魔王(中身一般人)と仮面少女(無表情魔法使い)の異世界道中 作:クラウディ
おかしいところが大量にあるかも……。
でも、温かく見守ってくれたなら幸いです。
草木が生い茂る大森林の中、俺と目の前にいる少女は立っている。
「あなたは何者?」
そう問いかけてくる目の前の少女は、ひどく幻想的な雰囲気を纏いながら、
俺の首に刃を向けていた。
「(いや、俺も良く分かっていないんですけどぉ!?)」
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-DIVE TO GAME-
帝暦2XXX年――
世界の大半を支配した通称“大帝国”は恐るべきGAMEを開始した。
征服した国々の支配を磐石にする為、反逆の芽を摘む為、見せしめとも言える残酷なショーを大々的に開催したのだ。
狂気としか思えぬ、その内容とは――
属国となった国々からランダムで“プレイヤー”と呼ばれる国民を集め、最後の一人になるまで殺し合わせるというもの。
大帝国はそれらを世界中に放映し、公のギャンブルとした。
誰が勝ち残るか、二番目に残るのは誰か、最初に死ぬのは誰か?
残虐かつリアリティ溢れる内容はある種、映画などを遥かに超えたものであり、大帝国の民――神民の心を鷲掴みにしていったのだ。
全世界へ流されるGAME――そこでは幾多のドラマや悲恋が生まれ、生き残る為に、何の恨みもない他人を殺す“剥き出しの人間”の姿を見る事が出来た。
人間競馬、人生ゲーム、蜘蛛の糸、GAMEには様々な呼び名が与えられ、暇を持て余した大富豪達がGAMEへと注ぎ込む莫大な賭け金は、次第に国家の重要な資金源と化していった――
選ばれる側の“国民”は日夜、恐怖に怯え。
見る側の“神民”は、狂気の娯楽に酔い痴れた。
「GAME」
勝ち残った一人に与えられるのは莫大な財産――そして、神民への切符。
但し、それ以外の参加者に待っているのは例外無く、死であった。
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西暦2016年 日本――――
「このイベント、懐かしいな……」
今まさに、そんな恐ろしい“ゲーム”に参加している男が居る。
だが、彼の表情には怯えも恐怖も無い。
彼の名は
勝手知ったる何とやら、とでも言うべきか。
彼はこのゲームを個人で運営している男であり、全てを知り尽くした会場に恐るべき何物も存在しなかった。
何よりゲームはPC画面の中にあって、現実に何の影響を与えるものでもない。
「長い趣味になったな」
ぽつりと、消え入りそうな声で男が呟く。
このゲームが動き出したのは2001年、世はインターネットの黎明期であった。
そして、今や2016年である。15年ものの骨董品、そう呼んで良いだろう。
その長い歴史も――――今日で終わる。
男はカタカタとキーボードを叩き、時にはマウスを激しく動かし、ゲーム画面を次々に切り替えていく。
その様を見ている限り、特に目的らしい目的はないのだろう。
ただ、画面に映る全てを網膜に焼き付けようとしている――そんな姿だった。
(もう少しで0時か…………)
いつもはゲームの開始を告げる時刻だが、会場には男一人しか居ない。
0時になればサーバーの契約が切れ、ゲーム会場は丸ごと消し飛ぶ。男は大勢での別れではなく、一人での別れを選んだのだ。
(15年は長すぎたな……)
義務教育より長い期間のゲームなど、普通に考えればありえない事だ。
現にゲームが始まった当時は中学生だったような子らが、今では立派な社会人となっているのだから。
中には結婚し、立派な親となった者も居るし、海外へ行った者も居る。其々が責任ある立場となり、自由な時間を失っていったのだ。
――それらはある意味、健康的と言うべきだろう。
男とて例外ではない。
かつては自由気ままにゲームの改造へ熱中し、時には睡眠すら忘れてゲームの運営へ没頭していた男も、年月と共に立場が出来上がり、仕事に大部分の時間を取られるようになっていった。
「次はどのエリアに行くかな……」
男はこのゲームのラスボスとも言えるキャラへログインし、時間ギリギリまで各地を歩く。時にそこは住宅街であったり、辺鄙な寺であったり、底の見えない深い池などであった。
その一つ一つが、男にとっては忘れ難い場所なのだろう。
23:58:20
「九内、お前もお疲れ様」
男が画面内のキャラへと話しかける。傍から見ればちょっと怖い光景だ。
画面の中では、優に肩まで届きそうな長い髪をした男が居る。
歳は軽く40を超えているが、その肉体は極限まで鍛え抜かれたものであり、その容貌は何処までも鋭い。
設定では大帝国の高官にして、この悪名高いGAMEの主催者でもある。
――
このGAMEによる犠牲者アクセス数――4143792人という膨大な流血と嘆きを生み出した、大帝国における魔王。
終焉の時を迎えるこの時であっても、その顔には酷薄な瞳が張り付いており、浮かべている冷笑はまるで変わらない。
九内の姿に何か感じるものがあったのか、男が軽く身震いする。
「まさか、最後の瞬間をお前と過ごすなんてな……夢にも思ってなかったよ」
男は九内の鋭い視線から逃れるように、それだけを言った。
その言葉を受けても、九内の表情は変わらない。当たり前だ――彼は操作されなければ動けない、ただのNPCに過ぎないのだから。
だと言うのに、男は何かから逃れるように矢継ぎ早に言葉を吐き続けた。
「何だか不満そうな面だな? 言っとくけど、お前がラスボスだろうが魔王だろうが、リアルには勝てないんだよ。まだ遊び足りないってんなら、勝手に続きをやってくれ――俺は明日に備えて寝るさ」
23:59:50
「じゃあな、九内。それと、お休み――――XXXXXXXXX」
00:00:00
男が万感の思いを込めて目を閉じ、次に開いた時――
視界に映ったのは“大森林”であった。
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「…………」
とある真っ暗な一室。
そこにはまるで人形の如く微動だにしない女性が、芸術品のような椅子に座っていた。
彼女の名前は
そんな彼女は何をするわけでもなく、ただジッと椅子に座って虚空を見つめている。
別に
「お嬢様……失礼します」
「……どうぞ」
部屋の外から声が聞こえ、それにしばし遅れながらも返事をする小百合。
入ってきたのは、メイド服姿の初老の女性だった。
「…………ハァ……お嬢様、先日、お部屋を閉め切ってはいけないと申しましたのですが、何故、カーテンすら開けておられないのですか?」
「……する必要がない」
「する必要がなくてもですね、少しは外で遊んできたらいいのではないでしょうか、と私は思いますよ」
「…………」
小百合は女性の言葉に返事をすることもせず、ただ虚空を見つめ続ける。
改めて部屋を見渡してみると、生活に必要なものを除けば、殺風景としか形容のし甲斐がない一室がそこにあった。
小百合はその部屋の中心で、椅子に座って何をするわけでもなくボーっとしているだけだった。
「こちら、昼食でございます」
「……ありがとうございます」
女性がカートに乗せてきた食事を、小百合の前にあったテーブルへ乗せていく。
「それでは、食事が終わった時にお呼びくださいませ」
「…………」
カートを押して女性は部屋から出ていった。
残された小百合は、食事を黙々と摂っていく。
そこには、食事を楽しんだり、何かしらの感想を思い浮かべるようなものではなく、ただ栄養を摂るだけの行動だった。
あまりにも無機質すぎる行動の数々に、彼女のことを機械か何かだと思ってしまいそうになる。
実際、彼女のことをよく知るものからしたら、〝機械〟や〝人形〟以外に彼女を形容する言葉を見つけられないだろう。
それほどまでに、彼女は無機質で無感情だった。
今だって、食事をとる手は止めず、目線など泳ぎすらしない。
味の感想だって零さないのだ。
これを機械と呼ばずになんと言うのか。
だが、彼女の意志が希薄なのには理由がある。
――突然だが、この世界に魔法が存在すると言ったら君たちはどう思う?
大抵の人は馬鹿馬鹿しいと否定するだろうが、ここでは「ある」という前提で話しをさせてもらおう。
この世界には古くから魔法というものが存在していて、それは現代にまで残っている。
そして、その存在を知る者達は魔法の存在を秘匿し、一般人に漏れないようにしているのだ。
ただ魔法が存在するならそれでよかったかもしれないが、生憎のところ、そう簡単にはいかない。
包丁という、笑顔を生み出す食事を作りだす道具で殺人が起こるように、魔法を悪用する者達が現れた。
魔法の力は強力だ。
人を簡単に殺すことが可能なほどに。
だからこそ、知恵の働くものは魔法の存在を隠すことにしたのだ。
一般人に見つからないように、知られないように。
小百合も魔法を行使できる者の一人である。
しかし、小百合は魔法の才能が他と比べて突出している代わりに、感情というものが薄い。
これはどの魔法を持つ者にだってある物だ。
視力がない代わりに聴覚が優れている者。
そもそも魔法が満足に使えない代わりに肉体が強靭な者。
十人十色。
それぞれの特色を持つ人間だからこそこのようになる。
小百合は感情が薄いことを不幸だと思うことは無い。
そもそも、不幸だと思えないのだ。
その所為で、子供の頃は親をよく困らせてしまったのである。
恵まれていながら、運命には恵まれなかった者。
それが小百合であった。
「……ごちそうさまでした」
今も感情の籠らない食事を完了した挨拶を告げ、食器を下げてもらうために、廊下へとつながる扉へ
そう、〝向かおうとした〟のだ。
生物として無意識的な動きである瞬きをして、再び目を開けたならば――
そこには大森林が広がっていた。
主人公こと小百合さんはこれからどんな動きをするのか……作者でも分かりません……!
小百合さんの能力については次回をお楽しみにしてください。