スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION Cross G 作:⌒*(゚∑゚#)*⌒
伊豆基地を発って幾日が過ぎただろうか。海溝を潜行していたハガネが待ち伏せによってテスラ・ドライブを損傷し、轟沈寸前まで追い詰められたことや元教導隊のテンペスト・ホーカーの襲撃。
消耗を強いられながらもそれらを退けてきたオキトたちは奪取されてDCの太平洋拠点と化しているウェーク島に迫っていた。数多くの長距離砲台を有した基地は難攻不落と名高く、機動性に欠けるハガネは接近不可能であると結論が出ていた。
故にブリーフィングでは如何に基地からの砲撃を掻い潜って砲台を沈黙させるかという点に論点が集中していた。
「広範囲に展開して敵の狙いを分散し、機動部隊が突入する。高高度から航空機、水上からPT隊、水中から機龍が突入して人工島の砲台を破壊した後、基地内の混乱に乗じて接近したハガネの艦砲射撃で一気に制圧。
なお、PT隊にAMの迎撃が集中すると思われるため、航空機と機龍には優先して砲台を叩いて貰いたい。」
「敵地にてテンペスト・ホーカーと戦うこととなる。警戒を厳にし、決して孤立しないように。」
ゲンマとイングラムによる作戦説明がされ、戦場の見取り図を頭に叩き込んだ一行の顔はいつにも増して緊張感が表れていた。
誰が見ても厳しい戦いになるということは確かである。敵砲台を射程に収めるまでは一方的に撃たれ続けなくてはならず、必然そこで何の成果もなく撃墜されることさえある。
リュウセイやアヤの表情は険しく曇った。
「了解しました。機龍は迅速に砲台を排除して後続の安全確保に努めます。」
「(やれやれ、一番危険な配置だろうに。)」
イルムガルト中尉は険しい視線を密かにオキトへ向けた。逸る兵士は長生きできないからだ。Gとの戦いに幕を下ろしたことで彼は何か変わってしまったのではないか、とイルムガルトの勘が囁く。
Gフォース全体もそうだが、オキトは好戦的というか、前のめり過ぎた。まるで力尽きる前の獣が倒れかけながらもさ迷っているように。
そんなおかしな想像を膨らませていたイルムガルトにイングラムの声がかかった。
「本作戦から機種変更したラトゥーニ少尉とエレメントを組むことになる。各自連携を確認しておくように。」
「了解。」
「また本作戦では航空機隊も編成を変える。くろわし2番3番機も攻撃隊に加わるため、ジャーダ少尉とガーネット曹長はアリス少尉の指揮下に入るように。
臨時飛行隊1番機くろわし2番アリス少尉。
2番機くろわし3番アルフレッド曹長。
3番機メッサー1番ジャーダ少尉。
4番機メッサー2番ガーネット曹長。
以上の編成で爆撃を行って貰う。」
『了解!』
「では、解散。」
ウェーク島を防衛する任についた兵士たちは鉄壁を誇る基地が見る間に陥落した要因について必ず3つのことを挙げるという。
1つは司令官がテンペスト・ホーカーから見たこともない若い男に変わったこと。
2つ目は海中から来る機龍に対して戦闘原潜しか対抗戦力がなかったこと。
3つ目は突如飛来したアンノウンによって基地の砲台が一掃されたこと。
あんな理不尽なことがなければまだウェーク基地はハガネに対して善戦しただろう、と。
〈交差4!! 魚雷全弾回避されました! 正面距離20!〉
〈回避ーっ!!〉
〈間に合いません!! 接触します!! ああぁぁあぁぁぁ!?〉
「ハバナ轟沈!! 機龍来ます!」
「何としても撃墜しろ! 魚雷1番から4番発射!」
「発射確認! 機龍90度転進!? 当たりません!」
「回頭急げ!」
海中の戦いは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。冗談の様な機動性を見せる機龍に魚雷は当たらず、次々“輪切り”にされて水柱となる戦闘原潜。
最早統制を失って魚雷を乱れ打ちする潜水艦と機龍は正に前時代の軍隊とGだ。
「取り付かれましたッ……!!」
轟音を立てて揺れた原潜のクルーたちが1拍の静寂の間に瞼を閉じると、鋼が切り裂かれる悲鳴が響き渡り、爆炎と海水が原潜を飲み込んだ。
防衛戦を完全に食い破った機龍が人工島の支柱に襲い掛かる。
誤射を恐れる原潜の前でメーサーブレードが支柱を切り裂いて人工島が沈没し始めた。飛行隊の爆撃も成功したのか、海中まで重低音と震動が響き渡っている。
ウェーク島の防衛網は完全に引き裂かれてしまった。機龍も浮上して直接攻撃を仕掛けに向かっている。
〈き、機龍!? 原潜は何をやっ〉
〈隣がやられた! 爆撃を何とかしてくれ!! ひっ!?〉
最後の人工島も火を噴き、機龍が島の滑走路に砲撃を始めた直後にPT隊が追い付き、遅れて出てきたAMとの戦闘になった。
何故ここまでAMを温存していたのか。海上でPTを迎撃させていれば機龍に放火を集中させることで滑走路を破壊されることなく飛行隊も上げられただろう。
〈何だ!? 速いぞ!〉
レーダーに現れた光点の移動速度は敵味方問わず驚愕させた。航空機を遥かに上回る飛行速度だ。
真っ直ぐ基地を目指して飛ぶアンノウンの存在に緊張が走る。
「この性能はきっとビアン総帥の新型に違いない! 援軍が―――……!」
〈サイ・フラァァァシュ!!〉
蒼白の光が基地を洗った。
雷のような光は兵器という兵器を根こそぎ蒸発させていく。
一瞬にして、ウェーク基地は裸にされた。大火に沈む基地を睥睨する風の魔神は悠然と内部へ消える。
生き残ったDCの兵士は遂に絶望した。
「休む間もないなぁ。」
ウェーク島での戦いから時計の短針が1周もしない内に第一種戦闘態勢に入り、オキトは訳も分からない内に機龍の操縦席に座っていた。
通信で行われている状況説明も今一つ要領を得ない。テスラ・ライヒ研究所の機体から通信が入り、イルムガンドとマサキとかいう男が飛び出していったらしい。
オキトには何のことだかさっぱり分かっていないが、DCの追手を撃退するという要点は押さえられた。
「マサキって誰だ……? ん、機体良好。整備班に感謝。」
〈間もなく戦闘空域に入ります。発進に備えて下さい。〉
一足先に発進したくろわしから送られてきた映像にはウェーク島で最後に現れたサイバスターと人型の特機が映っていた。敵はいつものAMと、いつぞやの黒い指揮官機も確認できる。
その姿を見たオキトは操縦桿を握り直して兵装のセーフティを解いた。気を尖らせて待つ彼の通信機からオペレーターのカウントダウンが聞こえた。
射出体勢を取らせ、陽光が差し込む発進口のその先を見据える。
〈オールクリア。陸式機龍発進良し!〉
「機龍、発進!!」
空を切り裂いて弾丸のように飛ぶ銀の龍は初めから決めていた宿敵への道を直進した。見る間に近付いていくレーダーの光点。
空と海の青さも何もかもごちゃごちゃになった景色が通り過ぎた先に飛ぶ竜巻が一早く牙を剥く。スタビライザーで機動を乱した機龍の傍を超音速で撃ち出された鉄塊が飛び抜けた。
機龍のメーサー砲もAMには当たらず、機体を起こしたオキトは島に機龍を着地させる。
サイバスターと特機を攻撃していたDCの背後を突いた形でエルザムとオキトは睨み合う。
「今日は逃がさない。」
〈フッ、運命を感じざるをえんな。〉
僅か一瞬だった膠着の後、機龍と黒いAMは凄まじい勢いで動き出した。機龍が背面火力に欠けると見抜いたエルザムと正面に捉え続けたいオキトは二重の軌跡を画く。
エルザムはハガネのPT部隊が合流したことで劣勢になった部隊を指揮したくとも、一瞬でも集中を欠けば命取りになる。オキトは敵の指揮系統を乱すためにエルザムを撃墜するか、余裕を奪えばいい。
全力で倒しに行くことが両者共に勝利へ直結している。
「ク、ォオオオ!!」
〈ハァアアアア!!〉
機龍には機動力。AMには火力。どちらも敵を葬るための決定力が足りない。先に補った方がこの戦いを制することは明らかだった。
木々を薙ぎ倒して向きを変える機龍と右に左に回り込んでレールガンを撃つAMの銃火が華の様に広がる。
砲火で火事を起こした森とレールガンの雨の中にいた機龍が蜃気楼で歪み、エルザムはその威容に頬を緩めた。夢幻を貫いて飛来する3門のメーサー砲を回避した彼はレールガンの引き金を引く。
装甲と火花を散らした弾丸を見ると、かなり後退した戦列を確認して勝利を捨てたエルザムが撤退命令を出した。
〈埒があかん。各機撤退せよ! これ以上の戦闘は無意味だ。撤退せよ。〉
「またか、エルザム!!」
〈焦らずともいずれ決着の時は来るだろう。私とお前が敵である限り……。〉
空高く飛び上がったAMに歯噛みするオキトはメーサー砲を撃つが、遥かに離れた敵はスルスルと回避して見る間に小さくなっていった。
不完全燃焼に終わったオキトはヘルメットを外すと深く熱い息を吐き出す。同時に排熱した機龍が重低音を響かせた。
「あー、もう……溜まるなぁ。」
今回短めです。