ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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今回も前回に引き続き意識サイドの話になります

それではどうぞ


4話:☆風の街

SIDE:意識

 

 

俺もキリトもかなり筋が良かったのか、10分ほどのレクチャーを受けるとどうにかではあるが自由に飛べるようになった

 

「おぉ…これは…中々いいな!」

「こりゃぁマニアックでも人気が出るわけだ…」

 

旋回などを繰り返しながら、俺達は各々感想を述べる

 

「でしょ!」

 

それを聞いたリーファも笑いながら返してきた

 

「何というか…感動的だな… このままずっと飛んでいたいよ…」

「同感…これは一度知ったらやめられないな…」

「うんうん!」

 

この感覚を知ってしまったらもう従来の飛行系のVRゲームじゃ満足できない

 

「あー! 皆さんずるいです! 私も!」

 

俺達が平行飛行に入ると、ユイもキリトとリーファの間に陣取って飛び始めた

 

「慣れてきたら背筋と肩甲骨の動きを極力小さくできるように練習するといいよ あんまり大きく動かしてると、空中戦闘(エアレイド)の時うまく戦えないから …それじゃぁこのまま<スイルベーン>まで行こっか ついてきて!」

 

そしてリーファはターンして方向を見定めると、そちらに向かって巡行に入った

 

 

 

しばらくは俺達のことを思って速度を控えめにしていたのだが、キリトはリーファの真横まで追いつく

 

「もっと速度上げてもいいぜ」

「ほほう」

 

キリトが言い放った言葉に対し、リーファはにやりと笑い、緩やかに加速し始める

 

 

 

2人はどんどん加速していくので、俺もやむを得ず2人の速度に比例するようにして速度を上げた

 

~~~~~~

 

しばらく飛んでいると、町が見えてきた

 

街を行き交うプレイヤー達の姿がはっきりと分かるようになってきた頃、キリトは風切り音に負けないぐらいの声量で言った

 

「お 見えてきたな!」

「中央の塔の根元に着地するわよ! …って…」

 

そこでリーファはあることに気が付いたのか、笑顔のまま固まった

 

「君達…ランディングのやり方…解る…?」

 

あっ…

 

「…解りません」

「…同じく」

「えーっと…」

 

既に視界の大部分が塔の壁で占められている

 

「…ごめん もう遅いや 幸運を祈るよ」

 

リーファは苦笑いしながら一人だけ急減速に入り、広場に向けて降下し始める

 

 

「嘘だろ!?」

 

俺は叫び、慌てて何かできないかとイメージを巡らせていると突如として閃き、それを実行すると翅を目いっぱいに広げながら急減速に入ると、塔にぶつかるギリギリで停止した

 

「あっ…悪い俺出来た」

「そんな馬鹿な!?」

 

しかしキリトはできなかったみたいで、絶叫しながら塔の壁に思いっ切り音を立てて激突した

 

合掌

 

 

 

 

「うぅ…酷いよリーファ…飛行恐怖症になるよ…」

 

その後、キリトは塔の根元にある花壇に座り込み、リーファに対して恨みがましい顔をしながら言った

 

「目が回りました~…」

 

キリトの肩に座るユイも頭をフラフラとさせている

 

それに対してリーファは両手を腰に当て、笑いを押し殺しながら口を開いた

 

「君が調子に乗りすぎなんだよ~ それにしてもよく生きてたね あれは絶対死んだって思ったよ」

「うわ ひでぇや…」

 

項垂れるキリトに対し、リーファは宥めるようにして言った

 

「まぁまぁ 回復はしてあげるからさ」

 

リーファは右手をキリトにかざし、呪文のスペルのようなものを唱えると、青く光る雫がキリトにかかり、HPがたちまち回復していく

 

「おぉ… これが魔法…」

 

一連の流れを見ていた俺は思わず感嘆の声を上げると、リーファは俺の方を向いて続けた

 

「高位の回復魔法は水妖精族(ウンディーネ)じゃないと使えないけどね 必須スペルだから覚えておいたほうが良いよ」

「へぇー…」

 

リーファの説明に聞き入っていると、俺に対して声を掛けてきた

 

「それにしても意識君、ヒントもなしによくできたね 思わず驚いちゃったよ」

「まぁあれは咄嗟にできたってだけだからな… また同じことをやれって言われても無理だ」

「あはは…」

 

大きく伸びをすると、改めて辺りを見回し、呟くようにして言った

 

「それで…ここが<スイルベーン>か」

「予想通り綺麗な街だな~」

「そうでしょ!」

 

やはり<スイルベーン>は風妖精族(シルフ)のホームタウンと書かれてあったこともあって、全体的に緑色且つ塔同士が複雑な空中回廊で繋がっている

 

そんな街の風景を眺めていると、不意に俺達に声が掛かる

 

「リーファ! 戻ってたのか」

「リーファちゃん! 無事だった!?」

 

そちらに視線を向けると、手をぶんぶんと振っている黄緑色の髪色の風妖精族(シルフ)と浅緑色の髪色の風妖精族(シルフ)がこちらに向かってきていた

 

「知識さん! あ、レコンも まぁどうにかね」

「流石風妖精族(シルフ)でも5本の指に入る実力者だ とにかく無事でよかった」

「ある程度は知識さんが倒したとはいえ、あれだけの人数の火妖精族(サラマンダー)から逃げ延びるとは流石リーファちゃん…って…」

 

そこで黄緑色の髪色の風妖精族(シルフ)は俺達に気が付き、口を開いたまま固まった

 

「な…何でここに影妖精族(スプリガン)闇妖精族(インプ)が!?」

 

そして咄嗟に飛びのき、腰のダガーに手を掛けようとしたが、慌ててリーファが静止した

 

「いいのよレコン この人達は助けてくれたから」

「へ? そうなの?」

 

呆気に取られている黄緑色の髪色の風妖精族(シルフ)を指差し、リーファは紹介し始めた

 

「こいつはレコン あたしの仲間なんだけど、君達と出会うちょっと前に火妖精族(サラマンダー)にやられちゃってね」

 

そして次に浅緑色の髪色の風妖精族(シルフ)を手のひら全体で示し、紹介する

 

「それでこちらが知識さん 普段はどこのパーティにも入ってないんだけど、ここ最近は私達のパーティで活動してるの 因みにかなりの実力者よ」

「どうも~」

 

軽く2人の紹介が終わったので、俺達も自己紹介を始める

 

「よろしく、俺はキリトだ」

「俺は意識 まぁこれからご贔屓に」

「あっ、これはご親切にどうも…」

 

俺達が右手を差し出すと、レコンはそれを握り頭を下げる

 

「ってそうじゃなくて!」

 

しかし、思い出したように飛びのく

 

「大丈夫なの!? リーファちゃん! その人たちスパイとかじゃない!?」

「まぁ意識君の方はともかくとして、キリト君の方はスパイにしてはちょっと天然入りすぎてるもん」

「確かにそれは否めないな」

「うわ ひでぇな 2人共」

 

俺とリーファがそう言ったのをきっかけとして、キリトも加えて3人で笑い始めたが知識の咳払いが聞こえたので、そちらを向いた

 

「リーファ シグルド達は先に水仙館で席を取っているからアイテムの分配はそこでやると言っていたよ」

「あ そっか うーん…」

 

リーファはそれに対して悩んでいたが、その末にレコンに対して言った

 

「あたし、今日の配分はやめておくわ スキルに合ったアイテムも無かったからね あんたに預けるからあたし抜きで分けといて」

「了解~」

「リーファちゃんは来ないの?」

「うん この人達に奢る約束してるから」

 

するとレコンは先ほどとは、全く意味合いの異なる警戒を含めた視線で俺達のことを見る

 

「ちょっと! 妙な勘繰りしないでよね!」

 

そのことをうっすらと感じ取った様子のリーファはレコンのつま先をブーツで蹴り、ウィンドウを操作する

 

「次の狩りの時間とか決まったらメールしといて 行けたら参加するからさ じゃぁお疲れ!」

「おー お疲れ~」

「あ リーファちゃん…」

 

そして半ば強引に話を切ると、俺達の袖を引っ張って歩き始めた

 

 

 

 

「さっきのレコンって子はリーファの彼氏か?」

「愛人?」

「コイビトさんなんですか?」

ハァ!?

 

俺達が異口同音に訊ねると、リーファは思わず石畳に足を引っかけて転びそうになったが、何とか立て直した

 

「ち…違うわよ! 単なるパーティメンバーよ!」

「にしては結構仲良かったような…?」

「リアルでも知り合いって言うか…学校の同級生だから でも本当にただそれだけよ」

「へぇ… クラスメイトと一緒にMMORPGやってるのか いいな」

 

リーファの言葉にキリトはしみじみとした口調で言う

 

「あー…でも色々と弊害もあるよ 例えば宿題のこと思い出しちゃったり…」

「ははは 成程」

 

その様な会話をしながら、裏路地をしばらく歩いていると、小ぢんまりとしたお店が見えてきた―――リーファによると、ここはスズラン亭というらしく、デザートの種類が豊富とのこと

 

 

リーファに続いて店の中に入ると、プレイヤーの姿はだれもおらず、ほぼ貸し切り状態だった

 

その中で奥の窓際の適当な席に腰かける

 

「代金はあたしが持つから好きなの頼んでいいわよ」

「じゃぁお言葉に甘えて…」

「あ でもあんまり食べ過ぎるとログアウトしてからが辛いわよ」

 

俺はメニューに眼を通し、ちょっと迷ったがティラミスを注文した

 

 

 

それぞれの注文したデザートが届き、同じく注文した香草のワインをグラスに注ぐ

 

「それじゃぁ改めて 助けてくれてありがとう」

 

そしてグラスを合わせ、一気にその中身を飲み干す

 

 

一息ついたところで、キリトははにかむように笑いながら言った

 

「いや…まぁ成り行きだったし… にしてもえらく好戦的な連中だったな 集団PK(ああいうの)ってよくあるのか?」

「うーん… 元々火妖精族(サラマンダー)風妖精族(シルフ)は仲は悪いのは確かなんだけどね 領地が隣合ってるから中立の狩場じゃよく出くわすし、勢力も長いこと拮抗してたから でもああいった組織的なPKが出るようになったのはここ最近だよ 多分近いうちに世界樹攻略を狙ってるんじゃないかな…」

「その世界樹について詳しく教えて欲しいんだ」

「そういえば意識君が言ってたね でも何で?」

「世界樹の上に行きたいんだよ」

「意識君も同じ?」

「あぁ」

 

リーファは少々呆れたような表情で俺達の顔を見たが、真剣さが伝わったのか説明を始めた

 

「…それは多分すべてのプレイヤーが思ってるよ っていうかそれがこのALOってゲームのグランド・クエストなのよ」

「と言うと?」

「滑空制限があるのは知ってるでしょ? どんな種族でも連続して飛べるのは10分が限界なの でも、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、『妖精王オベイロン』に謁見した種族は全員アルフという高位種族に生まれ変わる そうすれば滑空制限はなくなって、いつまででも自由に空を飛ぶことが出来る…」

「…なるほどな…」

 

アルフ…確かテオの話の中でも出てきたな…

 

「そりゃぁ確かに魅力的だな 世界樹の上に行く方法は解ってるのか?」

「世界樹の内側、根元の所は大きなドームになってるの その頂上に入口があって、そこから内部を登っていくんだけど、そのドームを守ってるガーディアン軍団が物凄い強さなのよ 今まで色々な種族が何度も挑んでるんだけどみんな呆気なく全滅 火妖精族(サラマンダー)は現状最大勢力だからね なりふり構わずお金をためて、装備とアイテムを整えて次こそはって思ってるんじゃないかな」

「そのガーディアンってのはそんなに強いのか?」

「もう無茶苦茶よ! だって考えてみてよ ALOってオープンしてから既に1年が経つのよ? 1年経ってもクリアできないクエストがあると思う?」

「それは…確かに…」

「実は去年の秋頃に大手のALOの情報サイトが署名を集めて、レクトプログレスにバランス改善要求を出したんだ」

「へぇ 結果は?」

「お決まりみたいな回答よ 当ゲームは適切なバランス調整の基に~って 最近は今のやり方じゃ世界樹攻略はできないって意見も多いわ」

 

俺は2人の会話を半分ぐらい聞き流しながら聞いていたが、リーファが言った言葉に思わず反応し、口を開く

 

「何かキーになるクエストを見落としている…もしくは単一の種族では絶対にクリアできない…とかか?」

 

するとリーファはババロアを口許に運ぼうとしていた手を止め、俺の顔を見た

 

「へぇ… 意識君結構いいカンしてるじゃない クエストの見落としの方は、今躍起になって探してるみたいだけど、後者の方だったら無理ね…」

「無理?」

「だって矛盾してるじゃない 最初に到達した種族しかクリアできないクエストを他の種族と協力して攻略しよう…なんて」

「…じゃぁ事実上世界樹を登るのは…不可能ってことか…?」

「…あたしはそう思う そりゃぁ、クエストは他にも沢山あるし、生産スキル上げるとかの楽しみ方もあるけど…でも諦めきれないよね 一旦飛ぶことの楽しさを知ってしまうと… たとえ何年かかっても…」

それじゃぁ遅すぎるんだ!

 

不意にキリトが押し殺した声で叫んだので、そちらを見ると眉間に深い皺を刻み、口許が震えるほど歯を食い縛ったキリトの姿があった

 

「キリト 逸る気持ちは解るが一旦落ち着いてくれ ここで叫んだとしても何も変わらないだろ?」

「…悪い…」

 

俺はできるだけ優しめの口調でキリトに向けて言うと、多少落ち着いたようでふっと力が抜けるように席に座った

 

そしてキリトに代わって話を続ける

 

「実は俺達ある人物を探してるんだ その為に世界樹の上にどうしても行きたくて」

「どういうこと…?」

「悪いけど詳しくは言えない でも、どうしてもその人物に今すぐ会いたいんだ」

 

そしてキリトと目配せすると、席を立ちあがる

 

「ありがとうリーファ 色々教えてもらって助かったよ この世界で最初に会ったのが君でよかった」

「ご馳走様リーファ このお礼は必ずする」

 

そして席を離れようとした時、リーファが止めに入った

 

「ちょ…ちょっと待って もしかして世界樹には君達と後から来る1人だけで行くつもり?」

「あぁ この眼で確かめないと…」

「それにこれ以上世話になるわけには…」

 

俺がこれ以上世話になるわけにはいかない そう言うよりも先に、リーファが口を開いた

 

「なら あたしが連れて行ってあげる―――世界樹に」

「え!?」

 

リーファの言葉に俺は思わず拒否から入ってしまう

 

「いや…さっきも言ったけどこれ以上世話になるのは…」

「いいの! もう決めたから」

 

そう言った後、時間差でリーファの顔が赤くなり、それを隠すように顔を背ける

 

そしてある程度落ち着いたところで、リーファは俺達に訊ねてきた

 

「あの、2人共 明日も入れる?」

「あ、う…うん」

「行けるよ」

「じゃぁ明日午後3時にここでね あたし、もう落ちないといけないから あ、ログアウトは上の宿屋を使ってね じゃぁ、またね!」

 

言葉を挟む余裕もなく、リーファがそう言うと左手を振って、ウィンドウを出した

 

「あ 少し待ってくれ」

 

キリトの呼びかけにリーファは顔を上げる

 

「…ありがとう」

 

それに対してリーファは笑顔でこくりと頷くとボタンを押し、光に包まれて姿を消した

 

 

~~~~~~

 

 

「どうしたんだろう…彼女…」

 

俺達はしばらくリーファのいた場所を見ていたが、ふとキリトが呟きそれに続いて、いつの間にかキリトの方に座っていたユイが首を傾げる

 

「さぁ… 今の私にはメンタルモニター機能がないので…」

「うーん… まぁ戦力が多いに越したことはないし、道案内してくれるって言うんだから、ありがたく好意を受け取っとっとけ な?」

「それもそうだな…」

「マップなら私にもわかりますけど、意識さんの言う通りですね でも…」

 

そこで俺とユイはキリトに向き、異口同音に言った

 

「浮気しちゃだめですよ パパ」

「そうだぞ パパ」

「しないしない! つか、意識! お前はパパ呼びやめろ!」

 

首を勢い良く振るキリトの様子を見て、俺達は思わず笑いがこみあげてくる

 

「くそっ…2人してからかいやがって…」

 

キリトはまだ残りがあったワインボトルの中身を直接飲んだ

 

 

 

その後、まだ残ってたティラミスを一口で食べ、カウンターまで向かうと2階にある宿屋の部屋でログアウトするためにチェックインを済ませた

 

そして階段の手前で振り返り、キリトに向けて言った

 

「あ、俺そろそろ落ちるから 後は父と娘の時間にしてやるよ」

「お…おう…」

「じゃぁお疲れぃ!」

 

キリトの返事を聞かず、階段を上がると指定された部屋のドアを開ける

 

中はシンプルにベッドとテーブルが1つずつあるだけであった

 

俺は武装解除し、ベッドに寝転がるとメニューを操作してログアウトボタンを押した




思ったよりも長くなってしまった…

それではまた次回に
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