……雪の降る絶凍の地。
草の1本も生えてないその地で、血を大量に流してその地面を真紅に染めている一人の少女がいた。
その髪は……白髪だ。
彼女の周りには、銃を持った兵士がいる。
恐らく、彼らが彼女を殺したのだろう。
寒い、苦しい、冷たい、辛い……どうして、どうして
……目が覚める。
……うん、私が今いる場所は決して雪の降っている場所では無い。
いつもの、私の自室のベッドの中だ。
さっきまでのは……夢? にしてはやけにリアルだったし、あの少女はキャスターと瓜二つだった。もしかしてあれは……キャスターの記憶?
サーヴァントとマスターはパスが繋がっているはず……だから、キャスターの記憶を見ることもあり得る、か。
私は自分の左手の甲にある令呪を、キャスターとの唯一の繋がりを見つめていた。
「……キャスター、か」
彼女は果たして、令呪がなくなっても私の味方になってくれるだろうか?
「アホらしい」
雑念を払い、私は起き上がり下の階へと降りる。
そして、洗面台へと辿り着く。
鏡を見ると、寝癖が付いているせいで前髪が少し跳ねている着物を着ている黒髪の少女の姿が映っている。
うん、これは私だ。そこは良い。
そして、鏡の中の私の左肩には……何やら人形が乗っていた。
「何これ」
この人形、確かキャスターが大事そうに持ってたヤツだよね?
なんで私の肩に?
「あら、ヴィイ。
そう言うと、キャスターは私の肩にいる人形、ヴィイを回収した。
「おはよう、キャスター。ところでこの人形は何なの?」
「この子はヴィイ。
「妖精……? 人形ではなく?」
「えぇ、そうよ。瞼を開いたら、ヴィイが妖精ってことがよく分かります。それに瞼を開いたヴィイはとても可愛らしいのよ」
「へぇ、それは楽しみだなぁ」
ヴィイ、ヴィイか。何か聞き覚えがある。
確か、スラヴの方の……
後で暇があったら、スラヴ神話関連の本でも読み返してみよう。
「キャスター、朝ご飯食べる? 簡単なものだけど」
歯磨きを終えた私はキッチンで朝ご飯を作る……と言ってもバターを塗ったトーストと目玉焼きだけだが。
「せっかくだし、頂くわ」
「ん、分かった……はい、どうぞ」
キャスターの分を彼女の前に置くと、私も自分の分をテーブルに置いて席に着く。
ちなみに、キャスターには箸ではなく、フォークを渡しておいた。
「いただきます」
「えっと……」
ん? あぁ、キャスターはどう見ても日本人じゃないから食事の前にいただきますって言う習慣も知らないか。そんな知識、聖杯も教えてくれないだろうし。
「キャスター、日本では食事に携わってくれた人への感謝と食材への感謝を込めて、食事をする前にいただきます、食事が終わった後にご馳走様って言う習慣があるんだ」
「なるほど……では、いただきます」
そうして、私とキャスターは朝ご飯を食べ始める。
「味、どうかな? まぁ、そもそも簡単な調理しかしてないけど……」
そう私はキャスターに聞いてみた。
やはり、どんなに簡単な料理でも他人に振る舞う時は感想が気になるものだ。
「トーストも目玉焼きもいい焼き加減だと思うわ」
「それは良かった」
「ところでレイカ、今日の予定はどうなさいますか?」
トーストを齧りながらも、キャスターは真剣な顔つきで聞いてくる。
今日の予定か……まぁ、大体決まってるけどさ。
「まず、朝ご飯を食べ終わったら私の魔術の師匠の元に行く。そこで、聖杯戦争についての資料と私の武装になり得るものを買う」
聖杯戦争の資料は今後の戦略を得る上で重要だ。
そして、私の武装については……まだサーヴァント相手にマスターが逆立ちしても勝てないのはもちろん私も承知だ。
理想としては、敵マスターを屠れる、欲を言えばサーヴァントの一撃を防げる物が欲しい。
「なるほど。その後は?」
「それが終わったら、今後の戦略を私とキャスターで相談。夜になったら偵察も兼ねてこの街を歩き回る。これでどう?」
「分かりました。
「そっか……じゃあ」
予定を話し終えたところで、私とキャスターは朝ご飯をちょうど食べ終わった。
「「ご馳走様」」
キャスターからお皿を回収して、私のと重ねて流しに置いておく。
……洗うのは後でで良いや。
さて、師匠の元に行くとしよう。
ちなみに学校については、聖杯戦争の間に学校に行くのは流石に自殺行為じみてる気がしたので休むことにした。
理由は入院ということにした。
え? 疑われないかって?
大丈夫、先生には悪いけどあのメールを開いたら暗示魔術が発動するようになってるから。
「ねぇ、レイカ。その……出来ればでよろしいのですが……」
「ん?」
「実体化したままこの町を歩いてみたい……です」
あぁ、英霊からしたら現代の町って未知の空間な訳だ。
まぁそれは実体化したまま歩きたくもなるよね。
「うん、良いよ」
「本当? ありがとう、レイカ」
「それは良いんだけどさ……」
「?」
「それなら、服をどうにかしないとね」
「……このドレスじゃ、ダメかしら」
「ダメだね。目立ちすぎる」
今時、町をそんないいドレスを着て歩いている人なんていないからなぁ……
私の着物は、あまり着られなくなったとはいえ日本の伝統的な服だから良いけど……そのドレスはなぁ。
……お母さんの部屋から良い感じの服を探してみよう。
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