俺は昔から体が小さく華奢な体格だった。男子にはバカにされるし、女子にもからかわれる。
終いにはかわいいとまで言われる始末。15年そんな扱いに耐えてきた。正直、もううんざりだった。
しかし俺にはなにか特別なものや、人より秀でたものがあるわけでもない。俺の唯一の特徴であるそれを手放したら俺はもう誰にも気づいてもらえないのではないか。誰も俺に魅力を感じないのではないか。
そんな気がした。
そんな2つの感情に板挟みにされ、どうすればいいかわからなくなった俺は、この容姿を使って人に復讐しよう。そう考えた。
そこからの俺の行動は早かった。激安の殿堂で女装セットと化粧セットを買い漁り、必死にかわいい女の子の勉強をした。
最大限になりきるため下着を購入し羞恥心を捨てるためそれらを着て街中を歩いた。スタイルをよく見せるためトレーニングもした。
ツイッターのアカウントを作り太モモの写真や女装の写真を載せまくった。いわゆる裏垢女子みたいなツイートをしまくった。
ここまで言えば感のいいやつならわかるだろう。
このツイートに吊られた変態どもをこけにしまくって逃げる。
それが俺の復讐だ。
そして今。その変態の一人目と待ちあわせている。
俺が男だとわかったときの変態の顔を想像するだけで笑いが止まらない。
とうとう人に馬鹿にされて、からかわれるだけの人生が終わりを迎える。
その時が来るのをまだか、まだかと時計を睨みながら待ち続けた。
「もしかして★のKANATA@裏垢さんですか?」
キタっ。俺はニヤケ顔を直し練習した作り笑いを声の方に向けた。
そこには思った以上に太ましく汚い男が立っていた。キモオタとかチー牛とか言われるような感じとは違くて、どっちかっていうとホームレスに近いような感じの汚さで嫌悪感が顔に出てしまいそうだ。
「こんにちは!ター坊さんですね。今日はよろしくです!」
帰れこのやろう。その言葉を我慢して、俺は明るい笑顔でそう言った。
俺がそう言うと男はニヤリと笑って俺の手を掴んだ。
「じゃあ、行こうか。」
ムードもへったくれもない言葉を発するクソ野郎に連れられて俺は歩き出す。
男の手はなにかヌメッとしていて一秒でも早く振りほどきかったがそれを我慢して俺は男に着いていった。
途中なにか気持ち悪いニヤケ顔で話すター坊を適当にいなして5分。着いたのは古臭いラブホテルだった。
まぁ、ラブホテル自体初めてでそしてその初めてがこいつとというのがなんとも言えない。というか若干すでに後悔している。
ベッドまで行ったら男だとバラしてバカにして逃げる
ベッドまで行ったら男だとバラしてバカにして逃げる
ベッドまで行ったら男だとバラしてバカにして逃げる
そう3回心の中で呟いた。
「どうしたのカナタちゃん♡早く入ろうよ。」
ター坊の声で我に返った。いつの間にか部屋の前に来ていたらしい。俺は生唾をゴクリと飲み込んだあと、意を決してその中に入る。
そして足早にベッドの方に行ってそこに座った。
「おーおーヤル気満々だねぇ...」
ター坊はそんな呑気なことを言っている。これから俺のオチンポに絶望すると知らずに可哀想なやつだ。
俺は素早くパンツをぬいで思いっきり自分のスカートめくって恥部をやつに見せてやった。
「残念!俺は男でした!!!!こんなんに釣られるなんてまぬけだなぁター坊!」
目を瞑ってそう叫んだ。数秒の沈黙が訪れる。俺は恐る恐る目を開けてター坊の方を見た。
ター坊は真顔でこちらを見続けていた。
さらにそこから数秒。ター坊が一歩こっちに近づく。俺は一歩後ずさりした。またター坊が一歩こっちに来る。俺は壁に当たった。
ター坊が一歩近づく度に体の震えが大きくなるのがわかった。
表現し難い恐怖が体を縛り付けている。俺は一歩も動けない。
「わからせてあげるよ...」
あれから3年が経った。俺はリングの上に立っている。相手のジャブをガードしながらこっちも左手で相手との適切な距離を探った。
その展開を嫌ったのか相手が仕掛けてくる。速い右手がこちらの顔を掠める。その時試合前に師匠が行ったように左脇ががら空きになっていた。
左脇に右で強烈な一発をお見舞いする。逆方向よろめいた相手にすかさず左フックをお見舞いする。
派手にぶっ飛んだ相手の汗がこっちに飛んでくる。
審判が10数えるとゴングがなって審判が俺の右手をとって上に上げる。
俺はなんとなく師匠の方を向いた。師匠は泣いていた。
確かに三年前に出会った時の華奢な体じゃあこんなことになるなんて思わないよな。
俺は三年前の師匠とのスパーリングで自分が男だとわからせられた。
それから師匠は俺につきっきりでトレーニングに付き合ってくれてここまでこれた。
師匠にボクシング沼に堕とされて今俺はここにいるんだ。