ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
寝ていた私の身体が揺らされながらどこかから声がかかる
「…きて…起きて…タコミカ…」
「むむむ…後五分…」
その声を避けるようにして私は寝返りを打つと、頬をつんつんとされる
「起きなさい タコミカ」
「う…うーん…?」
そこで体を起こし、まだ眠たい目を擦りながら辺りを見回すと部屋着姿のアスナが目に入ったので、昨日夜遅くまで喋っていて寝落ちしたのだということがわかった
「おはよ アスナ」
「おはよう タコミカ」
大きく欠伸をして、時間を確認すると8時前だったのでベッドから降り、先にリビングへと向かったアスナの後を追うようにリビングへと向かう
そしてアスナの用意した朝食を食べると完全に目が覚めた
「えーっと… もう出発する準備は済んでるの?」
「タコミカを起こす前にもう済ませたわ」
「さ…さいですか…」
食事を食べ終わり、後始末を済ませた後で、アスナに攻略の準備は終わっているのかと聞くと、もう準備は済ませてあると答えたのでなんか申し訳なくなった
おしゃべりをしているといつの間にか約束の時間まであと少しになっていたので私は攻略用の服に着替え、先に外に出る扉を開けると、アスナの護衛の1人であるクラディールが扉の前に立っていた為、大慌てで扉を閉めるとまだ着替えている最中のアスナの元へと急いで向かう
一連の流れを知らないアスナが慌てた様子の私を見て、疑問に思ったのか訊ねてきた
「どうしたの?」
「え あ えと…扉…えと…クラ…」
「クラ? 一体なんだっていうのよ…」
私の答えになっていない答えに首を傾げながらも、アスナも外に出る扉を開けた
「お迎えに上がりました アスナ様」
そしてクラディールの姿を確認するや否や、私の腕を掴んだ
「走るよ! タコミカ!」
「え!? ちょっと!?」
そして途中で何回か追いかけてきたクラディールを撒こうと、わざと遠回りしながら転移門広場へと向かうと、その勢いのまま転移門へ飛び込んだ
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転移門で飛んだ先の<カームデット>で2つの人影にぶつかりそうになった為、思わず叫ぶ
「きゃああああ!」
「よ…避けてください!」
その叫びも虚しく私は2人いた人の内、私は片方にアスナはもう片方に派手にぶつかって、そのまま何メートルか地面を転がる
混濁する意識の中で、ぼんやりと間近にておさんの顔が見えたので、思わず横にテオさんの身体をずらして慌てて立ち上がる
「お…おおお おはようございます…」
「お…おはよう…」
ておさんもすぐに立ち上がって、顔を赤くしながら顔を私から逸らす
そこでハッとして、アスナの方を見るとキリトさんが思いっきり吹っ飛ばされているのが見え、思わずアスナの方を見ると、ぺたんと座り込み、腕を胸の前で交差させていた
キリトさんはなぜか右手を開いたり閉じたりすると、強張った笑顔をアスナに向けるとアスナはより一層殺気を含んだ目でキリトさんを睨む
その様子を少し遠くから見ていると、転移門が青く光ったので思わずておさんの背後に隠れ、そのまま転移門の方へ徐々に押してゆく
「えっ? ど…どうした…?」
転移門から出てきたのはやっぱりクラディールだった
ゲートから出たクラディールはキリトさんとキリトさんを盾にしているアスナの方を見ると眉間と鼻筋に刻まれた皺をより一層深くさせ、憤った様子で口を開く
「アスナ様! 勝手なことをされてもらっては困ります…! さぁ ギルドホームに戻りましょう」
「嫌よ! 今日は活動日じゃないでしょう!? …大体なんで朝から私の家の前に張り込んでるのよ!?」
クラディールに対してアスナはキレ気味に言い返した
「こんなこともあろうと思いまして1ヵ月ぐらい前からずっと<セルムブルグ>にて監視の任務についておりました」
本人は自信満々そうに言っているが、それはただのストーカーだし、ハッキリ言って気持ち悪い
「それ… 絶対団長の指示じゃないわよね…?」
「私の任務はアスナ様の護衛です! それにはご自宅の監視も…」
「含まれないわよ! バカ!」
うん これは怒ってもいい 私も同じ事されたら流石に怒る
しかしクラディールは聞き入れず、乱暴にキリトさんを押しのけ、アスナの腕を掴む
「勝手なことを仰らないでください さぁ ギルドホームに戻りますよ」
流石にこれ以上は看過出来ない為、私はておさんの陰から出ると、クラディールの進路に立ちふさがろうと動いたが、その前にキリトさんがアスナを掴んでいるクラディールの右手首を思いっきり握っていた
「悪いな お前さんとこの副団長さんは今日は俺達の貸し切りなんだ」
「貴様…!」
クラディールは顔をゆがめ、キリトさんの手を振りほどくと軋むような声で唸るが、その顔にはどこか常軌を逸したものを感じる
「アスナの安全は俺らが責任持つよ 別に今日、ボス戦をやろうってわけじゃない 本部にはあんた1人で行ってくれ」
「ふざけるな! 貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるかぁ! 私は栄光ある[血盟騎士団]の…」
「あんたよりはまともに務まるさ」
その一言でクラディールの怒りは頂点に達したのか、キリトさんに対して敵意をむき出しにしていた
「そこまでデカい口を叩くからには、それを証明する覚悟があるんだろうな…」
クラディールは震える右手でメニューを素早く操作すると、キリトさんは何かの…話の流れからデュエル申請だろうを受け取ったみたいで、隣のアスナと小声で話し合っていた
そして軽く頷きキリトさんはウィンドウを操作し終えると、空中でデュエル開始60秒のカウントダウンが始まった
「ご覧くださいアスナ様! 私以外に護衛が務まる者などいないということを証明してみせましょう!」
2人のやり取りをどう捉えたのかクラディールは芝居がかった様な動きで腰から両手剣を引き抜き、音を立てて構える
やっぱり[血盟騎士団]に所属しているだけあって、見た目こそクラディールの使っている武器の方が見栄えは良いが、私の今使っている〖ディプリーション・ブレード〗の方が確実に性能は上だろう
キリトさんとクラディールはおおよそ5メートルぐらいの距離を取り向き合って、デュエルの開始を待っている間にも続々とギャラリーがやってくる
「ソロのキリトと[血盟騎士団]のメンバーがデュエルだとよ!」
「見ものだなぁ!」
ギャラリーの内の1人が大声で叫び、それに乗っかる形で別の誰かが叫ぶと歓声がドッと湧き出す
本来デュエルというのは仲の良い者同士で行われるもので、先ほどまでの険悪なムードを知らない人たちは口笛を鳴らしたり、ヤジを飛ばしたりしてデュエルを盛り上げている
その間にもカウントは進んでいき、2人は武器を構えたので私達も少し離れた場所で見守る
どうやらクラディールは剣を中段でやや担ぎ目に構えて、腰を低く落としていた…あれは間違いなく≪アバランシュ≫を発動させるつもりだろう
対するキリトさんは剣を下段に構えて緩めに立っている
…勿論双方ともにそれがフェイントだということも考えられるが、まぁキリトさんなら大丈夫だろう
カウントが一桁台になり、場に緊張が満ちていく
そしてカウントがゼロになり、DUEL‼ という文字が閃光を伴って弾けると同時に、キリトさんが地面を蹴って駆け出し、そのほんの一瞬後にクラディールも動き始めた
クラディールは私の予想通り、≪アバランシュ≫を発動させて、キリトさんに迫るがキリトさんはクラディールの動きを予想していたように≪ソニックリープ≫を発動させる
技の威力だけで見たら≪アバランシュ≫の方が確実に上であるし、実際クラディールは勝利を確信したように狂喜の色を顔に浮かべているが、キリトさんはクラディールの扱う両手剣の側面に≪ソニックリープ≫を打ち込んだ
凄まじい量の火花と耳をつんざくような金属音を立てて、クラディールの剣が真っ二つに折れ、キリトさんとクラディールはお互いの位置を入れ替えて着地する
その後、丁度2人の中間の位置にクラディールの武器の剣先が突き刺さり、直後にその剣先とクラディールの手元に残った下半分が無数のポリゴン片になって消滅した
しばらくの間、沈黙が広がったが、キリトさんが立ち上がって剣を左右に切り払うと歓声が沸き上がった
誰かが「すげぇ… 今の狙ったのか…?」と言ったのを聞きながら、私達はキリトさんの様子を見る
キリトさんは剣を右手に下げたまま、蹲っているクラディールにゆっくりと歩み寄ると、わざと音を立てながら剣を鞘にしまう
「武器を変えて仕切りなおすなら付き合うけど… もういいんじゃないかな」
クラディールはキリトさんの方を向くことなく、怒りを抑えるようにして全身を震わせていたがやがて「アイ・リザイン」と発した
直後に開始と同じ場所に、デュエルの終了とキリトさんが勝ったことを示す文字列がフラッシュすると、再び場が歓声に包まれる
クラディールはよろよろと立ち上がると、ギャラリーに向かって八つ当たりするようにして喚く
「見せもんじゃねぇぞ! 散れ! 散れ!」
その様子に大人げないと思いつつ、呆れながら見ていると今度はキリトさんの方を向いた
「貴様だけは絶対に…絶対に殺すぞ…」
この時のクラディールの目にはどこか常軌を逸したものを感じざるを得なく、思わずておさんの陰に隠れるが、アスナはキリトさんの傍らに歩み出ると冷淡な声でクラディールに対して告げる
「クラディール [血盟騎士団]副団長として命じます 本日をもって護衛役を解任、司令があるまでギルド本部にて待機 以上」
「な…なんだと…この…!」
クラディールはぶつぶつと何かを呟きながら、キリトさん達を見据えた
実際、犯罪防止コードに阻まれることを承知の上で突撃することも考えられたので、ておさんは背中から下げている剣の柄に手を掛け、いつでもクラディールを止められるように備えていたが、結局クラディールは何とか自制し、マントの内側から〖転移結晶〗を取り出して、握りつぶさんばかりに握りしめながらとぼとぼと転移門まで歩くと「転移…<グランザム>」と呟いて去っていった
クラディールは青い光に包まれて転移するその瞬間まで、キリトさん達に向かって激しい憎悪の視線を向けていた
青い光が消えた後の広場は、後味が悪い空気に包まれ、ギャラリーの人達もクラディールの毒気に当てられたような顔をしていたが、やがて何事もなかったかのように去っていった
最後まで残された私達は立ち尽くしているキリトさん達の様子を確認しようと駆け寄る
「お疲れ キリト」
「あ…あぁ…」
ておさんはキリトさんに対して気さくに声を掛けたが、そこから会話は続かず無言に包まれたが、アスナがキリトさんから一歩離れ、先ほどの冷たい雰囲気が嘘のような声で囁いた
「ごめんなさい…嫌なことに巻き込んじゃって… 特にタコミカは怖かったでしょ…?」
「いやいや… それを言うんだったらアスナの方が格段に恐ろしい思いしたでしょ…」
私は咄嗟に首を横に振って、アスナを心配する
ハッキリ言って今朝のと1ヵ月間ずっと家の前に張り込まれていたのとでは、天と地ほどの差がある
「…お…俺も大丈夫だけどさ…そっちこそ平気なのか?」
キリトさんもアスナを心配するように顔をアスナに向けたが、当人は気丈に、だが弱々しい笑みを浮かべた
「えぇ… 今のギルドの空気は攻略を最優先にしてメンバーに規律を押し付けた私にも責任はあるし…」
「それは…仕方ないと言うか… むしろアスナが居なかったら攻略の最前線も今よりもっと下だったと思うよ …まぁ攻略組のはぐれものみたいな奴が何言ってんだって話だけど…」
そんなアスナに対してキリトさんが纏めれば気にしなくていいと言いたいんだなと思い、私達もキリトさんのあとに続いて口を開く
「要は少しは息抜きしないと潰れちゃうよ って言いたいんだと思う」
「俺もたみの言う通りに少しは息抜きしたって誰にも文句言われる筋合いはない…と思うかな…」
アスナはそれに対して唖然としたような表情で何回か瞬きを繰り返すと、苦笑いではあるが張りつめていた表情を緩めた
「まぁ… 一先ずありがとうと言っておくわ 3人共 じゃぁお言葉に甘えて今日は楽させてもらおうかしら それじゃ男性陣
そして勢いよく振り返ると迷宮区の方へと向かって歩き始めた
「お…おいちょっと待て!
「明日は私達がやってあげるから! ほら! タコミカ早く!」
「うん!」
私はアスナの様子が良くなったことに対して心の底から嬉しく思いながら、先を行く彼女を追いかけ始めた
流石のタコミカもクラディールには悪い印象しかありません
それではまた次回に