ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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今回はテオロング視点で話が進みます

それではどうぞ

P.S.:100話突入しました!


20話:☆事件の真実

SIDE:テオロング

 

 

 

俺は現在、第19層で全速力で馬を走らせていた

 

何故このようなことになったのかと言うとキリトとアスナさんのふとした会話がきっかけである

 

話をしている中で半年前の『指輪事件』の真犯人がグリセルダさんの愛人だったグリムロックという仮説が組みあがった

 

それと同時にそのグリムロックが真実を闇に葬り去るために3人を始末しようとしているという仮説も出てきた

 

あくまででも仮説であるが本当だったら一大事の為一応攻略組に連絡を通した後、たみとアスナさんはグリムロックの確保に、そして俺達はヨルコさん達の保護に別れて急いでヨルコさん達の所へと向かうことになった

 

 

乗馬感覚を思い出しながら馬を走らせていると6つのカラー・カーソルが見えてきた

 

内訳は緑3、犯罪者(オレンジ)3 つまりヨルコさん達は無事である…不味い状況には変わりないが

 

「緑3 犯罪者(オレンジ)3だ! どうする? このまま突っ込むか!?」

「あぁ! 頼む!」

「了解! 舌噛むなよ!」

 

俺はキリトに注意をかけると何度か跳ばしながら頂上へと辿り着く

 

その直後に手綱を目一杯引いて馬を制止させると後ろに乗っていたキリトが落馬した

 

「いてっ!」

「あ…わ…悪い…」

 

咄嗟にキリトに謝り、馬から降りると倒れているシュミットに向く

 

「ふー… ギリギリセーフ…かな? 費用はDDA持ちで頼むわ」

 

ここまで乗せてくれた馬に「ありがとな」と呟いてから馬の尻を軽く叩いてレンタル解除させ、走り去っていく馬を横目にキリトは3人いる犯罪者(オレンジ)の内の先頭にいる奴に声を掛ける

 

「よぉ PoH 久々だな 相変わらず悪趣味な恰好してんのか」

「てめぇにだけは言われたくねぇな」

 

PoHは隠しきれない殺意を孕んだ声で答えると大きく一歩を踏み出した袋頭のオレンジ…ジョニー・ブラックが相変わらず癇に障るような高音で喚く

 

「この野郎…! 余裕かましてんじゃねぇぞ! 状況判ってんのか!?」

 

俺達に毒ナイフを向けている奴を左手で制し、PoHは中華包丁の様な武器の背で肩をとんとんと叩く

 

「こいつの言う通りだぜ キリトにテオロングよ 颯爽と登場したのは良いけどな いくら貴様らでもたった2人で3人を守りながら俺らを相手にできると思ってんのか?」

「まぁ無理だな」

 

PoHの言葉にキリトは平然と返し、「だが」と続けた

 

「対毒POTは飲んでるし〖回復結晶〗もありったけ持ってきてるから10分ぐらいは耐えてやるよ それだけあれば援軍が駆け付けるのには充分だからな いくらお前らでも攻略組30人を相手にするのは厳しいんじゃないか?」

 

先程の意趣返しをされたPoHはフードの奥で軽く舌打ちをしたのが聞こえてきた

 

「…Suck」

 

そして短く罵った後、PoHは右手に持っている武器を持ち上げると俺達に向け、低く吐き捨てた

 

「…"黒の剣士" そして"紺の剣士"… 貴様らは必ず地に這わせてやる 大切なお仲間の血の海の上でな… 期待しておけよ」

 

器用に中華包丁を指で回し、腰のホルスターに納めると手下2人に合図をして悠然と丘を降っていった

 

ジョニー・ブラックの方は先ほどの言葉が効いたのか足早に降りていったがぼろ布に髑髏のマスクをしたオレンジ…ザザは数歩進んだところで振り向き、俺達に囁く

 

「恰好 付けやがって 今度は俺が お前らを馬で 追い回してやる」

「なら頑張って練習しろよ あれ言うほど簡単じゃねぇぞ」

 

俺がそう言うとザザは低い呼吸を漏らし、2人の後を追いかけるように丘を降っていった

 

 

 

3つのオレンジカーソルが闇夜に消えるのを確認した俺は大きく息を吐いた

 

「あ゛~ 緊張した~…」

「だな… よりにもよってまさかラフコフだったとは…」

 

キリトと言葉を交わしつつも俺はウィンドウを開き、こちらに向かってきているポテトさん達に「ラフコフは逃げた」と手早くメッセージを送る

 

そしてキリトはシュミットに解毒ポーションを手渡すとヨルコさん達に声をかける

 

「また会えて嬉しいよヨルコさん それに…初めましてになるかな? カインズさん」

「全部終わったら改めてお詫びに伺うつもりだったんです…と言っても信じてもらえないでしょうけど…」

 

ヨルコさんは俺たちの方を見るや否や申し訳なさそうな顔をしたので俺は咄嗟に首を横に振る

 

「信じますよ それに元々俺たちがこの事件に関わることはイレギュラーでしたし… お詫びなんていいですよ」

 

俺の返事に申し訳なさそうな顔をしたヨルコさんの横で黒いローブを脱いだ男性…カインズさんが頭を下げた

 

「初めまして…ではないですよキリトさん あの時一度だけ目が合いましたね」

 

カインズさんの言葉にキリトはようやく思い出したように口を開く

 

「そういえばそうだったか あんたが死ぬ…じゃなかった 転移する寸前にだろ?」

「えぇ あの時 この人にはこの偽装死のカラクリを見抜かれてしまうかもしれないって何となく思ったんです」

「それは買いかぶりだ さっきまで完璧に騙されてたよ」

 

キリトはそう言いながら苦笑いすると空気がわずかに緩んだがシュミットが鎧を鳴らしながら上体を起こすと再び引き締まった空気になった

 

「キリトにテオロングよ 助けてくれたことには感謝するが…なんで判ったんだ あの3人がここに来るって」

 

その質問に俺は少し考えると答える

 

「可能性の1つとして考えたんだ 圏外に集まるこのタイミングを狙うとな まぁ実際それがラフコフの…しかもトップと幹部2人だとは思ってもみなかったし」

 

実際ラフコフが来るということが事前にわかっていたらもっと準備を万端にしていたと思う

 

そして俺に代わるようにしてキリトが『圏内事件』を計画した2人も知らない陰の部分について出来る限り静かに語り始めた

 

「…可笑しいって思ったのはつい30分ほど前だ… カインズさん ヨルコさん あんたたちは今回使った武器をどうやって手に入れた?」

 

キリトに訊ねられた2人はお互い見合わせると代表してヨルコさんが答えた

 

「…『圏内事件』を偽装するという私達の計画のためにはどうしても継続ダメージに特化した貫通属性の武器が必要でした でもそこらじゅうの武器屋を探してもそんな武器は見つからなくて…と言ってもそんな武器を作ってもらうよう鍛冶屋さんにオーダーすれば武器に銘が残ってしまいます そしてその人に訊けばオーダーしたのが被害者であるはずの私達だと直ぐにわかってしまいますし」

「だから僕たちはやむを得ず、ギルド解散以降会ってなかったあの人に…リーダーの旦那さんだったグリムロックさんに連絡したんです 僕たちの計画を説明して必要な貫通武器を作ってもらうために 居場所は判らなかったけど幸いフレンド登録だけは残っていたので…」

 

やはりと思いつつ俺はカインズさんの話に聞き入る

 

「グリムロックさんは初めは気が進まないようでした 返ってきたメッセージにはもう彼女を安らかに眠らせてあげたいって書かれていました でも僕らが一生懸命にお願いしたらやっとあの2つの…正確には3つの武器を作ってくれたんです 届いたのは僕じゃないほうのカインズさんの死亡日時のほんの3日前の事でした」

 

カインズさんとヨルコさんはグリムロックさんのことを奥さんが殺された被害者だと信じているようだ

 

その台詞を聞いたキリトは大きく息を吸い込むとそんな彼らを深く気付つけるであろう言葉を無理やり押し出すように話し始めた

 

「…残念だけど グリムロックがあんたたちの計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃない 『圏内事件』なんて派手な事件を演出し、大勢の人の注目を集めたらいずれ誰かに気付かれると思ったからだ 結婚によるストレージ共通化が離婚ではなく死別で解消された時…その中身がどうなるかを」

「え…?」

 

ヨルコさんは意味が解らないと言わんばかりに首を傾げる

 

まぁ無理もないだろう… 元々SAOには女性が少なく、更に結婚するにまで至るプレイヤーですら稀なのに それに加え、離婚するプレイヤー達はもっと少ないしそれが死別となれば尚更だ

 

キリトやアスナさんならともかく、一応付き合っている間柄である俺とたみですら指輪はグリセルダさんを殺害した犯人の元にドロップしたと信じて疑わなかったのだから

 

「いいか… グリセルダさんのストレージは同時にグリムロックのものでもあった だから例えグリセルダさんを殺したところで指輪は奪うことが出来ないんだ 彼女が死んだ瞬間に指輪はグリムロックの元に転送されるのだから… シュミット…お前は計画の片棒を担いだ報酬を金貨で受け取ったんだろう?」

 

キリトの質問に地面に胡坐をかいているシュミットは呆然としながらも首を縦に振った

 

「そんな大金を手に入れるには今度こそ本当に指輪を売らないといけなかったはずだ でもそれができるのは指輪を手に入れたグリムロックだけだし、彼はシュミットが計画の共犯者だと知っていた それはつまり…」

「グリムロックが…あいつがあのメモの差出人…そしてグリセルダを圏外まで運び出して殺した実行犯だったのか…?」

 

ひび割れた声でシュミットが呻くがキリトは少し考えると否定した

 

「いや 直接手は汚しはしなかっただろう 宿屋で寝ているグリセルダさんをポータルで運び出す際に彼女が目を醒ますリスクもあっただろうからな その時顔でも見られたらもう取り返しがつかない 多分実際に実行するのは汚れ仕事専門のレッドに依頼したんだろう だからといってグリムロックの罪が減るという訳じゃないけどな…」

 

それにシュミットは何も言おうとせずただ虚ろに宙を見つめるだけだった

 

まるで魂が抜けたような表情はカインズさんとヨルコさんもしていたが数秒後我に返ったヨルコさんはダークブルーの髪を揺らしながらかぶりを振り、徐々に激しさを増すと信じられないと言いそうな声色でキリトに向かって叫んでいた

 

「そんな…嘘です そんなことが! あの2人はいつも一緒でした…グリムロックさんはいつもリーダーの後ろでニコニコしてて…それにあの人が真犯人だったらどうして私達の計画に協力してくれたんですか!? あの人の協力が無ければ私達は何もできず『指輪事件』が再び掘り返されることもなかったはずです 違いますか?」

「あんたたちは今回の計画を全てグリムロックに話したんだよな?」

 

キリトの突然の問いかけにヨルコさんは一度口を結ぶと小さく頷く

 

「…つまり彼は計画が成功したら最後はどうなるのかを最初から分かっていた 罪悪感に駆られたシュミットがグリセルダさんのお墓の前で懺悔し、そこで死者に扮したヨルコさんとカインズさんがさらに問い詰めるというこの事件の最終章まで… ならそれを利用して今度こそ『指輪事件』を永久に闇に葬り去ることは可能だ 共犯者であるシュミット、そして解決を目指すヨルコさんとカインズさん その3人が集まるこのタイミングを狙って…まとめて消してしまえばいい」

「そうか…だからあの3人が…」

 

虚ろな表情で呟くシュミットを横目にキリトは続ける

 

「その通りだ [笑う棺桶(ラフィン・コフィン)]のトップとその幹部が現れたのは偶然じゃない グリムロックが情報を流したからだ この場所にDDAの幹部メンバーという大物がしかも仲間なしで来ている…とね 恐らくグリセルダさんの殺害を依頼したときからパイプがあったんだろう」

「…そんな…」

 

膝から崩れ落ちそうになったヨルコさんをカインズさんが支えたがその顔色は月明かりの下でも判るほど蒼白になっている

 

カインズさんの肩に掴まりながらヨルコさんが一切の艶を失った声で囁くようにして口を開く

 

「でもなんで…グリムロックさんが私達を殺そうと…? そもそもなんで結婚相手を殺してまで指輪を奪わなくちゃいけないんですか…?」

「俺にも動機までは推測はできない でも『指輪事件』の時はアリバイの為にギルドの拠点から出なかった彼も今回ばかりは見届けるはずさ 3人が始末され、2つの事件がようやく永久に闇に葬られるのをね だから…後のことは本人から直接聞こうか」

 

そう言い終わるとキリトは足音が聞こえてきた丘の西側斜面に視線を向けたので俺もそちらを見ると

 

武器を持ったたみとアスナさんに連れられたグリムロック氏が姿を現した




次で圏内事件編はラストになると思います

それではまた次回に
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