俺はかなりきつめのランニングをしていて息を吐く
受験勉強をしなくてもいいのかと言われていたが俺は推薦枠が空いていたこともあり、推薦入試として高校に進学をすることがほぼお確定になったのだ
まぁ、中学で色々と問題視されていた女子グループの一人に推薦組がいて、そいつが校外の女子の悪口を言ったことが原因で推薦取り消しになったらしいが自業自得であるために割愛するのだが
その雫や雫の家族の態度にも色々な変化があった
まずは八重樫流に入門できるくらいになったことが大きい
八重樫のお父さんやお爺さんが揃いも揃って言葉に告げていたこと
「雫はもう大丈夫か」
「雫を女の子にしてくれたこと感謝する」
という言葉を俺は最初どういうことだかわかってなかった。元々かなりの乙女脳を持っていた八重樫は元々白崎よりも女の子らしいって気がしているのだがそれが二つ目と関係している
そして二つ目は八重樫自身と距離を詰めることができたことよる八重樫の過去についてだ
八重樫の二人で遊ぶ機会も増え、お互いにデートと呼べる場所に行くこともできるくらいには交友関係が広がったある日
特に俺も八重樫も推薦組っていうのが一番大きいが
そんな中でも八重樫が文化祭後に二人で遊びにいった時に、聞いてほしいって言われ八重樫の小学校のころについて聞いたのだ
八重樫のいざこざ、八重樫が何で乙女思考を持ったのかが少しだけわかった気がする
元々は剣道をするのが嫌だった
それは八重樫が最初に呟いた言葉は俺にとって意外なことだった
今は予想もつかないが八重樫は地味な少女だったらしい
それでいて天之河と付き合いがあったためやっかみが生まれた
「本当は剣術より、おままごとをしていたかったし、格好良い男の子に守られるお姫様なんかに憧れていたのよ」
言った時の八重樫のことは忘れられない。でも全てを聴き終わった時俺はその言葉に気になったことを素直に聞いてみた
「それで、八重樫は今まで剣道をやってきたことに後悔はあるのか?」
その言葉に八重樫は少しだけ疑問を覚えたのだろう
どういうことなのか聞いてきたので俺は続ける
「俺は部活とか道場とか入ったことがないから分からないんだけど、剣繋がりで繋がった縁とかもあるだろ?それに聞いていたら家族のために剣を握ってきたんだろ?……俺は正直今の八重樫、それも白崎とハジメと行動するしか知らないけど、その過程と努力は今まで何もしてこなかった俺にとっては眩しいものだよ。例え嫌いなことでも家族のために剣を握っていたってとてもすごいことだと思うし、人を助けてきた時も、八重樫がすげぇ優しいんだなって思う。八重樫は剣を握ってきて嫌なことも多いと思うけど、やってきてよかったと思うことはなかった?」
「……あるわ」
「それが答えなんじゃないか?今まで剣道を続けてきたわけなのは」
俺には分からんけどという言葉で八重樫はその一言がなければよかったのにと笑顔になる
それに八重樫には言わなかったけど八重樫はそのやっかみがあったからこそ、俺は八重樫自身が人の痛みをしることになったんだと思っている
強さとは正義であり、そして悪である
強さも使い方を間違えれば悪になるのだ
力に溺れ、それで破滅を招く例はたくさんあるのだ
本当に八重樫雫という少女は強いと思う
だからこそ守るために努力しないといけないことはわかっている
「それに、多分だけどお前の両親も気にしてるぞ?」
「えっ?」
「俺にお礼を言われたんだよ。八重樫を女の子にしてくれてありがとうって。俺はその当時は分からなかったけど、ようやく分かったような気がするよ。俺なんか八重樫は元々女の子でしょって言っちゃったし…。お前の親父さんも苦笑してたけどな。でも八重樫のお父さんもお爺さんも八重樫の幸せを願っているんだと思ってる。あんまり他の家について言いたくはないんだけど、多分八重樫自身に剣を教えたのを後悔しているのはあの二人だろうから」
「……どうして?」
「親っていうのは基本的に子供のことなら何でも知っているんだよ。嘘も夢も何もかも。だから才能を受け継いでくれたのは本当に嬉しかったんだろうけど、八重樫の部屋をみたら一目瞭然だろ?可愛いものに憧れているって。……純粋に本心を隠していることに気づいたんだろうな。才能も期待もプレッシャーになっていることもな。だからといってあの二人から剣を辞めてもいいって言われても大丈夫っていう八重樫は想像できるしな……俺が言えるのはここまでかな。八重樫がどうありたいのかは八重樫自身が決めることだと思う。でもさ、八重樫が傷ついたら俺みたいに許せないやつだっているし、心配してくれる人だっていると思う。頼りないかもしれないけど八重樫のことを助けたいって思うやつがここにいるしな」
俺は笑い八重樫の手を取る
もう二人きりになった時の当たり前になったが自然ではなく自ら手を取ったのは初めてだった
「……心配してくれるのよね?私を」
「ん?当たり前だろ?」
「いざという時は助けてくれるのよね」
「おう」
「そう。なら少しだけ話してみようかしら。香織にも、お父さんたちにも」
「もし、なんかあるようなら俺に電話かけてこい。思う存分甘やかせてやるから」
「それじゃあ言葉のとおり少しだけ甘えさせてもらおうかしら」
「ん?」
八重樫は一回手を放し、俺の目の前に座ると身体を俺を預けてくる
なお、一応遊びに来たので八重樫は完成にここがファミレスであり、周囲の視線は突き刺さるものがあったが、それでもどこか温かくて居心地がよかった。軽く頭を撫でると八重樫は驚いたようにしていたが、嫌がることはなく身を預けてくる。生暖かい視線や嫉妬の目線に囲まれながらも、俺と八重樫との関係が大幅に変化したのはこの時だった
そして俺も、変わりたくなったのだ。八重樫流に入門し、体力作りを始め、そして今の状況になるのだ