八重樫と二人きりになることは少なかったが、グループが親しくなったと実感できた中三の時の夏休み
時間がすぎいい意味でも悪い意味でも環境は変化していた
お互い志望校を合わせているので勉強会をほぼ毎日していたのだが、白崎が親戚の家に向かい勉強会の合間の休みが入ったため今日の夏祭りに来れないという事態にあった
「白崎来れないのか?」
「えぇ。今日急にもう一日、親戚の家に泊まることになったらしいわ」
「どうする?夏祭り?お前の家族で行くか?有料券あるんだろ?」
というのも二人分の有料券があるから男子の分をみんなで割り勘しようということだったのだが
「…私の両親も明日用事あって夜には県外に出てるのよ」
「…マジか」
「貴方は?」
「今頃家族と一緒に祭りは行かないからな。つーか二人とも家にいないし。ハジメは両親の締め切りが間に合わないから緊急に呼ばれたしな…天之河たちは?」
「…光輝とはあまり話せてないわね。最近はずっと香織と木村くん、南雲くんの二人といるから。それに光輝が誘われてないと思う?」
「…思わないな…それじゃあ二人で行くか?」
俺は少しだけ勇気を出して誘ってみる。八重樫と二人きりになる回数はかなり少なくし、今まで二人だけで出かけたことはないし、純粋に遊ぶ感覚で誘ったのだ
「…木村くんと?」
「折角のチケット無駄にしたら悪いだろ?てか俺も花火大会行きたいけど、一人じゃつまんないしな」
「……まぁいいわよ。それならそれまでは勉強かしら」
「…すいません。図形の証明問題教えてください」
「えぇ、昨日言っていたところよね?」
と俺はもう見慣れた八重樫の部屋に案内され一、二時間ほどの勉強会を開く
そして全ての関係が大きく変わる夏休みが始まるのだった
八重樫のお母さんが6時から出るらしいのでその前に八重樫は一度呼ばれていた
なんかそわそわするよな
女子と二人で出かけることなんてほとんど経験がないし、初めて自分から誘った女子とのお出かけに少しだけ緊張する
まぁ八重樫が意識しているってことはないだろうけどな
「お待たせ。待ったかしら?」
「ん?ぜんぜ」
といいかけたところで俺は少し固まる。青色の金魚の柄が映えている浴衣を着た八重樫が照れ臭そうに立っている
……思ってもないところに飛んだ爆弾が降ってきたのだけど
「……すげぇ。これ八重樫のお母さんの?」
「いえ。少し歩きづらいのだけど光輝のお母さんに来年の浴衣のモデルになってほしいらしくて」
「へぇ〜……かなり似合ってる。八重樫のことを本当にわかっているんだろうな。大人っぽくて綺麗だし」
「…っ!そ、そう」
「写真撮っていい?白崎に送るから」
すると一度頷く
とさっきまでの反応と全く違う対応に俺は多少違和感を覚える
どうしたと首を傾げるがまぁいいかと俺はスマホに一枚写真をとり、白崎とのチャット欄にその写真を送るとすぐに反応が帰ってくる
香織:凄く綺麗!!これ雫ちゃん?
楽:あぁ。これから夏祭り行くところだから
香織:えっ?二人で?
楽:元々四人で行く予定だったからな。白崎とハジメこれなかった分は埋め合わせするし
すると、数秒返信がこない。珍しいなと思いつつ俺は少しだけ待っていると
香織:楽しんできて。雫ちゃんのことよろしくね
楽:了解。帰って来たら教えて。今度どっか遊びに行こうぜ。
と俺は連絡用のアプリを落とし、俺は八重樫の方を見る
「それじゃあ行くか」
「えぇ。そういえば香織なんか言っていたかしら?」
「八重樫のことよろしくってさ」
「それだけ?」
「それだけだなそれと綺麗とは言っていたな」
ログは見せないとして実際本当のことを告げる
「…そう。それなら行きましょ」
「おう。草履なら足気をつけろよ。かなり歩きづらくなるから」
「そうなのかしら?履いたことないから分からないけど」
「ん?もしかして浴衣初めて?」
「えぇ。元々この時期は剣道の大会があるからあまりお祭りには行ったことがないのよ」
少しもったいないように感じる。浴衣が抜群に似合っているのもあるし、祭りも天之河たちと結構行っているものだと思ってた
「そういえば、あなたはいいの?最近私たちばっかり付き合ってもらっているけど」
「ん?俺は最近グループのやつ仲違いしたから。結構深くいったから卒業までは中学で二人かな?」
「えっ?」
「俺が切り離した。元々限界に近かったしな。元々情報屋って……少し嫌になったことがあってそれっきりあまりそのグループに入ってない」
だから俺はこっちのグループに入り浸っている。
色々と楽しいし、それに少しだけ気が楽になる
まぁ、悪い意味の変化は俺がクラスに馴染めないようになったことである
特に白崎と八重樫と知り合いなことをしったクラスメイトの男子、いや学校中の男子の反応はかなりひどかった
「……あんまり話したくないからこの話はNGでいいか?」
「え、えぇ」
その後少し微妙な雰囲気のまま八重樫の真横を歩く。これがまたクラスメイトに見つかったら面倒なことになるんだろうなっと思いながら道を歩いていく
「そういえばあなた何を持ってきたのかしら?」
「ん?これ?一応八重樫のお母さんにいれてもらって治療キットと八重樫の靴、それとビニールかな?」
「私の靴?」
「多分靴擦れするだろうかなら。元々歩きづらい草履のまま、人混みを歩かせるわけには行かないだろ?ビニールは何か入れるようじゃなくて下に引くやつ。本当はビニールシートがよかったんだけどな。家になかったらしいから」
「あなたって意外にもそういう気遣いはできるわよね?」
「元々こうやってグループの中に入っていたからな。ハジメとは違って」
話は逸らすことができたのか家族の話で盛り上がり夏祭り会場への道を歩いていくのであった
「……疲れた」
「…本当によ。なんであんなに湧いているわけ?」
俺たちは祭り会場についてから俺も八重樫もかなり逃亡を余儀なくされていた
というのも八重樫の親衛隊義妹集団に追いかけられお互いに走ることになったのだ
「……まぁ落ち着いたし、とりあえず靴履き替えるって言ってもこの人混みで足を止める方が問題だよな。とりあえず落ち着ける場所探して治療するぞ」
「…気づいてたのかしら」
「草履だったからな。警戒してたけどまぁやっぱりこうなるかって感じだな」
実際会場に行くまでに怪我をする事は予想はできていたしな
「…つーか逃げてきてよかったのか?」
「今日は貴方と出かける予定だったのだから別にいいわ」
「そっか」
短い言葉だったがどこか照れ臭く感じる。というよりも何処か居心地の良さを感じる
治療をし終えた後履き慣れた靴に履き替えた八重樫と俺はゆっくりと屋台を回る。八重樫が頼むのは甘いものが多く俺は唐揚げやポテトなどを食べていたり、八重樫が射的ヘアゴムを気になっていたのを二人で挑戦したり、偶然にも俺が取れて八重樫にあげたり
友達と遊ぶってよりもデートに近いような気がするのは俺自身感じていた。でも何よりも、八重樫がかなり笑っていたのもあり気にならないようになっていた
すると屋台巡りをしている時
ひゅ〜と音が聞こえ空に大きな一輪の花が咲く
大きな花が光と音を俺たちを包み込む
「えっ?もうそんな時間?」
「早いな。……花火開始が8時だったから既にもう二時間経ってるのか」
「……それなら行きましょうか」
「おう」
花火を見ながら有料席へと向かう
それでも俺も八重樫も足幅を揃えて基本的に白崎について話す
お互いに楽しい祭りを過ごしていた時だった
「八重樫さんって本当に調子に乗っているよね」
聞き慣れた声が俺たちの耳に届いたのだった