ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
SIDE:たまぶくろ
キリトの武器の素材にするのは第55層の小さな村の西側に住み着いている白竜がドロップするというレア金属にすることに決め、リズベット武具店を後にすると早速転移門から第55層主街区の<グランザム>へと飛ぶ
途中、転移門の近くの屋台からホットドッグのようなものを買い食いし、その余韻が残らないうちに第55層の北側にある例の村へと辿り着いた
道中の敵は特に問題ではなかったがこの層のテーマが⁅氷雪地帯⁆であったことをすっかり忘れており、僕とリズは小さな村の圏内に入った瞬間揃って盛大なくしゃみをした
「「へっくしっ!」」
他の層では初夏の為、厚手の服は持ってきておらずストレージにあった薄手の服を何枚か重ね着してはいるものの、寒さを完全には防ぐことはできない
隣でガタガタと寒さに震えているリズに対して呆れながらキリトが聞いてきた
「…たまみたいに余分な服とか持ってないのか?」
「…ない」
するとキリトはウィンドウを操作し、大きな黒革のマントをオブジェクト化させるとリズの頭に向けて放り投げた
「…あんたは平気なの?」
「精神力の問題だよ」
リズはキリトの言葉に苛つきながらもそのマントの魅力には抗えなかったのかそのままマントにいそいそと包まった
「さてと…長老の家はどれかな…?」
キリトの声に僕たちは小さな村を見回すと中央広場の向こうにひときわ高い屋根の家が見えた
「あれだよね」
「あれね」
僕とリズはお互いに頷き合うとその家に向けて歩き始めた
その数分後、予想通りそこは村長の家で話を聞くことが出来たのだが…話がとてつもなく長く、全部聞き終わった頃には辺りはすっかり夕焼けに包まれていた
へとへとになって長老の家から転がるようにして出るとそこにあったのは家々を覆う雪が夕陽を浴びて橙色に染められている景色でその様は本当に美しかった
「まさかフラグ立てるのにここまで時間がかかるとはな…」
「どうする? また明日出直す?」
僕がキリトに訊ねるとキリトは考える
「う~ん… でもドラゴンは夜行性って聞いたからなぁ それに山ってあれだろ?」
そう言いながらキリトは村からそう離れていない白く切り立った峰を指差す
SAOではその構造的に絶対に標高100メートルを超える場所はないのであの山の登頂にもそう時間はかからないものだと推測できる
「そうね どうせなら行ってしまいましょうか あんたが泣きべそかくところ早く見たいし」
「そっちこそ俺の華麗な剣さばきに腰を抜かすなよ」
「「ぐぬぬぬ…」」
「やめろ2人共 喧嘩するな」
2人が口喧嘩をし始めたので僕は2人の頭をそろって叩いた
遠くから見る分には過酷そうに見えた山もいざ登ってみるとそれほど苦労もせずに登ることが出来た
道中で出てきた敵の中で一番強かったと思うのは時間帯のせいもあるのか【フロストボーン】という氷製のスケルトンだったがこれはスケルトン系に有効な打属性武器を扱うリズが気持ち良い音で蹴散らしていった
そうして雪道を登ること数十分、一際切り立った氷壁を回り込んだ先に有ったのが山頂だった
上を見ると第56層の底がすぐそこまで近づいており、辺りを見回してみるとそこかしこに巨大なクリスタルの柱が伸びていて、沈んでいく夕焼けの光がクリスタルに乱反射して七色に光る様はまさに幻想的の一言に尽きる
僕がポーチの〖転移結晶〗と〖治癒結晶〗を確認しているとリズが歓声を出した
「わぁ…!」
そして駆け出そうとしたがキリトに襟首を掴まれていた
「むぐっ! …何するのよ!」
「〖転移結晶〗準備しておけよ」
その顔は先ほどまでと違い真剣だったためリズは素直に頷き、〖転移結晶〗をオブジェクト化するとエプロンのポケットに入れていた
「それと、ここから先は俺一人でやる たま お前はドラゴンが出たらリズと一緒にその辺のクリスタルの陰に隠れてくれ」
「了解」
「…なによ 2人して…私だってそこそこレベルが高いんだから手伝うわよ」
「キリトだったら大丈夫だ だから大人しく従ってくれ」
僕が真剣な表情でそう言うと通じたのかリズはもう一度黙って頷く
気を取り直してざっと周りを見たがドラゴンは居らず、その代わり水晶柱に囲まれた大穴を発見した
「うわぁ…」
その大穴は直径10メートルぐらいはありそうで壁面は氷に覆われて輝いており、垂直に不覚伸びていて底は闇に覆われている為確認できない
「底が見えないな…」
「確かにこりゃぁ深いな…」
試しにキリトがその辺の水晶の欠片を持って、その穴に向けて落とすがきらりと光って直ぐに見えなくなり、そのまま何の音も戻ってこなかった
「…落ちるなよ?」
「落ちないわよ!」
キリトの冗談にリズが唇を尖らせて反論した瞬間、沈んでいく夕日で藍色に染め上げられている空気を切り裂くようにして猛禽類の様な高い雄たけびが山頂全体に響いた
「たま 来たぞ! そこの柱の陰に!」
「解った! 無理だけはすんなよ!」
キリトは有無を言わせないような口調で手頃な大きな水晶柱を指したため僕はリズの腕を掴んでそこへ大急ぎで向かう
そんなキリトの背中に向けてリズはまくしたてるように言った
「えぇっと… 左右の鉤爪と氷ブレスと突風攻撃に気を付けて!」
リズの言葉を聞いたキリトは背中を向けたまま
そして彼が背中の剣を鞘から抜くと同時に氷のように輝く鱗を持った巨大な白竜が姿を現す
その巨体に比例するように巨大な翼を緩やかにはばたかせ、宙にホバリングしている様は恐怖というよりもどこか美しさを感じさせる
その様子を水晶柱の影からリズと共に見ていると白竜がその
「ブレスよ! 避けて!」
リズが思わずそう叫んでいたがキリトは動かず、右手に持った剣を縦にかざすようにして突き出すと剣を風車のように回転させ始めた
白竜が放った氷のブレスを剣の回転で作ったシールドで防ぐが流石にすべては防ぐことが出来ず少しだけHPバーが減ったが直ぐにバトルヒーリングスキルで回復する
そしてブレスが途切れたタイミングを見計らってキリトが爆発じみた雪煙を立て、飛び上がりドラゴンの頭上に迫るような高さまで到達すると空中で連続的に技を放つ
僕の目にも負えないスピードで攻撃を白竜に当ててゆく、それに応じるように白竜も両手の鉤爪で攻撃するがキリトの方が圧倒的に手数が多い
次にキリトが着地したときには白竜のHPは3割以上減少していた
再び白竜はキリトに向かってブレスを吐くが今度はダッシュで回避し、再度ジャンプ
重低音を響かせつつ単発の強攻撃を次々と叩き込むその度に白竜のHPが大幅に減って行って遂にレッドゾーンにまで到達した
あと少しで倒しきるといったところでリズが柱の陰から一歩踏み出した
「バカ! まだ出るな!!」
「何よ もう終わりじゃ…」
「早く戻れ!」
僕が大声で叫ぶが時すでに遅く、リズの姿を確認した白竜は一際高く舞い上がると両側の翼を大きく広げ突風を起こした
僕は地面に片手剣を突き立て、何か言おうとしているキリトの姿が見えたがあまりにも唐突な出来事だったため瞬時には理解できず、理解した頃には既にキリトの姿は雪煙に包まれており咄嗟に片手剣を地面に突き立てようと思ったが先に突風攻撃が襲い掛かる
さほどダメージはない攻撃で慌てず着地体勢を取ったが雪煙が途切れた先には地面がなく、山頂に在った大穴の上に運悪く飛ばされたのだと気が付く
僕は辺りを見回し、同じように飛ばされていたリズの手を咄嗟に掴み、そのままグイっとこちらに引き寄せて背中に手を回して固定する
「掴まって!」
その声が聞こえてきたのかリズも両手を僕の身体に回し、2人で抱き合ったまま落下していく
しかしこのままだと地面に激突したときに2人共間違いなく死ぬため何とか頭を巡らせて、ある日ふと何気なく見た刀を壁に突き立ててそれで地面に激突するのを防ぐと言う場面を思い出してそれを実行することにした
背中から剣を抜刀すると≪レイジスパイク≫を発動させ、近くの壁にそのまま剣を思いっきり突き立てる
火花が盛大に飛び散り、物凄い音が鳴って落下の勢いが鈍るが止まるまでにはいかない
ふと下を見てみると雪の積もった底が見えてきた…恐らく衝突まであと数秒もない というところで僕の身体にしがみついたままのリズがより一層強くしがみついた
そこで僕は手を剣から離し両手でしっかりとリズを抱くと体を半回転させて自分が下になるようにする
その後、衝撃と轟音が響く
眼を開くと至近距離のリズと視線が合う
そこで僕は先ほどのことを思い出して咄嗟にリズから手を離すと凄い勢いでその場から離れた
「ご…ごめん! 思わずああしちゃったけど怪我無い!?」
リズは一瞬キョトンとしたが直ぐに頷くと声を出した
「え…えぇ…大丈夫だけど…あんたこそ…その…大丈夫なの?」
そう言われてふと自分のHPバーを見てみると2桁台までHPが減っていた
「なんとか… かなり危なかったけど」
思わず冷や汗をかきながらも腰のポーチから〖ハイポーション〗を2本取り出すと1本をリズに渡す
「一応飲んどいて」
「うん…」
そして栓を抜き、〖ハイポーション〗を飲み干すとみるみるHPが回復していく
同じく〖ハイポーション〗を飲み干したリズから声が聞こえてきた
「あ…あの…ありがと…助けてくれて…」
「別にいいよ …でも次はここからどうやって出るか考えないと…」
僕は返事を返すと上空を見上げるとリズも同様に上空を見上げ、口を開く
「そういえばあいつはどうしてるのかしら」
「キリトか… 多分あいつだったら大丈夫だろ それよりも今は僕らだ」
「え? 〖転移結晶〗を使えばいいんじゃないの?」
そう言いながらリズはエプロンのポケットから〖転移結晶〗を取り出して僕に示してくるが僕は否定した
「多分だけど使えない ここは元々プレイヤーを落とすためのトラップだと思うからそれで脱出できるほど簡単じゃないはず」
「や…やってみないと判らないじゃない!」
そう言いながらリズは青い結晶を掲げながら大声を出した
「転移! <リンダース>!」
しかしその叫び声は虚しく氷壁に反射するのみで結晶は反応しなかった
「なんとなくだけどそんな気はしてたからね…」
がっくりと項垂れるリズの頭を優しく撫でながら僕は楽観的な言葉をかける
「キリトが何とかしてくれるだろうけどまぁそれ以外にも脱出方法はあるかもだし探してみよう」
「じっとするつもりは無いの?」
「早く脱出したいしこの状況はいわゆるイレギュラーだからさ きっと他の方法があるはずなんだ」
僕はその案を考えながら落ちている自分の剣を拾いに行き、鞘にしまう
しばらく考えると、とある案が浮かんだが直ぐに取り消す
「一応壁を上るっていう案が思いついたけど…現実的じゃないね」
「そうね それをやろうとするのはよっぽどの無謀か馬鹿な奴ね」
一応できそうなやつは1人思いつくけど…
2人して「うーむむ…」と呻き声を出して考えていると辺りはすっかり闇に包まれていた
「こうなった以上は野宿かな~… 幸いここにモンスターは出ないみたいだし」
「そうね…」
「じゃぁそうと決まればさっそく…」
そう呟くと僕はウィンドウを操作して野営セットをオブジェクト化し始めた
この小説でキリトが飛ばされたリズへと飛び込まなかった理由は白竜が起こした雪煙が原作以上に激しく、気が付いた時には2人共の姿がなかったからです
それではまた次回に