2週間ほどたっただろうか……。
怪我はある程度だが治ってきていた。
多少は傷むが無視できる範囲だ。
少し歩くくらいなら問題がないくらいには回復し、喉の痛みも引いてきたため喋ることも出来るようになった。
「お兄ちゃん! ご飯食べよ」
「ああ……」
今日の朝食は牛乳と黒パン、それに薬草を煮詰めたスープ。
ターニアはスープを飲まないらしく一品だけ少ないようだった。
スープを一口飲むと頭の中にガツンと来る青臭さで、それ以降の味覚はわからなくなる。
それでも俺は黒パンを千切りスープに浸しながら一緒に食べることにしていた。
先にパンを食べるとスープを食べたくなくなるからである。
作業のように食べ終えると牛乳を口をゆすぐように飲んだ。
俺が朝食を食べるのをターニアは笑顔を浮かべながら見ていた。
心底楽しそうに……。
この赤の他人同士の生活は、怪我がある程度治った現在も未だ続いていた。
喋れるようになってまず伝えたのは記憶がないと言うことだった。
「そうだったんだ! じゃあ記憶が戻るまでずっとここにいるといいよ!」
ターニアの反応は軽かった。
俺の感覚がズレているのかもしれないが、人がいいと言ったレベルを超えているような気がする。そう思った。
正直な話今のおれはただ飯食らいだ。
少女が一人で暮らす家に碌に動けない男を一人養えるだけの蓄えはあるのだろうか……。
それが少し不安だった。
歩けるようになってからは、朝起きてまず水を汲みに行くことにしていた。
村の中央。
今いる場所は山の上にあるこじんまりとした村なのだが、その村の中央に一つだけ井戸がある。村唯一の水脈である。
そこで水を汲むのを毎日の仕事にした。
少しでも何か手伝おうと思ったからだった。
結局はターニアも俺に付き添うように横を歩いて付いてくるため、あまり手伝いにはなっていなかったがなにかやりたかった。
家を出ると冷たい風が体をなでる。
山頂近くにある村だからなのか風が良く通った。
日中はいいが朝晩は少し寒かった。
バケツを持ってゆっくりと歩く。
早歩きでも息が切れるくらいには体の調子は戻っていない。
「あらあら、こうやって見ると兄妹みたいだね」
井戸の近くにいたおばさんが声をかけてきた。
ターニアと一緒に暮らしているからなのか、村人からの反応はそれなりに好意的なものが多い。少なくともよそ者を排除するような反応をされることは余りなかった。
「え~そうかな~! うんうん。確かにお兄ちゃんはお兄ちゃんって感じかも!」
兄妹と言われ嬉しそうにターニアは笑った。
それを見ておばさんもよかったねとターニアの頭をなでながらほほ笑む。
牧歌的な村といっていいだろう。
みんな人が良かった。
「本当によかったね。ターニアちゃん……」
おばさんが何度もそう言っているのを尻目に、俺は水を汲んだ。
滑車を使いロープでバケツを下ろして水を汲む方式の井戸だからそれなりに力がいる。
バケツを引き上げるために力を入れるたびに全身が引きつった。
肌が焼け焦げたせいか普段と違う動きをすると新しくできた肌が突っ張るのだ。
完全な体力不足なのか一回水を汲むだけで額から汗が吹き出し、心拍数が馬鹿みたいに上がった。
「お兄ちゃん。無理しちゃだめだよ」
ターニアが声をかけてくる。
わかってると言いながらも無理をして汲んだ水を運んだ。
家と井戸が大した距離離れていないことが救いだった。
ちゃぷちゃぷとバケツの水をこぼしながら歩く。
朝一で水汲みをするだけでへとへとになる。
朝、昼、夕方と一日に3度水汲みをした。
それ以外の時間はベッドの上で過ごす。
やることもなかったし、何かをする体力もなかったからだ。
なまえ:ターニア
むらのしょうじょ
レベル:18
特技・呪文:ギラ、ベギラマ
ベギラマによりポイズンキャロットと共に主人公を消し炭にしかけた