「うーむ……。センスが全くない……」
鍬で畑をおこすのに四苦八苦する俺に向けて厳しい言葉が放たれた。
畑のすぐそばの軒下で村長と農家のおっさんがこちらを見ながら話す声が風に乗って聞こえてくる。そもそも隠す気すらないようだ。
「そこを何とかならんか?」
「そう言われてもなんとも……。ターニアちゃんのことで手を貸したい気持ちはあるだども、やっぱりセンスがないからには……どうにも……」
俺は何も聞こえないふりをしながら鍬を振る。
ザクザクと地面の土に空気を入れるように掘り起こせばいいんだ。簡単なことだ。
こんなものにセンスなんて必要ないはずなんだ。
「たしかに……駄目だな……」
「そうだなぁ。あれならうちの牛の方がましだで」
村長から見てもそうなのか……。
農業にセンスが必要なのを初めて知った。
しかし農作業でさえ断られるともう働ける仕事はないんじゃなかろうか……。
初めに紹介された武器屋で決めておけばよかった……。
『ひのきのぼう三年、たけのやり五年、どうのつるぎ八年』
武器屋の親方が言った修業期間である。
それを聞き日和ってしまい断ってしまったのが運の付きだったのかもしれない。
「おーい、もういいぞ」
村長から声がかかる。
俺は汗だくになって振るっていた鍬を止めると、村長のもとへ向かった。
すまなそうな顔をした農夫から「お前にやれる仕事はねえ」とオブラードに包まれた言葉で言われると、俺と村長は次の場所へと向かった。
「狩人なら……何とかなるかもしれん。腕っぷしには自信はあるか?」
「いえ、正直わかりません……」
そんな会話をしながら村長に連れられ、着いた場所は村唯一の酒場だった。
この酒場の主人が狩人と言うことらしい。
中に入ると金髪の若い男がカウンターに座りくつろいでいる。ほかに客はいないようだった。
村長が金髪の男に声を掛ける。
「邪魔するぞ。おいランド、親父さんはどこにいる?」
「今は……2階にいますよ……」
ランドは俺と村長を見比べながら2階を指差し言った。
「そうか。それじゃあワシが話を付けてくるから、お前はここで待っておれ」
村長の言葉でランドと2人きりで待つことになってしまう。
正直なところランドのことは苦手だった。
以前から何度か会っていたので知り合いと言えば知り合いなのだが、どうやら彼は俺のことが嫌いらしいのだ。
会うたびにターニアの家からいつ出ていくのか聞かれ、そのたびにそれを聞いたターニアがランドに文句を言うことで話はうやむやになる流れが続いている。今回は2人きりでターニアはいない。
「誰かと思ったら、ターニアのとこの居候じゃないか?」
ランドが面倒くさそうに話しかけてくる。
そらきたぞと思った。
「今日は一体全体、村長と一緒に何しに来たんだ?」
「仕事探しさ、いつまでも無職じゃいられないから……」
それを聞きランドは鼻で笑った。
彼からしたら俺は貧乏神にでも見えていたのかもしれない。
働きもせず食っちゃ寝するだけなので、似たようなものかもしれないが……。
「ようやく自覚が出来たってわけか。仕事を探してターニアの家から出ていく準備でもしようってことだな」
「……そうだな。いつまでもターニアのとこに居る訳にはいかないからな」
俺が家から出るつもりだと話すとランドは驚いた顔をした。
酒場のカウンターに肘をつき手に顎をのせながら話していたのをやめ、身を乗り出すように聞いてくる。
「村から出るのか!?」
「いや、自分の記憶がないんだ。村のどこかに空き家でもあればいいんだが……」
「そうか……。いや、そうだろうとも。ターニアに助けられてそのまま出ていっちまう恩知らずかと思ったぜ」
ランドはほっとした顔をしそう言うとつまらなそうに笑った。
村長たちが2階から降りてきたのは、それからすぐ後のことだった。
なまえ:ランド
むらのせいねん
レベル:25
特技・呪文:せいけんづき、まわしげり、はやぶさぎり