呪術短編集   作: ぽてと。

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なんで急に投稿やめてしまうん???(自問自答)
続けられる気配がなくなったのでそろそろ終わります!!!!


『呪われたセカイ』【×】

 ───、────────。────?

 

 セカイの中で、歌姫が口遊む。

 それは、音。

 それは、歌。

 それは、言葉。

 それは、感情。

 それは、希望。

 それは、絶望。

 それは、呪い。

 それは、思い。

 それは、想い。

 

 ──────。───……──!

 

 セカイの中で。歌姫が口遊む。

 歌姫がそうしたいから。

 歌姫がそうしていたいから。

 歌姫がそうするべきだと思ったから。

 

 ────────、

 

 セカイの中で。歌姫が、口遊む。

 誰もに届く、しかし誰もに届かない。

 どこにでもある、しかしどこにもない。

 何よりもちっぽけだけど、何よりも大きい。

 歌姫が歌う、歌姫と彼女だけの、うた。

 

 ─────……。

 

 セカイの、中で。歌姫が、口遊む。

 歌姫は彼女を待っている。

 この、セカイで。

 彼女の想いが、呪いが込められたセカイで。

 

 ……おかえり、せつ。

 

 セカイの、中で。歌姫が、彼女の名前を呼ぶ。

 セカイの、中で。

 呪われた世界で──呪われたセカイで、歌姫は彼女の名を呼ぶのだ。

 

「……ただいま、みく。」

 

 

 

 

 

 きっかけは五条悟の教え子たちを担当する補助監督からの報告だった。

 任務に行ったのに呪霊は既に祓われていて、不可思議な残穢だけが現場に残っているのだと言う。

 伏黒恵が言うには、八十八橋での自分の残穢の残り方と、()()()()()()()似ていたらしい。

 八十八橋で伏黒恵しか知り得ないもの、同時に一年生三人の中で伏黒恵しか経験のないもの。

 領域展開以外、思い当たることなんてない。

 また面白いことが起きそうだと五条悟は口元に狐を描きながら、その残穢の調査を一年生三人に指示した。

 

 ……それが数時間前のことである。

 太陽が隠れた後の街で、虎杖はまだ見つかんねぇの? と鵺を再び上空に飛ばす伏黒に問いかけた。

 

「すぐに見つかるわけねぇだろ。残穢の性質と呪力の性質が一致する人間を探すとか、そういうのは五条先生の分野だ。」

 

「六眼ならすぐってこと?」

 

「多分な」

 

 じゃあ早くあのバカ目隠し連れて来いよ、と空腹のせいか苛立たしげに発する釘崎に伏黒はため息を吐いた。

 出来るか、あの人今海外だっつの。

 

「って言うか、もう電車とかで遠くにいたらどうすんの?」

 

「……」

 

 どうするも何もどうすることもできない。

 もし虎杖が提示した仮定が真実であるならば今やっているこれはまさしく骨折り損のくたびれ儲けだ。

 意味のない行動、無駄、帰ってくるのは疲労だけ。

 帰ってやろうかなと伏黒は思った。

 

 時刻はもう二十時を回っている。

 夜間に任務に赴くこともあるため呪術高専に細やかな門限などは何もないが、十時には帰らなければ先輩に夜遊びかとどやされる。主に眼鏡かけてる人と白黒の人(?)とおにぎりの人に。なおおにぎりの人は行動で示してくる。

 ここから高専までの距離を簡単に計算したら…九時には帰っていないと厳しいか。

 そんな心配をしなければいけないのも全ては担任のせいである。普通に考えて無理だと気付いていただきたい。

 

「あーもう帰りたい……! 私はオマエらと違って忙し……」

 

 釘崎の愚痴をあぁそうですかと流す前に、彼女の言葉が途切れたのが気になった。

 少しだけ視線を釘崎に移す。彼女は自分の携帯を何故か眉を潜めながら凝視していた。

 

「どうした。」

 

「いや、曲のプレイリストに知らん曲が入ってる。」

 

「なんだそれ、ウイルスかなんかか?」

 

「知らないわよ。虎杖、調べろ。」

 

「えぇ俺……?」

 

 釘崎から任せ(押しつけ)られた携帯を虎杖は観察する。

 『untitled(無題)』という曲名の、釘崎曰く、知らない曲。

 プロパティを覗いてみても()()()()。言葉の通り、記載されているはずのファイルサイズ等も何もないのだ。

 どうしよう、これ以上俺が調べられるもんなんか無いんだけど、と虎杖は焦る。

 まさかこの場で解体するわけにもいかないし、虎杖にそんな技術はないから不可能。

 かと言って今の機嫌が最高に悪い釘崎に「分かりませんでした」と言ってこのまま返したらどんな言葉が飛んでくるか分からな、いや、何が飛んでくるのだろうか。暴言かため息か右腕か左足か。

 

「……とりあえず再生してみね?」

 

「……それしかないか。許す」

 

 オマエは何様だよ、と口には出さず、虎杖は『untitled』と書かれたそれをタップした。

 何か聞こえてくるか? と携帯に耳を近づける、が、何も聞こえない。

 その代わりに。

 

「ねぇなんか光ってんだけど」

 

「爆発!? 伏黒、虎杖の後ろに隠れるわよ!」

 

虎杖(携帯)の側に近寄ってどうすんだよ」

 

「決まってんでしょ肉壁にすんの!」

 

「酷くね!?」

 

 爆発するかもしれない携帯を遠くに投げ捨ててしまいたいけどこれが釘崎の携帯だということが判断を躊躇わせる。

 携帯を投げて爆発しなかった場合に降りかかる自分への火の粉は? 当然釘崎からのお叱り、女は怒らせると怖い。

 釘崎からのお叱りか爆発か。ジレンマに陥っている虎杖をまるで他人事のように虎杖の後ろにひっつきながら見ている釘崎と伏黒。オマエらさぁ…。

 

「ねぇこれ投げていい!?」

 

「無理!!」

 

「ウソでしょ!?」

 

「マジ!!」

 

 そんなことを話している間にも光はどんどん強くなってくる。

 眩しすぎるソレに三人は目を瞑って──気が付いたら、そこにいたのだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 そこは、異世界だった。

 呪力で満ちた、不思議な場所。

 五条と特級呪霊の領域の中に入ったことのある虎杖と、自ら領域を展開したことのある伏黒は、そこがなんなのか、感覚で分かっていた。

 

「いつの間に領域の中にッ!」

 

 伏黒の叫び声で唯一不完全な領域にしか足を踏み入れたことのなかった釘崎も領域の中だということを理解し、持っていた釘と金槌を取り出して臨戦態勢に入った。

 ここがどこかは分からないが、今いる場所が先程までいた公園ではないことは確かだ。

 

「……壁を探そう、攻撃されてない今なら脱出できるかもしれない。」

 

 五条から教えられていた知識を頭の端っこから引っ張り出して、逸れてしまわないように領域の端を探した。

 最優先はこの領域からの脱出、次点は領域の主を見つけることだ。

 きっと、この領域の主こそが五条に指示された彼らの探し人なのだろう。

 いや、そうでないと困る。敵かもしれない人間にポンポンと領域を展開されたら敵わない。

 

「確か領域って、自分の生得領域を呪力で構築するってものよね」

 

「あぁ、それで合ってる筈だ」

 

「……つまり、心の中」

 

 これが。

 この領域は、呪いだらけだ。呪霊ではない。呪術でもない。呪力でもない、呪い。

 釘崎自身も何を以ってしてこれを呪いと見たのかは分からない。けれど、何故かそれは他の何でもない呪いだと思った。

 不思議と、そう思ったのだ。

 少年院の時の不完全な領域とは何か違うそれに、釘崎は疑問に思った。

 

「……いらっしゃい」

 

 歩き続けていると、声が聞こえてきた。

 冷たい声。感情がのせられていない、酷く無機質で、機械的な声。

 声の主は少女だった。

 緑と黒の入り混じった長いツインテールを揺らして、緑色の、光のない目で虎杖らを見つめている。

 

「俺たちをこの領域に引き込んだのはアンタか?」

 

「……そう、ワタシ。でもここは、領域、じゃない。」

 

「……」

 

 伏黒の問いに目を伏せて静かに首を振る少女に、虎杖が息を呑む。

 ここに来た直後は領域だと思っていたが、時間が経つに連れ疑問に思っていたのだ。

 だって、なかったから。

 あの特級呪霊の領域にあった"殺意"とか、五条の領域にあった"(プレッシャー)"とか。本能が警鐘を打つ程の危険性がなかった。

 釘崎の感覚と同じく、あるのはただ呪いだけ。

 

「ここは、セカイ。」

 

「……セカイ?」

 

「呪われたセカイ。」

 

 どうやら戦う意思はないらしい、というか、戦えるようにも見えない。

 三人は取り敢えず情報を集めるため話をすることにした。

 釘崎は他の二人も感じていたであろう疑問をぶつける。オマエは誰なのかと。

 

「ワタシは……ミク。初音ミク。」

 

「なんで私たちを呼んだ?」

 

「ここに来たかったんでしょう? それに、彼女はいつもひとりだから…人にあってほしかった。」

 

「……『彼女』についても気になるけど。ここ、セカイって何? 領域と何が違うのよ」

 

「ここは、彼女の"想い"で出来た場所。ワタシは、彼女が忘れてしまった"想い"を取り戻す助けをするために、ここにいる。

 ……領域と違うところは、呪力を消費しないところだって、彼女が言ってた。」

 

「はぁ? 呪力を消費しない?」

 

 何それチートじゃないの、と言う釘崎に虎杖も同意を示した。

 確かに、もし領域に対抗する手段としてこのセカイとやらを展開しても、呪力を消費しないのであればそちらは何も焦る理由がない。

 領域を展開して耐久勝負をするだけなら、あの五条悟にも負けないかもしれない。

 

 その後の質問も、初音ミクは隠しもせずに次々と答えていった。

 曰く、このセカイは領域で可能とする自分の意思で展開したり攻撃したりは出来ない。

 曰く、このセカイは領域とは違い、セカイの主と思われる『彼女』がいない間も常時構築され続けている。

 曰く、このセカイは領域や呪術ではないため、『彼女』が領域を展開できるわけではない。

 曰く、このセカイは領域のように戦う手段として作られたものではなく、『彼女』が"想い"を見つけるために創り出された場所である。

 結論、このセカイは領域とは全くの別物である。

 

 三人とも、一応納得はした。

 虎杖と釘崎は領域とは違う感覚に合点がいったし、伏黒もこれまでの会話の中に攻撃性が含まれてないことがわかったからだ。

 

「じゃあ最後の質問。その『彼女』てのは──」

 

 誰? そう虎杖が問いかけようとしたときだった。

 

「……みく?」

 

 聞き覚えのない後ろからの声によって、虎杖の言葉はかき消される。

 虎杖が声の聞こえた方へ振り返ると、初音ミクと同じぐらいの背丈の少女。

 初音ミクはその少女を見て、いつものように声をかける。

 

「おかえり、せつ」

 

「ただいま。……この人たちは誰?」

 

「ワタシが呼んだの。彼らも、せつを探していたから。」

 

「……私を?」

 

 二人の会話を聞く限り、自分たちの探していた『彼女』はこの目の前の少女で間違いないようだ。

 虎杖、伏黒、釘崎の順番で訝しげに見る少女に、虎杖が慌ててこちらの事情と、自分たちが呪術師であることを説明した。あちらに話をさせたのに自分たちの身分を隠すのではフェアではないだろう。

 呪術師だと名乗ると少女は納得したように警戒を解く、釘崎がすぐに自分たちを信用していいのかと問いかけるが、彼女は「呪術師とは前に何度かあったことがあるし、みくが招いた人に悪い人なんていない」と言い切った。

 

「……私は朝比奈(あさひな)せつ。みくからあらかたの事情は聞いてるんだよね。他に何が聞きたいの。」

 

「じゃあ、このセカイ? はどうして呪いばっかなん?」

 

 虎杖の言葉に初音ミクが先程首を振った時のように目を伏せて静かに頷いて、彼女はいつの前にか出来ていた段差へと座った。

 気づけば虎杖たちの後ろにも、椅子のような高さの段差が出来ている。

 怪訝に見つめていると、それに気付いた朝比奈がこのセカイの(かみさま)は自分なのだから、自分が思うようにセカイが変化するのは当然だと話した。

 

「このセカイが呪いで満ち溢れているのは……このセカイが、私の心だから。

 私には、呪いしかなかったから。」

 

「……つまり?」

 

「家族を呪って、家族に呪われて、生まれる前から呪われてて……本当に、私の人生は呪いしか存在しなかった。」

 

 生まれる前から呪われている。

 その言葉を聞いて三人の頭に思い浮かんだのは、こなれた動きで呪具を構えている先輩の姿だ。

 釘崎が天与呪縛、と小さく呟くと、そうそれ、と朝比奈が返した。

 

「せつがそう思って(理解して)()()()()から、このセカイは『呪われたセカイ』になった。」

 

 

 

 

 

 初音ミクの言葉に、朝比奈は少しだけ顔に影を差した。

 だって、しょうがないじゃないか。

 

『せつ、あなたのお姉ちゃんはね、すごい子なのよ。』

 

 両親に『完璧』の呪いを植え付けれらて、姉に『尊敬』の呪いを植え付けた。

 

『せつだって、お姉ちゃんみたいになりたいでしょ?』

 

 両親に『姉を通過する』という呪いを植え付けられて、姉に『妹から逃げ続ける』という呪いを植え付けた。

 

『あら、百点なんてすごいじゃない! まふゆもそう思うでしょ?』

 

『……うん。せつ、頑張ってたもんね。』

 

 両親の『完璧』の呪いを強めさせて、姉に『焦燥』の呪いを植え付けた。

 

『流石は朝比奈さんの妹さん。』

 

『朝比奈先輩も頼りになるけど、妹のあなたも負けてないわね。』

 

『え、()()まふゆの妹!?』

 

 周囲に『姉』という呪いを植え付けられて、姉に『更なる期待』という呪いを植え付けた。

 

『……"完璧"なお姉ちゃんには分かんないよ、私はッ、もう、こんな呪い……ッ!!』

 

 両親の『完璧』の呪いに耐えきれずに、姉を『完璧』の呪いで呪った。

 

『…………"かんぺき"な、私。』

 

 呪ってしまった。

 

『そっか、せつにも、私は"かんぺき"に見えてたんだね』

 

 呪われる辛さを知っていたせつ()が、せつ()よりも重い鎖に、呪いに、苦しみに心を()()()()()()()まふゆ()

 

『…………そっか。』

 

 どれだけせつ()に呪われようと耐えてせつのままでいていいんだよと笑っていたまふゆ()

 

『……ぁ』

 

 ()()()()()()()

 

 そこまで行って、本当の想い、だなんて。

 

 朝比奈せつは嘲笑を混じえながら言うだろう。

 

 その想いさえも、誰かを呪う呪いとなるに決まってる、と。

 

 

 

 

 

 それなのに。

 それなのに、自分が呪われていると思わない(理解しない)方がどうかしてる。

 

「……朝比奈?」

 

「……ごめん、なんでもない。続きは、また今度でいいかな。」

 

 そう言いながら朝比奈は自分の連絡先を代表として同性である釘崎に教えた。

 嫌なことを思い出して疲れてしまったし、この後さらに疲れる予定なんだから、今日はもう終わりにしてしまいたい。

 有無を言わさぬ言い方に三人は押されて、釘崎は連絡先を登録した。

 セカイへ来る手段であった『untitled』の再生を止めれば元の場所に帰れると伝えると、各々携帯を取り出す。

 ついでに『untitled』を再生すればまたこのセカイに来れることも伝えておいて、連絡がつかなかったらここに来てくれと頼んだ。

 三人が帰って行った後に、携帯を取り出して釘崎の一つ上にある番号を押し、一つ深呼吸。

 

「……もしもし、ご無沙汰してます。」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「お疲れサマンサー」

 

「あ、五条先生、出張お疲れ」

 

 数日後、出張から帰ってきて寮の共同スペースにやってきた五条に虎杖が挨拶を返す。

 たまたま集まっていた一年一同が渡された土産を嬉々として開封してる最中に、そう言えば、と五条が口を開いた。

 

「せつに会ったって? 電話きたよ。セカイと領域間違えちゃったんでしょ」

 

「え、先生朝比奈と知り合い?」

 

「いや、あの子に呪術の基礎教えたの僕だし」

 

「そういや呪術師じゃないのにやたら呪術について詳しかったような……」

 

「おかしいと思ったんだよね、そう簡単に領域展開ができる人間がいるなんて。案の定大方予想通り。僕がせつを認識してない訳ないじゃん」

 

 まぁ面白そうだから調査指示したんだけどね!

 

 朗らかに笑い指二本で印を組む五条を──正確には五条を包む無限をだが──伏黒が殴った。

 

 

 




朝比奈せつ
これからセカイがどんどん騒がしくなっていくことにまだ気付いていない。
家には帰っておらず、姉とは長いこと顔を合わせていない。

一年
後に見てみたら虎杖と伏黒のスマホにも『untitled』があった。
これからせつちゃんと仲良くなっていってください。

五条悟
せつちゃんに頼まれて家に帰らなくていい様にそれっぽく朝比奈母に説明した。
連絡先も交換して親しげに見えるがミクに『untitled』を追加してもらえてない。


一日早いけど!!!!なーーーん誕生日おめでとう!!!!!!!!!!

次回で完結です。
明日投稿しておきますね〜〜〜〜(ストック)
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