「こう兄ぃはすっごいね!」
「……す、すごい」
「僕もいつかこう兄ぃみたいに強くなりたい!」
幼い声とキラキラした二人の
★
「久しぶり、と言った方がいいか?」
そう言ったのは、立派な執務机に肘をついてプカプカと煙草をふかしている目の前の美女だ。
彼女を表すなら『黒』。漆黒のバンツスーツを着こなすスラリと長い手足。切れ長の目に収まる瞳は、刃を彷彿させる鋭さと、綺麗で澄んだ光を宿している。
僅かに微笑を浮かべてこちらを見る彼女の手元に目をやる。正確には、左手薬指に嵌るリングに。
「結婚おめでとう。
「ありがとう――――だが、学園内でその呼び方はやめろ。こう見えて私はここの理事長だからな」
黒乃さんはそう言って再び微笑するが、今度の笑みは少し違って見えた。まだ短くなっていない煙草を徐ろに揉み消す。
どうやら照れているらしい。
「それには本当驚いたよ。
己の魂を武器に具現化し戦う魔法使い達を現代ではそう呼ぶ。
魔力を用いることで基本的な身体能力からして一般人とは一線を画す彼等の中で、神宮寺 黒乃の名は広く世界に知れ渡っている。
King Of Knights。通称、KOKと呼ばれるそれは伐刀者達による格闘競技の世界大会。彼女はそこで若くしてランキング3位に名を連ねていた。
しかし、彼女は結婚を機にあっさり引退を表明。一時はかなり話題になったものだ。
「別に」黒乃さんは新しい煙草に火をつけて「ただ、己の栄光より大切なものが出来てしまっただけだ」
「明らかに戦い方が変わったもんな」
今まで死地にすら自ら飛び込み勝利を得てきた彼女は、ある時を堺にガラリと戦い方が変わった。傷を負うことを躊躇わなかった彼女の勢いが傍目から見ても感じられなくなったのだ。
勝利への執念が無くなった……というよりは、目的が勝利から何かに変わったしまったかのように。
まあ、だからといって弱くなったわけでもない。実際彼女は引退のそのときまでランキングを落とさなかった。
むしろ俺から言わせれば手強く見えたものだ。以前までの彼女を例えると尖った鉛筆のようで、ガリガリと削って削って、極限まで研ぎ澄まされた危うい強さだった。だが引退直前の戦い方はまるで隙がなかった。
「そういうことだ。だから引退した。……不満だったか?」
「別に」
黒乃さんの真似をして素っ気なく返す。だが、
「――――だけど、勝ち逃げされたってえのは気に入らないけどな」
言うやいなや飛ばした敵意にも黒乃さんは涼しい顔で微笑むばかり。
わかってる。今俺が不意打ちで襲ったところでまだこの人には勝てないことくらい。
だがまあ、これで現役引退だなんて……。未だ嘆く人が多いのも納得するというものだ。
「それは悪かったな。憂さ晴らしは現役の輩にぶつけてくれ」
「……そうするよ」
敵意を引っ込め、肩を竦めて苦笑する。
「さて、それでは本題といこう。知っての通り我が破軍学園は、国内に7つある魔導騎士学校の中でも随一の成績を誇っている」
「うむ、知らんね」
「なら尚更黙って聞け」
茶々を入れると睨まれたので黙る。
「だがそれも過去の話だ。近年では優秀な騎士の輩出はおろか、年に一度国内7つの学園で主催し行われる武の祭典――――七星剣武祭でも負け続きだ」
「
「まったくだ」
七星剣武祭というのは聞いたことがある。KOKが年齢制限無しの世界大会とするならば、七星剣武際は学生騎士の全国大会。
それぞれの学園は独自の方法で騎士を選出し、大会に送り出す。
お題目は切磋琢磨頑張りましょうってわけだが、実際は学園の威信を懸けた決闘だ。優勝でもしようものならその生徒、ひいては学園の知名度は一気に上る。――――が、逆に弱ければ評判ガタ落ち。必然、才ある伐刀者の入学者は減ることだろう。
「私がこの学園に呼ばれたのは破軍学園の建て直しの為。方針はもちろん、私が決める」
「なーるほど。その為に俺の力が必要ってわけだ! この天才伐刀者、こう――――」
「――――
「そうそう鋼兄……って、あん?」
さあ此処こそ見せ場だとばかりに堂々たる名乗り上げをしているまさにその瞬間、背後の扉が開けられたからと思うと声を掛けられた。
何故それが俺だと思ったのかといえばそう、
水を差されたことに憤慨し、文句のひとつでも言ってやろうと振り返った俺はそこにいた人物を見るなり思考が停止した。
なぜならば、そこにはこんな場所にいるはずのない人間がいたから。
いくら最近落ちぶれたとはいえ、ここは腐っても国内でも名のある騎士学校破軍学園。
千年に一人しか生まれないといわれる伐刀者。その中でもさらに優秀な粒を事前の試験やらで揃えるだろう名門校だ。
だからいるはずがないのだ。
伐刀者に生まれたものの、生まれつき魔力が極端に少ない落ちこぼれの騎士なんて入学試験で真っ先に落とされるに決まっている。
だが、
「鋼兄!」
「……一輝?」
目の前で瞳をキラキラさせて兄と呼んでくれる少年は間違いなく、その落ちこぼれの烙印を押される人物、黒鉄 一輝であった。
一応まだ続きます。
>閲覧ありがとうございましたー。
>てなわけで、ふと観たアニメが面白くて序盤だけですが妄想して少し書いてみました。実際連載までもっていけなさそうなのであくまでもお試し。でももう少し続きます。
>設定としてはあるあるものを拾ってます。原作主人公、一輝君の兄(義理)。ちなみにヒロイン(までいけるかは不明ですが)は珠雫ちゃん。ちなみにちなみに、主人公の性格は桐原君似で少し鬱陶しいかもです(笑)
>アニメ面白いので原作気になってますが……これ以上未完の作品を集めるには金銭的にも家のスペース的にも厳しい。誰か広い家買って下さい。そして阿呆ステラちゃんが凄く可愛い。ヒロインヒロインしてて可愛い。
>アニメのどの辺までいくかはさっぱり未定ですが、気分転換含めて少し書きます