ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
アインクラッド編は約1年間かかりましたけれども、ここまで付き合ってくださった皆さんには本当に感謝しかありません
ここまで本当に長かった…
それではどうぞ
そのアナウンスが聞こえても、歓声を上げる人は誰一人としていなかった…
この2年間で喪ったものは余りにも多すぎた
静かだった空間は2人のことを悲しむ声で溢れていた
かくいう私も抱えるようにして持つ、〖エリュシデータ〗と〖ランベントライト〗を見下げると、呟くようにして言った
「何で…なんでさ…キリトさん…アスナぁ…やだよ…このままお別れなんて…」
言い表せない感情と共に、涙がとめどなく溢れてくる
私は、2人がいなくなったことを信じたくなかった
しかし無情にも、再び無機質なシステムアナウンスが聞こえてきた
―――プレイヤーの皆様は逐次ログアウトされます―――その場でしばらくお待ちください―――繰り返します―――
私はその場に立ち尽くし、俯く
これが物語の結末なのか―――私はぼんやりした頭で再び空を見上げた
その時、肩を静かに叩かれたような気がしたので、思わず振り返るとておさんがいた
…彼も決して明るい表情ではなく、私と同じくどこか受け入れられないといったような感じだった
私達はしばらく無言だったが、何か話さないと… そう思って口を開いた
「…終わりましたね…」
「…そうだな…」
そこで会話は途切れてしまい、再び無言が流れる
ふと、辺りを見てみると、既に何人かはログアウトしたようで、いなくなっており、今この瞬間もまた1人、全身を淡く光らせてログアウトしたのが見えた
「…そろそろ俺達もログアウトするみたいだ」
そう言うテオさんの体は淡く輝いていた
それにつられて自身の体を見てみると、同じように淡く光っており、もうすぐログアウトするのだということを確信した
「最後に…私の
そこで思わず泣きそうになったので、落ち着くように一旦深呼吸をしてから、話した
「私の名前は水明千秋… 今年で17歳です」
すると、ておさんは何故か驚いたような表情を見せた
「と…年上だったのか…」
「そ…そこですか…?」
それに対して、思わず私達は吹き出してしまう
そして、ひとしきり笑うと、ておさんは思い出したように口を開いた
「おっと すっかり忘れるところだった …俺の名前は火崎透…16だ」
「火崎…透…さん…はい 覚えました」
私はておさんの現実の名前をしっかりと覚え、頷く
私とておさんが自己紹介を終えるのを待っていてくれたように、遂にその時がやってきた
視界がぼんやりとしていき、白く包まれる
「また
視界が完全に白く包まれる直前、私は叫んだ
それに応じるようにして、ておさんから返事が返ってきた
「あぁ! どんなに時間がかかっても絶対見つけるから! だから…!」
―――待っていてくれ!
ておさんの叫び声を最後に、私の視界は完全にホワイトアウトし、同時に意識も現実へと帰っていく…
――――キリトさん アスナ どうかお元気で―――
この世界に別れを告げる直前、私は2人に向けてそう告げた
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SIDE:テオロング
自身の意識が覚醒し、最初に入ってきたのは独特な消毒液の匂いだった
目を開けようとしたが、あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまう
心の中で覚悟を決めてから再び瞼を開くと、今度はあっさりと開くことが出来た
最初に視界に入ってきたのは知らない天井だった
オフホワイトの光沢のあるパネルが格子状に並んでおり、そのうちの幾つかには奥にライトがあるのか、柔らかい光を放っている
そこで耳の感覚が戻ったのか、低い音が聞こえてきたので、そちらを見てみる
そこには空調装置があった…つまりここはアインクラッドではなく、現実
――――ようやく戻ってきた
そう思ったのも束の間、ふと先ほどの言葉を思い出す
―――また
咄嗟に飛び起きようとしたが、全身に力が入らず、断念せざるを得なかった
その中で辛うじて右腕を動かすことが出来たので、自分の体に掛けられている上掛けから右腕を自身の目の前に持ってくる
そこには先ほどとは似ても似つかない、枯れ枝の様な細い腕があった
皮膚の下には所々血管が浮き出ており、約2年間見ていなかった為か自分の腕ながら気味悪さを感じてしまう
肘の内側には点滴と思しき管が繋がっており、その先のパックにはオレンジ色の液体が溜まっている
目覚めてからしばらく経つが、まだ自由に動くことはできない
それでもどうにか上体を起こすと、それだけで息が上がってしまう
自身の体力の低下具合に思わず笑いがこみあげてくる
ふと頭が固定されているのに気が付き、触れてみるとヘルメットの様な質感を感じた
手探りで顎の下にあるハーネスを手探りで解除し、頭に被っているものをどうにか外す
そして外したものを目の前に持ってくる
濃紺色の流線型のヘルメット――――ナーヴギアだ
後頭部の部分からはコードが伸び、床に続いているが既に電源は落ちている
2年前、初めて手に取った時とは違い、所々塗装は剥がれ軽合金の地が露出している
あの2年間、陰で俺を支え続けてくれた確かな仲間 …もう被ることはないけど、ここまで壊れずに動いてくれた
「お疲れ様…」
そう小さく呟いて、花の活けてある花瓶の隣に静かに置いた
戦う日々は終わったが、その前にやらなければいけないことがある
ドアの方を見据えた時、遠くの方で慌ただしく動く足音や叫び声、大勢の話し声、キャスターの転がる音が聞こえてくる
千秋がこの病院にいるかどうかは分からないが、それでも行く
薄い上掛けをはぎ取ると、腕と比例するようにやせ細った全身に繋がれたコードをなんとか外していく
突然甲高い機械音が鳴り響いたが、気にすることなく次々とコードを外す
そしてようやくすべてのコードを外し終えると、床に足をつけ、立ち上がろうと試みる
少し体は持ち上がったが、直ぐに膝に力が入らなくなり、思わず倒れこみそうになってしまう
しかし何とか点滴の支柱に掴まり、立ち上がる
それだけの動作で息が上がり、体の節々が痛いが、絶対に彼女に会うまでは諦めない
その決意を示すように点滴の支柱を握りしめ、ドアに向かってゆっくりと歩き始めた
次回からフェアリィ・ダンス編に入っていきます
現実で視点がテオロングになったのにはしっかり理由があります
それではまた次回に