【短編集】未熟姫とトレーナー   作:ほいさ

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探偵とついていますが推理要素はほぼありませんのでお気軽にお楽しみください。
登場キャラ
カワカミプリンセス、トレーナー、エアグルーヴ、アグネスデジタル、メジロドーベル


姫探偵カワカミ

「キャー!!!」

 

放課後のトレセン学園、木々に囲まれた中庭から響くウマ娘の声。その声に応えて一人の少女が颯爽と駆け付けた。その名は

 

「悲しみの声は見捨てない!カワカミプリンセスただいま参上ですわ!!」

 

砂埃を上げながら立ち止まりズビシィと何やらかっこよさげなポーズをとるカワカミプリンセスであった。

いきなりの展開に唖然としていたウマ娘であったが、

 

「あの、カワカミちゃんどうしてここに?」

 

「姫たる者!人々の平和を守るのが義務ですもの!!」

 

「は、はぁ……」

 

「それでそれでどんな事件が勃発しやがりましたの!?」

 

「え、私事件なんて一言も……」

 

とカワカミプリンセスのテンションについていけない彼女はカワカミプリンセスの顔から目を逸らして真横にあった茂みへと目を向ける。

するとガサゴソと茂みが揺れ始め今にも何かが出てきそうな予感がしている。

 

「ひっ!」

 

思わず小さな悲鳴を上げる。それに気づいたカワカミプリンセスは迷わず一直線に豪速で向かい、

 

「そこにいやがりましたのね!!」

 

茂みにいる何かに一発痛烈な一撃を叩き込む。するとドサリと地面に倒れこむ音が聞こえた。

 

「オーッホッホッホ!これでバッチリ事件解決ですわ!!」

 

そしてカワカミプリンセスはその正体を暴くため茂みの中へ手を突っ込み、犯人(?)の体を引き上げた。

 

「さあて犯人のお顔を拝見するといたしましょう!……か?」

 

カワカミプリンセスが胸ぐらをつかむ犯人(?)の正体は……

 

「お、おお相変わらずいいパンチだな……」

 

頭から大量の血を流すカワカミプリンセスのトレーナーであった。

 

「キ……キャアアアア!!!」

 

その姿を見たウマ娘は先ほどよりも大きな叫び声を上げ気絶してしまった。

 

「おっと」

 

トレーナーは彼女の体を受け止め優しく寝かせる。

 

「……そんなに俺の姿ってひどいか?」

 

「?いえいつも通りですわよ?」

 

いつも通り血まみれで顔がグシャグシャなので2人は気にしない。

 

「ところでトレーナーさんは何であんなところに?」

 

「あーそれはな」

 

と答えながらトレーナーは己の顔を揉みほぐしていく。すると徐々に傷が塞がり顔も元の形に戻っていく。

 

「悲鳴が聞こえたからまたカワカミが何かやらかしたんじゃないかと心配になってな」

 

仕上げにハンカチを取り出して血を拭うと元のトレーナー姿になった。

 

「それで早く着くためにそこの林を抜けてきたってわけさ」

 

「ああ!なるほどガッテンですわ!!」

 

ポンと手を打つカワカミプリンセスにトレーナーは問いかける。

 

「で、何やったんだ?」

 

「わ、私は助けを求める声に駆けつけただけですわよ!」

 

「誰の?」

 

「そこの方の」

 

カワカミプリンセスが気を失ったウマ娘に指を指すとトレーナーは「ふむ」と顎に手を当て考える。

 

「この子は何に驚いたんだ?」

 

「それはもちろん!……何でしょう?」

 

「おいおい」

 

「き、きっと何か事件があったのですわ!ほら!あの寝ている方に聞いてみましょう!!」

 

カワカミプリンセスが指さす先にはピンク髪を2つに結んだウマ娘が仰向きで寝そべっていた。

 

「あの!起きてくださいまし!!」

 

2人がそのウマ娘に近づくと、

 

「ギ、ギエエエエ!!!!」

 

そのウマ娘の体から大量の血を流れていることに2人は気づいた。

 

「し、死んでますわ!!」

 

青ざめた表情で口に手を添えるカワカミプリンセスをよそにトレーナーはピンク髪のウマ娘に近づき脈を測る。

 

「いや生きてるぞ」

 

そんなトレーナーのことは目に入らないカワカミプリンセスは憤り拳を握りしめながら涙をこぼし始める。

 

「くう!尊い命が犠牲になってしまいました……」

 

そして両手を腰に当て空を見上げる。

 

「天国で見ていてください……私があなたの仇をとってみせますわ!!」

 

「いや生きてるって」

 

「どんな事件もパワーで解決!迷宮壊しの姫探偵!!カワカミプリンセスの名に懸けて!!!」

 

「いや生き―――」

 

こうして1日限りの姫探偵が爆誕した。

 

 

 

「ではまず犠牲者の身元確認ですわ……」

 

カワカミプリンセスは手を合わせて遺憾の意を表して作業を始めた。

 

「この子はたしかアグネスデジタルだな」

 

ツッコむことをあきらめたトレーナーはカワカミプリンセスに被害者の名前を告げる。

 

「お知り合いなんですの?」

 

「ああ。保健室の常連仲間」

 

カワカミプリンセスに度々ぶっ飛ばされて気絶し保健室に運ばれていたトレーナーと尊死して保健室に運ばれるアグネスデジタルは保健室で一緒になることがよくあり話をする仲になっていた。お互い何度血を流しても時間が経てばケロッとなるというシンパシーもあったので今回の血の量だと1時間以内には彼女は回復するとトレーナーは確信した。

 

「どんな方ですの?」

 

「変態」

 

「は?」

 

「俺がカワカミプリンセスのトレーナーでカワカミからキングヘイローのことを何度も自慢されるのにうんざりしていると愚痴ったら昇天することが何度もあってな。俺が今まで見た中であれほど幸せな顔はなかったよ」

 

「……随分と仲が良いんですのね」

 

プイとそっぽを向くカワカミプリンセス。

 

「それほどでもないぞ。一緒にいる時間はカワカミの方が長いし」

 

「そ、そうですわね!!」

 

パァッと笑顔になったカワカミプリンセスはアグネスデジタルの身体検査を再開していく。

 

「傷の方は切り傷で大した深さではないようですわ。おそらく致命傷は打撲ですわね」

 

「よくわかるな」

 

「昔階段から突き落とされて気絶したトレーナーさんの表情によく似ていますもの!」

 

まだトレーナーがカワカミプリンセスのトレーナーになって間もない頃、トレーナーは今ほど頑丈ではなくよく気絶していた。ちなみに落下の原因はカワカミプリンセスの"軽い"パンチである。

 

「……ああそう」

 

検査が終わったカワカミプリンセスは腕を組みながら辺りをキョロキョロと見渡す。周囲にあるのは木だけだ。

 

「ふうむ、木から落っこちたのではありませんこと?」

 

「ここら辺の木はあまり高くないし、ウマ娘は誰もが人並み以上に頑丈だろ?この程度の高さなら気絶まではいかないと思うぞ」

 

「むむぅ、となればここより高い所から落ちたのでしょうか……」

 

真剣に謎を解こうと悩むカワカミプリンセス。いつもなら頭を使うことは避けがちの彼女の珍しい姿にトレーナーは疑問を感じた。

 

「にして珍しく真剣に悩んでるな。何かあったか?」

 

そう問いかけるとカワカミプリンセスはサッとトレーナーへ顔を向け興奮した面持ちで鼻息荒く話し始めた。

 

「ちょうどスマホで見ていたプリファイの話が名探偵になったプリファイたちが謎を解く!という話でして、そこにちょうど事件性がある悲鳴が上がりましたの!こいつぁは天啓と思いまして馳せ参じたのですわ!!おかげでどんより気分も晴れ晴れですの!!!」

 

いつも通りのカワカミプリンセスであった。

 

「さぁて!お次は周辺調査ですの!!」

 

とカワカミプリンセスが意気込むと彼女のポケットからリズミカルな音楽が流れ始めた。カワカミプリンセスとトレーナーにとっては馴染みの曲プリファイのOPテーマ曲である。

 

「せっかくいいところですのに。誰ですの?」

 

カワカミプリンセスがスマホをで画面を確認すると真っ青な顔でガタガタと震え始めた。そして

 

「急用ができましたわ!!!」

 

と言い残し校舎の方へ駆けて行った。

 

残されたトレーナーはしばし呆然とした後、とりあえず気絶している2人のウマ娘を保健室へ運ぶことにした。

 

 

「すっみませんでしたわぁぁぁあああ!!!」

 

トレセン学園校舎の2階で"かつて"大ガラスの窓があった場所から元気いっぱい謝罪マックス、吹き荒れる強風の轟音に負けない甲高い声が響く。声の主はカワカミプリンセス。そして謝罪の言葉の先にいるのは風程度では冷めない怒りを抱えたエアグルーヴであった。

 

「何を謝っていのかわからないな。私はお前に電話をかけただけだが?」

 

冷たく鋭い目つきでカワカミプリンセスを見つめながら問いただすと、カワカミプリンセスはうぐっと言葉を詰まらせる。

 

「え、えーとそれは……」

 

「ん?何だ?」

 

「その大窓を壊したのは……その……」

 

「壊したのは?」

 

「私……です」

 

勇気を出して白状したカワカミプリンセスの肩にエアグルーヴは手を静かに乗せた。怒られるかもと危惧していたカワカミプリンセスがホッと息をつくと、

 

「またお前か!カワカミィィィイイイ!!!」

 

「ひぃぃいい!!ごべんなざぃぃいい!!」

 

怒号が響き渡り、廊下中にカワカミプリンセスの断末魔が響いた。

 

「今度は何でこんなことをした」

 

「そのぉ……姫ビームの練習をしていまして……」

 

「ふざけるのも大概にしろ!!」

 

「ひぃぃ!」

 

10分程度の説教の後、エアグルーヴはスマホを取り出し電話をかけた。

 

「いつものだ。大窓前に来い」

 

と一方的に言い放って電話を切った。

 

「お前のトレーナーに連絡した。反省文に何を書くかしっかり考えておけ」

 

「はい……申し訳ありません」

 

とカワカミプリンセスが反省しているのを確認すると、

 

「ところでそこのお前、何をコソコソしている?」

 

鋭い視線を廊下の突き当たりへと向ける。

 

「え?」

 

カワカミプリンセスがエアグルーヴの視線先へと目を向けると10バ身程離れた廊下の角からウマ娘の耳がわずかに覗いていた。

 

「あ」

 

カワカミプリンセスが気付いた瞬間、そのウマ娘は耳を引っ込めダダダと逃げ出す音がした。

 

「逃さんぞ!!」

 

不審な気配を察知したエアグルーヴは即座に走り出し、逃げるウマ娘を追っていった。

 

 

 

「あー、またカワカミがやらかしたか〜」

 

と小声で愚痴を吐きながらカワカミプリンセスのトレーナーはエアグルーヴに呼び出された場所へと向かっていた。口調は軽いが内心はげんなりとしている。

 

「エアグルーヴの説教は何度聞いても慣れないんだよな〜」

 

重い足取りでゆっくりと階段を上がっていくと1人のウマ娘の姿が目に入った。廊下の角に張り付き息を殺してこちらに背中を向けている。何かを見張っているようだ。

 

そのウマ娘の髪は長髪で癖毛が1つもないストレートのサラサラヘアーで色は濃い目の茶色。顔が見えずとも良家の娘だとわかるほど綺麗な後ろ姿だった。

 

トレーナーの目的地はこの先でありここを通らなければならない。そこで通り過ぎようとすると、

ビクッとこのウマ娘が驚き、踵を返してトレーナーの元へ突っ込んできた。

 

トレーナーがいることはこのウマ娘も予想外だったため、

 

「!?」

 

階段を上り終えたばかりのトレーナーへ突っ込む形となり、結果的にウマ娘に押し倒される形でトレーナーとこのウマ娘は階段から転げ落ちることとなった。

 

「うわぁぁああ!!」

 

「きゃぁぁああ!!」

 

トレーナーは頭を押さえながら顔をあげると後ろの方からウマ娘の声が聞こえた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「ああ大丈夫だ」

 

ウマ娘の姿は見えないが声から察するに怪我はないだろう。自分が下になって庇った甲斐があった。と満足するトレーナーであったが、

 

「そ、そんなわけありませんよね!?く、首が180度回ってますよ!!」

 

ああなるほどだから後ろ側から声がするのか。納得したトレーナーは頭に手をやり、グリンと自分の首を回して元に戻す。

 

「ほれ、問題ない」

 

そう言って立ち上がると、

 

「え?え?え?え?」

 

と困惑してるウマ娘。とそこに

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「大丈夫ですの!?」

 

聞きなれた2名の声、エアグルーヴとカワカミプリンセスの声がトレーナーの耳元に入って来た。

駆けつけた2人はトレーナーの上に跨っているウマ娘を引き上げ介助をしていく。

 

「む、お前は」

 

エアグルーヴはこのウマ娘と顔見知りらしい。彼女はトレーナーとカワカミプリンセスの方へ視線を向け、

 

「……メジロドーベルと言います。ど、どうぞよろしく……」

 

ばつが悪そうな表情でそう自己紹介をした。

 

 

「それでドーベル、お前はなぜ逃げたんだ?」

 

介抱を終えたエアグルーヴがメジロドーベルへ質問を投げかけた。

 

「あ、あの、大窓前にその……用事がありまして」

 

「用事とは?」

 

「その……確認したいことがあるんです」

 

「なら俺も付いて行っていいか?壊れた窓を確認する必要があるからな」

 

とメジロドーベルに話しかけると彼女はエアグルーヴの陰に隠れてしまった。そんな反応に戸惑うトレーナーに対し、

 

「すまない、ドーベルは男に免疫がなくてな。許してやってくれ」

 

とエアグルーヴがフォローを入れた。

 

「なるほどわかったよ」

 

露骨に避けられたことに軽く傷ついていたトレーナーであったが、仕方がないと割り切ることにした。

 

「では行くぞ」

 

4人で大窓前に移動すると見事に窓がなくなっていた。周囲には破片が飛び散り惨憺たる有様であった。

 

「これはひどいな」

 

トレーナーがそうぼやくとエアグルーヴが続けて、

 

「全くひどいものだな、こんなことをしでかした大バ鹿者は」

 

じろりとカワカミプリンセスたちの方へにらみつけると、

 

「「す、すみません!!」」

 

少女の声が"2つ"響いた。

 

その声の主はカワカミプリンセス、そしてメジロドーベルであった。

 

「なぜお前が謝るんだドーベル。窓を破壊したのはそこのバ―――カワカミなのだが」

 

とエアグルーヴが指摘すると、

 

「え?ええ!?」

 

メジロドーベルは戸惑いの声を漏らした。

 

「あ、あのアタシここであるものを思いっきり突き飛ばしてしまいまして。それが原因で窓が割れたと思っていまして」

 

「なるほど、して『あるもの』とは?」

 

エアグルーヴから問いかけられしばらく沈黙していたメジロドーベルであったが意を決して口を開いた。

 

「デジタルさんです……」

 

その名前を聞いた瞬間トレーナーは驚いた。それはカワカミプリンセスも同様、否、

 

「なるほどなるほど!ガッテン招致!!謎がついに解けましたわ!!!」

 

それ以上の反応であった。

 

「……謎とは?」

 

事情を知らないエアグルーヴとメジロドーベルにトレーナーは中庭でアグネスデジタルが血まみれで倒れていたことを説明した。

 

「はぁ、まったく、なぜこうもトラブルばかり発生するのだ……」

 

悪態を吐くエアグルーヴ。

 

「ど、どうしてデジタルさんがそんなところに!?」

 

さらなる戸惑いに陥るメジロドーベル。

そんな2人をよそに

 

「真実はついに明らかになりましたわ!!姫探偵の推理をご覧あれ!!!」

 

声高々にカワカミプリンセスはそう宣言した。

 

 

 

「まずは状況を整理しましょう。この窓の前でドーベルさんはデジタルさんを思いっきり突き飛ばした!それは間違いありませんわね!?」

 

「……そうよ間違いないわ」

 

「だったら簡単なことですわ!見てくださいこの光景を!!」

 

カワカミプリンセスの視線先、窓があった場所から広がる光景はまっすぐアグネスデジタルが倒れていた中庭まで続いていた。さらに中庭を囲む林の木々うち上部が折れているのが何本かあった。これはつまり、

 

「ドーベルさんが思いっきりデジタルさんをぶっ飛ばした結果、窓は割れデジタルさんはあんな遠くまで吹っ飛んでいったのですわ!そこに放った私の姫ビームが当たり窓が木っ端みじんに粉々になったのですわ!デジタルさんの体が血まみれだったのは窓ガラスの破片そして中庭の木の枝で怪我をしたため!!そして打撲の原因もここ2回から突き落とされたことによるもの!!!

つまり犯人は、ドーベルさん!あなたです!!」

 

ズビシィと指を突き付けられたメジロドーベルは、混乱の極致に達し、手をばたつかせて否定する。

 

「アタシはそんなに力を出して突き飛ばしていないわ!……たぶん」

 

「ええい!お縄につきなさいな!」

 

とメジロドーベルに飛びかかろうとするカワカミプリンセスであったが、

 

「ちょっと待ったカワカミ」

 

トレーナーが立ちはだかり、ゴギィと体から悲鳴の音をたてながらカワカミプリンセスを食い止めた。

 

「退いてくださいましトレーナーさん!!」

 

「まあまあ落ち着け。その推理には穴があるぞ」

 

「え?」

 

「まず見てみろ。ここから中庭までの距離はどれくらいある?」

 

カワカミプリンセスは窓跡地から身を乗り出し、周囲を見渡す。

 

「そうですわね……だいたい50m程でしょうか」

 

「あのな、カワカミ。普通のウマ娘は思いっきりぶっ飛ばしてもあそこまで飛ばせないんだよ」

 

「な、何ですってえええ!!??」

 

衝撃の事実に驚くカワカミプリンセス。

 

「で、できますわよ!現に―――」

 

「そう可能だ。―――圧倒的なパワーがあれば」

 

「え?」

 

トレーナーは窓があった場所へと立ちカワカミプリンセスにこう指示した。

 

「姫ビームを俺に放て。今日ここに叩き込んだ距離から」

 

「でも……」

 

「いいから」

 

戸惑いながらカワカミプリンセスは窓からまっすぐ伸びる廊下に向かい、窓跡地から7m程離れた。

そして助走をつけ、姫ビームという名の衝撃波を放った。その一撃は一直線にトレーナーの元へと向かい、

 

「うげああああ!!!」

 

トレーナーをぶっ飛ばした。飛ばされたトレーナーは真っすぐに中庭へ林にある木々の枝を折りながら落ちていった。

 

「「「………」」」

 

3人とも言葉を失った。しばらくした後、エアグルーヴはため息を吐き、

 

「犯人はお前だカワカミ」

 

カワカミプリンセスを指さした。

 

「最後に何か言うことはあるか?」

 

「やっちまいましたわあああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

こうして事件は幕を閉じた

 

 

事件解決後に目覚めたアグネスデジタルの証言によりカワカミプリンセスの犯行は間違いないものだと証明された。

 

だがまだ一つ謎が残っている。なぜメジロドーベルがアグネスデジタルを突き飛ばしたのか。その答えは

 

 

「うーんここは?」

 

トレーナーが目を覚ますと見慣れた天井があった。

 

「保健室か」

 

体が丈夫になり最近は来ることがめっきり減ったが、やはりこの独特の匂いが漂う空間に懐かしさをおぼえる。

 

ベッドから体を起こし周囲を確認するとカーテンの向こうから話し声が聞こえた。

 

「だ、大丈夫ですよぉあたしの体は丈夫ですからぁ」

 

何度もここで聞いたアグネスデジタルの声。そして

 

「いいえ、謝らせてください。悪いのはアタシですから」

 

つい先程まで聞いていた声、メジロドーベルであった。

 

「あたしが悪かったんですよぉ。ドーベルさんのノートを勝手に見てしまったんですから」

 

「っ!」

 

ノート?そんなものが原因で突き飛ばしたのか?とトレーナーが疑問に思っていると、

 

「で、でも!素晴らしい少女漫画でした!!特に『王子様は私だけのもの』のシーンはもうキュン死するかと思いましたよ!!」

 

「あ、ありがとう……」

 

どうやらそのノートには文字ではなく漫画が描かれていたらしい。メジロドーベルの少女漫画がだ。

 

「それでその!どんな方が描いたのか気になりまして!あとノートを返さないととも思いまして!そんな中、大窓ガラスの前に1人でいるドーベルさんをお見掛けしたので、これはチャンスだと思い声を掛けたところ」

 

「見られたと思ったアタシは恥ずかしさのあまりデジタルさんを突き飛ばしてしまいました……本当にごめんなさい」

 

「いいんですよぉ~実際に見ていましたし」

 

「でも悪いのはアタシで!だから償わせてください!!」

 

「いや~償いなんて……あ!」

 

ガサゴソと鞄をあさる音がした。話の流れからしてアグネスデジタルの鞄からだ。おそらくメジロドーベルがお見舞いついでに持ってきたのだろう。

 

「あたしも漫画というより、同人誌を書いておりまして……」

 

「へ、へぇ~」

 

「ですのでお互いの作品を見合って感想を言い合いませんか?あ!ダメでしたらいいんです!」

 

「い、いえ!喜んで!……アタシも他の人から感想を聞きたいって思っていたので」

 

「!!だったらこれからよろしくお願いします!」

 

「は、はい!」

 

どうやら丸く収まったようだ。トレーナーは安心しひと眠りすることにした。何か忘れてる気がしたが些細なことだろう。

 

 

同時刻

 

「ダメだ!やり直し!!」

 

「ひ、ひぎいいいい!!!!」

 

エアグルーヴが監督する中、普段の倍以上の反省文を書かされるカワカミプリンセス。

 

「なぜ姫ビームとやらを放った!」

 

「あんなにぶっ飛ぶとは思わなかったんですもの!せいぜい1m程だと思いましたの!!」

 

生まれて初めて己のパワーを呪ったカワカミプリンセスであった。

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