についての自分の解釈を口にした。
「あの時に僕に求められてたのは、多分そういう強引なプレーじゃなかっただろうから」
「へぇ」
「囮として機能する事。隙を逃さずに抜け出して決める事。U-17の実績で確実に警戒されている中で───きっとU-16の大会でも同じ事が起こるシチュエーションで分かりやすく残せる結果。これも僕なりに考えた最大限のアピールのつもりだよ」
「なるほど。お利口で強かな考え方だね。お陰様で美味しいところを持って行けたから感謝してるけど」
今回の紅白戦で、駆と同じチームの2点を奪った選手は世良だ。
ごっつぁん、と。片手を挙げるジェスチャーで伝えながら、本から顔を上げて呟く。
「にしても、聴いていた話とは違うもんだね。もう少し刺々しい雰囲気だと思っていたけど」
「……え、僕が?」
どちらかと言えば世良の方では。
予想外の言葉に思わずキョトンとする駆に、クスリと笑いながら言葉を紡ぐ。
「ああ、ウチのトップがキミのことを野生の猛獣の眼光だとか噂するもんだから少しワクワクしてたんだけどね。実際はコアラの間抜け顔みたいな面を晒す奴だった」
「僕も人間なんで普通に傷つくから唐突な罵倒にどんな顔をすれば良いのか分からないよ」
「笑えば良いんじゃ無いかな? そしたらポメラニアンに進化すると思うよ」
「それは進化で良いの……?」
(にしても、
うん、と。高校に上がる前の練習参加を思い出して苦笑する。
(心当たりしかない)
駆が“記憶”の時にインパルスとの特別契約を結んだ当初みたいな、
駆や四季、そしてベテランの城島の加入がJ1昇格・優勝に影響したのは間違いない。でもたった3人の働きだけで優勝できるほどプロは甘く無い。元よりインパルスに所属していた選手たちの頑張りがなければ優勝など到底叶うはずもなかった。
それだけの巧さと強さがある筈なのに、停滞が続いた故の自信の無さ。必死になる事への抵抗を見て、苛立ちと失望の目を向けて思わず「憧れのプロってこんなもんですか」と言ってしまったのだ。
「必死にならずに勝てば自分は天才だと自尊心を満たし、負ければ本気じゃなかったと言い訳が出来る
駆の“記憶”など彼らが知る由も無いので、どう考えてもクソ生意気な練習生としか見られないだろう。何なら世良の発言から察するに畏怖さえ覚えられているらしい。
「ま、オレとしてはあんな無様を晒してたトップをやる気にさせてくれたみたいで感謝してるよ。一度チームを離れたにも関わらず拾ってくれた恩はあったけど、それでも自分の将来を潰してまでクラブに尽くすつもりはなかったからね。今の調子なら昇格圏内だろうし、インパルスを足掛かりに海外を目指すのも一つの手だと思ってる」
「……という事は、学生の間にはもうトップ昇格を?」
「今シーズンのインパルスの結果次第だけどね。プロとしての実績を早く積めるならそれに越した事はない。それはキミも同じだろう?」
「まあ、概ねは」
「……ああ、キミはマドリーの練習参加を優先してたっけ。貴重な経験だし、別にその選択を否定するつもりはないよ」
プロとしての実績を早く積めるならそれに越した事はない。それは間違いない認識で、プロ側からのオファーがあれば内容次第で駆もすぐに契約を交わしていただろう。
ただ大宮のクラブからオファーを受けたにも関わらず断ってレアル・マドリードの練習参加を優先したのが事実だ。なので少し言葉を濁して気まずそうに返答すれば、それを察して世良は駆の意思を尊重する様に発言する。
世良は語学勉強用の本を閉じて仕舞い、代わりにノートを取り出す。
「ねえ、折角だしマドリーでの練習内容とか教えてくれない?」
「あー……どうせなら映像で観る? 僕の知り合いの記者さんが記録してくれた奴があるからさ、色々と編集はされてるけどそれで良ければ」
「良い知り合いがいるもんだね。是非それを観させて貰うよ」
荷物を置いて、机で横並び。取り出したタブレットから映像を選択して見続ける。
意外と心地の良いやり取りをして十数分。
───あぁぁ……
「日比野の声だ。初招集祝いかな?」
「……平塚合宿だからデバガメ大会だろうね」
となるとそろそろ夕食の時間だろう、と。幼馴染の絶叫に対して淡白なやり取りを世良と交わしながら、タブレットの映像を一時停止して立ち上がった。
「身体は温まった? それとも肝が冷えた?」
「……気付いてたんなら教えてくれよ、駆。お前もやられたのか?」
「僕はロシアンたこ焼きでイカサマされて激辛食わされた奴かな」
「そっちの方がマシ───イカサマって?」
「初手を僕にして、たこ焼き全部に激辛仕込みされてたみたい。ただのロシアンたこ焼きだと思ってたから油断してた。初招集祝いの中だとまだマシな方かもしれないけどね」
「こいつは最初から生意気だったからなぁ。何なら他のたこ焼きにも仕込んでると察せられてオレ達まで食わせられる羽目になったぜ」
「すげぇなお前」
笑いながら話し掛けた駆に、どんよりとした雰囲気で日比野は返答する。
初招集祝いについてやり取りをして感嘆の視線を向けてきた日比野に苦笑を返しつつ、日比野の被害への訴えに対して答えた。
「ていうか、本当に覗きなら僕が遠野さんぶん殴って止めるに決まってるんだから察してよ」
「え」
「それもそうか。くっ、目先の欲に駆られて思考が行き届いてなかったぜ……」
「ちょっと待て、なでしこジャパンの覗きがマジならオレは殴られてたのか?」
いやマジの犯罪を起こすつもりはないけど一応確認な、と勢いそのまま問いかける遠野に、ニッコリと笑いながら返答。
「嫌だなぁ遠野さん。言葉の綾ですよ」
「ははは、だよな」
「あはは」
「……」
遠野は冷や汗を流しながら、駆は不気味なほどの笑顔を浮かべながら笑い合い、お互いに沈黙が訪れて数秒。
「背負い投げからの肩固めが真実です」
「オトす気満々じゃねぇか!」
「そもそも駆、お前の体格じゃミッキーを背負い投げは難しいだろ」
「あ、それもそうですね」
「オレが合気道での投げ方を教えてやろうか?」
「是非ともお願いします!」
「やめろ、こいつ華奢な見た目のくせして意外と力あるんだからマジで投げられるだろ! つかその場合お前も同罪だからな島!?」
不気味な笑みに対して遠野は距離を取る。駆の言葉に対して島が現実的な指摘をすると駆は表情を悩ましくし、そんな彼にアドバイスを一つ。
嬉々として返す駆に遠野が突っ込みを入れ、周りの笑いを誘う。和気藹々とした空気が落ち着く頃に、佐伯が駆の頭に手を置きながら過激な発言をした理由への説明を行う。
「駆は美島さんの幼馴染なんで、半ばセコム体制なんすよ。遠野さん」
「なでしこジャパンの新星アイドルと幼馴染だと……!?」
「群咲とも友人らしいな? 本人から『駆っちが〜』って話をよく聴くから、逢沢との距離感に少し悩むんだよな」
「いや、まあ……あはは」
暈す言葉でありながら事実を混ぜつつ駆とセブンの関係性を伝える。羨ましがる遠野を目の端に、蹴学の選手である風巻も会話に混ざってきた。
群咲 舞衣。駆の“記憶”とは違い早い段階で蹴学に在籍していた彼女は、アンダー世代なでしこジャパンでの実績によりこれまた早くフル代表として召集を受けている。
近日の試合でいえば夏休み以前に行われた女子ブンデスリーガのチーム、SFフランクフルトとの親善試合でFWとして2得点を獲得し4-3の勝利に貢献していた。
セブンの仲介でFW選手としての動きを教える間柄だ。友人関係と言えば確かにそう。
「時代は草食系男子なのか!?」などと、なでしこ新星アイドル2人のファン(推測)である選手たちに畏敬の視線を向けられる駆は気まずそうに顔を逸らす。
「意外と肉食だと思うけどな、駆は」
「荒木さんには言われたくないですよ。ジャンクフード好きの肉食でしょ」
「最近はフィジカル維持の為に控えてるっての! てか食べ物の話じゃね───おいこら腹触るな!」
「……弛んでません?
「気のせいじゃアホぅ!」
話題を逸らす為に揶揄い交じりの返し。……揶揄い交じり、のつもりではあったが。触って微かにポヨンと揺れる腹に動揺して思わず問い質してしまう。
体型維持は出来ているからフィジカルトレーニング苦手な割に頑張っていると思ったのに、と。そう本気で悲しそうに目を向ける駆と周りからの刺す様な視線に、荒木は縮こまった。
「……そ、そういや駆。傑のあの話ってマジなのか?」
「どの話です?」
逃げる様に話を変える荒木。一応は駆の方の話題の逸らしに貢献してくれたので恩を返す為にそれに乗り、問いを返す。
「10月末のキリンチャレンジカップの事だよ。珍しく……つーか、初めての海外開催で鷹匠と一緒にトレーニングパートナーとして帯同するって噂になってるぜ?」
「あー……」
キリンチャレンジカップ───大会に位置付ける様な名称ではあるが、扱い的には日本協会が主催となる国際親善試合だ。勝利国に対してのトロフィーや副賞での飲料贈呈、FIFAランクへの影響などは存在するが、アジア杯やオリンピック、W杯の様に確かな栄誉を得られる大会ほど重要なものでは無い。
今年の6〜7月にA代表のW杯を終えて、代表はそれなりにメンバーの入れ替えを行なっている。加入組、新監督。新体制での代表戦。
本来なら日本で行われるのがいつものキリンチャレンジカップではあるが、海外クラブ。特に欧州のリーグチームに属する選手たちが増え、代表にも呼ばれる様になった事から、移動時間を加味して欧州でのキリンチャレンジカップを試みよう───という事で、海外での開催が決まった訳だ。
「はい、本当ですよ」
そしてそこに、傑と鷹匠はトレーニングパートナーとして帯同する。
トレーニングパートナーとは、A代表正式登録選手とは別に代表選手の練習相手の事を指す。場合によってはバックアップメンバーとして、正式登録選手に不調があった際に穴埋めとして代用される事もあるが、それに関しては例外中の例外だ。
日本サッカー協会であるJFAも本人たちからのインタビューでも確信に至る発言はされていない。故にあくまでも噂。その真偽を確かめる荒木の質問に対してYESと答える。
まだ断言がされていないだけで守秘義務がある訳ではない。明確な答えを出すのは決して問題行動にはならない───が。
「ちなみに親善試合の後は?」
「Jリーグのシーズン終了後にエルマーレスと合流してプロ契約を結ぶらしいです。特別指定ではないので、選手権は全国出場しても出れないですね……ギリギリ、プレミアのファイナルには出れますけど。兄ちゃ───兄と
「マジかー……時期的に県予選も無理だろ? どうせなら鎌学のベスメン相手と戦りたかったんだが」
「……ま、明らかに大会運営側の意図を感じるよな」
県予選の決勝付近で行われる国際親善試合への帯同。また既に話が決着しているプロ契約。
本来ならそこまで急いでプロ契約をする必要はない。シーズン開始直前とまでは言わずとも、選手権が終わってからの話でも決して遅くはない筈だ。
にも関わらず、シーズン終了した直後の契約。
それこそ、島の発言した“大会運営側の意図”と言わざるを得ないだろう。
「そもそもトレーニングパートナーって大舞台への帯同が基本だろ? 幾ら珍しい形での開催だからって親善試合になんて普通は連れて行かない。鎌学の三冠に良い感情を抱かない奴の介入としか思えないんだよな」
椅子に座る駆の頭に両腕を乗せ、その上に顎を乗っけながら島はそう紡ぐ。
先程までの和気藹々とした様子は一転。重苦しい雰囲気が周囲には漂う。その空気感こそが島の発言に対する同意とも言えるだろう。
そして、鎌学の三冠に良い感情を抱かない人間の関係者となると───
「……悪い。オレとしても、ベスメンの鎌学とやりたかったんだが……この辺りは子供が意見出来るものじゃないしな」
「ああいや、
もちろん、国際親善試合の日程は
だが高校が舞台とはいえ大会最中のプロ契約。大舞台を夢見る少年が断れる筈もない。
親善試合の日程の被りも偶然だとしても都合が良かったのは間違いないだろう。
間違いなく蹴学に連なる誰かの“意図”がある。
意見出来ないにしてもそこに所属してプレーする風巻が意味を察して苦虫を噛み潰したような表情で謝れば、島は駆から離れ慌てて身振りを加えながら同情の言葉を投げ掛ける。
「それにこう言っちゃ何だが、傑と鷹匠さんがいなくなって鎌学に勝てるかも……って思っちまったのも事実なんだ。高校サッカーを舐められているオレ達の実力不足も原因の一つ。こればっかりは大人を責めてられねぇ」
「……」
「悪いな、一番被害受けてんのは鎌学なのに当たる様な言い方になっちまって」
「いえ」
申し訳なさそうに笑いながら謝る島に、駆も似た様な笑みを浮かべながら返した。
「……おい、なんかオレの発言の所為で空気が重苦しくなっちまったんだが。光一、漫才やるぞ漫才。場を和ませる」
「勘弁して下さいよ……オレは
下手な発言で水を差す訳には行かないと小声でやりとりしている荒木と日比野の江ノ島組2人を目の端に、駆は自分の見解を口にした。
「高校サッカーで一強が嫌われる風潮は昔からありましたし……この辺は高校に上がる前に兄も危惧していた事ですから。その上でプロ契約───それにトレーニングパートナーとしての帯同を選んだのなら、自分の夢を掴める第一歩を躊躇うなっていう
「冷静だな、駆は。もうちょい子供らしく我儘言っても良いと思うぜ?」
「嘆いても現状は変わりませんし。それに兄ちゃんと
遠野からの言葉に、駆は軽く笑いながら返答。
───から一転。重苦しい空気を吹き飛ばすほどの敵意を宿したギラつく視線を周りに向けながら、薄笑いで言葉を紡いだ。
「
「……右に同じくっす」
言いたい事が言われちまったと呆れた笑みを溢しながら、同じ鎌学一員として佐伯は同意の言葉を放つ。
重苦しい雰囲気は変わり、ピリッと産毛が逆立つ様な一触即発の空気。
会話には混ざらず奥の方で静かに食べ進めていた世良が「野生の猛獣の眼光ってこの事か」なんて思いながら駆を観ている。
そんな存在感に視線が集まり沈黙すること数秒。荒木がヘラっと笑いながら駆に近づいて頭をポンポンと掌で軽く触れた。
「まーまー、選手権の事は選手権の時に存分にやろう。暫くは味方なんだ、そうバチバチ睨み合わんでおこうぜ?」
「……だな。よし、じゃあ話を戻して───この腹はなんだ荒木?」
「オレに戻すのかよっ!?」
ピリついた空気は霧散し、島の指摘による荒木の反応を軸に再び良い空気での笑いを引き起こした。
合宿の内容は概ね“記憶”と同じで、二日目から四日目は実戦形式の練習を繰り返す。
午前中は5対5の15分ハーフを5ゲーム。メンバーの入れ替えを行いつつ、それぞれの連携を短い期間で仕上げる練習。
午後からはフル人数での紅白戦。15分ハーフと30分ハーフを一本ずつ。
そして五日目。
U-16アメリカ代表との親善試合が行われ、駆は9番を背負って試合に出場。
個人では唯一2得点を挙げ、5-0勝利に貢献。
“記憶”では叶わなかったAFC U-16日本代表への選出を果たし、アジアカップへと脚を運ぶことになる。
某アプリでは200連で天井し、某アプリでは10連と単発の両方で推しを引き当てる。ガチャの温度差に風邪ひきそう。
タケが無事である事を祈っています。
出来れば今月末までに復帰してレアル戦を観たい……。