ACEを目指す未熟者   作:自由の魔弾

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8年目にして初のリメイクです。完全別視点&曲がりなりにも継続は力なりってところを見せていきたいです。


ACE 1 始まる物語

「……うぅ、う〜ん…。あれ…?今何時……はぇ!?嘘っ、もうこんな時間!?何で起こしてくれなかったんだよぉ……って、そうか。義姉さんは先週引っ越したんだっけ。ていうかそんなこと言ってる場合じゃな〜い!!」

 

時は遠くない未来、何処かの国のとある場所……って、そこまでぼかす必要はないだろう。舞台はここ日本、それもそれなりに人流の混み合う住宅街。その中の一軒家に住む少年は慌ただしく身支度を始める。時計の針はもうすぐ午前8時を示そうとしていることから、既に許容範囲をとうに超えていることが側から見ても分かるだろう。

少年は急いで新品の制服に袖を通すと室内に置いてある鏡に自分の姿を映す。ふとカレンダーに視線を移動させると、今日という日付に赤い丸が記してある。そこには太字で“入学式 当日!”というおまけ付きで。

 

「流石に入学式の初日から遅刻じゃカッコつかないよぉ……これで、よしっ!時間ないから朝は軽くでいっかな」

 

少年はテーブルの上に置いてある食パン1枚を取り出し、ささっといちごジャムを塗って口に運ぶ。その際に日課となっている朝の占いの結果をチェックするためにテレビを点ける。が、既に時間が過ぎていたのか次の番組が始まってしまっていたのを確認してしまい落胆する少年。

 

「くぁ〜、完全に見逃したぁ!ついてないなぁ……んっ?」

 

目的の占い結果を見逃したショックでそのままテレビを消そうとする少年の目に、何やら興味を惹かれるCMが流れてくる。昨今の世界情勢を鑑みるに欠かせない“IS学園”についてのCMだった。ISは約10年前に初めて確認されその実態は現在も判明していないが、噂では戦車よりも強く戦闘機よりも早く飛べるのだとか。そんな危ない代物は当然世界各国で奪い合いに発展する程だったが、いつの日か締結したアラスカ条約によって軍事兵器からスポーツへとその存在意義を変えていき、今ではISの操縦者を養成する学校まであるほどだ。しかし発表当初はその絶大な力に国家や政府そして多くの国民が魅了されたが、このISという存在には世界の根幹を揺るがすほどの致命的な“欠陥”が判明するのだった。

 

「ふ〜ん……ま、女の人にしか扱えないんじゃなぁ。おっと、こうしちゃいられないや。急げ急げ〜!」

 

少年はそこでテレビを消して鞄を持つと、一目散に家を飛び出た。そう、少年の反応は至って普通なのだ。どういう訳か知らないが“男性はISを扱えない”という事実は覆らないのだ。つい最近、男性でありながら何故かISを扱える人間が発見されたという例外を除けば。それでも殆どの男性にとってはISは人生に不必要な存在であることに変わりはないのだという。そう、それはこの少年にとっても……。

 

「よ〜し、新車のお披露目だぁ!新型自転車の実力、見せてもらうぞ〜!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「(うぅ……流石にこの状況はくるな…。そりゃそうだよな、この学園の殆どは女子生徒で男は俺だけだもんなぁ……あぁ〜!何であの時動いちまったんだよぉ!?)」

 

同じ頃、もう1人の少年も危機的状況に陥っていた。その少年の名は織斑(おりむら) 一夏(いちか)、世界唯一のISを扱える男性だ。一応、何故このような事態に陥ってしまったのかことの顛末を説明しておこう。

事件は数週間前、とある高校の試験会場にて起こった。当日、遅刻した彼は誤って“IS学園”の試験会場に迷い込んでしまい、挙句に試験用のISに触れてしまい見事に起動成功。そして、その事実は瞬く間に全世界へ発信されてあれよあれよという間に入学手続きが進められ現在に至るという。

 

「はぁ……これじゃまるでパンダの気分だぜ。せめて誰か1人でも知ってる奴がいてくれたらなぁ……んっ、あれって?」

 

気疲れした一夏はふと窓際の席に視線を移すと、そこに見知った人物がいることに気がつく。そして、これ以上胃が痛くなるのを防ぐために席を立ってその人物のもとへ向かった。

 

「箒?やっぱりそうだ!俺だよ、織斑 一夏だよ!ほら、小学校で一緒だった……憶えてないか?」

 

一夏が話しかけた相手、それは長い黒髪をポニーテールに結んだ古風な大和撫子を体現したような少女は篠ノ之(しののの) (ほうき)だ。突然話しかけられた箒は一瞬硬直するも、すぐに気を取り直し妙に堅苦しい口調で返答する。

 

「っ!お前、一夏か…忘れるはずないだろう。というか、大丈夫か?少しやつれているみたいだが…」

 

「ハハッ、間違ってISさえ起動させなければなぁ…。お陰で自由もなくなっちまったよ」

 

「あまり愚痴るな。まぁ、気持ちは分からんでもないが……私も“篠ノ之 束”の妹だからというだけで既に甚大な被害を受けたからな」

 

箒がどこか神妙な面持ちでそう呟くと、それにつられて押し黙る一夏。そこには表面上の言葉では伝わらないほどの深い感情が込められていることには気づかずに…。

 

「皆さ〜ん!おはようございます♪朝のHRを始めますので、席に着いて下さいね〜」

 

そんなやりとりを続けていると、教室の扉が開き誰かが入ってくる。言葉から察するに教師なのだが。教師なのだが…?

 

「えっと……中学生?」

 

「にゃ!?わ、私は先生ですぅ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ〜、今日は災難だったなぁ。結局入学式には間に合わなかったし買ったばかりの自転車は速攻で壊れるし、挙句にはそのまま制御不能になって不良の溜まり場に突っ込んでカツアゲされたし……なけなしの諭吉さんがぁ…」

 

その日の放課後、やけにボロボロになりながら帰路に着く少年の姿があった。その姿を側から見た人は、今日という1日がどれほど壮絶だったかをすぐに感じ取れるだろう。しかし、不思議と苦に感じているわけではなさそうだ。

 

「まぁ、これ以上は無いよなぁ。あっても空から起動兵器が落ちてくるとか?ハハハッ、流石にテレビの見過ぎか……やばっ!今日の夕飯の食材、買いに行かなきゃだった!タイムセール終わっちゃうよ〜!?」

 

少年はそれ以上気にも留めず、街中のスーパーへ足を進める。だがそれはこの世界の住人にとってごく当たり前の反応である。そう、この世界に存在する“非日常”はあくまで自分たちとは何の関連性もない者達が殆どなのだ。世の中はISを中心に回っているとはいえ、その全ては外部から一方的に流される情報によるものであり、一部の人間以外の人生には何も関係ない。どう足掻こうと接点さえあり得ないという理は不変なのだ。

 

「近道、近道……「あぁん?うおっ!?」へっ?おわぁああ!?」

 

建物の曲がり角に屯していた不良達とそこをドリフト気味に駆け抜けていた少年が見事に激突する。しかも運の悪いことにこの不良、少年と浅からぬ因縁があるようで…。

 

「テメェ…!朝のでまだやられ足りねぇってかァ!?それとも俺様に仕返しに来やがったか!?あぁ〜?」

 

「ちょ、待って待って!持ち上げるの勘弁!?地面に足着いてないから!」

 

リーダー格の不良が少年の胸倉を掴んで持ち上げる。少年の背丈が年齢の割に小さいとか全然関係ない。絶対に関係ないのである。

 

「なぁ、龍司。丁度金足りなかったし、こいつから追加で巻き上げようぜ」

 

龍司と呼ばれたリーダー格の不良が悪い笑みを浮かべ、仲間の提案に乗る素振りを見せる。

 

「てな訳だ、ちっと恵んでくれよぉ〜。俺達の仲だもんな、当然貸してくれるよなぁ?んん?」

 

「か、勘弁してくださいよぉ!?朝ので僕の財布はもうすっからかんなんですからぁ!うわぁ!」

 

龍司に掴み上げられた少年のポケットから、小銭がチャリンチャリンと……この事実が龍司の怒りを更に燃え上がらせる。

 

「テメェ…俺をおちょくってやがるのかァ!!まだ金隠し持ってんじゃねぇかよォ?これ以上痛い目に遭いたくなきゃ有金全部置いてけやァ!!」

 

龍司は少年を掴み上げたまま顔面目掛けて強烈なパンチを繰り出し、それをもろに受けた少年は地面に倒れ伏す。そして、龍司の仲間が追い討ちをかけるように倒れている少年に蹴りを入れる。

 

「グゥ…カハッ…!?」

 

情け容赦のない理不尽な暴力を受け、思わず意識を手放してしまいそうになる少年。無慈悲にも周りを行き交う人間達が助けに来る気配は無い……少年は静かに自分の不安を呪った。1日で二度も同じ不良に絡まれる確率なんて如何程か?それに加えて買ったばかりの自転車が壊れて不良の溜まり場に突っ込む確率は?どうして自分ばっかりこんな目に…そんな思いが少年の心を支配しかけたその瞬間、それは突然姿を現した。

 

「うわぁああああ!!!どいてどいてぇ〜っ!?」

 

突如として少年の頭上から轟く衝撃音。戦闘機を彷彿とさせる推進力を持ったそれは少女の悲痛なアナウンスと共に遥か上空から少年のもとへ飛来し急降下…もとい墜落した。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「全く…まともに挨拶も出来ん弟に、脳内お花畑のひよっこ共か。毎年こうも面倒な輩ばかり入学してくるのは何故だ?まさかわざと私のクラスに集中させているんじゃないだろうな…」

 

舞台は再びIS学園に戻り、こちらはこちらでまた一波乱巻き起ころうとしていた。事の発端は織斑 一夏の自己紹介の際、しどろもどろになった彼を背後から強襲した彼の姉である織斑(おりむら) 千冬(ちふゆ)の登場だった。一教師でありながらIS学園に通う生徒からカリスマ的存在でもある彼女、何を隠そう彼女は第1回モンド・グロッソの総合部門および格闘部門優勝者であり公式試合では無敗、総合優勝を果たしたことから誰もが認める世界最強のIS操縦者だった。その美貌や実力に憧れを抱く者は多く、敬意をもって“ブリュンヒルデ”という最強の称号で彼女を呼び慕う者も少なくないのだとか。そんな彼女がクラス担任を務めると知り、また歓喜の叫び声が響き渡ることに頭を悩ませるのだ。

 

「あ、あはは…まぁ、それだけ慕われているって証拠なんじゃありませんかねぇ?」

 

そんな千冬に対して和やかな口調でフォローを入れる女性。彼女は副担任の山田(やまだ) 真耶(まや)、温和な性格とドジっ子気質というマッチングにより若干子どもっぽく見られがちだが恐るべきは目を見張るほどの巨乳だ。その背格好からは明らかに不釣り合いな双丘が揺れる度に周囲の視線を釘付けにする罪な存在。

 

「にしても限度というものがあるだろう…むっ?」

 

愚痴る千冬だったが、職務用のデバイスに通知が来ていることに気づく。周りに悟られないようにデバイスを確認する千冬だったが、その内容を見た瞬間全身にに電撃が迸る感覚に襲われる。

 

「山田先生、ちょっと此方に」

 

「?」

 

千冬はすぐさま教室の外に真耶を呼び寄せる。そして、訳もわからず言われるがままについてくる真耶にだけ見えるようにデバイスを見せる。

 

「織斑先生、どうしました?……へっ!?こ、これって…!」

 

千冬からデバイスを見せてもらった真耶はその内容を確認し思わず上擦った声をあげるも、すぐに千冬が彼女の口を押さえて落ち着きを取り戻す。

 

「落ち着いて下さい。とにかく私はこれからこの件の対処に向かいます。不在の間はこのクラスのこと、お願いしますよ?」

 

「…っ、はい!お任せ下さい!この山田 真耶、副担任としてビシッとクラスをまとめあげちゃいますよぉ〜!おぉ〜♪」

 

憧れの千冬からの頼まれごとに舞い上がったのか、見るからに奮起し教室に戻っていく真耶。そんな後輩の頼もしい姿を確認した千冬は一瞬小さく息を吐き、気を引き締めて駆け出した。未だ開きっぱなしのデバイスには次のような通知が表示されていた。

 

『現在、東京郊外にて所属不明のISが出現中。既に教員3名が対応に向かうも対象は驚異的な戦闘能力を有しており、至急織斑 千冬の協力を求む』

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「……んっ、うぅ…な、何だぁ?一体何が起こって……っ!?」

 

少年は微睡む意識の中、ぼんやりとした視界を懸命に開く。すると、そこには目を疑う光景が飛び込んできた。

目の前のコンクリートが何かによってひび割れ、頭上には飛び交う複数の人影。逃げるように飛び回る1人の人影に対して容赦なく発砲する3人の起動兵器。しかし発射された弾丸は着弾することなく、全て天空に吸い込まれていく……いや、それほどまでにあの起動兵器の能力が桁違いなのだと理解させられる。そういえば記憶違いじゃなければ、気を失う直前に女の子の声が聞こえたような…と少年の脳裏にふと過ぎる。

 

「嘘だろ…これって映画かなんかの撮影?ふんぬっ…!くあああ!!痛い痛い痛い〜っ!?ゆ、夢じゃない…!じ、じゃああれってやっぱり“IS”なのか?」

 

少年はまだ夢の中にいるんじゃないかと自分の頬を抓るも、そこには当然激痛が襲いかかってくるわけでその場で悶える始末。だがこれで目の前の光景が夢や幻ではないことが確信に変わった。

 

「…でも、だからって僕には何も出来ないし。巻き込まれないうちに早く逃げないと……んっ?あれは…」

 

少年は急いでその場を離れようとするが、その視線の先に龍司の姿を見つける。しかし、龍司の周囲には先程のIS同士の攻防によって崩壊した建物の瓦礫が散乱していた。その場で座り込んだ龍司の様子を不可解に感じた少年は、おぼつかない足取りで龍司に近づく。すると、龍司もまた少年の存在に気づいたのか妙にバツの悪い表情を浮かべていた。

 

「クソッ!アイツ等、簡単に見捨てやがって……お前は!?」

 

「君、足を怪我してるの?友達はどうしたの?」

 

少年の問いかけに龍司は無言を貫く。それはひとえに肯定を意味していた。

 

「ふーん、まぁいいや。早く逃げないと今度は命を落としちゃうよ。ほら、行くよ?」

 

「お、おい…!お前、何で…」

 

少年は龍司を背負うと、頭上のIS同士の戦闘に巻き込まれないように正反対の方向に歩みを進める。少年の突然の行動に龍司は戸惑いを隠せない。ほんのついさっきまで自分を痛ぶった相手を何の躊躇いもなく助けられる?いや、そんなことはしない。多少なりとも恨み辛みが募って見捨てるのが普通だ。じゃあ目の前の少年は?

そんな龍司の疑問に答えるかのように、少年は憮然とした態度で言い放った。

 

「別に同情したんじゃないよ。ただ目の前の命にどれも違いは無いから…だよ」

 

口元には殴られたことにより血の痕が残っており、袋叩きに遭ってまともに歩けない少年。その原因を作った龍司に対して、少年は見捨てることをせずに助けるというのだ。上っ面だけの仲間とは違う、本当に友人と呼べる人間を見つけたと後に龍司は語る。

気がつけば龍司は少年に問いかけていた。

 

「俺は龍司だ。お前…名前は?」

 

少年は戸惑いつつも、一拍置いて自身の名を答え…。

 

「えっと、僕の名前は……あっ」

 

「あっ?」

 

「ごめん、龍司くん。なんかミサイル来たっぽい…!」

 

「はぁ?おいこんな時に冗談は……って、マジかよォ!?」

 

答えられなかった。頭上のISを狙った小型ミサイル群はどういうわけか少年と龍司の方向に誘導されるように向かってきたのだ。

正に絶対絶命である。

 

『うわぁああああああっ!!!』

 

少年と龍司の悲鳴が木霊するその刹那、彼らの目の前が強烈な光に包まれた。

 

 

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