Fate/repeat night   作:神代リナ

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思ったより進まなかったせいでオリジナルサーヴァントの真名までいけなかった。楽しみにしてた方はすみません


第五話 準備万端(後編)

「ねぇ、レイカ。このたい焼きっていう食べ物、美味しいわね」

 

「それは良かった。私のお気に入りなんだよね、それ」

 

 たい焼きを頬張りながら歩くキャスターと話しながら私は師匠の住んでいる場所へと歩く。

 

 ちなみに服に関しては、キャスターが気に入った水色のワンピースを着せている。……冬にワンピースって普通は寒くない? あぁ、サーヴァントだからかな? でも、寒さに慣れてる感じがしてたから本当に寒くないのかな? 

 

「ねぇキャスター、本当に寒くないの?」

 

「寒くないわよ。このくらいの寒さなんて、(わたくし)の祖国の冬の寒さに比べたら可愛いくらいね」

 

 キャスターの祖国、恐るべし。

 そういえば、夢? の中でキャスターは寒そうな所に居たっけ。

 あそこがキャスターの祖国なのかしら? 

 

「キャスター、ここの角で曲がるよ」

 

 人通りの多かった大通りから少し外れると途端に人通りが減る。

 

「そこのアパートの103号室が師匠の住んでる部屋だよ」

 

「こんな所に魔術師が住んでいるの?」

 

「そうだよ。しかも、師匠は結構いい所の家柄だったはず」

 

 私たちの目の前にはぼろぼろのアパートが聳えたっている。

 壁にはツル植物の葉っぱが生えており、鬱蒼としている。

 そんな外見をしているので全体的に幽霊屋敷感がある。

 

「103……ここね」

 

「そうだよ。じゃ、ノックするね」

 

 コン、コン、コンと103号室の扉を3階ノックする。

 103号室の扉のすぐ横にインターホンがあるが、決してそれを押してはならない。

 

「ん、麗華ちゃんか」

 

 ノックしてから10秒ほどすると、ボサボサの髪をしている男性が出てきた。髪色は黒髪だが、目の色とその高い身長が彼が日本人ではないことを教えてくれる。

 

「シャーロットさん、お久しぶりです」

 

「うん、久しぶり。で、そちらの女性は? 君の友達にしてはやけに魔力量が多い」

 

 彼は少し警戒しながら、キャスターの方を見る。

 

「サーヴァント、キャスター。そういえば貴方に伝わるってレイカは言ってたけど」

 

「サーヴァント、キャスター……か。なるほど、いやはやまさか麗華君がマスターになるとは。……そして、この地で聖杯戦争が開催されるとは。ひとまず、家に上がってくれ。立ち話もあれだろうし」

 

 私たちが彼の家に入ると、そこには見た目からしたら明らかに広すぎる内装が広がっていた。

 

「これは……」

 

「僕は少々協会に追われている身でね。奴らの力が比較的弱いこの極東の地でも工房に幻覚くらいかけとかないと不安になるって訳さ」

 

 そう、あのアパートは強力な幻覚を見せる魔術による幻覚であり、本来の彼の家はそもそも一軒家である。

 

 キャスターはかなり驚いているようだ。

 私も初見は驚いたものだ。

 懐かしいな……シャーロットさんに初めて会った頃が。

 

「にしても、かなり驚いた様子をしているが君はキャスターのサーヴァントだろう? なら、このくらいを見破ることは容易いだろうに」

 

(わたくし)自身はほとんど魔術を使えないわ。せいぜい、出来てイタズラ程度のこと。魔術を使えるのは(わたくし)が契約しているもののおかげよ」

 

「ふぅん、なるほどね。にしても、僕にそんなに話して良かったのかな? もし、僕もマスターだったら……」

 

「それはないわ。貴方に令呪がないことは確認済みですから」

 

「ほう、どうやって確認したのかな? レイカの後ろにいる君からは見えづらいはずだけど」

 

 あぁ、シャーロットさんに令呪がないか確認するためにシャーロットさんの近くにヴィイを浮かしてるのか。

 

 にしてもシャーロットさん、あんなに近くにヴィイがいるのに気づいてないみたい。

 私とキャスター以外には見えないのかな? 

 

「さぁ、座ってくれ。お茶はもう少しで妻が持ってくるはず……っと。もう来たみたいだ」

 

「麗華ちゃん、久しぶりね。元気にしてた?」

 

 居間に入り、椅子に座るとすぐに若い女性が緑茶をテーブルに並べていく。

 

「はい、元気です。蒼華さんも元気そうで何よりです」

 

「ふふっ、ありがとうね。そして、そこの貴女は初めましてね。お名前は?」

 

「……キャスターと言います。訳あって本名は話せません」

 

「あらあら、という事は貴女は魔術関連の人ね。私はそこら辺は全く分からないからなんとも言えないのだけど……二人共ゆっくりしていってね」

 

 そう言うと彼女は居間を出て行った。

 

「じゃあ、話しをしようか。麗華ちゃん、一応聞くが……聖杯戦争がこの天野市で始まったのは事実かい?」

 

「はい、既にキャスター以外にも一騎のサーヴァントを確認しているので間違いないかと」

 

「そうか。いや、まさか天野市で聖杯戦争が始まるとは予想だにしてなかった。今ですら信じられないくらいだ。目の前にキャスターのサーヴァントが間違いなくいるのに。まぁ、いい。いい加減に僕も現実を見るとしよう。で、麗華ちゃんがキャスターを召喚したのはいつかな?」

 

「昨日の夜です」

 

「……降りる気はないんだね」

 

「はい。ここで私が降りたら、キャスターの願いが叶わないですから。それに神塚の使命のためにも聖杯を確保しなければなりませんし」

 

 そう言うと、シャーロットさんは少し悲しそうな顔をした。

 

「なるほど、確かに誰かが聖杯に日本滅べと願うかもしれないからね。ならば、聖杯を日本の守護者たる神塚の当主が聖杯戦争に勝利した方が確実だ」

 

「日本の守護者?」

 

 キャスターが首を傾げる。

 

「キャスターには言ってなかったね。私の家、神塚家は代々日本を守護してきた魔術師の家系なんだ。まぁ、日本を守護するって言っても魔術的脅威からって頭に付くけれども」

 

「……国を守護する家系、ね」

 

「キャスター?」

 

 一瞬、キャスターが暗い顔をする。

 何か思うところでもあったのだろうか? 

 

「ねぇ、麗華ちゃん。……その、こう言うのはなんだけど、さ。神塚の魔術回路は1945年以降、急速に退化していてもはや日本を守護できるような状態じゃない。実際、天野市のセカンドオーナーも神塚から橘に変わった。それに、多分もう君たちの役割は終わっている。だから、君が日本守護の使命を果たす必要は……そんな魔術回路で国の脅威になり得る存在と戦うなんて……それじゃまるでカミカゼみたいじゃないか」

 

 ……うん、知ってる。

 私は日本を護るような特殊な能力は持ち合わせていない。

 魔術回路だって、19本しかない。

 

 それでもさ、それでも……

 

「私はお父様と約束したから。それに……この想いだけは誰にも負けないから……だから私は、聖杯戦争から降りないよ」

 

「そっか……うん、分かった。じゃあ、君の話を聞こうか。要件はなんだい? 僕のところに来たって事は何か聞きたいことや欲しいものがあるんだろう?」

 

「……第一次から第五次聖杯戦争の戦況の推移の記録されている資料があったら欲しいです。今後の戦略を立てるのに役立つと思うので。あと、こちらはもし良ければなんですがサーヴァントの攻撃を一撃だけで良いので防げるような武器が欲しいです」

 

「なるほど……資料の方は僕の部屋にあったはずだ、武器の方は……流石にサーヴァントの攻撃を防げるようなものはないかなぁ」

 

「そうですか。まぁ、資料だけでも十分ありがたいので」

 

「ただ、サーヴァントを牽制出来るような武器ならある。それを譲ろう」

 

「ありがとうございます」

 

「うん、じゃあすぐに持ってくるからちょっと待ってて」

 

 そう言うとシャーロットさんは居間を出て行った。

 

「……ねぇ、レイカ」

 

「どうしたの、キャスター?」

 

「少し聞きたいことがあるのだけど……良いかしら?」

 

「もちろん」

 

「もしも貴女が護っていた者達に裏切られて、殺されたら貴女はどう思う?」

 

 要するに私が日本人に殺されたらどう思う? ってことか。

 そうだね……

 

「仕方ないなって……私が日本人に殺されたって事はそれは私が、神塚が必要されなくなったってことでしょ? だから多分、私は仕方ないなって思うだろうね」

 

「歪んでる……」

 

「歪んでるわよ、そんなの! だって……だって、それじゃあ」

 

「麗華ちゃん、持って来たよ」

 

 キャスターが何かを言おうとした所でシャーロットさんが戻って来た。

 

「キャスター、続きは後でいいかな?」

 

「……えぇ」

 

「じゃあ、まずはこれが資料の方だ」

 

 というとシャーロットさんはテーブルの上に分厚い本が6冊入っている紙袋を置く。

 

「そして……これが武器だ」

 

 そう言うと、鞘に刀身が収められている長い刃物を手渡す。これは……

 

「刀……ですか」

 

「あぁ、正確には霊刀だがね。この刀は霊体に干渉する特殊な力を持っている。だから……」

 

「サーヴァントに効く……」

 

「そうだ。だけど、これはあくまで牽制用か防御用だ。いくら武器が強くても、君の身体能力じゃあサーヴァントには基本敵わない」

 

「分かりました」

 

「帯に差して家に帰ると良い。一般人には見えないから安心していいよ。鞘に幻覚魔術を付与しておいたからね」

 

「わざわざそこまで……重ねてありがとうございます」

 

 早速、腰に霊刀を差して見る……うん、ちょうどいい感じ。

 

「で、お金はいくらほど払えば……」

 

 魔術の世界は基本、等価交換。今回は沢山の物を貰ったし、ちゃんとお金を払わないと。

 

「あぁ、いらないよ。弟子が聖杯戦争に参加するって言うんだ。このぐらい師匠がやるのは当然だろ」

 

「本当にいいのでしょうか?」

 

「あぁ。ただ、代わりに……必ず生き残ってくれ。それが対価だ」

 

「……分かりました。必ず、勝利します」

 

「うん、それでいい。そしてキャスター君、僕の弟子を頼んだよ」

 

「……えぇ、必ずレイカを守るわ」

 

「そうかそうか。それは心強い」

 

「では、シャーロットさん。私たちはこの辺で」

 

「あぁ、困ったことがあったらいつでも来なさい」

 

「分かりました。その時はまた、よろしくお願いします」

 

 そう言って私たちが居間から去ろうとすると、シャーロットさんが口を開く。

 

「今更だが、最後に。麗華ちゃん、聖杯戦争とは何か簡単に言ってみて」

 

「……聖杯戦争。それは聖杯より選ばれし7人のマスターとそのマスターに従う7騎のサーヴァントによる殺し合い。最後に生き残った一組だけが聖杯で願いを叶えることが出来る。と、こんな感じですかね?」

 

「うん、大体そんなものだ。ちゃんと覚えているみたいで良かったよ。あと、これはアドバイスだ。自分のサーヴァントのステータスをよく見て戦略を練りなさい。ちなみに自分のサーヴァントのステータスはサーヴァントとのパスを強くイメージすれば見れるはずだ。じゃあ今度こそさようなら。武運を祈っているよ」

 

 そうして私たちはシャーロットさんの家を去った。

 

 

 




次話は金曜日か土曜日に投稿します。
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