カワカミプリンセスから突如宣言されてしまったキングヘイロー!
さあ、どうするキング!?
主な登場人物
キングヘイロー
カワカミプリンセス
カワカミプリンセスのトレーナー
某年1月2日。
多くのウマ娘やトレーナー、職員は実家へ帰省しているが、一部のウマ娘は帰省せず鍛錬を積み重ねていた。
キングヘイロー。彼女もそんなウマ娘の1人である。
「キングたるもの、常に自分を磨き続けなければならないのよ!」
という理由でトレーナーに許可をもらい自主トレを重ねている。
もっとも、母親と顔を合わせづらいというのが主な理由であったのだが。
「さあ!今日もトレーニングよ!!」
モヤモヤとした気持ちを振り払うように気合を入れて寮を飛び出すと、身を引き裂くような冷たい風がキングヘイローに吹き付けてきた。
体を温めるために軽く走ろうかしら?と思案していると、
「キングさぁん!!!」
聞き慣れた大音声がキングヘイローの耳元へ届く。
とあるウマ娘の姿を思い浮かべながら後ろを振り返ると、予想通りの姿が手を振りながらキングヘイローの元へ駆けつけてきた。
「正月一発目!キングさんに会えるなんて!!幸先半端ねぇですわぁ!!!」
青く澄んだ瞳をキラキラさせながら興奮気味で話しかけてくるウマ娘。
その名はカワカミプリンセス。キングヘイローに尊敬の念を抱くウマ娘である。
「相変わらずね……あなた」
「キングさんも変わらず可憐でお美しゅうございますわ!!」
「ふふ♪当然よ」
予想外な来訪者に多少気後れしたキングヘイローであったが、カワカミプリンセスからの褒め言葉で調子を取り戻す。
「それにしても今年は早いわね。去年の今頃はまだ帰省中だったでしょう?」
「ええ!今年はちょっとした用事があるんですの!!」
「あらそうなの?差し支えなければ教えてもらってもいいかしら?」
「ええもちろんですわ!!」
カワカミプリンセスはグッと拳を握りしめながら高々と宣言した。
「姫始めですわ!!!」
………………は?
「聞き間違いかしら?もう一度言ってもらえる?」
「姫始めですわ!!!」
姫始め?姫始めってあの?え?え?ええええっっっ!!!???
脳裏に卑猥なイメージが過り見る見るうちにキングヘイローの顔が真っ赤に染まっていく。
「あ、相手は誰!?誰なのよ!」
「え?ト、トレーナーさんとですが…」
カワカミプリンセスと彼女のトレーナーは傍目から見ても仲睦まじい。
しかしながら、キングヘイローから見れば恋人には見えず信頼し合ってるパートナーと考えていた。
が、まさかお正月からまさぐり合う仲であったとは…。
「キングさん?どこか具合がおかしいんですの?」
「な、なななな何でもないわよ!」
キングヘイローは心配するカワカミプリンセスの手を振り払い距離を取る。
彼女をを見つめるカワカミプリンセスの目は悲し気であったが、すぐにいつもの元気な表情へ戻り、
「でしたらキングさんも参加なさいませんか!?元気いっぱいになりますわよ!!」
乱交!?
キングヘイローの脳みそは処理限界を超え、頭から湯気が出てき始めた。
束の間キングヘイローのトレーナーの顔が横切り、
「そ、そそそそんなこと!できるわけないでしょう!?」
捨て台詞を残し、逃げるようにキングヘイローはその場を立ち去った。
約1時間後、頭を冷やしたキングヘイローはカワカミプリンセスのトレーナー室へと向かっていた。
冷静に考えれば神聖なトレセン学園で淫らな行為をするなど到底許されることではない。
退学どころでは済まず、カワカミプリンセスの人生は間違いなく詰む。
それを防ぐためにも自分が正さなければならないのだ。
決して姫始めに興味があるわけではないのだ。断じて。
そう何度も言い聞かせながらカワカミプリンセスのトレーナー室のドア前にたどり着く。
ドアノブに手をかけ突入しようとしたその瞬間、
「トレーナーさん!もう一度お願いしますわ!!」
ドアの向こうからカワカミプリンセスの声とグッチョグッチョという卑猥な音がキングヘイローの耳に飛び込んでくる。
(も、もしかしてもう手遅れ!?)
今すぐにでも飛び込むべきだろうか?だが2人の愛の行為を邪魔しても良いのだろうか?自分が動かなければこの秘密はバレず丸く収まるのではないか?
混乱と葛藤がキングヘイローの中で渦巻いていく。
「あー力を入れすぎたんだな。もう少しリラックスだカワカミ」
「わかりましたわ!せいやぁ!!」
グチュ!ブジュジュ!グジュゥ!!
こ、この音は…ロ、ロロロロローション!?
「ああ…失敗してしまいましたわ…」
「うーん、柔らかすぎたか?」
「そうなんですの?割と自信がありましたのに…」
「うーん、俺はもう少し固い方がいいと思うぞ」
まさかの貧乳派!?カワカミプリンセスとトレーナーの仲が進展しなかったのはそういう理由!?
「あ、こちらの準備はできました!あっつ熱のホッカホカですわよ!!」
「おお!おいしそうだな!これならちゃんとできそうだ」
「ええ!トレーナーさんお願いしますわ!」
「おう!ゆっくりするからちゃんと見ておくんだぞ」
「はい!!」
つ、ついに!
キングヘイローの頭の中にはもはや止めるという言葉はなく、これから行われるであろう行為に期待で胸を膨らませていた。
ゴクリッ……!!
扉に耳を当て全集中するキングヘイロー。すると、
「何をしてるんだ?キング」
「!?」
突如背後から話しかけられた。すぐさま振り返ると、
「ト、トレーナー!?」
キングヘイローのトレーナーが立っていた。
「ずいぶんと集中していたようだが何かあったのか?」
「な、何もないわよ!まだ何もないわよ!!」
「…まだ?」
「え?いやその…そんなことよりどうしてここに!?」
「あ、ああ。カワカミプリンセスのトレーナーから誘われたんだ」
「え?」
誘われた?
「キングも誘おうと思ってたんだよ。ちょうど良かったな」
キングヘイローのトレーナーはドアを開けキングヘイローの手を掴み中へ引っ張っていく。
「え?ま、待ちなさい!心の準備が!」
キングヘイローはギュッと目をつぶりながら部屋に入ると、
「……?」
予想外の香りがキングヘイローの鼻に入ってきた。
暖かく、ふっくらとした嗅ぎ慣れたお腹に響く香り。
その正体を確かめるべく目を開けると、
「どうですかキングさん!姫の自信作ですわよ!!」
カワカミプリンセスの手に包まれた白いご飯の塊がキングヘイローの目に飛び込んできた。
「え…?何よこれは?」
「ガーン!おにぎりですわよ!?まぁ…その、多少形はブサイクですけれども…」
「そういうことじゃないわよ!あなたたちはしてたんでしょ!ひ、姫始めを!!」
「まだ姫始めは始まっていませんわよ?食事の準備がまだですもの」
「?」
「?」
カワカミプリンセスは首を傾げた後、濡れた布巾で手を拭いながら己の鞄へ向かい、スマホを取り出す。
スマホを操作しながらキングヘイローの元へ戻り、画面を見せると、
「姫始めってこういうことですわよね?」
『姫始め:①新年を迎えてから最初に釜で炊いた米を食べること。主に1月2日に行われる。②(こちらの項目はフィルターで非表示にされています。表示したい場合は保護者の承諾を得てください。)』
「な、な、な……!!」
キングヘイローは唖然として言葉が出なかった。
「年末が暇で暇で。試しに『お正月 姫』で検索したらこの言葉がヒットしましたの!姫という文字にシンパシーを感じましてこりゃやるしかねえですわ!となりまして!!ね!トレーナーさん!!」
言葉を投げかけられたカワカミプリンセスのトレーナーが続けて状況を説明していく。
「俺も暇だったからな。調理室から炊飯器を借りてきてカワカミと一緒にトレーナー室でおにぎりを作ることにしたんだよ。まあ一台は水が多すぎてご飯が柔らかくなってしまったがな」
「と、言うことは……」
キングヘイローは机にラップが引かれた簡易な調理台、そしてその上に置かれたぐちゃぐちゃのご飯を視界に入れた。
「あーあれか?柔らかいご飯を無理してカワカミが握ろうとした結果、グチャグチャのドロドロになってな」
「け、結構慎重にお水を入れましたのよ!?自信ありましたのに…」
キングヘイローの脳内でパズルのピースが組み合わさっていく。
「もう一台の方はちょうどいい具合だったから、俺が見本でカワカミの前で握ってみせたんだが…」
「さ、最初よりはマシに握れてますわよ!そうですわよね!?」
「はいはい」
頭を撫でられたカワカミプリンセスは顔を赤くしながら満更でもない様子だ。
(つ、つまり……私の早とちり……だったというわけね……)
うなだれるキングヘイローへカワカミプリンセスが近寄ると、
「キングさんも一緒に『姫始め』をしてくだされば嬉しいですわ!!」
さっと手を差し伸べてきた。
(…まだまだお子様ね…)
「ええ、喜んで!」
呆れつつもどこか安心するキングヘイローであった。
おまけ
~姫始め終了後~
キングヘイローとカワカミプリンセスのトレーナーが皿洗いをしていると、
「ところで」
「何だ?」
キングヘイローがカワカミプリンセスのトレーナーに一つの質問を投げかけた。
「あなた、カワカミさんから姫始めに誘われた時―――どちらの意味ととらえたの?」
トレーナーは手を止め、キングヘイローから顔を逸らす。
「……ノーコメントで」
「……破廉恥」