スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION Cross G   作:⌒*(゚∑゚#)*⌒

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開かれた戦端

「遅れてすまない。」

 

「いえ。機龍隊揃っております。」

 

「うむ。」

 

 急遽、伊豆基地総司令レイカー・ランドルフに呼び出された機龍隊はやや遅れて現れた彼に敬礼してから席に着いた。

 機龍隊の顔は厳しく引き締まっている。

 ブリーフィングルームにいる彼らに限らず、最近は基地の空気がピンと張り詰めている。

 つい先日、SRXチームが訓練中にアンノウンと交戦し、未知の技術が使われた飛行可能な機動兵器の情報を持って帰ってきた。

 それによって濃くなった戦争の気配が、伊豆基地を覆う緊迫感の原因である。

 

「さて、時間が惜しいから早速本題に入ろう。諸君らも知っての通り、先日SRXチームが未知の敵と遭遇した。少数ながら飛行できる機動兵器に対してPTは苦戦したようだ。

 また、公にはなっていないが、地球圏にはエアロゲイターと呼ばれる宇宙人が現れ、何度か我々と武力衝突している。」

 

「エアロゲイター……。」

 

「噂は本当だったか。」

 

「詳しい情報はゲンマ少佐と共有済みであるため、後程彼から伝えられる。私からは今内外同時に訪れた危機に対して諸君らに新たな命令を与える。

 機龍隊は今後ゲンマ少佐の指揮に従ってG以外の脅威からも日本を、ひいては地球を防衛せよ!」

 

『了解!』

 

 老いを感じない声を張り上げたレイカーの命令を受けて敬礼をした機龍隊の目を見て深く頷くと、最早言葉は必要ないと言わんばかりに彼は踵を返した。

 そして、彼の後ろに控えていたゲンマに小さく“頼むぞ”、そう伝えて早足に去っていく。

 扉の向こうへ消える彼の背中に敬礼を続けていた機龍隊の手が下がり、全員が姿勢を正して向き直るまでゲンマは感嘆していた。

 機龍隊の敬意を本当に集めるのは難しいからだ。

 類は友を呼ぶのか、ゲンマと同じく単なる立場に対しては絶対に敬意を払わない部下たちが、レイカーのことは本当に尊敬している。

 

「では、今後我々が戦うことになる敵と標的の追加に伴う変化を説明する。直接交戦する第1機龍隊は特に注意して聞け。」

 

 モニターの灯りが点き、虫を模した機動兵器の映像が流れ始めた。

 映像はPTとの戦闘の様子で、ゲンマの説明ではつい先日イングラムの部隊が戦った時のものらしい。

 その機動兵器自体は見たこともない技術系統とは言え個々の戦闘力は飛び抜けて高くはなく、機龍隊の―――……特にオキトやアリスは勝てると確信した。

 

 しかし、問題はそこではない。

 それが地球圏“内”で起きた戦闘であることだ。

 

「既に気付いたと思うが、地球は既に最終防衛ラインを割られて致命的危機に直面している。驚くべきことにエアロゲイターと呼称される彼らは自由に空間転移できる技術を確立しているようだ。一息に大軍を送り込んで来ない理由は分からんが、これ以上我々の星で好き放題させる訳にはいかん。」

 

 そう言い切ったゲンマは続いて2つの画像を並べてそれぞれの説明を始めた。

 1枚は蜘蛛を模した機動兵器のものであり、先のものと連携を取ることや異なる攻撃対象へ対応するためのものだろう。

 単なる機動兵器のバリエーションと考えしまえば大したことではない。

 しかし、2枚目は彼らを唸らせた。

 

「これは、もしや戦艦の類ですか?」

 

「そうだ。機動兵器の運用が可能な戦艦と推測されている。型式番号はAGXー4。」

 

「デカい……。」

 

「他にも多数の兵器を有しているだろう。氷山の一角だと覚悟しておけ。では、もう一方の敵について説明する。」

 

 軽い電子音と共に切り替わった映像はまた機龍隊の面々を驚かせた。

 

「飛んでる……。」

 

「四肢があるってことはPTなのか? でも、単独飛行ができる機体はまだないはずだよな。」

 

「静かに。この機体はつい先日降下してきたT5を攻撃した上、SRXチームと交戦している。全く情報のない機体だが、各所から見られる技術が地球のものだ。目的も所属も不明だろうと敵対する意志がある以上は容赦せんでいい。機龍隊は発見次第速やかに撃破せよ。」

 

『了解。』

 

「では、次に―――……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南極基地壊滅、シロガネ轟沈。

 ビアン・ゾルダーク率いるEOTI機関が反逆の狼煙にした事件の報せは全世界を瞬く間に駆け巡った。

 電波ジャックで世界中で同時放送された反逆宣言と、地球連邦政府が隠していた異星人への降伏計画の情報は軍をも混乱させ、EOTI機関改めディバイン・クルセイダーズに対する動きを鈍らせた。

 そして、遂に伊豆基地にも戦火が届こうとしている。

 

「第一級戦闘態勢だ! くろわしに火を入れろ!」

 

「バックパックの装着急げ! オキト大尉はもう搭乗してるぞ!」

 

 警報が鳴り響く格納庫では整備班が特急で出撃準備を進めていた。

 陸式機龍とくろわし2機、要は第1機龍隊に出撃命令が下されたのである。

 

「MG1からCommand1へ。状況の説明を求む。」

 

〈こちらCommand1。今から数分前に佐世保基地からの支援要請を確認した。現在DCからの攻撃を受けている佐世保を友軍と連携して防衛せよ。〉

 

「MG1、ミッション了解。復唱。友軍と連携して佐世保基地を防衛する。」

 

〈良し。くろわしが離陸する。接続まで待て。〉

 

 通信を終了し、各部のチェックをしているオキトは久しぶりの実戦を前にした己の血が騒ぐのを聞いた。

 6年前、豪雨と逆巻く大風の中に置いてきた何かが、帰ってきた。

 

「もう機龍で戦うことはないかと思ってたが、まだ長い付き合いになりそうだな。」

 

 これまでのデータから、ゴジラは深手を追う度に数十年単位で休眠に入って回復に集中していると考えられている。

 明確には言及されないものの、Gフォースの任務はゴジラの撃滅もしくは最低ラインとして痛打を与えて休眠させることも含まれているわけだ。

 そういう情報も含めた結果、オキトも現役の間に再び機龍でゴジラと戦うことはないだろうと考えていたのだ。

 しかし、時代は彼に安穏とした訓練生活を許してはくれない。

 

〈Command1からMG1へ。ドッキングを開始する。〉

 

「了解。機体に問題なし。ドッキングを受け入れる。」

 

 天井が開放された格納庫の上でホバリングしていたくろわしからワイヤーが伸び、機龍とジョイントして少し機体を揺らした。

 首と尾の根で吊り下げられた機龍が、今新たな戦場に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈間もなく戦闘空域だ。MG1は切り離しに備えろ。〉

 

「了解。DNAコンピューター、エンゲージ。」

 

 モニターの灯りだけだった操縦席に青い光が溢れ、黒いスーツを着たオキトを不気味に彩った。

 今の機龍はオキトの脳波によって火器管制を制御するOSとあらゆる演算を代替・補助するDNAコンピューターを直結することを根幹にしたワン・マン・コントロールが戦闘能力の要だ。

 最大の利点は操縦者がDNAコンピューターと同化することで思考に余裕を持たせ、より正確な判断で戦闘を進められる点である。

 一瞬で兵装のセーフティを解除したオキトは最大望遠で戦場を舐めた。

 

「現地友軍は壊滅。都市部は損傷軽微だが、基地は被害甚大。敵はFー32が18機か。」

 

〈地上パージは危険だ。ここから突っ込め。〉

 

「了解。パージ!」

 

 一瞬の0G。

 

 

 そして、世界が縮まる―――。

 

 

〈グッドキル!〉

 

「次ぃっ!! 墜ちろ!!」

 

 上空から急襲した機龍に叩き落とされた僚機を見る間もなく、顎部メーサー砲で薙ぎ払われた2機の敵戦闘機が爆散した。

 PTや飛行隊に加え、陸式機龍という予期せぬ増援にDC軍の機動が乱れた。

 DC軍の中には元極東方面軍も少なくない。

 長年人類の盾となってゴジラと戦い続けてきた機龍は最早一種の伝説と化している節があり、憧憬の念を持つ者や誇りに思う者が大勢いる。

 機龍と敵対して動揺した航空部隊は大きく距離を開けた。

 

〈護国の龍が何故ここにいる!?〉

〈Gフォースは政府につくのか……!〉

〈俺に機龍を……機龍を撃てって!?〉

 

「混線した? 周波数を再設定……。よし。そこのゲシュペンスト!」

 

〈陸式機龍! オキト・サエグサ大尉か。援軍感謝する!〉

 

「礼は後だ。僚機はどうした?」

 

〈撤退済みだ。私は機龍のバックアップを勤めよう!〉

 

「良し!」

 

 覚悟を決めたのか、反転して長距離ミサイルを撃ってきたFー32の編隊をロックした機龍とPTが迎え撃つ。

 SRXチームは1番機の動きが悪く、今一つ連携が上手くいっていないようだが、機龍とゲシュペンストは凄まじい反応を見せた。

 ゲシュペンストが正確かつ素早い射撃でミサイルを撃ち落とし、腰を据えた機龍がメーサー砲とレールガンでFー32を3機潰した。

 火達磨になった戦闘機が海に落ちていく様を見ながら、オキトは冷静にゲシュペンストの操縦者を賞賛する。

 

「素晴らしい腕だ。名前を聞いても?」

 

〈カイ・キタムラだ。佐世保基地第1PT部隊の隊長をやっている。〉

 

「カイ・キタムラ……? 教導隊のキタムラ少佐!? 先程から失礼しました!」

 

〈緊急時だ。むしろ話が早くてありがたかったさ。〉

 

 機体の重さを感じさせないカイはゲシュペンストを滑るように動かしては機龍へのミサイルを撃ち抜いていく。

 実際のところ、ゴジラとの戦闘経験しかない機龍はミサイル迎撃は得手でない。

 それでも戦闘機までは腕とDNAコンピューターの演算でカバーしているのだが。

 オキトは撃ち漏らしたFー32を味方のメッサーが撃墜したことを確認して標的を変える。

 

「ファイア!」

 

〈グッドキル。MG1、残り6機、いや5機だ。〉

 

〈その声、ゲンマか。借りができたな。〉

 

 SRXチームは2番機が良く動いている。

 そういえばブランシュタイン家の天才が呼ばれたのだったか、と納得したオキトの前に墜落したFー32が滑り込んだ。

 機龍の右足がFー32に影を作る。

 

「あと4。ん?」

 

〈撤退していく?〉

 

 爆発したFー32の反応が消えたレーダーを見たオキトは真っ直ぐ遠ざかる光点に首を傾げた。

 

「新型も増援もなしに退がる局面じゃないと思うが。」

 

 誰もが首を傾げた時、戦闘空域にタウザントフェスラーの反応が現れ、通信にイングラムの声が混ざった。

 どういうことだろうか、そう考えたところに全周波で通信が届く。

 

〈各機へ。敵の戦闘原潜と思われる物体からMAPWの発射が確認された。直ちにこの戦域から離脱せよ。〉

 

〈何!? MAPWだと!?〉

 

「Command1、弾着まで何分だ?」

 

〈待て……。データリンク良し。弾着まで……2分だ!〉

 

「足りる。機龍で迎撃しよう! 弾道予測と環境データを!」

 

〈正気か、サエグサ大尉!?〉

 

〈MG1、100パーセントを求める。〉

 

「了解。エネルギー充填開始。」

 

〈ゲンマ!?〉

 

 機龍のDNAコンピューターがくろわしの観測データと同期してから僅か2秒。

 撃ち出された非核戦術ミサイルの弾道と環境による誤差、機龍の射撃位置とコースのナビゲートを算出した。

 バーニアを噴かせて移動を始めた機龍の上空にはくろわしがぴたりと張り付いている。

 撤退を始めない彼らにイングラムから再度通信が入った。

 

〈Gフォース、何をしている?〉

 

〈我々は機龍を用いてMAPWの迎撃を行う。PT隊は予定通り速やかに退避しろ。〉

 

〈…………了解した。〉

 

「キタムラ少佐の回収もお願いします。それと、そこの1番機も。」

 

〈仲間を置いて逃げるなんてできねぇ!!〉

 

〈リュウ!!〉

 

「1番機の。俺たちにはできることがあるが、お前にはない。駄々を捏ねて僚機を危険に曝すな。帰れ。」

 

〈ぐっ……!?〉

 

〈死ぬなよ、Gフォース。〉

 

 PT隊が遠ざかっていく。

 急に静寂を取り戻した戦場に残った機龍隊は海の向こうを見据える。

 地平線から来る脅威。

 彼らだけの戦場。

 背中に背負う人々の命。

 

〈MG1、今までの戦いと何も変わらん。やれ。〉

 

「了解。アブソリュート・ゼロ、出力最大値で安定。アンカー固定。コース……マッチ。」

 

〈標的、レンジ1に侵入。〉

 

「こちらでも視認した。くろわしは上昇を。」

 

〈無用だ。お前は当てる。〉

 

 望遠による映像とコース予測、カウントダウン、オキトは瞬きもせずに3つのウィンドウを食い入るように見詰める。

 ドクドクと頭の中の血管が轟き、カンマ1秒がゆっくり、ゆっくり、減っていく。

 

 迫り来る弾頭に蒼白い閃光が重なり、時の流れが元に戻ると同時に機龍は咆哮した。

 

「アブソリュート・ゼロ発射ッ!!!!」

 

 人工ダイヤモンドを起点に形成された絶対零度のエネルギー球が氷結させた大気中の水分で尾を引きながらミサイルを呑み込んだ。

 分子レベルで凍結し、結合が脆弱になったミサイルは自身の運動エネルギーによる負荷で瓦解していく。

 何一つ傷付けらない氷片が陽光で虹を見せながら海面に降り注いだ。

 

 

「…………任務、完了。」

 

〈よくやった、MG1。……帰ろう。〉

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