ちょろ子さんはチョロくない   作:こびとのまち

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ちょろ子さんは挟まりたくない

 もしもあなたが、お姉さん気質の幼馴染とクラスメイトの美少女から同時に交際を迫られたとしたら……果たしてどんな反応を示すだろうか?

 

 両手に花だと舞い上がって、モテ期を存分に満喫する? はたまた、真剣に悩んだ末にどちらかとお付き合いする?

 

 どちらの選択肢を選ぶのもあなたの自由だ。

 だけど、ボクはそのどちらも選ばない。そもそも選ぶ気がない。それなら、他に心に決めた好きな子でもいるのかって? いいや、そうじゃない。

 

「ちょろ子、そろそろいい加減に腹を括ってわたし()()の子どもになろ?」

「チョロちゃん、もちろんうちかて大歓迎やで。()()で仲良くラブラブしようや! 絶対幸せにしてみせるから、な?」

 

 ……今まさにとんでもない爆弾発言をかましたのが、ボクに交際を迫っている親友二人。

 さて、ボクがどちらとも付き合わない理由、お分かりいただけただろうか?

 

「あのね……ボク、カップル(百合)の間に挟まる気はこれっぽっちもないから!」

「ちょろ子って照れ隠しが下手っぴだよね」

「他でもないうちら二人がそれを望んでいるんやから、チョロちゃんは何も気にせんでええのに」

「照れ隠しなんかじゃないやい! それと、二人が気にしなくてもボクが気にするの!」

「「いけず~~」」

「いやいやいやいや」

 

 そう、ボクの幼馴染こと川島晴香と、訛りが印象的なクラスメイトの風切瑞稀は……学園の全生徒が認める正真正銘の百合ップルなのである。

 そしてボク、双葉智代子はこの世に生を受けてから16年という歳月を女の子として生きてきた、周りよりほんの少し身体がちっちゃいという程度しか特徴がない、ごく一般的な女子高生というね。

 まあ、だからそういうことです。はい。

 

「そもそもだけど、二人の子どもになれって何さ? わけわかんないよ!」

「……えっ? だって、わたしたちと普通に付き合うのは無理なんでしょ? だったら、もうそれしかないかなって」

「え〜っと……うん、ごめん。理論が飛躍しすぎていて1ミリたりとも理解できなかった」

「チョロちゃんって、実はアホの子なんやっけ?」

「いや、馬鹿なこと言っているのは寧ろ二人のほうだからね?」

「「ちょっと何言っているのか分かんない」」

「……なんで!?!?」

 

 だめだ、またいつも通り二人のペースに乗せられちゃっている。こんな調子だから、あだ名が「ちょろ子」になっちゃったんだろうな……。ぐすん。

 

 ここでひとつ勘違いしてほしくないのだけれど、ボクはべつに女の子同士の恋愛に対して否定的なわけじゃない。それどころか、寧ろボクってば()()からずっと百合を推しているからね。

 だって、てぇてぇの最高じゃないですか。鑑賞する分には、という当たり前の条件付きだけど。これ、とっても重要!

 

「何度でも言うけどな、うちは三人一緒に仲良くお付き合いしてもええんやで? というか……ぶっちゃけ、チョロちゃんとハルちゃんの両方といちゃいちゃしたいんよ」

「だぁかぁらぁ、何その穢れに穢れた関係性!? お願いだから、安易に新種の三角関係を生み出そうとしないで!」

 

 ぶっちゃけすぎではないだろうか。何にせよ、そんな馬鹿な話を受け入れるわけにはいかない。

 

「ちょろ子、その点は大丈夫。ちゃんとゼロ夫多妻制を採用するから」

「それ、法律から変えなくちゃいけないから! ちっとも大丈夫じゃないよ!?」

 

 うーん、そろそろツッコミが追いつかなくなりそう。マシンガン並みにボケを連発しないでほしい。

 

「もう、ほんま我儘な子やなぁ。そういうところも可愛いんやけど」

「これボクが悪いの!? というか……あわわわっ、急に甘やかすなぁああ」

 

 瑞稀にいきなり頭を撫でられ、ボクは必死に抗議の声を上げる。だけど、幼馴染の晴香に昔から頭を撫でられまくってきた所為で、ボクはナデナデに非常に弱いのだ。ぐぬぬ……。

 

 あれは今から1年と1カ月ほど前、高校の入学式を終えた直後だったか。腐れ縁の幼馴染であるが故に、自然と行動を共にしていたボクと晴香。そんなボクたちに最初に話しかけてきたのが瑞稀だった。

 初めこそ、人見知りな性格のボクとの距離間を慎重に見極めていた瑞稀は……半月も経った頃には遠慮なくボクの頭を撫でまわすようになっていた。これだから、コミュ強の美少女ってやつは恐ろしい。

 

「この前偶然知ったのだけど、『つるむ』って言葉には交尾するって意味もあるみたいね」

「ほほう、ええこと教わったわ。……よし、放課後三人でつるもっか?」

「よし、じゃないからね。そういう意味合いでは、ボクは絶対つるまないよ!? あと、唐突に下ネタ投入するの禁止!」

「ふふっ。顔真っ赤にして可愛いなぁ、もう」

「もしかして、一周まわってうちらのこと誘っていたりするん? あぁん、その表情は反則やわぁ」

「全然違うからぁああああ」

 

 うっかりツッコミを入れてしまったばっかりに、晴香までボクの頭を撫で始めた。だからナデナデには弱いんだってば。

 ほんと何なんだろうね、この状況。それもこれも、晴香の話題のチョイスに他意しか感じられないことと、ノリノリで悪乗りしてしまう瑞稀が悪い。

 

 ……あっ、まさかとは思うけど、本気で()()()気じゃなかったよね?

 いや、君たち二人だけで勝手にイチャコラする分には何も言わないけどさ。寧ろ積極的に後押ししたいくらい。だから、傍観者であるボクのことは巻き込まないで!

 

 そういえば、周りがボクのことを本名の智代子(ちよこ)からもじって、ちょろ子とかチョロちゃんなどと呼ぶようになったのも、二人の悪乗りがきっかけだった。誰がちょろ子だ、誰が!

 今ではあだ名がクラス中に浸透してしまっているのだから、ほんと(たち)が悪いったらありゃしない。

 

「ついでに言うと、ちょろ子って呼ぶのも禁止にしたいんだけど」

「いや、でもねぇ……」

「うちらの為すがままに頭を撫でられて、その上こんなにも惚けちゃっている姿を見たら……ねぇ?」

「ぐぬぬぬぬぬ」

 

 なかなかどうして、ままならないものである。

 

 

 

 

 突然だけど、あなたには前世の記憶ってやつが残っているだろうか?

 

 大丈夫、ボクはスピリチュアルな話がしたいわけじゃない。宗教の勧誘とか始めないから安心して。

 何故いきなりそんなことを問うたのかといえば、それは至極単純なことで……ボクにはそれが残っているから。ただそれだけの話である。

 もしも同じような境遇の転生者がいるならば、ぜひ一度お会いしてみたいものだ。そのときは、思う存分これまでの苦悩を愚痴り合おうではないか。

 

 まあ、転生者だからといってファンタジーな異世界に飛ばされたわけでもなければ、何か使命を背負って人生をリスタートしたわけでもないので、特段これといった面白みはないんだけどね。精々、前世では今と異なる性別で生きていた、という辺りしか特筆することがない。その点だって、彼此12年もこの身体で生きていれば、性自認は立派に女の子なわけだし。

 

 ただし前世で男だった影響か、クラスの男子や男性アイドルにときめいたり、ましてや恋愛感情を抱いたりなんてことは一度もないんだよね。

 だけど、前世の頃のように女子にときめくのかと訊かれれば……それもまたNOだ。いや、だってボクは今も昔も百合を傍から眺めることが大好きな百合愛好家なんだよ? その神聖な領域に不純物の自分が加わるだなんて……いや~、絶対ムリムリ!

 

 そんなわけで、高校2年に進級したタイミングで付き合い始めた遥香と瑞稀の百合な光景を、親友の立場という特等席から鑑賞しながら、ボク自身は独り身のまま第二の人生を謳歌するつもりだった。うん、間違いなくそのつもりだったんだけどね……。ほんと、何がどうしてこうなった!?

 




第1話:プロローグ
第2話:episode 晴香
第3話:episode 瑞稀
第4話:本編

以上、全4話の短編となっております。
ぜひ最後までお付き合いくださいませ。

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