のんびり村暮らし   作:bibibi

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スライム

 青く弾力のあるボール状の生物。

 スライムと呼ばれるそれが、跳ね飛びながら向かってくる。

 見た目から想像しにくい速さで縦横無尽な動きだ。

 俺は視線を外さないようにしながら手に持つ棍棒を強く握った。

 この生き物は体当たりしかしてこない。体当たりしかしてこないがその体当たりにそれなりの威力がある。

 ぶつかると柔らかそうなイメージを無視するような衝撃が走った。

 すばしっこいスライムに棍棒を当てることが出来ず、逆に先ほどから3度も体当たりを食らっている。

 一度体当たりしたら少し離れてくれるのだけが救いだ。それがなければ態勢を立て直す暇もなくボコボコにされていただろう。

 

「ふんっ!」

 

 スライムが飛び込んでくるタイミングに合わせて棍棒を振る。

 

『ぴぎぃーーッ』

 

 タイミングが合わず棍棒の付け根に当たり、僅かにはじくだけの結果になった。

 ダメージはほぼ無いようでぴょんぴょん飛び跳ねながらこちらを狙っている。

 どうにかしないと……。

 俺の後ろには村長とランドがいた。呼べば直ぐに助けてくれることだろう。

 だがそれでは駄目なのだ。

 一人でスライムくらいは倒せないと駄目なのだ。

 俺は体の痛みに耐え荒れる息を抑えると、飛びかかってくるスライムに向けて再度棍棒を振りおろした。

 

 

 

 

「お前さんが狩人にね……。ふん、勝手に名乗れば狩人さ、おめでとう」

 

 村に唯一の酒場、その2階から降りてきたランドの親父が言った言葉だ。

 村長も珍しく困り顔なのが印象的だった。

 ようは何も教えるつもりはないから勝手にやれよと、そう言うことなのだ。

 ランドの親父はそれだけ言うと村長に一瞥くれて2階へと戻っていった。

 弟子入りは断られたと考えていいだろう。

 

 

「あー。まあ、そうだな。腕っぷしがあればどうにかなるか……。村の外で少し試してみるか」

 

 村長がすまなそうにそう言ったのが事の始まりだった。

 

 暇だからと言って付いて来たランドも同行し村の外に出る。

 村の外は森と崖しかなかった。

 周囲に広がる森の中には当然だが野生の生物がいる。

 狩人になればそれを狩って生活することになるのだが、問題は魔物の存在だという。

 

「ここらにはそこまで強い魔物は出ないんだが、それでも腕っぷしに自信がないならやめた方が無難かもしれんな」

「ターニアに助けられたくらいだから狩人は無理じゃねーか?」

 

 魔物というものがどんな物かわからないから何とも言えないが、実際のところ自信はなかった。

 棍棒を渡されてはいるものの不安でたまらない。

 俺がこの村で世話になる原因が魔物に襲われたことだという。

 全身に火傷をしていたことを考えると、少なくとも火を吹くような魔物がいることは間違いないのだ。棍棒だけでどうにかなるのだろうか?

 なるべく見通しの良い場所を選んで道なりに歩く。

 村から唯一続く道の先は死んだ村人たちのお墓があるという。

 風が強かった。

 村から離れ崖に近づくにつれて風が強くなっているようだった。

 

「おい、来たぞ」

 

 ランドの言葉と共に青い生き物が数匹草むらから飛び出してきた。

 魔物である。

 

 

 

 

 スライムとの死闘は続く。

 俺には一撃で仕留めることは無理だ。

 村長やランドのように飛びかかってこられたところを叩き潰すようなことはできない。

 経験も能力も違うのだ。

 一度は食らう。

 一度スライムからの攻撃を食らって……。棍棒で体当たりを受けてからスピードの落ちたところを攻撃する。それしかない。

 

 スライムが見た目から想像のできないスピードでこちらに向かい跳ねてくる。

 俺は棍棒を体の前に盾になるように構えた。

 要はバントだ。

 いや、バントってなんだ?

 分からないがとにかく棍棒を当てて攻撃をはじければいい。

 棍棒で受ける。

 体に当たらなければ然程のことはない。

 スライムの勢いを殺して僅かに上空へとはじく。地面につく前までが勝負だ。

 俺はすぐさま態勢を変えると地面に着いたばかりのスピードの死んだスライムへ棍棒を振りおろした。

 

 

 ぷちゅん。

 

 

 そんな音とともにスライムの体は棍棒と地面の間につぶされ、はじけ飛んだ。

 青い粘液が地面に飛び散る。

 ボールのような体は地面のシミとなり、丸い目玉だけが地面をコロコロと転がった。

 勝った。

 そう思った。

 魔物を退治するという行為で自分の力が増したような感覚が体を駆け巡る。興奮で体が上気しているのかもしれない。

 やってやったと言うように村長の方を振り返ると、ランドが慌てたように叫んだ。

 

「馬鹿ッ!!! まだだッ!!!」

 

 慌てて後ろを向くと先ほど叩き潰したスライムがいた。

 完全に倒したと思ったのに……。

 スライムは起き上がり、俺の目を覗くようにこちらを見上げている。

 動きはなかった。

 どういうことだ?

 油断しているところを後ろから体当たりされていたら不味かった。だがしてこなかったということは目の前のこいつも形は保ててもダメージで動けない状態ってことなのか?

 スライムの丸い2つの目が俺を見ている。

 意味が分からなかった。

 

「ふんッ!!!」

 

 分からなかったが再度棍棒を振るった。

 

『ぴぎぃーーーーッ』

 

 断末魔の叫びと共にスライムは先ほどと同じく地面のシミとなった。

 やったか……?

 しばらく待ったがスライムはもう起き上がって来ることはなかった。

 

 

 




スライム
なきむし
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