ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
翌日の朝食はヨフェル城でご馳走になって私達は乗ってきたピークォッド号に乗って主街区へと戻った
昨日と変わらず観光客が多い中央広場を横切って転移門を使って第5層主街区の<カルルイン>へと到着した
しかしそこで待っていたのはβ時代にもあった雨だった
「雨…?」
「雨だな…こりゃ」
服や髪が張り付くし動きづらくなるため私は雨はあまり好きではない…
「外にいるのもあれなので取り敢えず建物の中に入りましょう」
「それもそうね」
私がどこか建物に入ろうと提案するとアスナはそれに同意した
辺りを見回したがこの悪天候もあってか午前8時にもかかわらず人影は少なかった
「といっても朝食はもう食べたし武器も更新したばかりだし道具屋も特に用事ないしな…」
「屋根があるところならどこでもいいわよ!」
考えてる様子のキリトさんに対しアスナは少し苛立ちつつ言うとキリトさんは更に考えてから前髪から水滴をたらしつつ頷いた
「それじゃあ 昨日受けたクエスト消化するか」
「この雨の中で?」
「大丈夫 屋根はあるよ」
キリトさんの言葉を聞いたアスナは小走りで駆け出したので私達は一先ず追いかけることにした
所々にある水溜りをパシャパシャと音を立てながら踏みつつアスナを追いかけると昨日私達が来た地下墓地への入口へと到着した
そしてその入り口に入るとやっと雨に降られる感覚がなくなったのでショートケープやスカートについた水滴をある程度払った
私達は来たことがあるがアスナはきたことはないのかキリトさんに聞いていた
「ここは?」
キリトさんはコートに着いた水滴をバサバサと払いながらアスナの質問に答えていた
「昨日言っていた地下墓地の入口だよ」
「ここに目的のクエストがあるわけ?」
「そりゃぁもう沢山あるよ」
キリトさんは濡れた前髪を掻き揚げるとメニューを開き、可視モードにするとクエストタブの受注済みリストを私達に見せた
「この『迷子のジェニー』っていうやつは女の子のペットの仔犬か仔猫だかを探すクエストで『悪趣味な収集家』っていうのは特定の遺物を拾い集めるクエストだし『三十年の嘆き』は地下墓地のどこかで彷徨ってる悪霊を…「にえっ!」」
キリトさんがクエストの内容を説明している途中でアスナは奇妙な声を上げてキリトさんの口を右手で塞いだ
その様子にキリトさんはびっくりして何かを言おうとしたがアスナは睨みつけてキリトさんを黙らせるとゆっくりと手を離した
私達はその様子を黙ってみる他なかった…
キリトさんはそこから黙っていたが少しすると恐る恐る口を開いた
「…今のにえっ…って何…?」
「ロシア語でノーっていう意味よ」
「何がノーなんだ?」
「それは…えーっと… クエストのネタバレ禁止っていう意味よ」
キリトさんの質問に対してアスナは付け焼刃の回答をしたがどうやらキリトさんは納得したみたいで大いに頷いていた
「言われてみればそうだな フロア攻略に関するクエストならまだしも単発もののクエストなら事前情報はなしでやりたいよな…うん じゃぁこれからやるクエストは基本的に説明も口出しもしないからアスナが先導していいよ」
キリトさんは真面目にそう言うとアスナは軽く咳払いをしてから下り階段をチラッと見た
「そ…そう… ならそうさせてもらうわね タコミカ達も準備いい?」
「勿論!」
「いつでも」
アスナがこっちを向いて準備は良いかと聞いてきたので私達は軽く頷いて返した
「じゃぁ行くわよ!」
「おう!」
そして私達は階段を下っていった
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階段を下りた先の広場では昨日と同じような光景が広がっていた
「ここって安地部屋なの?」
アスナがキリトさんに対して小声で尋ねるとキリトさんは少し不思議そうな顔をしながら返した
「それどころかまだ圏内だよ 表示出てないだろ?」
「あ…そっか…」
それを聞いたアスナは肩の力を抜くと辺りを見回し始めるとその感想を言った
「みんな遺物を拾いに来たのね」
「そうだろうな ここは拾いつくして周りの地下墓地を探索している頃じゃないかな…」
そう言ったキリトさんはふと厳しい顔になったのでアスナはキリトさんの方を向いて首をかしげた
「どうしたの?」
「あー… いや…」
キリトさんはそう呟くと肩をすくめて続けた
「前にも言ったけどβの時はこの地下1階は圏内になっててモンスターも危険なトラップもない その噂が広がってるからこうして下の層のプレイヤー達が遺物拾いに来てるんだろうけど…」
「何か問題があるのか?」
「…いや 考えすぎだな… さぁ 俺達も行こうぜ」
キリトさんが途中考え事を始めたのでておさんが聞くとキリトさんは気を取り直して前を歩き始めたのも束の間戦闘をアスナに交代し、広間の北側を進み始めた
通路に入ると篝火で明るかった広間とは異なって暗くなり、それに加え所々で水が滴り落ちる音がする
その中でアスナはキリトさんに話題を投げかけた
「それにしてもアインクラッドでも雨って降るのね」
「今までも何回か降ってなかったっけ?」
「うーん… 覚えてないわね クリスマスに雪は降ったけど…」
キリトさんの返しに対してアスナは思い出しているのか少し唸ると答えた
「そっか まぁ確かにレアなのはレアだな 今までのVRMMOだと雨や嵐とかは当たり前にあったけどVRMMOの雨は不快すぎるんだ」
「視界が悪くなる 装備が水を含んで重くなる 服や髪は濡れて気持ち悪くなる 寒い冷たい エトセトラ…」
「へ…へぇ…」
キリトさんの説明に続けて私が経験談を話すとアスナは少し引き気味で納得したみたいだった
「βの初期だともう少し頻繁に降ってたけどタコミカみたいな苦情が多くて減ったんだ」
「そんな経緯があったのね でもちょっと残念 部屋の中から見る雨好きだったんだけどな…」
そんな会話を交えつつメインの通路から脇道に入り、幅30㎝ぐらいの通路を通り高さが60cmぐらいしかないトンネルみたいな道をくぐったり(流石にキリトさん先導で次にておさんが入ったけど)していると何やら礼拝堂っぽい場所に辿り着いた
横長の椅子が何列か並んでおり、奥の壁際には半壊している怪しげな石像が立っている
光源は床に何ヵ所かある蠟燭だけなので部屋の端の方は暗く、他のプレイヤーの姿もない
それに嫌な予感を覚えたのかアスナはキリトさんに訊ねていた
「ここ どのクエストの場所?」
「ネタバレしていいのか…?」
「タイトルぐらいは教えなさいよ」
「分かったよ じゃぁ… ここは『三十年の嘆き』でーす」
改めて『三十年の嘆き』のクエストウィンドウを開いて確認すると依頼主は中年の男性で最近この街に引っ越してきたが引っ越してきた新居で何やら怪奇現象が起きるというので調べてみようと言うのがこのクエストの内容である
因みに補足としてその家の地下室を調べてみたが特に何もなかったのでもっと下(この礼拝堂)を調べることにした
「じゃぁこの礼拝堂があのおじさんの家の真下っていう事?」
「マップを切り替えてみればわかるよ」
キリトさんにそう言われてアスナがマップ切り替えを始めたので私も確認がてらついでにマップ切り替えをしてみると確かにこことクエストNPCの場所がぴったりと一致している
「…成程 ここにラップ音…じゃなくて謎の振動の原因があるわけね」
そう言いながらアスナは部屋を一通り見回すと私に聞いてきた
「因みにタコミカはこのクエストのこと知ってるの?」
「さぁ? どうでしょう?」
私もキリトさん同様今回は見守るという形にすることにしたのでそのことをにっこりとしながらアスナに伝えると「むむむ…」と言いながら考え始め、しばらくすると何か思いついたのか声を出しながら顔を上げた
「ねぇ あのおじさん家がガタガタするのって午前2時ごろって言ってたわよね?」
「言ってたな」
アスナの質問に対してキリトさんは頷いた
「なら その原因を調べるには私達も午前2時にここに来ないといけないんじゃないの?」
「いい読みだな それが正規の攻略法だしこういう時限式のイベントがあるクエストは結構多い」
「褒めてくれるのは良いけどまだ朝の9時にもなってなかったわよね? 今から真夜中の2時までここで待つわけにもいかないでしょ…?」
アスナは呆れながら聞くとキリトさんは演技っぽく指を振った
「まぁ俺はそれでもいいけどこの手の単発系のクエストには大体抜け道が用意されていることが多いんだ 俺の読みが正しければそろそろ…お! 来た来た」
そう言いながらキリトさんはアスナの背中を押そうとしたがアスナはそれをパシッと振り払って聞き返した
「何が来たの?」
すると後ろの方から〔ずるぺたん ずるぺたん〕という奇妙な足音が聞こえてきた
その足音を聞いたアスナは素早くキリトさんの後方へと回り込んだ
私達も足音が聞こえてきた出入り口の方を見ると子供のように小柄だけど両足は体格に比べて異様に大きく、両腕も長いNPCが現れた
顔は濃い灰色のフードをしているため分からず左手には汚れた頭陀袋をぶら下げ、右手には長い蝋燭を掲げている
そのNPCの様子を見ていると礼拝堂を横切ると床に幾つかある蝋燭の山のうちの一つに歩み寄り、しゃがむと頭陀袋から新しい蝋燭を取り出し小さくなって今にも消えそうな蝋燭から火を移して床に立てた
この男性(多分)がヒントだと思ったのかアスナは決心したようにキリトさんの背後から出ると別の蝋燭の山に向かおうとしている男性に話しかけた
「こ…こんにちは」
アスナが挨拶をするとその男性はぎこちない動きでアスナに顔を向けた
「えーっと… ここの蝋燭はあなたが補充しているんですか?
アスナがそう聞くとその男性は無言で頷いたのでアスナは質問を重ねた
「真夜中にここでおかしなもの見ませんでしたか?」
アスナの質問からしばらくするとその男性はしわがれた声で答えた
「おれ 夜中は ここ来ない 朝 蝋燭つける 昼 減った蝋燭足す 夜 蝋燭消して寝る」
その男性はそれだけを言うと再び歩き始め、先ほどの手順で最後の蝋燭の山に蝋燭を足すと礼拝堂から出ていった
そこからしばらくアスナは考えていたが不意に顔を上げ、キリトさんの方を向くと蝋燭の山のうちの一つに向かうとその蝋燭の山の火を吹き消した
すると4分の1ほど暗くなった
「キリト君はそっちの蝋燭を! タコミカとテオ君はキリト君とは別の蝋燭の火を消して!」
そしてアスナが指示を出したので私達はその指示に従ってそれぞれ別の蝋燭の山の火を消した
タコミカは案外怖いものは平気です(脅かし系が苦手)
それではまた次回に