スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION Cross G   作:⌒*(゚∑゚#)*⌒

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黒い竜巻

「ここで撃墜する!」

 

〈大義を成すまで私は死なん!!〉

 

 薙ぎ払うように撃たれたメーサー砲の火線を潜ったAMからレールガンの返礼が振った。

 砲撃を回避したAMが機動力を活かして飛び回っているのに対し、機龍はほぼ定位置で射撃に専念している。

 AMが被弾するか、機龍の装甲を突破するか。

 それぞれ機動性と火力を欠く2機の戦闘は我慢比べの様相を呈することになる。

 

〈何と言う剛性。友の剣でも一太刀とはいくまい。流石は名高き陸式機龍だ。〉

 

「こうも射撃が回避されるか。元教導隊は伊達じゃないようだなぁ!」

 

〈甘い!!〉

 

 3つの兵装による斉射を鮮やかに躱したAMは背後へ背後へと回り込もうとするが、機龍は回転して狙いを着け続ける。

 流石に当たれば爆散する攻撃の合間に指揮をする余裕はないのか、再び戦闘は拮抗し始めていた。

 オキトの特攻は狙いから外れはしたが、奇しくも千日手となってハガネが動き出す時間を上手く稼ぐ結果になったのだ。

 

 操縦桿を引いたオキトは体を締めつけるシートベルトに擦れて痛む肌に眉を顰めた。

 機龍の爪がコンクリートの大地を掻き裂く揺れで敵を見失わないように意識と視界が研ぎ澄まされていく。

 

「コード1412773。リンク領域を3に拡張。」

 

 音声入力でDNAコンピューターとのリンクを1段階上げると、ヘルメットに内蔵された脳波制御装置の光が緑から青に変わった。

 より共有領域を広げることで反応速度と操縦者の制御範囲は著しく上昇するため、機龍の動作は鋭く、精緻になる。

 機体を傾けるだけでレールガンを回避したオキトは、動揺が表れた機動を逃さず今までにない精度の偏差予測でメーサー砲を発射した。

 雷さながらにAMへ吸い込まれるはずの火線が虚しく空を焼く。

 

「これも外れるか。」

 

〈…………流石に死を覚悟したぞ、機龍。〉

 

 あまりに激しい急制動で分身したように見えた敵の腕に、オキトは静かな驚愕を覚えた。

 あらゆる要素を加味し、間違いなく直撃すると確信した一撃だったのだ、

 それを土壇場で下方向へ捻り込んで回避した上に、僅かな高度で姿勢を安定させて墜落を免れた。

 

 しかも、その間に反撃までも加えた。

 

「(右腕兵装パックが……。)」

 

〈トロンベに傷を負わせるとは。父と総帥の眼に狂いはないか。〉

 

「チッ、相変わらずごちゃごちゃと。俺たちの勝ちだな、お喋り野郎。」

 

〈むっ……!?〉

 

 機龍が背にした発艦口から猛々しい水飛沫と共に巨大な影が見えた。

 そう。遂にスペースノア級万能戦闘母艦弐番艦ハガネの雄姿を世界に見せる時が来たのだ。

 

「まだヤるってんなら、ハガネの艦砲浴びることになるぞ。」

 

〈……仕方あるまい。MAPWの照準を艦尾に合わせて足を止めよ。ハガネの対空火器は我々が無力化する。〉

 

「その前にお前を潰す。」

 

〈させると? 今しばらくトロンベと踊って貰うぞ、機龍。〉

 

「ダンスは苦手でな。踏み潰しても文句いうなよ?」

 

 軽口を叩いて余裕を見せたものの、機龍の遠距離兵装は顎部メーサー砲のみだ。破壊された右は勿論のこと、左の兵装パックも既に弾薬はゼロ。

 当たれば良いとは言え、異常な機動力を誇る黒いAMを追い詰めるには手数が足りなさ過ぎる。

 敵とてもう油断や動揺は決してしないだろう。

 カイやイングラムも未だ敵に囲まれて機龍の援護に駆けつけられる状態ではない。

 ハガネの防衛は実質他の者任せだ。

 

〈援護するわ、MG1。〉

 

「くろわし!」

 

 ハガネが離水したことでくろわしも発進できるようになったのだ。AMは不意打ちのミサイルを回避して後退せざるを得なかった。

 そして、その隙を見せれば機龍が距離を縮めて接近戦に移ることができる。

 メーサーブレードを辛くも回避したAMは高度を上げて機龍を牽制した。

 機龍も回避しながら真っ直ぐ突撃する。

 

〈ぬぅ、これは流石に旗色が悪いか。決着は預けておくぞ、護国の龍よ。〉

 

「逃がすか!」

 

〈機動力では負けん。〉

 

 言葉の通り、逃げに徹したAMを追撃できるほど機龍は素早い機体でもなく、そも高度を取られてしまえば見上げることしかできなかった。

 凄まじい速度で遠ざかる敵を睨み付けて唸ったオキトは聞き流していた通信の内容は思い起こした。

 黒いAMのパイロットはライディースの兄で黒い竜巻と呼ばれている……。

 そう、名をエルザム・V・ブランシュタイン。

 

「エルザム……。次は墜とす!」

 

 エルザム・V・ブランシュタイン。

 ゼンガー・ゾンボルト。

 後にオキト・サエグサの好敵手となる2人との一度目の邂逅が今終わった。

 

〈敵部隊が撤退! 戦術ミサイルはレンジ5まで接近! これは……!〉

 

〈何事か!?〉

 

〈対空火器管制システムに異常発生! 正副共に応答なし! 自動照準ができません!〉

 

「最悪のタイミングで……。」

 

〈エネルギーフィールドはどうか!〉

 

〈出力不足です!〉

 

〈ハガネへ。機龍も迎撃に入るが、戦闘の損傷で照準システムに誤差が出ている。成功率は、低い。〉

 

 ゲンマの声で我に返ったオキトは火器管制のシステムをチェックした。

 エラーを吐いているプログラムが幾らかあり、機体の歪みか電子系統の故障か、照準が確かにおかしい。

 これではロックオンしてもあらぬ方向へ射撃する可能性がある。

 取り敢えずエネルギーの充填を始めたオキトはくろわしの指示を待った。

 

〈副長! Rー1のブーステッド・ライフルによる迎撃を提案します!〉

 

〈ライフルで!? 出来るわけがないだろう!〉

 

〈TーLINKシステムでミサイルを“捕捉”できれば可能だ! 後はタイミングさえ合えば!〉

 

〈よかろう。許可する。〉

 

〈艦長!?〉

 

〈ミサイル迎撃はRー1のライフル、陸式機龍、エネルギーフィールドの三段構えで行う! 第1フェーズは陸式機龍、第2フェーズはRー1。〉

 

『了解!』

 

〈Command1からMG1へ。データリンクする。可能な限り誤差修正しておいた。〉

 

「了解。」

 

 今頃はリュウセイの搭乗するRー1も準備しているだろう。先程Rー1での迎撃を提案したロバートというPTの専門家が弾道予測などを行っているはずだ。

 状態の悪い機龍はともかく、ライフルで別の標的を狙うミサイルを撃つなど夢物語に等しい。

 まして、リュウセイはつい最近まで民間人だった。

 

「(外せない……!)」

 

 くろわし以外との通信を切ったオキトは深い呼吸をしてモニターを見詰めた。

 ミサイルはレンジ4を突破した。

 敵陣深く切り込んだ機龍はレンジ3の手前で迎撃する。

 

「目視で確認。ターゲット・インサイト! 胸部開放。アブソリュート・ゼロ臨界!」

 

〈10秒前。〉

 

「最終セーフティ解除。」

 

〈6、5、4、3。〉

 

「2、1、発射!!」

 

 

 

 二度目は、なかった。

 

 

 

「目標健在! 繰り返す! 目標は健在だ! 陸式機龍は迎撃に失敗した!」

 

〈了解! 第2フェーズへ入る! リュウセイ曹長!〉

 

〈りょ、了解!〉

 

〈リュウセイ! 必ず当てると強く念じろ! TーLINKシステムが応えてくれる!〉

 

〈ああ……!〉

 

〈ミサイルを“引き寄せる”のだ。そう意識して撃て、リュウセイ。〉

 

〈引き寄せる……!〉

 

〈目標、レンジ3!〉

 

〈うおおおおおおっ!!! 当たれぇっ!!〉

 

 ハガネのいる方角を見詰めるオキトは引き寄せられるような錯覚を得ると共に、確信した。

 

 “Rー1のライフルは当たる!”

 

 直後、伊豆の空に炎の花が咲いた。

 

「ぐっ……!」

 

 MAPWの爆風に晒された機龍を前傾させて衝撃に耐える。

 数秒、揺れと騒音をやり過ごして機体を起こしたオキトはくろわしから転送された映像に顔を綻ばせた。

 

〈ハガネを確認! 健在です!〉

 

「……はぁー。」

 

〈ご苦労だったな、MG1。帰還だ。〉

 

「りょーかい、Command1。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大尉、メディカルチェックを受けたら休め。明日の訓練も禁じる。」

 

「は? メディカルチェックでありますか?」

 

「そうだ。命令だからな?」

 

「了解。」

 

 きょとんとした顔のオキトを残してゲンマは何処かへ去り、入れ代わりで来たアリスが肩を叩いた。

 人差し指で目を示す彼女の意図が分からず首を傾げると手鏡が差し出され、それを覗いたオキトは眉をしかめた。

 右目の端が真っ赤に充血している。

 シャワーを浴びている間も痛みはなかったが、見た目はよろしくないことこの上ない。

 

「どっかぶったんじゃない?」

 

「かもな。仕方ない。行ってくるか。」

 

「じゃ、私たち出遅れ組は整備の手伝いだから。また後で。」

 

 脱いだジャケットを腰に巻いたアリスに手を振り返し、エレベーターに乗ったオキトは憶えたばかりの艦内図を思い浮かべた。

 実を言うと、ずっと伊豆基地にいた彼は艦船の構造というものに今一つ疎い。

 思い浮かべた虫食いの艦内図には残念ながら医務室が乗っていないようだ。

 

「参ったな……。一階ずつ案内板見てくしかないか。」

 

 そのままエレベーターで1つ上の階に昇っている間にオキトは眠気覚しのガムを噛み始めた。

 極限まで集中して頭を回転させ続けたため、眠気が押し寄せてきたのだ。

 流石に今日は禁止されていなくてもトレーニングは出来なかったに違いない。

 静かに止まったエレベーターから降りた彼は壁に貼り付けてある案内板を見て引き返した。

 

「ぼんやりとは出てきてるんだけどなぁ。」

 

 頭を掻いて溜め息を零した彼はもう一度エレベーターに乗って上の階へ上がった。

 大きな欠伸をして案内板を見に出ると、別の階で呼ばれたのかエレベーターが閉まって去っていく。

 しかし、幸いにも艦尾の方に医務室の名前があった。

 エレベーターを呼び戻す面倒がなくていいと安堵した彼は医務室までの道を覚えて歩き出した。

 

 継続して警戒態勢であることと補給などの諸作業に追われていることで酷く騒々しい状況は医務室周辺でも同様である。

 MAPWの爆風で艦体が大きく煽られた時の怪我人や攻撃を受けた対空火器周辺の人員が運び込まれていた。

 

「怪我ですか!?」

 

「あ、いや。メディカルチェックだから後回しで構わない。そこらで待っているよ。」

 

「何を言ってるんですか。ちゃんと手は足りてるので来て下さい。」

 

「ああ、そうかい?」

 

 鮮やかな深青の髪を揺らす少女に先導されてオキトは白衣の老いた男の元へ向かった。

 伊豆基地の医務室でも勤務していたケンゾウ・コバヤシという男には彼も過去に世話になったことがある。

 ハガネの船医に選ばれたのはSRXチームに同行するためだろうと当たりを着けた彼の推測は概ね当たっていた。

 

「ん? サエグサ大尉かね。」

 

「ええ、メディカルチェックを受けに来ました。」

 

「眼球の充血か。万が一ということもあり得る。賢明な判断だな。」

 

 椅子から立ち上がったケンゾウは着いてくるように告げると、向かいの部屋へ向かった。

 簡易ベッドの間を縫って廊下に出るまでにオキトが見た限りでは、軽傷者ばかりのようで、安堵の息を漏らす。

 初陣から医療班の手が回らないなどという有様では先が思いやられてしまう。

 

「では、君は向こうのベッドに寝ていてくれたまえ。」

 

「はい。」

 

 透過写真を撮るために機器のベッドに寝転がったオキトは今日の戦いを思い出していた。

 エルザムという男。彼とは長い付き合いになるだろうという予感がしていた。

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