ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それと今回はある伏線を回収します
それではどうぞ
SIDE:たまぶくろ
僕が野営セットをオブジェクト化し終わるとリズは呆れた様子で訊ねてきた
「あんたいっつもこんなもの持ち歩いてるの?」
「まぁね ダンジョンで夜を超すことも少なくないし」
リズの質問に答えながらランプをタップして火を灯すとその上に小さな鍋を置き、慣れた手つきでその辺の雪をすくうと鍋に入れ、次に取り出した食材の内、根野菜っぽいものを取り出したナイフで切って(と言っても軽くナイフで食材に触れるだけだけど)鍋に入れ、次にお肉を切り、ハーブっぽいものを袋から取り出すと鍋に入れる
そして蓋をして鍋をダブルクリックすると料理の待ち時間のウィンドウが出てきた
少し待つと料理が出来た効果音が鳴ったため鍋を持ち上げると中身を2つのカップに注ぎ、片方をリズに渡す
「料理スキルはこの間30を超えたばかりだからあんまり期待はしないでよ?」
「あ…ありがと…」
リズは僕から具入りのスープを受け取るとお腹が空いていたのか直ぐに飲み始めた
趣味程度にスキルはとったけど案外役に立つものだと思いつつ僕も同じように飲み始める
「なんかさ…こうしてるとあんたと初めて会った時のこと思い出すわね…」
「ん…? あぁ…確かに…」
僕とリズが初めて出会ったのは最前線が3層の時とかなり前からの付き合いである
きっかけは僕がそろそろ武器を新調しようと思っていた時に偶然武器を売っているリズに出会って、彼女がオーダーメイドはできないかという無茶なお願いを受け入れてくれたということから付き合いが始まった
最初は3層の素材で武器を作ろうとしたがその途中で第3層のフロアボスが倒されたという報告を聞き、急遽第4層の素材で作ろうと思い立ち、それを伝えると本人も乗り気だったようで快く了承してくれた
そんなこんなでリズは4層で手に入れた金属を使って当時の僕の武器だった〖ウィドーブレード〗を作り上げてくれた
それを初めて手にした時、それまで使っていたどんな片手剣よりも手に馴染んだ気がした
その後代金を支払い、お礼も兼ねて第4層にあった屋台でご馳走した
恐らくリズはそのことを言っているのだと思う
…その後いったん解散し、情報屋の手伝いをしていたところでたみさんやキリト等と共にフロアボスの討伐に向かった時には大いに役立った
僕が過去のことを思い出しているとリズが口を開く
「ねぇ 聞かせてくれない? あの後の事とか最前線の事とか」
「あんまりおもしろい話じゃないけど…それでもいいなら …っと すっかり忘れるところだった」
僕はリズから空になったカップを回収しランプ以外の道具と一緒にウィンドウにほりこむと続けてウィンドウを操作し、野営用のベッドロールを2つ取り出した
「耐熱性能は折り紙付きだから雪の上でも寝ることが出来るよ」
そのうち1つをリズに向かって投げると自分の分のベッドロールを広げる
リズも同様に広げると呆れたような声で訊いてきた
「あんた よくこんなの2つも持ち歩いてるわね…」
「何かと使う機会多いからさ 予備は持っておいて損はないと思って」
僕は答えると武装を解除して自分のベッドロールに潜るとそれに倣ってリズも同様にベッドロールに入る
ランプを間に挟んで1メートルぐらいの間隔を開け、横たわっていると気まずい雰囲気が流れるがリズがその空気を紛らわせるように言った
「ねぇ さっきの話 してくれる?」
「あ…あぁ…」
僕は昔のことを思い出しながら話し始めた
―――当時のギルドの全員で第5層のフロアボスを倒しに行った事、やけに硬いボスを交代で仮眠しながら攻撃し続けた事、レアアイテム分配の為に100人近い人数でダイスロール大会をした事、トラップに引っ掛かってまるで映画の様な大脱出劇をした事、ある日空を見たら大量の竜がこちらに向けて急速に落下してきた事等々…
僕が思い出話をしているとリズがこちらを見ていることに気付き、思わず見返す
「ねぇ…たま…1つ聞いていい?」
「どうした? 急に改まって…」
「何であの時…あたしを助けたの? 助かる保証もなかったのに…」
理由か…さして理由はないんだよな…でもしいて言うなら…
「リズが大切だから…かな」
「…そう…」
自分でもクサいセリフだなと考えつつも嘘偽りのない僕の本心を答えるとリズは小さく呟いた
しばらく見つめ合っているとリズが不意に言葉を出した
「ねぇ…手…握ってくれる…?」
そう言ってベッドロールから右手を出してこちらに差し出してきたので思わず目を見張ったがやがて「解った」と呟いておずおずと自分の左手を差し出す
指先が触れ合ったときに思わずお互い手を引っ込めたが、改めて手を伸ばすと指を絡めるようにして手を握った
その時に彼女の手から感じた温かさはこの世界に来てから今まで感じたことのないものだったが僕はこの暖かさを心のどこかでずっと求めていたような気がする
僕はその温もりを感じながら瞼を閉じ、そのまま眠りについた
~~~~~~
翌朝、目を覚ますとリズの手をベッドロールに戻し自分の分のベッドロールをしまうと代わりにポットとカップ、それから花とハーブを取り出して昨日同様雪をすくい、そこに花とハーブを数個ずつ入れる
いわゆる花茶というものを作っているとその爽やかな香りでリズが目を醒ましたので声を掛ける
「おはよう リズ」
「…おはよ」
そこからしばらくすると花茶が出来たのでカップに注ぎ、ベッドロールから起きてこちらにやってきたリズに昨日のように1つのカップを手渡す
僕がお茶を飲んでいるとリズが体をくっつけてきて、一瞬お互いの目が合ったが僕たちは直ぐに視線を逸らし、しばらくはお茶を飲む音のみが響いた
「ねぇ…」
「なに?」
「このままここから出られなかったらどうするの?」
「そりゃぁ…ここで暮らす他ないよ」
僕があっさりした感じで答えるとリズは軽く笑いながら肘で突いてきた
「やけにあっさりしてるわね 昨日までの威勢はどうしたのよ …でも それも案外悪くないかもね」
そう呟くとリズは僕の肩に頭を預けてきたので僕は動かなかったが片づけをしないといけないので少ししたら「ちょっとごめん」と声を掛け、その場から立つ
そして野営セットをストレージにしまってリズの元へ戻ろうとした時、中央で何かが小さく光るのが見えた
「なんだろ? あれ」
思わず駆け寄るとそんな僕の様子を見たのかリズも後を着いてきていた
「どうしたの?」
「何かがここで光った気がしたんだけど…」
「雪が反射したんじゃ…?」
リズの意見も一理はあると思うがそれとは明らかに光り方が違う 僕は膝をつき、その場所の雪をどかし始めた
しばらく掘っていると先程よりも大きい銀色の輝きが目に入った
「あっ!?」
それを掘り出し、両手でそっと掴んで立ち上がるとリズも興味津々と言った感じで僕の手を覗き込んだ
それは白銀に透き通る物体で大きさは僕の両手からわずかにはみ出すぐらいだった
リズがそれをタップしてみるとポップアップウィンドウが浮かび上がり…〖クリスタライト・インゴット〗と出た
「これって…」
「多分目的のものだと思う」
なんか釈然としないがこれで目的は達成した
「でもなんでこんなところに…」
「うーん…」
僕がそのインゴットを右手で持ちながら考えていると ドラゴンは水晶を齧り、腹の中で精錬する という話を思い出した
「成程…」
「ちょっと! 自分だけ納得してないで私にも教えなさいよ!」
そう訊ねてきたリズに僕は忠告をする
「知ったらきっと後悔するよ?」
「そんな脅しは良いからさっさと教えなさいよ」
僕は忠告したからね…?
僕はしばらくするとゆっくりと口を開いた
「この穴はトラップじゃなくて白竜の巣だったんだ」
「えーっと… それがどうしたのよ?」
「つまりこれはドラゴンの排泄物…ということになる」
「ぎえっ…」
僕の説明を聞いたリズは思わず顔を引きつらせたのでそれをアイテム欄に素早く格納した
そして話題を切り替えるようにして口を開いた
「まぁ何はともあれこれで目的達成だよ 後は…」
「ここから出るだけね…」
2人して上を見上げるとため息をついた
「ひとまずキリトがロープを持ってくることに期待するかな…」
「そうね… でもこんな時にドラゴンみたいに空を飛べたらな~って思う…」
そう言いかけたところでリズは口をぽかんと開けたまま絶句した
「どうしたの? リズ」
思わず僕はリズの顔を覗き込む
「ねぇ ここドラゴンの巣って言ったわよね」
「言った」
「ドラゴンが夜行性で朝になったっていうことはそろそろここに戻ってくるんじゃ…」
そうして押し黙ったリズとしばらく見つめ合ってから再び上を見上げたその瞬間…
はるか上空の大穴の入口から滲むようにして黒い影が生まれ、それが徐々に大きくなっていき、やがて2枚の翼に長い尾、鋭い鉤爪のついた四肢がくっきりと分かるほどになった
「き…」
そして一歩後ずさるがどこにも逃げ場なんてなく…
「来たっ―――!」
リズが叫ぶとそれぞれ武器を抜いた
自身の巣に戻ってきた白竜は僕たちの姿を確認すると甲高く鳴いて地表すれすれに静止した
縦長の瞳孔を持つ赤い瞳には明らかな敵意が見えるがそこで僕はリズが言った先ほどの言葉を思い出し「成程」と呟くとリズがこちらを向いていた
「どうしたのよ?」
その問いには答えずにリズの方を向くと武器をしまい、リズに駆け寄って彼女の左手を取る
「少しお手を拝借」
「え!?」
そしてぐっと自分に引き寄せるとそのまま彼女を担ぎ上げる
「ちょっと!? 何を…!? うわっ!!」
「キリト… 少しだけお前の技借りるぞ!」
猛烈な勢いで壁に向かってダッシュし、壁に激突する寸前で大きく飛びあがってそのまま壁を走り始め、そのままグルグルと壁を走り続けた
そして白竜が僕たちを見失い、無防備な背中が見えたところでそこに向かって跳び、剣を抜くと背中に突き刺した
その途端、白竜が甲高い叫び声をあげ、凄まじいスピードで急上昇を開始した
「リズ! 振り落とされるなよ!」
その声を聞いたリズはより一層僕にしがみつく
そして周囲の氷壁を照らす光が次第に眩しくなっていき、風を切る音も微妙に変わり…白い輝きが爆発して穴の外へと飛び出していた
その後も上昇し続け、タイミングを見計らって白竜の背中から剣を抜くと僕たちの体は宙へと飛ばされる
ふと目を開くと55層のフロア全体が眼下に広がっており、そのすべてが朝焼けに輝いている様はまさに絶景の一言に尽き、思わず僕は声を上げていた
「おぉ…」
隣のリズを見てみるとこちらを見ながら笑顔で何か叫んでいた
「たまー! アタシねぇ!」
「何~?」
僕は思わず聞き返したがその部分だけ風によってかき消された為、訊き返す
「何だって~? 聞こえないよー!」
「何でもな~い!!」
そう答えたリズは首に抱き着くと笑い声をあげた
やがて地表が見えてきたため着地体勢を取ると大きな音を立てて雪が舞い、かき分けながら徐々に減速していき山頂の端で停止した
「ふー…」
そこで一息つき、リズを地面に降ろすとリズも首に回していた腕をほどいてくれた
剣を背中の鞘に戻すと巣へと戻っていく白竜を見届け、リズの方を向き言った
「さてと… 帰りますか」
「そうね」
「結晶使う?」
「…ううん 歩いて帰ろ」
リズは微笑みながら答えたため僕たちは主街区に向けて歩き始めた
~~~~~~
そして主街区である<グランザム>に到着すると昨日と同じホットドッグのようなものを食べているキリトを発見
当然リズは怒ったがキリトはホットドッグのようなものを食べたら出発するつもりだったらしく大慌てでそう伝えると一瞬キョトンとしたが直ぐに吹き出して笑い始め、「確かにあんたは変な奴だけど悪い奴じゃないからいいわ 許してあげる」と言うと転移門に向かって歩き始めたので僕たちもあとに続いた
そしてリズベット武具店に戻ってくると早速キリトの片手剣を作るために工房へと向かうとリズにインゴットを取り出して渡し、リズは充分に温まった炉にインゴットを入れる
「先に言っとくけど出来上がりは完全にランダムだからあまり過度な期待はしないでよ?」
「何 失敗したらまた取りに行けばいいさ …今度はロープ持参で」
「できるだけ長い奴をな」
僕が昨日のことを思い出しながら呟くとリズも思い出したのか笑いを洩らしていた
リズが赤く熱されたインゴットを取り出すと鍛冶用のハンマーで〔カン、カン〕と心地よい音色を奏でながら叩き始める
それを繰り返すこと約200回の音が響いた時、インゴットが一際眩い白光を放つと輝きながらその姿を変え始めた
まず前後に薄く伸び、次いで鍔と思しき部分が盛り上がってゆく
「おぉ…」
低い声で感嘆の声を洩らしたキリトが椅子から立ち上がると今まさに出来上がってゆく剣に近づいたので僕も思わず寄る
そして僕たちが見守る中、ついに1本の剣が姿を現した
それは片手直剣にしてはやや華奢で刀身もレイピアのように細いがとても美しい
素材にした〖クリスタライト・インゴット〗の見た目を少し受け継いでいるのかほんの少しだけ透き通っているように見え、刃の色は眩いほど白く、柄はやや青色を帯びた銀色である
しばらくその剣を見ていたがリズが剣を持ち上げ、右手の指でクリックし、出てきたポップアップウィンドウを覗き込む
「えーっと 名前は〖ダークリパルサー〗ね あたしが初耳ってことは多分情報屋の武器名鑑には乗ってないと思うわ ―――試してみて」
リズが〖ダークリパルサー〗をキリトに手渡すとメニューを開き、装備すると何度か素振りをすると頷いた
「いい剣だよ 有難う」
「ホント!? よし!」
キリトが〖ダークリパルサー〗を褒めるとリズは右手でガッツポーズをしてキリトの右拳と打ち合わせていた
そして思い出したようにキリトはリズに言った
「この剣の鞘がいるよな… 見繕ってくれる?」
「そうね 解ったわ」
リズは黒革仕上げの鞘を取り出し、キリトに手渡す
キリトはぱちりと音を鳴らして〖ダークリパルサー〗を鞘に納めるとウィンドウを開いてそれを格納すると気持ちを改めるように腰に手を当てた
「さてと… これで目的達成だな 剣の代金払うよ 幾らだ?」
「あー えっとね…」
リズはそこで一瞬溜めるとこちらを見て言った
「お金は要らないわ …もうたまに払ってもらったから」
「えっ!? そうなのか?」
一瞬お金なんていつ払ったっけと思ったが瞬時に大穴に落ちてからの出来事を思い出して頷く
「うん 払った」
「まじか ホント悪いな… じゃぁ今度何か奢らせてくれよ」
「じゃぁ楽しみに待っとくよ」
僕がキリトに対してそう言いリズの方を向こうとした時…
「「リズ!」」
工房の扉が勢いよく開け放たれ、2人の人物が中に入ってきた
そのうちの1人はリズに体当たりするような勢いで抱き着いた
「あ…アスナ…」
「心配したよ! メッセージは届かないし、マップ追跡はできないし…」
そしてそれに続くようにたみさんが口を開く
「常連の人に聞いても知らないって言うし…一体昨夜はどこにいたのさ! リズ! …それにたまさんも!」
泣きそうな顔でリズと僕に対して怒った
「ご…ごめん2人共…たまが行方不明になった原因はあたしにあるの」
「どういう事?」
「昨夜たまと一緒にダンジョンに足止めを喰らっちゃったの」
「なんでリズとたまさんが?」
「まぁ元を辿れば俺が原因なんだ…」
そこでキリトが声を上げると2人はそちらを向いてフリーズしたがアスナが声を上げた
「き…キリト君!?」
キリトは軽く咳ばらいをすると右手を少し上げた
「や…やぁ…アスナとタコミカ…久しぶり…でもないか アスナの方は2日ぶり?」
「う…うん …びっくりした そっか早速来たんだ 言ってくれれば私も一緒に行ったのに…」
そこで仲睦まじそうに話すキリトとアスナさんの様子をリズは疑問に思ったのかアスナさんに訊ねた
「もしかして…2人とも知り合い?」
「あー あぁ 攻略組同士だから それで」
そうキリトが答えるとアスナに対して悪い笑みを浮かべた
「成程 その人がアスナの思い人っていう訳ね」
「だからそんなのじゃ…!」
「はいはい わかってるから まぁでもあんたのハートを射止めるのもなんとなくわかるかな 確かに変だけどいい人っていうのはちょっとパーティを組んだだけでもなんとなくわかったし」
「キリトさんが何かしたんですか?」
「聞いてくれる? この人ったら店に来て早々店一番の剣をいきなりへし折ってくれたのよ!?」
「ええ!? ご…ごめん…」
「別にアスナが謝ることないって」
リズはそう言ったがたみさんは黒い笑顔をキリトに向けた
「き~り~と~さ~ん~?」
「あ…あれはただあの剣が折れるとは思わず…つい…」
「弁解無用! そこに正座!」
「は…はい…」
そんなこんなで今日も平和な時間が流れていく
第4層編でリズが言っていたオーダーメイドの依頼主がたまぶくろでした
次回からはいよいよ74層編へと参りたい…ですが 時系列でこの間の出来事を何か一つお忘れでは…?
次回からは多分シリアスになると思います
それではまた次回に