【短編集】未熟姫とトレーナー   作:ほいさ

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カワカミプリンセスの少女漫画イベントから妄想して書きました。
主な登場人物:ダイワスカーレット、カワカミプリンセス


姫、少女漫画に出会う

「ふぅ、いい汗かいた」

 

休日の早朝トレーニング室にて、ダイワスカーレットは一人でのトレーニングが終わり、ベンチで汗を拭きつつ一休みしている。水分補給を済ませほっとした後、首を動かしてしきりに辺りをキョロキョロと見まわす。

 

「…誰もいないみたいね」

 

そう言ってダイワスカーレットはバッグに手を入れ、一冊の本を取り出した。その本のタイトルは『気になるアイツに胸キュン♡』ピンク色の表紙には可愛らしい女の子と着崩した制服を着るイケメンのイラストが描かれている。いわゆる少女漫画だ。ダイワスカーレットの趣味は少女漫画を読むことだ。周囲には秘密にしている。とくにこの『気になるアイツに胸キュン♡』はお気に入りの漫画であり何度も読み返している。

 

「さて、続きを読みますか……」

 

ページを開きかけたその時だった。

 

 

「っしゃあ!目覚ましトレーニングやったりますわ!」

 

突如、バシーン!とスライド式の扉が勢いよく開かれた。

 

「っ!?」

 

完全にリラックス状態であったダイワスカーレットは突然の大声と扉の音に驚き、思わず物陰に隠れた。そして恐る恐る開いた扉の方を見る。

 

「あら?ずれてしまいましたわ」

 

フンヌっという掛け声を上げて扉を持ち上げレールに戻そうとしている栗毛長髪の少女。彼女の名前はカワカミプリンセス。ダイワスカーレットの先輩である。

 

(な、何だカワカミさんか…)

 

カワカミプリンセスは憧れの先輩であり、何度も会話を交わした親しい仲である。一安心してベンチに戻ろうとすると、

 

「あら、何ですのこのかわいらしい本は?」

 

カワカミプリンセスはベンチにあった一冊の本、少女漫画を手に取った。タイトルは『気になるアイツに胸キュン♡』

 

ハッとダイワスカーレットは慌てて手を確認する。その手の中には『気になるアイツに胸キュン♡』がなかった。

 

(しまったぁあああっ!!置いてきたぁあああっ!!)

 

焦りから冷や汗が流れる。そんなダイワスカーレットのことを知るはずもなく、のんきにカワカミプリンセスはパラパラと漫画をめくる。

 

「ほーっ、これがうわさに聞く少女漫画!姫、初体験ですわ!」

 

興味津々といった様子で読み進めるカワカミプリンセスを見て、ダイワスカーレットの顔色は青ざめていく。

 

(ど、どうしよう……バレたら絶対バカにされる……いや、それだけならまだいいけど、もしかして気持ち悪がられるかも……ああもう最悪っ!!!)

 

パニック状態のダイワスカーレットを他所に、少女漫画を読み進める。

 

「おや?ページが折れ曲がっているところがありますわ」

 

(えっ!?ちょ、ちょっと待って!!)

 

慌てるダイワスカーレットをよそに、ページを開いた。そこには熱を出してるヒロインに近づき、『大丈夫か?』と額を当てるワイルドなイケメン。その後恥ずかしくなったヒロインはイケメンを振り切り、真っ赤な顔で走っていくシーンであった。

 

「ほうほうこれはこれはなるほどなるほど」

 

じっくりと目に焼き付けているようだ。自分のお気に入りシーンを他人に知られるのは恥ずかしくて仕方がない。

 

(お願いだから早く終わってぇ~っ!)

 

祈るダイワスカーレット。するとトレーニングルームの外から足音が聞こえてきた。どんどんその足音は大きくなっていき、

 

「カワカミいるかー?」

 

扉が開き男の人が現れた。カワカミプリンセスのトレーナーである。

 

「おはようございます!トレーナーさん!」

 

「おう、おはようさん」

 

トレーナーはスライド式の扉を閉めようとしたが、なかなか閉まらないようだ。

 

「ん~?建付けが悪いのか?」

 

トレーナーは振り返り扉を掴んで上下に動かしている。

 

「すぅ~はぁ~」

 

トレーナーの様子を見守っていたダイワスカーレットであったが、深呼吸の音が聞こえたのが気になり、そちらに目を向けるとカワカミプリンセスが大きく深呼吸をしている。まるでレースでスタートを切ろうとしている時のように。

 

そして、

 

「カワカミー手伝ってくれないか?」

 

トレーナーがカワカミプリンセスの方へ顔を向けた直後、カワカミプリンセスはトレーナーの元へスタートダッシュをかけた。瞬時にトップスピードまで加速し、一気に距離を詰め、

 

思いっきり頭突きをかました。

 

額にクリーンヒットしたカワカミプリンセスのインパクトをトレーナーの首は受け止め切れず、ゴギリィ!と大きな音を出しながら扉のすりガラスへガシャアアン!と音を響かせて突っ込んだ。辺りにはガラス片と血が飛び散る。さながら殺人現場だ。

 

(え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”!!!!????)

 

目の前で起こった出来事にダイワスカーレットは混乱する。

 

「ふぅ、やり遂げましたわ!先ほどの漫画では額がぶつかるとヒョロヒョロヒロインが信じられないスピードとパワーで振り切り、逃げ切れましたもの!これでスピードとパワーが上がったはず!」

 

そう言って「でりゃああああぁぁぁぁ!!!」と大きな叫び声を上げながらトレーニングルームからカワカミプリンセスは飛び出していった。直後、どさりと力を失ったトレーナーが床に倒れる。トレーニングルームにはダイワスカーレットと血だらけのトレーナー、そして静けさが残った。

 

 

(え、何これ……どういうこと……)

 

呆然と立ち尽くすダイワスカーレット。が、すぐに我に返り、

 

(と、とりあえずこの人を治療しないと!)

 

トレーナーの治療のため物陰から離れようとすると、

 

「ぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 

聞き覚えがある、先ほどまで聞いた少女の高いボイスがだんだんと大きくなり、トレーニングルームに近づいてくる。

 

(マッズ!)

 

慌ててダイワスカーレットは再び隠れた。扉を開けて現れたのはやはり

 

「どういうことですの!?チーッとも早くなっていませんわよ!どうしてですのトレーナーさん!」

 

カワカミプリンセスであった。彼女はぐったりしているトレーナーに近づくと襟元を掴み、ガシガシと激しく揺らす。

 

(そ、そんなことしたら傷口が開いて血が!血が!!)

 

が、血は全く飛び散らなかった。

 

「…トレーナーさん?いつもどおりもう傷口はキレイすっぱりお無くなりですわよ。目を覚ましてくださいな~」

 

「……」

 

トレーナーは何も言わずただ揺られているだけだ。

 

「ふーむ貧血のようですわね。しばらく寝ていれば大丈夫でしょう…たぶん。あ!そうですわ!」

 

カワカミプリンセスは『気になるアイツに胸キュン♡』を手に取りパラパラとめくると、

 

「ありましたわ!ヒロインが王子様に膝枕をするこのシーン!」

 

カワカミプリンセスはトレーナーの頭を持ち上げ、自分の太ももに乗せる。

 

「ふふふふ♪王子様が目を覚ますとヒロインが血をたぎらせてテンションハイマックスになりますの!これでパワーアップ間違いない!ですわぁ!」

 

まだかしら~♪まだかしら♪と尻尾を振りながらトレーナーの目覚めを待つカワカミプリンセス。

 

(あ~もう見てらんないわ)

 

あまりの展開に気疲れして耐えきれなくなったダイワスカーレットが物陰から離れようとすると、

 

 

「あ?あら?」

 

 

カワカミプリンセスは己の頬を手に当て、次に額に手を当てている。

 

「か、体が熱いですわ。ど、どうなってしまったのでしょう!?」

 

もう片方の手で自身を扇ぐカワカミプリンセスであったが、

 

「ぜ、全然涼しくなりませんわ!心臓バックバクで全身が熱くてたまらないんですのぉ!どうすればいいんですの!?…ハッ」

 

カワカミプリンセスは再び『気になるアイツに胸キュン♡』を手にし、高速でページをめくり始める。

 

「こ、この膝枕シーンの先に答えがあるはずですわ!」

 

見逃すまいとじっくり1コマずつ見ていくカワカミプリンセス。ページをめくるたびに顔が真っ赤になっていき、湯気が出始めている。

 

「ひいひぃはひぃ…」

 

熱と戦いながらページをめくっていきカワカミプリンセスはついに答えを見つけ

 

『次巻に続く』

 

られなかった。

 

「あああああ!!!どうしましょーーー!!!続きが、続きが知りたいですわぁぁぁああ!」

 

泣き叫ぶカワカミプリンセス。どうしたらよいのかがわからず、ダイワスカーレットは困惑しながら固まっていたが、

 

「んん?どうしたカワカミ、熱でもあるのか?」

 

目を覚ましたトレーナーがカワカミプリンセスの額に手を当てた。

 

「ふえ?」

 

「すごい熱じゃないか!すぐに保健室に行くぞ!」

 

そう言ってトレーナーはカワカミプリンセスをおんぶして、そのままトレーニング室から出て行った。

 

 

「えぇ……」

 

ダイワスカーレットは呆然と立ち尽くしていた。しばらくした後『気になるアイツに胸キュン♡』を持ち上げ、バッグにしまった。これで証拠隠滅。自分の趣味を隠し通すことができた。だが、どこか寂しさを覚えた。

 

『続きが、続きが知りたいですわぁぁぁああ!』

 

先ほどのカワカミプリンセスの言葉が頭に響く。今まで自分が好きな少女漫画をあれほど熱心に読んでくれる人は居なかった。自分もあのシーンは顔を赤くしながら読んだ覚えがある。

 

もしかしたら…。ダイワスカーレットはとあることを決断した。

 

 

次の日、ダイワスカーレットがトレーニングルームを訪れると、カワカミプリンセスが首にボードを吊り下げて正座をしていた。そのボードには『私がまた壊しました』と書かれている。

 

「…また何か壊したんですか、カワカミさん」

 

何を壊したのかは既知であったが自分はそこにはいなかったことにするためワザと質問した。

 

「はい…扉を壊してしまいましたの…」

 

カワカミプリンセスが指さした先にはすでに扉はない。修理のために運び出されたようだ。

ズーンとカワカミプリンセスは落ち込んでいる。非常に分かりやすい。

 

ダイワスカーレットはため息を吐き、そのまま深呼吸。「よし!」と小さくつぶやいて、カワカミプリンセスの前に立った。

 

「そんなこともありますって。憂さ晴らしにこちらはどうでしょうか?」

 

プルプルと手を震わせながらダイワスカーレットはカワカミプリンセスに一冊の漫画を手渡した。その漫画のタイトルは

 

「き、『気になるアイツに胸キュン♡』ですわぁ!!ずっと気になっておりましたの!」

 

「そ、そうなんですか。それなら全巻お貸ししましょうか…?」

 

「ぜひ!ぜひ!お願いしますわ!!」

 

こうしてダイワスカーレットは初めての少女漫画仲間を得ることができた。

 

「お礼にプリファイ1stのDVD全巻お貸ししますわ!」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

苦笑いをしながらお礼を述べるダイワスカーレットであった。




カワカミプリンセスがダイワスカーレットから少女漫画を借りるという描写から、なり染めはどのようだったのだろう?と思い作成しました。
気になる方は機会がありましたらカワカミプリンセスのイベントをご覧ください。
AIのべりすとに手伝ってもらいながら作成。
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