俺は足を止める。花火の音にうまく聞こえないと思っているのだろうか
八重樫の表情が明らかに暗くなる
「本当に何で光輝くんの周りにひっついているんだろう八重樫さん。幼馴染だからって調子乗ってない?」
「白崎さんがいるからでしょ?」
「そうよね。あの男の子みたいな女子が光輝くんの周辺にいれるってどうせ幼馴染だからでしょ?」
俺の中学でも天之河が人気なのは知っていたし、八重樫も白崎も人気の部類に入ることは知っている
でも、八重樫がこう貶されていることは俺は知らなかった
確かに八重樫の強さに憧れている女子も少なくない
でも、それが八重樫にとっての悩みだったのだ
本当に楽しかったはずなのに、それを一瞬で冷やされる声
まるでわざと聞かされているようだと錯覚させられる
……本当に嫌になる
自分でもこの感情が本当によく分からない
何で自分のことではないのにこんなにキレているんだろう
俺自身何度も経験したはずがあるはずなのに
俺が八重樫と白崎と交友を持った一ヶ月後には俺はあまり動く空気を読むことを放棄しざるをえなかった
理由に関しては俺に対して二人を紹介しろという声が多数を占めたからだ
……ぶっちゃけ俺はここまで二人と交友関係を築けるとは思ってなかった
八重樫は本当に白崎に振り回されてといった感じだったし、二人には天之河という他校でも人気の少年が間近にいたからすぐに離れると思っていたのだ
でも、実際は違った。白崎は、ハジメや俺を好意的に見てくれて、八重樫は勉強や好きなものを話し合うところまで付き合いは深くなった
ほぼ毎日連絡は欠かさないで四人でボイチャで話し、そして週末はほぼ毎週どこかに遊びに行く
俺の家にも、ハジメの家にも、白崎の家にも、八重樫の家にも、お互いに交流があり、全員結構いい関係を気づけている
空気を読んでいたときとは違いどこか居心地のいい場所になっている
だから、あの時とは違い、俺は完全に二人のことは紹介はともかく合同で遊ぶことも拒否するようになった
二人目当てのやつはとことん断るようになっていた
多分俺にとって二人はハジメ以外で初めてできた本当の意味での友達なのだろう
俺にとって家族を除いて、いや家族と同じくらいに大切な存在なんだろう
「…木村くん。行きましょう。あまり気にしないでいいわ。こういったことは慣れてるし」
と顔は笑っているように見える。でも、どこか悲しそうな泣きそうになる顔は、俺から見たら、本当に辛そうだった
「…八重樫。その嘘は俺でもわかるぞ」
「えっ?」
たった一つだけこぼれた雫は、今の八重樫の現状を表しているようだった
俺は一度八重樫から離れ、その馬鹿にした女子の元へ向かう
ついてきたのであろう。義妹集団の一人が見えると俺の方を向いた瞬間その足を止める
俺は八重樫の方を指差す
八重樫はあの少女がどうにかするだろう
「そんな陰口なんかいうからそんな腐った感想しか出てこないんだろ?」
クラスメイトとか性別とか関係ない
ただ俺は大切な人を傷つけられて黙っていられるほど俺はできた人間ではないんだ
「は?」
「馬鹿なのか?八重樫は確かに天之河と仲がいいだろうけどな。ひっついているんじゃなくてあいつが八重樫を頼っているんだろ?そんなことも分からないのかよ。奥野」
「っ!木村?」
「お前らいい加減理解すれば?ただ口だけでずっと裏でぐちぐち話していることをクラスのやつもしっているからてめぇらはいつまでたったって気にされないんだよ」
俺は奥野たちをかなり馬鹿にしてそして責め立てる。周囲の人が集まっているが関係ない
……女子を泣かせておいて許すと思うな
「現実を見ろよ。てめぇらは白崎と八重樫とは違ってかなり醜い。そんなことすらわかってないのなら天之河ではなくて他の奴だっててめぇらのことなんて興味ねぇよ」
「は?あんた最近八重樫さんと白崎さんとつるんでいるから庇っているの?あんただって思うでしょ?八重樫が男っぽいって」
「どこが?あいつ以上に女。いや女の子っぽい奴はいないだろ」
もう何度も思っていること。八重樫以上に女の子っぽい人はいないだろうと思う
俺は詳しくは知らないし、俺が言えることだって少ない。
「あいつ案外乙女思考だろ。結構重症のな。あいつの部屋かわいいぬいぐるみとか多いし、スマホの待ち受けだって可愛らしい動物の奴だしな。……確かに八重樫は見た目は可愛くはないかもしれない。あいつは大人っぽいからな。可愛いんじゃなくて綺麗なんだよ。だからこそ魅力的で女子からもモテるんだ。綺麗で、まっすぐで、面倒見がよくて、恥ずかしがり屋で、気が使えて、だからこそどこか危なくて、我慢強くて、誰よりも優しい。それが八重樫雫っていう女の子なんだよ」
多分白崎ならもっと八重樫の魅力を伝えられるんだろうなっと思いつつも俺はクラスメイトを睨む
「まぁ確かに今回は俺の八つ当たりに過ぎないし、てめぇらのことなんてどうでもいい。ただなこれ以上俺の大事な奴に傷つけるようなら……てめぇらを潰してやるから」
「っ!!」
「さっさと失せろ。それと陰口を言うんなら人混みじゃなくて誰にも聞かれないところで言うんだな。どうせ夏休み明けお前ら学校の居場所なくなっているだろうけど」
恐らくあいつら夏休み明けからは学校の居場所は恐らく消え失せてるだろう
さっきから八重樫の義妹集団の行動が激しいしな
クラスメイトが急いで去っていくとすると大きな拍手が俺に浴びせられる
少しだけキョトンとしているとどうやら人が集まっている
歓声やよくやったとか色々な声が聞こえるが、気にせず引き返そうとするとそこには八重樫がそこには立っていた
「……」
「……」
お互いに無言で見つめ合う。いや見つめ合うというよりもどこか八重樫がどこか熱っぽいのか顔が真っ赤になっている
「八重樫?」
「……ほへ?」
「……へ?」
珍しく気の抜けた返事に俺はあっけにとられる
つーか今日こいつどこかおかしくないか?
「……どうする?この後?花火ももう終盤だろうからな」
「…」
「おい八重樫?」
「ずるいわよ」
「は?」
「……先輩カッコつけすぎですよ。お姉様全部聞いてましたから」
すると俺の学校の後輩は呆れたようにしている
確か遠藤だったか?俺は小さく苦笑してしまう
「事実だから別にいいだろ。それに、初デートくらい八重樫にはいい思い出として帰って欲しいだろ?」
「……えっ?」
「えっ?」
俺の答えに二人がキョトンとしている。気づいてなかったのか
「言っとくけど普通に遊び程度で誘うと思っていたけどあそこま意識してたらこっちだって意識するわ。…まぁ…渋ったのもこれが原因だけど……」
「…渋ったって」
「俺みたいな奴が八重樫にとっての初デートをとってもいいのかってな。俺は学校でもそんなに人気じゃないし、カースト的には低めの方だろ?」
すると八重樫がなんで俺が躊躇ったのか少しだけ理解できたらしい
女子が初めてのデートは好きな人とやりたいと思っていたのを、俺じゃあ合っていないと思ったのだ
「…気にしないでいいのに」
「気にするだろ。意識しないようにしてたのに意識させるようなことさせられたら意識してしまうんだよ。綺麗な女の子が隣にいたら普通に意識しざるを得ないだろ?」
「てか、先輩あんなこと道のど真ん中で言っていいんですか?恥ずかしくないんですか?」
「恥ずかしいに決まっているだろ?でもデートだからこそ楽しんで帰りたいし、それに聞いてるんなら分かるだろ?大切なもんを傷つけてこそ黙っているほど俺は出来た人間じゃないだけ」
実際俺もかなり恥ずかしいが逃げるタイミングを完全逃している
それともう一つあるのが本音に近い
「それに、嘘言っているわけじゃないからな。お前らももう少しお姉様じゃなくて一人の女の子として見てやれよ。カッコイイとかじゃなくて綺麗とか可愛いとか言ったり着せ替え人形として買い物に行ったりしてやれよ」
「先輩はお姉様のお父さんみたいですね」
少しだけ苦笑してしまう。そういう後輩に俺は軽く頭を叩く
俺は少しだけ照れ臭くなってしまう
その後ろからだった
ひゅ〜〜〜と音がなり空に大きく花が咲き誇る
「……そういや、すっかり本当の目的を忘れてたな」
「えぇ。でも……楽しかったわよ。私は」
「ならよかった。……まぁもう少しだけ穏やかに見たかったけど」
「それはそうだけど、あぁいうことをしたのはあなたでしょ?」
「まぁそうだけどさ」
「でも、嬉しかったわ。ありがとう。木村くん」
「おう」
といいながら空を見つめると色とりどりの花火が空に舞い上がる
その景色を見ながら俺は花火ではなく、花火を見る八重樫に向いていた
いつのまにか手が繋がっていたのに、お互いに嫌がる素振りも、いやそれよりも手をしっかりと繋ぎ、八重樫を送るまで放そうとも放されることもなかった