ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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もう3月なのにまだ寒いってどういうことですかね?

それではどうぞ




17話:ヨフィリス子爵

キズメルに連れていかれたのは中央階段を5階まで上ってすぐ右にある武装した衛兵が2人いる大扉の前だった

 

先導するキズメルの顔パスで難なく通り抜け、扉を開けるとそこは巨大な執務室だったが窓は全てカーテンが閉められていて結構暗かった

 

絨毯につまずかないように細心の注意を払いながら部屋を横切ると奥にある重厚な机の前で立ち止まった

 

横幅3メートルぐらいはありそうなそれの奥に目を凝らすけど人影しか見えない…ランプが置かれており、書きかけの書類とインク壺を照らしてはいるもののなぜか奥までは照らされてはいない…

 

それでもその人影を見ているとやがてカラー・カーソルが出てきた

 

そのカーソルには【ヨフィリス:ダークエルヴン・ヴァイカウント】と表示された

 

ヴァイカウントって確か子爵っていう意味だったよね…?

 

 

私がそう考えている間にダークエルフ式の敬礼を終えたキズメルは口を開いた

 

「城主ヨフィリス閣下、執務中に失礼致します 急ぎ報告すべき事柄があり まかりこしました」

 

少しすると暗がりから男性か女性か若者か老人か分からない声が返ってきた

 

「その報告とやらの前になぜ人族を4人も伴っているのですか 騎士キズメル?」

「は…」

 

キズメルが頭を下げたタイミングでキリトさんが一歩前に出るとキズメルと同じように敬礼をしてベルトポーチから紹介状を取り出すと机の上に差し出した

 

すると暗がりから伸びてきたほっそりとした左手が紹介状を取るとそれを広げた

 

「…ふむ 3層の秘鍵の回収に貢献した者たちですか… それでは湖の魚の餌にするわけにもいきませんね…」

 

紹介状に目を通していたのかしばらくするとそんな冗談なのか本気なのか分からない心臓に悪いことを言うと紹介状をデスクの引き出しに仕舞ったがその代わりに何やら小さいものを4つキリトさんに渡した

 

「それを身に着けていれば今後リュースラの衛兵に咎められることはないでしょう 無論お前たちが我々を裏切らない限りは、ですが」

 

さらりと私達にプレッシャーをかけるような発言をするとキリトさんは深々とお辞儀をしてから私達の元まで戻ってきた

 

そしてキリトさんは私達にヨフィリス閣下から受け取ったものを渡してきた

 

それは華奢な銀製の指輪で印章部分にはダークエルフの紋章である角笛と曲刀が交差した紋章が刻まれていた

 

私はそれをポーチに入れるとヨフィリス閣下とキズメルの会話に耳を澄ませた

 

「それでキズメルよ 報告とは如何なるものですか?」

「はっ 人族の剣士キリトとアスナ、テオロングとタコミカにより伝えられた情報なのですが この4層に我らが仇敵、フォールンエルフの将軍ノルツァーが降りてきています」

 

キズメルの話を聞いたヨフィリス閣下は暗がりから伸ばしたままの右手の指先でデスクを鋭く叩いた

 

「…ほう それは確かに聞き捨てならないですね」

 

私はその反応に少し震えたけどヨフィリス閣下はさらに続けた

 

「あの悪党が今度はどのような悪巧みを?」

「それが…どうやらフォールン共は本格的に森エルフと手を組んだようです」

 

キズメルはそう前置きをすると私達から聞いた内容を適切に要約しつつ話した

 

 

「…成程 フォールン共が建造している船の数は分かりますか?」

 

ヨフィリス閣下はそうキズメルに聞くとキズメルはキリトさんの方を向いたためキリトさんは咄嗟に返事をすると少ししてから答えた

 

「…10人乗りの船を最低でも10隻は造ると思われます」

 

キリトさんの言葉を聞くとヨフィリス閣下は再びデスクを右手の指先で叩いた

 

「ふむ… この城に配置されている船は10人乗りが8隻 それを超える数の船が攻めてくる、というわけですか」

「閣下 城の兵士たちの精強ぶりを疑うわけではありませんが 念のため第1の秘鍵とこの4層に保管されている第2の秘鍵を共に上層へ移されてはいかがでしょうか?」

 

キズメルの提案にはヨフィリス閣下はすぐには答えずしばらくしてから静かな声で答えた

 

「…確かに騎士キズメルの意見には一理あります 万が一にも秘鍵を再度奪われるわけにはいきませんから しかし本来我々リュースラの民の役目は決して6本の秘鍵が1ヵ所に集まらぬよう6つの層に分けて守り続けること第1と第2の秘鍵を上に送れば5層に3つの秘鍵が集まってしまう その状況は宜しくないですね」

 

その言葉にはキズメルも黙って頷くしかなかった

 

しばらく無言が続いたがふとアスナが口を開いた

 

「あの、城主様 6本の秘鍵が1ヵ所に集まると何が起こるんですか?」

 

アスナの質問に私も少し驚いたが確かに知りたいところではある…

 

「アスナ それは…」

 

そのアスナの質問に対してキズメルは振り向いて少し慌てた様子で言いかけたがヨフィリス閣下が手を伸ばしてそれを遮った

 

「よい、キズメル 私から説明しましょう…とはいえ その問いには答えられないのです、人族の剣士よ なぜなら『大地切断』以前より続くヨフィリス子爵家当主たるこの私ですら秘鍵の伝承をほんの一部しか知らないのですから 全てを知っておられるのは我らが女王陛下ただお一人…いや…」

 

そこで一旦ヨフィリス閣下は言葉を区切ると沈鬱な吐息を漏らした

 

「ことによっては女王陛下でさえも本当の真実はご存じないのかもしれません」

「ヨフィリス閣下…」

 

硬い声を出したキズメルに謝罪するようにヨフィリス閣下は右手を軽く持ち上げた

 

「すまない 失言でした …人族の剣士よ 私が教えられるのはこれだけです 我らリュースラの民は6つの秘鍵が全て集まり聖堂の扉が開かれる時、この浮遊城アインクラッドに壊滅的な破局が訪れると伝えられています 一方で千古の昔より争い続けてきた森エルフ…カレス・オーの民達は伝承を別の形で解釈しています 聖堂が開かれた時、アインクラッドの全ての層は再び大地に帰還しエルフは大いなる魔法の力を取り戻せるのだ…と」

 

それを聞いた私達は思わず驚きの声を出していた

 

 

いろんな考えが私の頭をグルグルとまわっていた時アスナはキリトさんに小声で話しかけていた

 

「ねぇ キリト君 確かフォールンエルフの将軍の…ノルツァーだったっけ? その人も聖堂に関して何か言ってなかった…?」

「言われてみればそうだったような…」

 

そう言われたキリトさんは少し考えると思い出したのかヨフィリス閣下のいる方向に向かって発言した

 

「あの…城主様 ノルツァー将軍はこうも言っていました フォールンエルフが全ての秘鍵を手に入れて聖堂を開いた時、人族の最大の魔法が消え失せる…と…」

「人族の魔法…?」

 

キリトさんの発言を訝しむ声で繰り返したヨフィリス閣下はデスクの上に乗せていた右手をひっくり返すとキズメルに訊ねた

 

「キズメル 人族の魔法について心当たりはありますか?」

「はっ エルフ族には遠く及ばないまでも人族には幾つか古のまじないが残されていると聞きます 私が知っているのは装備や道具等を薄い書物の中に納める『幻書の術』と遠く離れた場所に瞬時に書信を届ける『遠書の術』ぐらいのものですが…」

 

確かにこの世界でプレイヤーが使える魔法っぽいものと言われたらそれぐらいしか思いつかないような気がする…かな? どちらも他のゲームでもあるメニューとチャットだと思ってたけど

 

「ふむ 確かに便利そうではありますが…」

 

そう言ったヨフィリス閣下は考える際の癖なのか再びデスクを指先で叩き始めた

 

「あのノルツァーがその程度のまじないを使えないようにするために森エルフと手を組んだとは考えにくいですね…」

 

エルフ族にとってはその程度なのかもしれないけどメニューが開けないようになるだけでも結構致命的なんだけどな…

 

その数秒後 何事もなかったかのように落ち着いた口調でヨフィリス閣下は話し始めた

 

「…ともあれ この層にある〖瑠璃の秘鍵〗は回収しておいたほうが良いでしょう ですが、森エルフの襲撃に備えるためにも兵士はここに残しておかねばいけません …人族の剣士よ 騎士キズメルの協力し第2の秘鍵回収の任に当たってくれませんか?」

 

その問いかけと共に暗闇の奥にクエストNPCの証の金色のエクスクラメーションマークが出現したため私達は顔を見合わせるとほぼ同時に頷いた

 

「はい 手伝わせて頂きます」

 

キリトさんがそう答えるとクエスチョンマークに変化した

 

ヨフィリス閣下に深々と一礼をしたキズメルは私達の方を向くと笑みを浮かべた

 

「重要で危険な任務だがもう一度お前たちと共に戦えるのは嬉しいよ 改めてよろしく頼む アスナ タコミカ キリト テオロング」

「よろしくね! キズメル!」

「うん!」

「こっちこそ!」

「宜しく!」

 

私達がそう叫ぶとキズメルが私達のパーティに加わった

 

~~~~~~

 

ヨフィリス閣下の居室を退室し、扉の傍にいる衛兵の視界から外れた瞬間にキリトさんは大きく伸びをした

 

「う~ん… 緊張したなぁ…」

「ふふ 無理もない 城主閣下は黒エルフの中でも最も長く生きておられる方々の1人だからな 実は私も少し緊張していたよ」

「なんだ キズメルもなのか… そういえばキズメルって何歳なんだっけ?」

 

キリトさんが不意にそんなことを言ったので私はキリトさんの足を強めに踏んでアスナはキリトさんの脇腹を肘で突き、キズメルは軽く咳払いをした

 

「お前… 女性に年齢を聞くなって教わらなかったのか?」

「お…俺はただ好奇心で…」

 

私達の攻撃?を受けてダメージを受けているキリトさんに対してておさんは呆れながら注意した

 

好奇心でも聞いて良いことと悪いことがあるのだけど…

 

「キリト 悪気がないのは分かるがテオロングの言う通りだ エルフ族の間でも他の者に面と向かって年齢を訊ねるのは不作法となっている」

「す…すみません…」

「まぁ ヨフィリス閣下に比べたらまだまだ若輩とだけ言っておこう」

「りょ…了解しました …にしても立派な城主様がいるのに城の兵士たちが弛んでいたり神官とやらが偉そうにしているのはちょっと不思議だな…」

 

キリトさんキズメルの話を聞いている間にキリトさんも立ち上がったので私達は小声で話をしながら進んでいき、ちょうど階段に差し掛かった時にキリトさんはヨフィリス閣下について質問するとキズメルは難しい顔になった

 

「うむ… それには理由があるのだ ヨフィリス閣下はとある難しい病を患っておられる その為明るい光の下にお出でになることが出来ないのだよ もう長いことお部屋に閉じこもりっぱなしで城にいるほとんどの兵士はお顔すら拝したことさえないはずだ…」

「病気? エルフ族なのに?」

「エルフ族は長寿とはいえ、病気とは無縁というわけではないさ …神官共は閣下の目が届かないのを良いことに我が物顔で威張り散らしている いざ戦となれば何の役にも立たぬのにな 困ったものだ…」

 

キズメルの話を聞いているうちに4階の自室の前で立ち止まってキズメルは軽くかぶりを振って口調と表情を切り替えた

 

「ともあれ 4人とも、重要な情報を届けてくれたことに感謝するよ 今夜はもう遅いから明日の朝から任務に取り掛かるとしようか 4人とも 夜更かしせずしっかり寝るのだぞ?」

「そうするよ」

「おやすみなさい キズメル」

「おやすみ キズメル」

「分かったよ」

 

私達が挨拶を返すと微笑みながら頷き、部屋へと入っていったのと同時に左上に増えたHPバーもキズメル分だけ消滅した

 

私達は廊下を移動して隣のスイートルームに戻った

 

 




タコミカの閣下呼びは深い意味はありません

それではまた次回に
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