呪術短編集   作: ぽてと。

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クロスオーバー作品にはタイトルの通り【×】と表記させていただきます。
クロスオーバーを好まない読者様はそっ閉じするか他のお話を読んで頂けると幸いです。自衛、大事。

うーーーーーーーーーーん??? これ呪術が原作入ったら我妻善逸成人してるってこと……?? と、作者の中でちょっとした違和感。
考えなしに作ったお話ですのである程度は目を瞑っていただけると……。


音が変わって【×】

 よろしくお願いします。

 そう言って入ってきたのは、もう夏だというのに高専から普及された制服の上に上着を着ていて、青白い顔をした女だった。

 

 彼女は名を練城(れんじょう)優佳(ゆうか)と名乗った。

 呪術師になるための学校が、呪いと戦うための学校が、彼女には酷く似合わないように同期になった三人には映った。

 日に当たっていない病弱に見える肌、細い腕、どこをどう見ても戦い方を知らないように見える。

 それでも空気を読んでスルーする、なんてことが出来ない人間が、同期の中で一人だけいた。

 

「なぁ、オマエそんな体で任務できんの?明らか雑魚じゃん」

 

「こら、悟」

 

 五条悟、それがその人間の名前である。

 小さく制止を促した親友の言葉を無視して、五条は練城を見る。

 一度、二度、目を瞬かせる練城は、何を言われているのか分からない、そんな表情で暫く五条を見てから、静かに呟いた。

 

「分かんない」

 

「は?」

 

 五条は正気を疑うような目で練城を見る。ならなんでここに来たんだコイツ。

 五条の隣で座っていた夏油も表に出しこそしないものの、五条と同じような心境だった。

 

「私は……」

 

「なんだよ」

 

「……なんでもないです」

 

「は?」

 

「忘れて」

 

「は?」

 

 一人で完結して会話を終える練城に、五条が苛立たしげな声をあげる。

 この少ない立ち位置で決まった同期たちの彼女への印象は『面倒な奴』だ。

 これで雑魚なのだから、厄介でしかない。同期は夏油と家入の二人だけ良かったのに、と五条は瞳に映る彼女の術式を見てため息を吐いた。

 

 鬼化とか、なんだよそれ。

 

 

 

 

 

 練城が術式を使っているところを夏油は見たことがなかった。

 一緒の任務に組まされることもないし、基本彼女は一人で任務に向かうらしい。

 五条と家入にも聞いたが見たことがない、家入なんてそもそも傷の治療にも来ないから滅多に会わないのだという。

 夏油と五条でさえ小さな傷で家入の元を訪ねるというのに、治療に来ない。

 五条と気まぐれで話した結果、まさか彼女は同級生の中に馴染めていないのが気不味くて怪我をやせ我慢しているのでは? という結論に至った。立ち回りが上手く怪我をしないからと言う可能性を一度も口に出さないところで彼ら二人の性格はお察しである。

 

 夏油は早速面倒臭がる五条を連れて練城を探した。任務で疲れていると言いつつも夏油に大人しく連れられている様子を見るに、一応五条も練城のことが心配ではあるらしい。

 とりあえず補助監督あたりに聞けば彼女がいつ帰ってくるかも分かるだろう、そう思って夏油は補助監督に練城はいつ帰ってくるのかと問い合わせた。

 

「練城術師ですか? 今任務は入っていないので高専にいるはずですけど。」

 

「今日は休みなんですか?」

 

「いや、練城術師はいつも夜にしか任務に出ませんよ。」

 

 五条が首を傾げた。夏油も困惑しながら補助監督に礼を伝え、五条に練城が日中出歩いているのを一度でも見たことがあるかと話を振る。

 

「いや、ねぇけど……任務行ってると思ってた。」

 

 それは夏油も同意見である。

 二人は一つ頷き合ってから練城の部屋を目指した。確か、家入の二つ隣の筈だ。

 どうしてここまでするのかと言われれば分からない。乗り掛かった船だと思っているだけなのか、折角の同級生なのだから仲良くしたいと思っているのか。

 練城の部屋の扉を数回叩いて、反応を待つ。

 暫くしてゆっくりと開く扉を見て夏油は目を見開いた。まさか本当に高専の中にいたなんて。

 

「……げとうと、ごじょう?」

 

 眠そうに目を擦りながら、未だ夢の中にいるような状態で出て来た練城になんと声をかけたらいいのか分からなくて思わず吃る。

 転校初日から今まであったことがなかったんだから、本当は任務に行っているのだろうと思っていたのだが。

 

「あー……オマエ、何してんの。」

 

「……? 自室にいた……」

 

 喋り出さない夏油に痺れを切らして五条が話しかけるが、気不味さで遠慮してしまうためか会話が続かない。

 そこからはやっと情報が整理できた夏油が先導して話を進めた。

 顔を見ないから心配して訪ねてみたとそれっぽい理由を並べて、よければ教室においで、なんて適当に言って彼女との対話を終える。

 結果的に最初に気になっていた怪我については聞けていないのだが、見たところ目立った傷はなさそうだったし、再び扉を叩こうとは思わなかった。

 ならばどうやって傷の治療をしているのだろう──夏油の奥底にしまわれた疑問に、数日後答えが帰ってくるとは、この時の彼は思ってもいない。

 

 

 

 

 

 任務が同じになった。

 誰とって、五条と、家入と、練城と。

 何気に練城が転校してきたあの日から一年が再び集まるのは初めてである。数ヶ月は経っているのに……。

 集合場所に向かっていると、練城を見つける。練城は日差しを遮るためか日傘をさして三人を待っていた。

 アイツあんなんだから肌真っ青なんじゃねぇのと舌を出す五条を注意してから練城に話しかけた。

 

「練城さん、数日ぶり。」

 

「……うん。」

 

「今日はよろしく……って言ったらいいのかな。」

 

「よろしく。なるべく役に立つようにするね。」

 

 そう言って車の中に入る練城に続いて家入、五条が車に乗る。夏油は助手席だ。

 車の中でも喋りかけたら返してはくれた。どうやら自分たちを嫌ってはいないらしい。

 距離を測りかねている間に呪霊が蔓延る廃墟に車が止まる。待機する家入に手を振って、五条と練城と共に足を踏み入れた。

 

「……潜んでる?」

 

「あぁ。私の呪霊で引っ張り出そうか?」

 

 索敵は夏油と五条にも負けない、どうやら感覚は鋭いらしい。

 そんなことを尻目に夏油は掌から呪霊を出す。等級は……二級でも弱らせは出来るが、確実に祓うのなら一級が適任だ。

 しかし夏油は三級の雑魚を出した。五条にも手を出さないように言ってある。

 何故かと聞かれればこう答えるだろう、彼女の術式が気になるのだ、と。

 五条から聞いた話では鬼化なんてものだったらしいが、やはり自分の目で見てみたくなるもの。

 折角珍しく同じ任務なのだから、同期の戦闘能力を把握しておきたいと言うのは別に自然な考えの筈。

 

 暫くノロノロ祓って練城を観察したが、彼女は術式を使わない。慣れてないであろう呪具を使っているせいで、どんどん生傷が増えていっている。

 

「練城さん、術式は使える? 悟が術式を使うと建物を壊してしまうから使えないんだ。」

 

 夏油の余計な一言で五条が「ア"ァ"?」と低い声を出したが、残念ながら夏油がとっさに考えた言い訳でもなく術式の精度が悪いと過小評価しているわけでもなく事実である。

 それを見た彼女は少しだけ息を飲んで、分かったとだけ伝えた。

 

 

 結果的に、鬼化した練城によって呪霊は祓除された。

 彼女の術式を行使した姿に、夏油は息を呑み、それまで興味なさげに見ていた五条も目を見開いた。

 まず、身体能力が上がった。いや、上がったなんてものじゃない。

 握力は下手すれば夏油よりも強くなっているだろう、速さも、五条と大差ない。

 

 何より驚いたのは。

 祓い終わった後、暴れ回って怪我だらけになってしまった練城を見て、五条が家入を呼びに行こうとしたときだ。練城がそれを止めた。

 

「ンな怪我で何言って──ッ?」

 

 言おうとした言葉の続きが空気になって音を失う。

 ぱっくりと開いて血が流れ落ちていた腕の傷が、再生したからだ。

 なんだ今のは、何をした。まさか反転術式? いや、そんな緻密な呪力の操作を彼女の力量でできるとは思わない。

 練城は彼らの反応を見て説明を始めた。

 どうやら先程の傷の再生は鬼化したことによるメリットの一つらしい。身体能力の向上と、再生機能、後は五感の強化があるんだとか。

 デメリットも勿論あると言っていたが、それまでは「……おなかすいた」なんて下手な誤魔化しのせいで聞けなかった。

 

「夏油、報告書頼んでいい? 私寮帰って寝るね」

 

「……食事じゃなくて?」

 

「え? うん。」

 

 腹が空いたのではなかったのか。

 本当に下手な誤魔化しだったなと思いながら、廃墟の外へ移動する。

 この後は家入と合流してそのまま買い物に出かける予定だったので、練城とはここでさよならだ。

 一応誘っては見たが、「太陽が出ているときに出かけたくない」と一蹴りだった。

 

「硝子お待たせ……って、誰? その子」

 

「知らない。練城に用があるんだって。」

 

 外に出てみるや否や飛び込んできたのは家入の横にいる金髪の少年。

 練城の知り合いなのかと彼女を見てみると、ニコニコと微笑んでいる少年と違って、練城は青白い顔をいつにも増して青くさせながら後ずさっていた。

 

「逃げないでね。逃げたら地の果てまででも追いかけて兄貴呼ぶから」

 

「あ、ぜ」

 

「まだ話のできる俺と、見つけた瞬間にアンタの頸掻っ切る兄貴、どっちがいい? まぁアンタに選択権なんかないんだけどさ」

 

 物騒。

 元彼の弟か何か? と家入がからかい混じりに聞くが、練城は口をパクパクさせるだけで何も答えない。

 なんだ彼女もそこそこ遊んでたのか、と十人が聞いたら十人が引くような最低なことを考えながら夏油は取り敢えず少年の名前を聞いた。

 我妻善逸というらしく、苗字は違うが姉弟なんだとか。遊んでいたわけではなかった。

 

「取り敢えず、行こう。話すこと、いっぱいあるもんね?」

 

「え、あの」

 

「この人たちの前でもいいなら俺はいいけど」

 

「……やだ」

 

「だよね、じゃ行くよ」

 

 話終わってから去っていく我妻と練城。

 残された彼らの中にある、それを、家入と五条を交互に見て頷く。

 残された彼らの中にある好奇心が招く、それ。

 

「よし、尾けようか」

 

 野次馬根性である。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 ファミレスに入る弟を見て、練城優佳はおっきくなったなぁなんて場違いな感想を抱いた。

 前世、同じ師の元にいた、兄弟弟子。

 いつも機嫌が悪そうだったけど誰よりも師を慕っていた獪岳と、泣き虫で弱虫だと自分では言っているが人一倍勇気と優しさがある善逸。

 練城優佳は、桑島優佳は二人よりも先に入ってきた、彼らの姉弟子だった。

 師である桑島慈吾郎に拾われて、獪岳と出会って、善逸に懐かれて。

 家族が鬼に喰われて天涯孤独だった彼女に、また家族が出来た幸せな人生だった。

 私は、鬼になってしまったけれど。

 

「まずは、久しぶり、かな。……姉ちゃん」

 

「……私は、君の姉じゃないよ」

 

「あぁ、()()()もそんなこと言ってたね。」

 

 獪岳と任務に行っている時に、上弦の壱に不運にも、不幸にも、数奇にも遭遇してしまった、これが優佳の人生の終わりだった。

 文字通り、人生(人としての生)を終えた日だ。

 

 その三対六つの目を見たとき、何よりもまず逃げるための手段を考えた。それまではよかった。

 生きるために鬼になるという獪岳を叩いて、そんなこと言うなと叱った。それまではよかった。

 なんとか呼吸を打って目を眩まして、獪岳を逃した。それまではよかった。

 柱が来るまで、獪岳が逃げるまで何をしてでも粘った。それまではよかった。

 しかしやっときた上弦の参を退けた柱が上弦の壱のたった一振りで死んだ。これはよくなかった。

 そろそろ戯れを終わりにしようと言われた。これはよくなかった。

 優佳が鬼になるならばこのまま帰ると言われた。これはよくなかった。

 鬼にならないのならば先程逃げた隊士(獪岳)を追うと言われた。これがよくなかった。

 だから血を甘んじて飲んだ。なにがよくなかった?

 

 そんなことを考えながら鬼として過ごして、結果人を喰べてしまった。食欲に、目の前に出された血塗れの人間に、鬼の始祖の失望に、耐えられなかった。絶えられなかった。

 気付いたら弟たちと剣を交えていた。あぁ、殺しに来たんだね。

 気付いたら弟たちに頸を斬られていた。獪岳と一緒に戦うための型、使えてよかったね。

 気付いたら弟たちが涙を流していた。うん、成長したね。

 

『なんで……なんで………ッ!!』

 

『鬼になんかなるなっつったのはテメェだろうが優佳ァ!!!』

 

 弟たちの叫びはいまだに夢に見る。その度に死にたくなる。

 

「ふーん、鬼の音がしたから何かと思えば……術式、ってやつなんだ。それって前世で鬼になったから?」

 

「ちが」

 

「嘘はつくなよ。俺にそんなの通じないの、アンタは分かってるだろ」

 

「……多分、そう。」

 

 目の前にいる我妻善逸は鬼になる前の弟とは、何もかもが違っていた。

 弟は優しかった。話を途中で遮られるなんて、初めてのことだ。

 弟は柔らかかった。昔の優しい目とは違う、酷く冷えた目。

 弟は賑やかだった。こんな痛い沈黙が続くなんて、考えたこともない。

 

「善逸、私は」

 

「アンタが喋っていいことは何もない。アンタが出来るのは俺の質問に答えることと、アンタが鬼になった後を聞くことだけだ。」

 

「っ」

 

 また遮られた。

 さりげないそれが優佳の心を揺さぶっていることを知らない善逸は、そのまま話を始める。

 優佳が鬼になった後、彼らの師が介錯もなしに腹を切ったこと。一人死んでいったこと。

 刺さる。

 獪岳は最後の決戦でこそ巻き込まれあの場にいたものの、自ら除隊していたこと。

 刺さる。

 上弦の壱に遭遇した炎柱が殉職し鳴柱が鬼になったと報を受け、あまりの衝撃に刀を持てなくなったものがいること。

 刺さる、刺さる。

 

 刺さって、刺さって、血が流れ尽きて。

 最後に溢れ出してきたのは……どうしようもない程愚かに、怒りだった。

 

「……じゃあ、どうすればよかったの。逃げればよかったの、その場で死ねばよかったの、それとも倒せばよかったとでも言うの。」

 

「……それは」

 

「逃げればよかった?」

 

 あの六つの目から逃げる無謀さが、あの鬼に背を向けることの恐怖が分かるのか。

 

「死ねばよかった?」

 

 あのまま死んでいれば、果たして獪岳は生きて戻れたであろうか。

 

「倒せばよかった?」

 

 そんなことが、可能だとでもいうのか。

 

「………それは」

 

 初めて、弟の目が揺れた。

 ハッとして優佳は我に返る。その後、飲み物代の千円を机の上に置いて立ち上がった。

 

「……ごめん、ごめんね」

 

 君は悪くない。

 そう言い残して店から出ていく姉を見て、弟はため息を吐きながら項垂れた。

 

 

 

 

 

 前世だとか、爺ちゃんは腹を切ったとか、兄貴はアンタを殺した後自害したとか、レンゴクさんが死んだとか。

 呪霊で盗み聞きしていた夏油は予想の何十倍も重そうな事情に、五条と家入がいるのも忘れて困惑した。

 

 

 




練城優佳
術式が鬼化なのは自身への罰だと思って生きてきた。
今回あまりにも昔とは違う弟にたじたじだけど、素は善逸が鬱陶しがる程には弟大好き。
獪岳とは今世あったことがないが、獪岳なら本気で自分を斬りかねないと思っている。

同級生
優佳の術式に衝撃を受け過ぎて奇行に走った。
この後夏油は鬼化の術式に深入りしようとする五条をぶん殴ったりして優佳に対してやたら気を使うハメになる。

我妻善逸
いきなり脅して連行して冷たく当たったけど本当は仲直りしたいと思っている。
姉が人間に戻って尚鬼に染まっていると判断したときは身内として相応の"処置"をするつもりでいた。そんなことがなくて心の中でクソデカ大声で喜んでる。
獪岳と姉の話をしたことはないが、獪岳なら本気で姉を斬りかねないと思っている。

今週中に次出せたらいいですね。

やる気が7ぐらい上がるので、感想、評価など頂けると大変嬉しいです。

作者、女の子でしかオリ主って書いたことないんですけど……

  • 女主だけでも大丈夫
  • 下手でも男主を出してほしい
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