【短編集】未熟姫とトレーナー   作:ほいさ

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バレンタインということで久しぶりにこちらのシリーズを更新しました。キングヘイロー成分高め。

登場ウマ娘
カワカミプリンセス、キングヘイロー


姫、バレンタインに挑む

トレセン学園調理室。

 

「ふ~んふふ~んふふふふふ~ん♪」

 

エプロンを身に着けた栗毛長髪のウマ娘、カワカミプリンセスが鼻歌を歌いながら棚から調理器具を取り出していく。

調理台には材料のチョコレートが置かれている。彼女が作ろうとしているのは、

 

「っし!バレンタインチョコ!作ったりますわ!!」

 

まだ真新しい白いエプロンを身に着けたカワカミプリンセスが高らかに宣言した。

バレンタイン間近の休日。カワカミプリンセスの目的は日頃からお世話になっている方々へ手作りチョコをプレゼントすることであった。少しでもバレる確率を減らすため、他のウマ娘があまりいない休日の午前中にチョコ作りをすることにしたのだ。

 

「さあて、てきぱきサササッとやっちまいましょ~」

 

カワカミプリンセスはスマホを取り出しブックマークをしていたレシピサイトを開く。

 

「えーっとなになに…チョコレートは湯煎で溶かす…なるほどなるほど」

 

まず最初にお湯を沸かす。その間にチョコレートを手で砕き、お湯が沸いたらボールに入れ、その上にボールをかぶせて温める。

そして上のボールにチョコレートを入れ、へらを使いながら少しずつ溶かしていく。

最初はレシピ通りに進めていたが、

 

「ん~どうにもチマチマで面倒ですわね」

 

時刻を確認する。このままのペースだと時間内で完成しないかもしれない。

 

「あ!そうですわ!」

 

カワカミプリンセスは大きめの鍋を取り出し、すべてのチョコをそこにぶち込む。

そして鍋に火をかけ始めた。もちろん最大火力でだ。

 

「ふっふっふ~火力を上げて時間短縮ですわ!!」

 

最初は少しずつ解け始めていたが、

 

「あら?底が焦げてきましたわね」

 

焦げ付いてきたチョコを持ち前のパワーで剥がす。最初はうまく剥がせたが徐々に広範囲で焦げ付き始め剥がしづらくなってきた。

 

「ふんぬっ、ふんぬっ!ええい!ちょこざいなぁ!!」

 

ガシガシと木製のへらで焦げを剥がそうとした。フルパワーでだ。結果、

 

バキィ!!

 

へらが木っ端みじんに粉砕された。

 

「あ!やっちまいましたわ!」

 

カワカミプリンセスはあわてて次のへらを探す。鍋は火をかけられたままだ。

 

「ふう見つかりましたわ。って……ああああ!?」

 

慌てて鍋の中身を確認するとそこにはチョコの姿はなく、大きな炭の塊が転がっていた。

 

「やああぁぁっっっちまいましたわあああああぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

絶叫を上げるカワカミプリンセス。こうなってはもはや後の祭りである。

 

「ど、どどどどどどどうしましょう!!!」

 

両手を頭につけ絶望に打ちひしがれていると、背後から声をかけられた。

 

「はいはい。まずは火を消しなさいな」

 

え?と思いながらカワカミプリンセスが横を見ると、茶色髪でウェーブがかかったウマ娘が目に入った。彼女は―――

 

「キ、キキキキ、キングさん!?」

 

「まったく……あなたは何をしているの?」

 

「ど、どうしてここに!?」

 

「キッチンを通りかかったら焦げ臭い匂いがしたからよ。それで来てみたら案の定……」

 

呆れ顔を浮かべるキングヘイロー。

 

「はぁ、いったい何を作って…って聞くまでもないわね」

 

キングヘイローは鍋を覗き込み、はぁと溜息をつく。

 

「あなたは料理が苦手なのだからチョコは買ってくればいいでしょ?」

 

「えっとぉ、その……お金が……」

 

姫と自称しているがカワカミプリンセスは庶民生まれの庶民育ちである。普通に過ごすのには問題ないが余裕はあるとは言えなかった。

 

「そんなに高いものでなくてもいいでしょうに」

 

「で、でも!日頃皆さんにはお世話になってばかりですわ!特にトレーナーさんには……。そんな方々に対してそこら辺のやっすいチョコを送るわけには……だからせめて手作りにしようと思いまして……」

 

「はぁ、わかったわ。だったら―――」

 

キングヘイローはカワカミプリンセスの腕を掴み、

 

「キングについてきなさい!」

 

 

 

「さあ、着いたわよ!」

連れてこられた先は、人通りから外れたとこにあり、外装が黒色や茶色などシックな色を基調として落ち着いた雰囲気の店であった。知る人ぞ知る名店といった趣である。

店の名前は達筆な英語で書かれており、

 

「ええっと…チョコ…チョコ…チョコなんちゃらですわね!」

 

「……まあチョコと読めただけ及第点を上げるわ」

 

あきれ顔をしながらキングヘイローはドアノブに手をかけドアを開けた。そしてドアを開けたまま中に入り、カワカミプリンセスが来るのを待つ。が、彼女は入ろうとしなかった。どこか躊躇しているようである。

 

「どうしたの?入りなさいな」

 

「ええと……私のような者が入ってもいいのかなぁ……と思いまして」

 

一瞬あっけにとられたキングヘイローであったが、ふふっと笑い、

 

「キングである私の連れなのだからふさわしいに決まってるでしょ?」

 

「そ、そうですが……」

 

「それにあなたは姫になるのでしょ?ならこういうところにも慣れておくのも悪くないわよ」

 

そして、手をカワカミプリンセスへと伸ばし、

 

「さあ、この手をとりなさい」

 

まるで母親が子供を安心させるような優しい笑みをカワカミプリンセスに向ける。

 

「……はい!」

 

カワカミプリンセスはその手をとり未知の世界へと足を踏み入れた。

 

 

「これはこれはキング様。お久しぶりでございます」

 

2人が店に入ると男性が話しかけてくる。白シャツの上に黒のエプロンを身に着け、落ち着いた雰囲気を醸し出す初老の男性であった。

 

「久しぶりねマスター」

 

慣れた様子で挨拶を交わすキングヘイロー。彼女はたまにここへ赴き、チョコとコーヒーを楽しんでいた。

 

「おや?そちらのお嬢様は?」

 

マスターはキングヘイローの後ろからおずおずと入ってきたカワカミプリンセスを目に入れる。それに気づいたカワカミプリンセスは背筋を伸ばし、

 

「はい!お久しぶりでございますわ!!マスター!!!」

 

「……あなたは初めてここに来たのでしょう?」

 

「こ、小粋な姫ジョークですわ」

 

そっぽを向きながら震えた声で答えるカワカミプリンセス。顔が真っ赤になっているため説得力は全くない。

 

「ふふふ、面白いご友人でございますね」

 

それを見たマスターは微笑ましそうな表情を浮かべた後、 チョコレートが並ぶショーケースへと2人を案内する。そこに並ぶチョコレートは派手さはないがどれも上品かつ高級感があり、素人の目から見ても明らかに質がよかった。

 

「うわぁ~どれもこれも美味しそうですわね~!……でも高そうですわ」

「あら、そうでもないわよ」

 

そう言ってキングヘイローはカワカミプリンセスに値段を伝えていく。

 

「ビックリするほどやっすいですわね~」

 

市販のチョコレートよりはやや高いがカワカミプリンセスの手持ち金でも十分足りるほどであった。

 

「ほっほっほ、材料費はあまりかかっていないものですので」

 

マスターが少し自慢げにそう述べた。

 

「ではどれにします?」

 

「えーっと、どれも似たようなものでよくわかりませんわね……」

 

「なら味見してみましょうか」

 

「え!?いいんですの!?」

 

「いいわよねマスター」

 

「はい。お客様に満足していただくのが私の使命ですので」

 

 

マスターは食事用のテーブルへと移動させ、椅子を引いて2人に座るよう促す。

 

「では私はコーヒーの準備をして参りますので少々お待ちくださいませ」

 

一礼した後、カウンターの方へと向かう。

 

「あの、ここはチョコレート店ですわよね?カフェではなく」

 

カワカミプリンセスはキングヘイローへと気になっていたことを尋ねる。

 

「もともとはただのカフェだったのだけど、マスターの作るチョコレートに人気が出たからチョコを前面に押し出したらしいわよ。だからコックではなくマスターと呼ばれているの」

 

「へー」

 

などと雑談に花を咲かせていると、

 

「お待たせいたしましたお嬢様方」

 

マスターがトレーに試食品の小さなチョコレート4種と、

 

「こちらが本日のブレンドになります」

 

カップに入ったコーヒーを置いていく。

 

キングヘイローはカップの取っ手を摘まむように持ち、口元へと運ぶ。

芳しい香りが鼻腔を通り抜けていく。その余韻を楽しむかのように目を瞑り、静かに息を吐く。

 

「いいブレンドだわ。そう思うでしょカワカミさん?」

 

キングヘイローがふと視線を向けると、カワカミプリンセスがコーヒーに砂糖をドボドボと入れていた。

 

「え?あ!そそそ、そうですわね!コーヒーはまず香りを楽しむ物ですわね!!」

 

カワカミプリンセスはカップを鼻先まで近づけ、まるでゾウが水を飲むかのような鼻圧で香りをバキュームしていった。

 

「ふうー、堪能しましたわ~」

 

「そ、そうね……」

 

カワカミプリンセスの態度に若干引き気味になりつつ、次にチョコレートへ視線を向け口に運ぶ。ほのかな苦みが舌の上で溶け、濃厚な甘さが後をひく。別のチョコレートも食べてみる。今度はナッツが混ざったさっぱりした味わいであった。

どれもこれも一流の出来であり、キングヘイローは思わず頬が緩んだ。

 

「カワカミさんも食べてみなさいな」

 

「で、ではいただきますわ!」

 

カワカミプリンセスは大きく口を開けチョコレートを丸ごと口に放り込み、ムチャムチャムチャと音を立てながら咀噛していく。

そして飲み込むと、 両手を上げ、 歓喜の声を上げた。

 

「うんまいですわ!」

 

「そう。じゃあこちらどうかしら?」

 

「むぐむぐ……うんまいですわ!!」

 

「……それじゃあ次にこのチョコレートを」

 

「むぐむぐ……うんまいですわ!!!」

 

「……最後はこれよ」

 

「むぐむぐ……うんまいですわ!!!!」

 

「って、全部同じじゃないの!」

 

「こ、細かいことは気にしないでくださいませ」

 

何はともあれ試食は終わった。

 

 

「それでカワカミさん、どれにするか決まったかしら?」

 

「えーっと、では一番最後ので」

 

「かしこまりました。ではおいくつにいたしましょう?」

 

カワカミプリンセスはマスターに渡す予定の人数を伝えた。

 

「はい。それでは少々お待ちください」

 

マスターはチョコレートを詰める小箱を取り出した。

 

「どちらの箱にいたしましょう?」

 

箱の形は丸いものから四角いものまで様々あった。

 

「そうですわね~」

 

カワカミプリンセスは首を動かしながら悩んでいる。すると突然ピタリと首が止まった。

おそらく決まったのだろうとキングヘイローは考えた。が、彼女はカワカミプリンセスの真後ろに立っていため何を見つめているのかが分からなかった。

 

(何を見ているのかしら?)

 

疑問に思い、カワカミプリンセスの目線の先にある物に肩越しから見ようとしたが、

 

「こ、これにしますわ!」

 

カワカミプリンセスが指を差したのは一番端にある丸い箱であった。

 

(視線はそちらではなかったような……)

 

疑問に思ったキングヘイローであったが、注文を聞いたマスターがすぐに小箱を回収しチョコレート詰めとラッピング作業に入ってしまい、尋ねるタイミングを逃してしまった。

 

「では、こちらのお品でよろしかったでしょうか?」

 

マスターが包装された小箱を紙袋に入れ、カワカミプリンセスへと差し出した。

 

「はい!これで大丈夫ですわ!」

 

カワカミプリンセスは紙袋を受け取ると、大事そうに抱えた。

 

「ありがとうございますマスターさん!また来ますわね!」

 

「ご満足いただけたようで何よりです」

 

 

店を出た2人は話しながら歩いていた。

 

「今日は本っ当にありがとうございました!」

 

「ただのキングの気まぐれよ。気にしないで」

 

などと会話をしながら駅につながるメインストリートに着いた2人であったが、

 

「……」

 

「どうしたのカワカミさん?」

 

カワカミプリンセスはジッと後方、チョコレート店がある方角を見ている。そしてキングヘイローへ振り返り、

 

「あの!少々お待ちいただいてもよろしいですの!?」

 

気迫の入った声と表情で尋ねてきた。

 

「え?えぇ、いいわよ」

 

カワカミプリンセスは「失礼いたしますわ!!」と一礼した後、紙袋を抱えながら来た道を戻っていった。

 

「一体なんだったのかしら?」

 

 

約十分後。

 

「ぜえぜえ。お、お待たせいたしましたわ!」

 

全速力で走って来たのだろうか、戻って来たカワカミプリンセスの顔は真っ赤であったがそれ以外は変わりなかった。紙袋も渡されたままのように見える。

 

「何をしてきましたの?」

 

「お、乙女の秘密ですわ」

 

「?まあいいわ。では帰りましょうか」

 

そのまま2人は問題なく帰路に就いた。

 

 

 

バレンタイン当日。

 

平日ということもあり休み時間などでバレンタインの受け渡しが行われていた。

 

カワカミプリンセスもスイープトウショウやダイワスカーレット、ウオッカ、ヒシアケボノ、シーキングザパールなど親しい間柄の者や世話になっている者へチョコレートを手渡し、感謝の言葉を述べた。

 

 

放課後になり、カワカミプリンスはキングヘイローにラッピングされた丸い小箱を手渡す。

 

「はい。いつもお世話になっております。キングさん」

 

「ええ。ありがたく受け取るわ」

 

中身は当然知っているキングヘイローであったが野暮な事は言わず、笑顔で受け取る。

 

「購入した分は全部配ったのかしら?」

 

「あとはトレーナーさんだけですわ」

 

「ふーん」

 

キングヘイローが何気なく紙袋の中を覗くと、

 

「あ!」

 

カワカミプリンセスはとっさに紙袋を後ろ手に隠す。

その様子をキングヘイローは

 

「なるほどね」

 

とクスリと笑みを浮かべながら見つめ、

 

「頑張ってらっしゃい」

 

そう言ってその場を立ち去って行く。

 

残されたカワカミプリンセスはハッと我に返り、ドタバタとトレーナー室へと向かっていった。

 

 

コンコン

 

「し、失礼しますわ!」

 

バンと扉を開け、バタンと扉を閉めてカワカミプリンセスはトレーナー室の中へと入っていった。

 

トレーナー室ではカワカミプリンセスのトレーナーが背を向けながらレース映像を見ていた。区切りが良いところで映像を止め、

 

「お疲れさん、カワカミ」

 

「お疲れ様ですわ!」

 

カワカミプリンセスの方を振り返り、彼女の方へ近づいて行った。

 

「ん?顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」

 

「ち、ちょっとばっかし自主練で走って来ただけですわ。そ、そんなことより」

 

カワカミプリンセスはガサゴソと紙袋からラッピングされた小箱を取り出す。その小箱の形は丸型ではなく、

 

 

ハートの形であった。

 

 

「こ、こちらをどうぞ。チョコレートを買ってきましたの」

 

「ああ、今日はバレンタインか。ありがとう」

 

トレーナーはカワカミプリンセスが差し出したチョコを受け取る。

 

「ハート型か~。心がこもってる感じがするな」

 

「ええ、心を込めて一生懸命選びましたの。……特にトレーナーさんの分は」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いえいえ、何でもありませんわ♡」

 

最後にとびっきりの笑顔をプレゼントしたカワカミプリンセスであった。




AIのべりすとに少し手伝ってもらいました。
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