ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
何だかんだで前回の投稿から約1ヶ月掛かってしまいました…
それではどうぞ
SIDE:意識
翌日、俺達は軽く情報交換を済ませる
そこで朱猫がもう<スイルベーン>に着いたということらしいので、朱猫にスズラン亭で待ち合わせするということを伝えた
リーファと約束した時間まで、昼食を取ったり弟と他愛のない話したりして時間をつぶした
□■□■□■□■
約束の時間の数分前ぐらいにALOにログインした俺はベッドから起き上がり窓を見てみると、現実とは違い空は暗闇に包まれている
しばらく外の景色を眺めた後、窓から離れると部屋を出て1階へと下りる
一階に降りた俺の目に最初に映ったのは、丁度リーファが宿屋にの扉を開けて入ってきたところだった
入ってきて辺りを見回したリーファは俺の姿を確認すると、少し驚いたような声色で話しかけてくる
「意識君早いね」
「リーファこそ早いんじゃないか? 約束の時間より少し早いぞ?」
「ちょっと色々と買ってたからね 意識君も武器や防具を買ったほうが良いんじゃない?」
リーファに言われて、自身の服装を見てみると確かに初期装備状態だった
「確かに でもキリトが来るまでは待つよ まとめて買いに行ったほうが良いだろ?」
「そうね じゃぁキリト君が来るまで待ちましょうか」
適当なテーブルに腰かけて待っていると、1人のフード付きローブを被ったプレイヤーが店へと入ってきた
そのプレイヤーは俺達の元までやってくると、恐る恐るといった感じでリーファに対して訊ねる
「あの~… すみません… ここってスズラン亭で合っていますか…?」
「えぇ 合ってるけど…」
リーファがそう告げると、安堵した様子の聞き覚えのある声が響いてきた
「よかった~… 合ってた~ ここまで長かったぁ~!」
思わずと言った感じで、椅子の背もたれに体を預けるプレイヤーに対し、俺はここに来る前にした情報交換の内容を思い出して訊ねる
「もしかして朱猫か?」
そう聞くと、そのプレイヤーはフードの部分を外して答えた
「うん そうそう よくわかったね」
頷きながら答える朱猫の髪型は、現実と同じように先端がウェーブがかっているショートだが現実と違い青髪で、何よりも決定的に違うところは猫耳が付いているところだろう
「お前
「見た目が気に入ってね
「確か
「そそ 多分意識は
「それは良かったな」
「うん 良かった」
そこでふとリーファの方に視線を向けると、予想通り俺達の会話に完全に置いてけぼり状態だったが、我に返ったように首を左右に振ると朱猫に対して口を開いた
「えぇっと… もしかして君が昨日意識君達が言ってた後から来るっていう?」
「そ 自己紹介がまだだったよね 私は朱猫 よろしくね」
「う…うん…」
朱猫が差し出した右手をリーファが握り返したところで、キリトがログインしてきた
キリトは俺達の姿を確認すると、少し驚いたような目をした
「お 3人共もう集まってたのか 早いな」
「さっき集まったところだけどね」
キリトに対してリーファが答え、次いで俺達に対して訊ねる
「それで…どうする? 全員集まったから武器と防具買いに行く?」
「そうだな 俺もこの剣をどうにかしたいし」
「じゃあ行きましょうか」
リーファが席を立ちあがったので、俺達も立ち上がろうとした時、リーファが徐に「あ すっかり忘れてた」と呟き、俺達の方に顔を向けてきた
「君達お金持ってる? なかったら貸すけど」
「このユルドって言うのがそう?」
「そうだけど…もしかして持ってない?」
「い、いや 持ってる というか結構ある」
少々焦った様子のキリトの言葉に思わず俺もメニューを開いて所持金を確認してみると、相当な金額があった
「そう 意識君たちは?」
「俺も問題ない」
「私も大丈夫」
「なら早速行こっか」
そしてリーファは店の外に向かって歩き始めたので、俺も店の外に向かおうとしたが、キリトに肩を叩かれて止められた
「なぁ 意識 朱猫 お前らも初期金額じゃないのか?」
「なんかめっちゃ持ってる」
「多分SAO時代のものを引き継いでるんだと思うけど…」
俺達が話し込んでいると、付いてこないことを不審に思ったのか、リーファが振り向いて口を開く
「3人共何してるの? 行くよ?」
「悪い 今行く …行くぞ ユイ」
リーファに声を掛けられたキリトは慌てた様子で体のあちこちを見回し、最後に胸ポケットを覗き込むと眠たそうに目を擦るユイが大きく欠伸をしながら胸ポケットから出てきた
~~~~~~
途中でユイに言われ、バグったアイテム類を削除しながら歩いていると、リーファの行きつけの武具屋に辿り着いた
そこで俺達は防具一式と武器(俺は短剣と弓)を購入し、早速装備しておいた(朱猫は
装備選びで一番時間がかかったのはキリトで、剣を試し振りしては「もっと重い奴」と店員に言ってを繰り返し、結局自身の背丈ほどの大きさの黒光りするロングソードに決めた時には、既に空は朝の光に包まれていた
そんな一連の流れを見ていたリーファはキリトに対し、呆れた様子で訊ねる
「そんな剣ホントに振れるの~?」
「問題ない」
それにキリトは特に気にすることなく答え、武器の代金を払いロングソードを背中に吊るが、今にも鞘の先端が地面に擦りそうになっている
その様子が可笑しく思えたのか、リーファは笑いそうになったが、何とかそれを押し殺して言った
「ま そう言うことなら準備完了だね! これからしばらくの間宜しく!」
そう言って差し出された右手をキリトは照れたように笑いながら握り返した
「こちらこそヨロシク」
そして俺達にも手を差し出してきたので、キリトに倣い握り返す
「改めてよろしく頼む」
「うん よろしくね」
ひとしきり終わったところで、キリトの胸ポケットからユイが飛び出して俺たちの周りを一周すると、キリトの肩に座り、拳を天に突き上げた
「皆さん頑張りましょう! 目指せ世界樹!」
~~~~~~
リーファを先頭に歩くこと数分、前方に昨日もやってきた翡翠色に輝く塔が見えてきた
ふとキリトの方を見ると、昨日のことを思い出したのか嫌そうな顔を浮かべている
そんな彼の肩をリーファが笑いを抑えたような顔をしながら、肘で突いて訊ねた
「出発前にブレーキングの練習しとく?」
「いいよ 今後は安全運転することに決めたから」
それにキリトは憮然とした表情で答える
「ねぇリーファ?」
不意に朱猫は先を行くリーファに対して、声を掛けた
「どうしたの?」
「何で塔に行くの? 何か用事でもあったっけ?」
「長距離を飛ぶときには塔の天辺から出発するのよ 高度が稼げるから」
「成程ね」
リーファの回答に朱猫が納得したように頷くと、リーファはキリトの背中を押しながら再び歩き始めた
「さ 急ご! 夜までには森を抜けときたいし」
「俺達は全くこの辺りには詳しくないから道案内は頼むよ」
「任せなさい!」
キリトが改めてリーファに道案内をお願いすると、リーファは自信満々そうに胸をトンと1回叩き、ふと何か思い立ったように塔の奥の方を眺めた
リーファに倣って、そちらを見てみたが館のような建物があるだけで特に何も無かった
「どうかしたのか?」
「ううん 何でもない」
思わず首を傾げるとリーファは首を横に振って、正面扉へと向かって行ったので俺達もあとに続いた
塔の内部は円形のロビーになっており、周囲には様々なショップがロビーを囲むようにして並んでいる
ロビーの中央ではファンタジー特有?の謎原理で動いているエレベーターが2基設置されており、定期的にプレイヤー達が乗降している
「あれに乗ろ!」
エレベーターを見ていると、丁度右側のエレベーターが降りてきたのでリーファはキリトの腕を引っ張ってエレベーターに駆け込もうとした
その時、不意に傍らから数人が現れた為、俺達は咄嗟に急ブレーキをかけて何とか立ち止まった
「ちょっと! 危ないじゃ…」
それに対してリーファは反射的に文句を言いかけたが、どうやら知り合いだったみたいで押し黙った
そこにいたのは高身長で波打った濃緑色の髪を肩の下まで垂らし、額には銀のバンドを巻き、体にはやや厚めの銀の鎧に身を包み、腰に大ぶりのロングソードを装備している男性プレイヤーだった
男の表情から察するにこれは面倒なことになりそうだなと、他人事の様に思っているとリーファはその男をこれ以上刺激しないようにと笑みを浮かべながら口を開いた
「こんにちは シグルド」
「パーティから抜ける気なのか、リーファ」
シグルドと呼ばれた男の質問にリーファはこくりと頷く
「うん…まぁね お金も大分貯まってきたからしばらくのんびりしようと思って」
「勝手だな 他のメンバーが迷惑するとは思わないのか」
「勝手…!? 抜けたくなった時はいつでも抜けていいっていう条件だったでしょ!?」
「だが既にお前は俺のパーティの一員として名が通っている そのお前が特に理由なく抜けて他のパーティにでも入ったりしたら、こちらの顔に傷がつくことになる」
怒りと苛立ちを滲ませているシグルドの気迫に押されたのか、リーファは押し黙っていたが、不意にキリトが呟いた
「仲間はアイテムじゃないぜ」
「え?」
キリトの発した言葉に思わず、俺達はキリトの方を見る
「…なんだと?」
先程よりさらに苛立っているシグルドに臆することなく、キリトはリーファの前に割って入ると気丈夫に向き合う
「他のプレイヤーを自分の装備みたいにロックしておくことはできないって言ったんだよ」
それに便乗するというワケではないが、俺達もシグルドの傍若無人さには少し苛立っていた為、俺達もシグルドの方を向くとストレートに言い放つ
「そいつの言う通りだ MMOは他のプレイヤーの行動を制限する為にあるんじゃない 個人の意思を尊重しろ」
「束縛する男は嫌われるよ?」
「きっ…貴様等っ…!」
俺達の言葉が効いたのか、シグルドの顔は怒りで瞬時に真っ赤に染まる
「屑漁り共が付け上がるな! リーファ! お前もこいつ等の相手をしているんじゃない! どうせ領地を追放された
剣の柄に手を掛け、今にも抜刀しそうな勢いで捲し立てるシグルドに対し、リーファは叫び返す
「失礼なこと言わないで! キリト君と意識君、朱猫さんは私の新しいパーティメンバーよ!」
「なん…だと…」
シグルドは額に青筋を立てながらも、驚愕を滲ませていた
「リーファ…領地を捨てるつもりなのか」
それに対してリーファはハッとしたが、直ぐに覚悟を決めたように頷く
「えぇ…そうよ あたし ここを出るわ」
リーファの一言にシグルドは食い縛った歯を僅かに剥き出しにし、剣を鞘から抜くと燃えるような目で俺達のことを強く睨む
「…子虫が這い回るぐらいなら捨て置こうと思っていたが、泥棒の真似事とは調子に乗りすぎたな のこのこと他種族の領地まで入ってくるからには切られても文句はないだろうな…?」
芝居がかったシグルドの言葉に対し、俺は攻撃できないと解ってはいるものの、反射的に腰の短剣の柄に手を掛ける
まさに一触即発といった雰囲気だったが、背後にいたシグルドの取り巻きが小声で彼に対して話しかけた
「シ…シグさん ヤバイっすよ…こんな人目があるところで無抵抗の…しかも
その言葉につられて辺りを見回してみると、確かに周囲にはかなり人が集まっていた
しばらくは俺達を睨んでいたが、流石に奴もこんな大勢の中で騒ぎを起こすのは不味いと思ったのか剣を鞘に納めた
「精々外では逃げ隠れることだな」
俺達に対して、そんな捨て台詞を吐くとリーファに視線を向けた
「リーファ …今俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔するぞ」
「留まって後悔するよりはマシだわ」
「戻りたくなった時の為に泣いて土下座する練習でもしておくことだな」
それだけを言ってシグルドは身を翻して塔の出口へと向かって行った
シグルドの取り巻きプレイヤー2人はリーファに対して何かを言いたげにしていたが、結局言わずにシグルドの後を追いかけていった
そして彼らの姿が見えなくなったところでリーファは大きく息を吐き出し、俺達の方を向いた
「ごめんね 変なことに巻き込んじゃって…」
「いや…俺も火に油を注ぐ様な真似をしちゃったし… でも、いいのか? 領地を捨てるって…」
「あー…」
キリトの質問にリーファは答えず、無言でキリトの背中を押しながらエレベーターへと向かって歩き始めたので、俺達もその後に続いた
丁度来たエレベーターに乗り込んで最上階行のボタンを押してから数十秒後、エレベーターが静止して扉が開くと白い朝陽と心地よい風が流れ込んでくる
先に出たリーファに続き、エレベーターの外に出ると限りなく広がる大空がどこまででも広がっている
「凄い…いい眺めだね…」
「まるで空に手が届きそうだ…」
朱猫とキリトが目に憧憬のような色を浮かべながら、空を仰ぎ見る
「でしょ この空を見てるとさ、ちっちゃく思えるよね いろんなことが」
リーファに対し、俺が気遣わし気な視線を投げかけていることに気が付いたのか、リーファは笑顔を返して続けた
「…いいきっかけだったよ いつかはここを出ようと思っていたの でも一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど…」
「そっか …でもなんだか 喧嘩別れっぽい感じになっちゃったけど…」
「気にしなくていいって どちらにせよあの様子じゃ穏便には抜けられなかったと思うし」
その先は半ば独り言のような感じだった
「なんでああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな… 折角翅があるのに…」
それに答えたのは、キリトのジャケットの襟の下からひょっこりと顔を出したユイだった
「複雑ですよね 人間は」
ユイはそれだけを言って、しゃらんと鈴のような音を立てて飛び立つとキリトの肩に座り、腕を組んで首を傾げる
「人を求める心を、あんな風にややこしく表現する心理は私には理解できません」
「まぁ人間っていうのはユイが思ってるよりずっと難しい生き物なんだよ 同じ人間ですら理解できないことがあるからな」
ユイの言葉に俺は優しめの口調で伝えたが、ユイはどうにも納得していない様子だった
「でももっと単純に表現できる方法はあるはずですよ? 例えば…」
そう言うと、突然ユイはキリトの頬に手を添え、屈みこんでキスをした
「こうですね とても単純明快です」
その様子に呆気にとられたが直ぐにこのことをどこで話そうかということを考え、思わず笑みをこぼす
ふと視線を逸らすと、リーファと朱猫は目を丸くし、キリトは苦笑いしていたが、我に返ったリーファがキリトに向かって訊ねる
「…ねぇ プライベートピクシーってみんなこうなの?」
「こいつは特に変なんだよ」
キリトはユイの襟首を摘まみ、自分のジャケットの胸ポケットに放り込む
「そ…そうなんだ… 人を求める心…か…」
リーファはユイの言っていた言葉を繰り返しながら、屈めていた腰を伸ばすと、何か言った気がするが肝心な内容は聞き取ることが出来なかった
キリトも疑問に思ったのか、リーファに訊ねる
「何か言ったか?」
「ううん 何でもないよ …さ、そろそろ出発しよっか…って思ったけどちょっと待って」
「? どうしたの?」
雲もすっかり消え、さぁ出発といったところでリーファが待ったをかけたので、朱猫が首を傾げるとリーファは展望台の中央まで歩き、とある石碑に触れた
「これに触っといてくれる?」
「これ何?」
「ロケーターストーン これに触れとくと万が一道中でやられちゃってもここから再開できるから」
「成程 解ったよ」
リーファに倣って順にロケーターストーンに触れると、リーファは4枚の翅を広げた
「準備は良い?」
「あぁ」
「俺はいつでも」
「私も大丈夫」
俺達もリーファと同じように翅を広げ、頷いたのを確認すると、リーファは飛び立…
「リーファちゃん!」
つ直前で、エレベーターから転がるようにして出てきた人物に呼び止められたので、リーファは離陸を中断した
「あ レコン」
「酷いよ! 僕に一言声を掛けてから出発してもいいじゃない」
「ごめん すっかり忘れてた」
レコンはガクリと肩を落としたが、直ぐに顔を上げると真剣な表情で言った
「リーファちゃん パーティ抜けたんだって?」
「あー…うん 半分ぐらいその場の勢いだけどね そういえばあんたはどうすんの?」
「決まってるじゃない この剣はリーファちゃんにだけ捧げてるんだから」
「え~ 別に要らない」
リーファの無慈悲な一言にレコンは再び肩を落とすが、再度顔を上げる
「ま、まぁそういう訳だから僕も当然付いて行くよ…って言いたいけどちょっと気になることがあるんだよね」
「気になること?」
「まだ確証はないんだけど…ちょっと調べたいことがあるから僕はもう少しシグルドのパーティに残るよ」
レコンは真剣な様子でそう告げると、俺達に向いた
「キリトさん 意識さん それと
「あ、あぁ 解った」
「了解」
「解ったよ」
それに対し、俺達はどこかでからかえるかと想像しつつ頷く
「―――それから 言っておきますけど彼女は僕のンギャ!」
それに続いて何かを口走ろうとしたレコンの足をリーファは思いっ切り踏んづけた
「余計なことは言わなくていいの! しばらくは中立域にいると思うから、何かあったらメッセでね!」
そして早口でまくし立てるようにして言うと、リーファは羽を広げてふわりと宙に浮かび上がると、名残惜しそうにしているレコンに大きく右手を振る
「…あたしがいなくても、ちゃんと随意飛行の練習するのよ それと、あんまり
「り…リーファちゃんも元気でね! 直ぐに追いかけるから!」
涙を滲ませながら叫ぶレコンを気にすることなく、くるりと向きを変えたリーファはそのまま滑空を始めた
報われないかもしれないが、頑張れ レコン君
そう思いながら俺達もリーファの後を追いかけ、ふわりと宙に飛び上がり、滑空を始める
先を行っていたリーファとキリトを追いかけていると、いつの間にか<スイルベーン>を抜けて森の縁へと差し掛かっていた
リーファは<スイルベーン>の方を名残惜しそうに見ていたが、割り切ったように再び前を向いた
「―――さ 急ごう! 1回の飛行であの湖まで行くよ!」
視線の先に目的の湖が映ると、リーファはそこへと向かって加速していったので、俺達もその後を追いかけるように翅を鳴らし、加速した
気が付いたら結構長くなってしまった…
それではまた次回に