ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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この小説のキバオウはIFの性格に近いです(いわゆるツンデレキバオウ)

それではどうぞ


12話:"軍"の内情

「ミナ! パン1つ取って!」

「ほら よそ見してるとこぼすよ!」

「あーっ! 先生! ジンが目玉焼き取った!」

「かわりにニンジンやったろ!」

 

「これは…凄いな…」

「そうだね…」

「まるで戦場だ…」

「あはは…」

 

私達は目の前で繰り広げられている朝食風景に、ただ呆然と呟いていた

 

 

<はじまりの街>の東七区にある教会1階の広間 巨大なテーブル2つに所狭しと並べられた大皿に入った卵やソーセージ、野菜サラダなどを二十数人の子ども達が盛大に騒ぎながら食べている

 

「でも…凄く楽しそうですね」

 

そこから少し離れた丸テーブルに座った私たちは、談笑しながらカップに入ったお茶を飲んでいる

 

「毎日こうなんです いくら静かにと言ってもなかなか聞いてくれなくて」

 

サーシャさんはそうは言っているものの、子どもたちを見るサーシャさんの目は心底いとおしそうに細められている

 

「子供、好きなんですね」

 

アスナの言葉にサーシャさんは照れたように笑う

 

「私 向こうでは、大学で教職課程を取ってたんです ほら、長いこと学級崩壊とか問題になってたじゃないですか だから、私が子ども達を導いてあげるんだーって燃えてて でもあの子達と暮らし始めたら、何もかも見たり聞いたりしたのとは大違いで… 寧ろ私の方が頼って、支えられている部分のほうが大きいと思います でも、それでいいと言うか… それが自然なことだと思えるんです」

「なんとなくですけど、解ります」

 

サーシャさんの言葉にアスナは頷き、隣で真剣にスプーンを口に運ぶユイちゃんの頭を撫でる

 

 

…昨日、謎の発作を起こし気を失ったユイちゃんだったが、幸い数分で何事もなく目を醒ました

 

しかし、ユイちゃんを長距離移動させたり、転移ゲートを使う気にはなれず、サーシャさんの熱心な誘いも相まって、教会の空き部屋を借りることになった

 

今朝からはユイちゃんの調子もいいようで、一先ずは安心したのだが根本的なことはまだ何も解決していない

 

記憶は戻っておらず、<はじまりの街>で暮らしていた様子や、保護者と暮らしていた様子も無し、おまけに幼児退行の原因すら掴めていない …これ以上何をすればいいのかがわからない

 

―――でも何か必ずあるはず…

 

 

私がカップに入っている紅茶を見つめながら考えていると、ておさんがカップを置き、サーシャさんに対して訊ねていた

 

「サーシャさん」

「はい?」

「…"軍"のことなんですが…俺が知ってる限りだと若干強引なことはあれど、治安維持に関しては熱心だったはずです でも…昨日の奴等ははっきり言って下衆だった …いつからあんな感じなんですか?」

 

その質問にサーシャさんは口許を引き締め、答える

 

「方針が変更されたと感じ始めたのは、半年ぐらい前ですね… 徴税と称して恐喝紛いの事を始めた人達と、それを逆に取り締まろうとする人達もいて "軍"のメンバー同士で対立している場面を何度も見てきました 噂では上のほうで何やら権力争いがあったみたいで…」

「うーん… なんせ今でも1000人以上のメンバーがいる大所帯だからなぁ… 一枚岩ではないだろうけど… でも昨日みたいなことが日常的に行われてるんだとしたら放置はできないよな… アスナ」

「何?」

 

キリトさんが腕を組みながら、そう言うとアスナに視線を向けた

 

「あいつはこの状況知ってるのか?」

 

キリトさんに訊ねられると、アスナは笑顔を噛み殺しながら言った

 

「多分知ってる…んじゃないかな… 団長は"軍"の動きにも詳しいし でも何というか、あの人 ハイレベルの攻略プレイヤー以外には興味が無さそうなんだよね… キリト君のこととか、タコミカのこと、テオ君のこと、[フリッツ・フリット]のこととかは昔からあれこれ聞かれたけど、殺人ギルド[ラフィン・コフィン]討伐の時なんて、任せる の一言だけだったし… だから"軍"をどうこうする為に攻略組を動かしたりはしないと思う」

「あの人仮にも最強ギルドのリーダーでしょ… まぁらしいと言えばらしいですけど… でも私達だけだとやれることに限界があるからね…」

 

私の言葉に顔をしかめながら、お茶を啜ろうとしたキリトさんが不意に顔を上げると、教会の入口の方を見た

 

「誰か来るぞ… これは…3人か…?」

「またお客様かしら…」

 

サーシャさんの呟きに重なるようにして、ノックする音が響いてきた

 

 

サーシャさんが入り口に向かうために椅子から立ち上がると、念のためにキリトさんもついて行こうと立ち上がったので私も立ち上がった

 

それに続いて、アスナとておさんも立ち上がろうとしたが、キリトさんと私が制し、武器を装備して入口へと向かった

 

 

サーシャさんが入口の扉を恐る恐るといった感じに開けると、久々に見るイガ頭の男と、銀髪でポニーテールの怜悧という言葉が似合いそうな女性と、何故か廻道さんがそこにはいた

 

わたしとキリトさんが驚いていると、キバオウさんは挨拶をしてきた

 

「じゃますんで」

「邪魔するなら帰ってください」

「あいよー…って こっちは用があるから来とんねん!」

 

昔に大阪旅行に行ってとある劇を見てから、ずっとやりたかったネタ*1をキバオウさんにやったところで、気持ちを切り替えてキバオウさんに訊ねた

 

「それで…何の用ですか? 昨日の件で抗議ですか? まぁ流石に私もやりすぎたっていうのは思ってたんで話は聞きますけど…」

「いや その逆や」

「逆…?」

 

キリトさんがキバオウさんの言葉に首を傾げると、今度は銀髪の女性が続けるようにして口を開く

 

「昨日の件に関しては、寧ろよくやってくれたと言いたいぐらいでして」

「成程… えぇっと…」

「すみません 自己紹介がまだでしたね 私はユリエールと申します ギルドALFに所属しております」

「ALF…?」

「[アインクラッド解放軍]の略称や まぁユリエールはんのように略称名で言うやつは多いけどな」

 

私達は軽く頷くと、それだけではないだろうと考えて、訊ねることにした

 

「それで… ただお礼を言いに来ただけじゃないですよね?」

 

私がそう言うと、ユリエールさんは真剣な表情でこちらを見る

 

「はい 実は折り入って頼みがありまして…」

 

 

~~~~~~

 

 

私達が3人を教会の内部へと案内すると、子ども達は警戒したが、サーシャさんが子ども達に笑い掛けながら「みんな この方々は大丈夫よ 食事を続けて」と言うと、全員肩の力を抜き何事もなかったかのように喧騒な食事風景に戻った

 

そして私達とユリエールさんが改めて自己紹介を終えると、詳しい事情を聞くことにした

 

~~~~~~

 

3人の話をまとめると、元々シンカーさんがギルドリーダーを務めていたMTDにキバオウさん率いるALSの残りのメンバーが加入、そして"軍"もとい[アインクラッド解放軍]通称ALFへと看板を改めたとのこと

 

ALFの目的は全員で強くなるギルドで初めの方はうまく行っていたらしいが、グリゴリアという男が"軍"のNO.3になったことでそれが急変、公認の方針として犯罪者撲滅を掲げたまでは良かったんだけど、自身の息のかかった配下を重要な役職に就かせることで実質的なサブリーダーに、更には数の暴力で効率の良い狩場を独占したことでギルドの収益は急増し、その地位を確たるものにしたとの事

 

それで調子に乗ったグリゴリア派の人間は、昨日のような徴税と称した恐喝紛いのことまでし始めたらしい

 

 

一通り話し終えた3人は一息つき、お茶を飲んで続けた

 

「ですが…グリゴリア派にも弱みはありました それは、資材の貯蓄だけにうつつを抜かし、ゲーム攻略を蔑ろにし続けてきたことです それでは本末転倒だろうという声が末端からではありますが徐々に上がってきて… それが無視できなくなったのか、彼は自身の配下の中でもハイレベルであった十数人を最前線のボス攻略に送り出したんです」

 

私達はそこではっとなって、思わず顔を見合わせた… 間違いなく第74層のコーバッツの件だろう

 

 

その場面にいた廻道さんが私達の言葉を代弁するようにして言った

 

「皆さんが思ってる通り、コーバッツの件だ 結果は…まぁもう言わなくても解ってるはず」

「…パーティは敗走、リーダーと2人が死亡という最悪の結果になり、彼はその無謀さを強く糾弾されたのです あと少しで彼をギルドから追放できるというところまで行ったのですが…」

 

そこでユリエールさんは鼻梁に皺を寄せ、唇を噛みながら続ける

 

「3日前…とうとう追い詰められた彼はシンカーを罠に嵌めるという強硬手段に出たんです 出口をダンジョンの奥深くに設定した〖回廊結晶〗を使って、逆にシンカーを放逐してしまったんです」

 

その言葉に私達は驚き、一足早く我に返ったておさんがユリエールさんに対して訊ねた

 

「シンカーは武装していなかったのか…?」

「はい… その時の彼はグリゴリアの言った「俺が悪かった もうギルドから抜ける だから丸腰で今後どうするか話し合おう」という言葉を鵜呑みにしてしまって、非武装で… とても1人ではダンジョン最深部のモンスター群を突破して戻るというのは不可能な状況でした 〖転移結晶〗も持っていなかったみたいで…」

「3日も前に…!? …それで…シンカーさんは…?」

 

反射的に訪ねたアスナにユリエールさんは小さく頷く

 

「幸い 生命の碑にある彼の名前は無事なので、安全地帯までは辿り着けたようです ただ… 場所がかなりのハイレベルダンジョンの奥なので身動きが取れないようで…ご存じの通りダンジョンにはメッセージは送れませんし、中からはギルドストレージにアクセスできないので、〖転移結晶〗を届けることもできません …彼は良い人すぎたんです…」

「おまけにあいつやその部下がワシらに対して常に目を光らせてるから下手に動くこともできんし、解放軍の助力も当てにならん… そん時にそいつのことを思い出したんや」

 

キバオウさんは廻道さんの方を向きながら言うと、ユリエールさんは改まった顔でこちらを見ながら口を開いた

 

「最初は元MTDのメンバーであった廻道さんに依頼をしようと思っていたんですけれど…そこに恐ろしく強い4人組が現れたと聞きまして 貴方達がいれば心強いと思い、いてもたってもいられずこうしてお願いしに来た次第です キリトさん アスナさん タコミカさん テオロングさん」

 

ユリエールさんは深々と頭を下げながら言った

 

「お会いしたばかりで厚顔きわまるとお思いでしょうが…どうか、一緒にシンカー救出に行って下さいませんか」

「ワイからもホンマ頼むわ…」

 

それに続いてキバオウさんと廻道さんも頭を下げたので、私は意を決して頷いた

 

「わかりました 引き受け――「待った」」

 

そこにておさんが待ったをかけたので、思わずそちらを見る

 

「なんで止めるんですか 仲間が信じられないと言いたいんですか?」

「そうじゃないけど… だからといって感情で動くのは駄目だ それに廻道だって騙されているという可能性だって捨てきれない 最低でも裏を取ってからじゃないと俺は行くことには同意できない …解ってくれ」

「でも…!「いえ 当然のことだと思います」」

 

私はておさんに反論しようとしたが、それをユリエールさんの言葉が遮る

 

「テオロングさんの仰る通り、見ず知らずの人間に急にこんなことをお願いされたら、警戒するのは当然だと思います でも、生命の碑のシンカーの名前にいつ横線が刻まれると考えると、もう気が気ではなくて…」

 

私が再びておさんを見ると、彼も若干迷っているような顔を浮かべている

 

でもああは言ったけど、ておさんの言うことも一理あるし、実際それで危うい目にも遭っている

 

私がどうしようかと考えていると、今まで沈黙していたユイちゃんがカップから顔を上げると、こちらを見ながら言った

 

「だいじょうぶだよ その人、うそついてないよ」

「ユイちゃん そんなこと判るの…?」

 

アスナは呆気にとられ、ユイちゃんの顔を覗き込むようにして問いかけると、ユイちゃんはしっかりとした動作で頷く

 

「うん うまく…言えないけど、わかる…」

 

その言葉を聞いたキリトさんは、ユイちゃんの頭を少し雑な感じで撫でると、アスナを見てニヤっと笑った

 

「疑って後悔するより信じて後悔しようぜ 行こう 攻略組でもトップクラスの実力を持った奴が4人もいるんだ 何とかなるって」

「相変わらず呑気な人ねぇ…」

 

そんなキリトさんに呆れながらアスナは首を横に振ると、ユイちゃんの髪に触れる

 

「ごめんね ユイちゃん お友達探し、また明日になっちゃうけど許してね」

 

アスナの囁きの意味を理解したのかどうかはわからないが、ユイちゃんは大きな笑みと共にこくりと頷いた

 

そしてユイちゃんのつややかな黒髪を一撫ですると、ユリエールさんに向き直り微笑みながら答えた

 

「…微力ですけど、お手伝いさせていただきます 大事な人を助けたいって気持ち、私にもよく解りますから」

 

それを聞いたユリエールさんは眼に涙を溜めながら、深々とお辞儀をした

 

「ありがとう…ありがとうございます…」

「…おおきにな」

「それはシンカーさんを救出してからにしましょう」

 

キバオウさんも素っ気なくではあるもののお礼を言うと、アスナはもう一度笑いかける

 

今まで成り行きをただ見守っていたサーシャさんが、ぽんと両手を打ち合わせた

 

「そういうことなら、しっかり食べて行って下さいね! まだまだありますから、ユリエールさん達もどうぞ!」

 

サーシャさんの提案で、私達は食事をご馳走になることになった

*1
吉本新喜劇のネタ(関東圏在住の方は解りづらいかも…)




オリキャラ紹介

グリゴリア(grigoria)/???

常にローブで顔を隠しており、素顔は見えない男性
"軍"の実質的なサブリーダーで"軍"の腐敗の原因だが、かなり狡猾
この小説でのシンカーの件の犯人


タコミカは感情優先、テオロングは理屈優先で動いています

それではまた次回に
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