ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
しばらくお風呂でくつろいだ後、私とアスナはておさんとキリトさんにお風呂が空いたことを伝えるために2人の元へと向かった(アルゴさんは先に<マナナレナ>の村に戻った)
2人がいると思しき<シヤ―ヤ>の村の真ん中にある小高い丘に予想通りいたのでアスナが声をかけた
「キリト君 テオ君 お風呂空いたよ~」
アスナが声をかけると2人は後ろを振り向いた
そして私達が頂上に辿り着くと隣に座った
キリトさんは丘の近くにある大浴場をちらりと見るとアルゴさんがいないことに気が付いたのかアスナに訊ねていた
「そういえばアルゴは?」
「一旦<マナナレナ>の村に戻るって キー坊とテオ坊によろしくナって言ってた」
「そっか」
キリトさんがそう答えた直後、アルゴさんのHPバーが私の視界から消滅した
今思い返すとアルゴさんのこの村の滞在時間はほとんどお風呂に入ってたかも
「随分と長風呂だったけど何話してたんだ?」
キリトさんは何気なく訊ねたつもりなのかもしれないけど… えぇ…
「お…女の子同士の会話を知りたがるんじゃないわよ」
「え? じゃぁ
「だから詮索するなって言ってるでしょ! 大体
「わ…悪い…でもなんか以外で…」
もはやここまで来ると悪気があるのではないかと疑わざるを得ない
「言っとくけどね いわゆるガールズトークなんてしてませんからね!」
「ここではっきりさせときますけど私だって向こうでは料理のひとつやふたつはしてましたし、裁縫でぬいぐるみ等も作ってますからね!」
私達がそう言うとキリトさんは特に私の発言に対して驚いたような様子を見せていた
頬を膨らませつつ時間を確認すると正午を少し過ぎたあたりだった
アスナも時間を確認したのか2人に催促をしていた
「もうお昼なのね… キリト君とテオ君もお風呂に入るんだったら早くしたほうが良いわよ」
「いや 俺は今度でいいよ」
「そうだな 俺も夜でいいかな それよりこっちもそろそろ動かないと…」
ておさんはそう言い北にある迷宮区タワーの方を見たので私達も同じ方向を眺めた
「テオ君の言うとおりね… でも本気なのかな… ALSだけでフロアボス討伐に挑戦するなんて」
「おいおい… アスナが掴んできた情報なんだろ?」
「それはそうなんだけど…」
苦笑いするキリトさんにアスナは軽く首を傾けた
私達がアルゴさんの元へと向かっている途中、アスナは偶然にも【スライ・シュルーマン】から逃げていた2人組の男たちの話を聞いたという
そしてその話というのがキバオウさん率いる[アインクラッド解放隊]が今夜<カルルイン>の街で開かれる予定のカウントダウン・パーティをバックレてフロアボスの討伐を狙うというものだった
正午現在ALSとDKBは<マナナレナ>の村にいる、この村はフロアのちょうど真ん中あたりにあり、地上から<カルルイン>に戻ると半日かかるのだがエリアボスを倒したことによって解放された地下トンネルを使うと2時間程度で往復ができる
その為2大ギルド共に夕方には<カルルイン>に戻って色々と準備をして午後9時からカウントダウン・パーティの開始…とインスタンス・メッセージで大量に来てた()
しかしALSの主力が<カルルイン>に戻らずそのままフロアボスに挑み第6層到達を狙う…しかもそれがギルドの総意ではなくモルテの属するPK集団に煽動された結果との事
どのように対処するべきかは昨晩アルゴさんと共に話し合いをした
元々このパーティはDKBのハフナーさんやシヴァタさんという比較的ALSに対してそこまで敵対心のない幹部メンバーの人たちとALSの同じような人たちの共同よって企画されたということを聞いたような気がする
もしパーティが成功すれば直ぐにとはいかずとも関係はある程度融和になってくれると思うがそれが中止となれば今まで通り…もしかしたらそれ以上に関係が悪くなってしまうかもしれない
まぁ理想としてはキバオウさんがフロアボス討伐作戦を取りやめてくれることだが…
私が色々と考えているとアスナがふと呟いた
「キズメルが一緒にいてくれればね…」
「なにゆえキズメル…?」
キリトさんが瞬きをしながら訪ねると自信満々に答えた
「決まってるじゃない 私達とキズメルで先にフロアボスを倒しちゃうのよ そうしたらALSが抜け駆けを狙う理由もなくなるじゃない?」
「…突拍子のないアイデアかもしれないけど案外まともそうだな…」
それにておさんが同意するように頷いたがキリトさんは首を左右に振りながら否定した
「いやいや いくらキズメルが強くても無理だよ」
キズメルとはこの<シヤ―ヤ>の村に着いた時に再開できたものの第5層のエルフクエストは第3層や第4層に比べてかなりあっさりとしており、いくつかの連続クエストをクリアの後にフォールンエルフの将校と戦って終わりとなった
そしてキズメルは第6層へと行ってしまった
「…第4層のピッポカンプだって攻略集団のフルレイドにキズメルとヨフィリス子爵が加わってようやく勝てたんだぞ それに今回は第5層っていう区切りのフロアだから今までより少し強いボスが出てくるはずなんだ」
「ふぅん… βの時はどんなボスだったの?」
「古代遺跡の番人っていう設定の巨大なゴーレムだったよ ただ地下墓地のエリアボスがβ時代と何もかも変わってたからな… 一回ボスの姿を見てみるまでは何とも言えないな…」
「そうよね…というかそもそも…」
アスナは難しい顔で迷宮区タワーの方を見ると自問するように呟いた
「ALSはボスクエやってないんでしょ? それなのにアルゴさんの攻略本を持たずにぶっつけ本番でフロアボスに挑戦するなんて… その自信はいったいどこから出てきたのかしら…」
「言われてみれば…」
確かにアスナの言う通りその自信はどこから湧いてくるのだろう… ボスクエは基本的に経験値等も少ないのに
「うーん ALSのメンバーで詳しい話を聞かせてくれそうなやつはいないものか…」
キリトさんの唸り声を聞いたアスナは難しい顔をすると言った
「無理じゃないかしら 今の攻略集団の大元は第1層でディアベルさんが集めたレイドパーティでしょ? そのディアベルさんが第1層のボス戦の後、自らは前線を引いてその後をリンドさんが継いでDKBを立ち上げたわけよね でもリンドさんの指揮重視のやり方に反発したキバオウさんはDKBに加わらずに自分で仲間を集めて連帯重視のALSを立ち上げた… そういう背景があるからDKBメンバーには自分たちが攻略集団の主軸だっていう考えがあるしALSにはDKBから攻略の主導権を奪い取るべきだという悲願があるのよ」
「成程…政党で例えると与党と野党みたいなもんか…」
アスナの流れるような説明に対してキリトさんは納得して頷いたがアスナの憂い顔はまだ消えない
「実際の勢力差は僅かだけどね そういう意味ではALSはかなり頑張っていると思うわ で、問題は私とタコミカ、キリト君とテオ君も言わばディアベル組出身ってことなのよ ALSからはあの4人はDKB寄りだと思われているみたい」
「そうなんだ…」
「えぇ!? 俺たちがDKB寄りってそんな馬鹿な…」
私は微妙に納得したがキリトさんはしばらく唖然としていたが小さくかぶりを振った
「いやいや だって そんなこと言ったらリーダーのキバオウだって最初はディアベル組だったじゃないか しかもあいつディアベルのことをかなり尊敬してたみたいだし…」
そういえば第1層のフロアボスの攻略会議からまだ1ヵ月になってないんだった… ここ数ヵ月で起こったことが多すぎてもうずいぶんと昔の事のように感じられる
私がそのように考えているとアスナがキリトさんの質問に答えていた
「だからこそ…だと思うの キバオウさんはディアベルさんを尊敬していたから今のリンドさんがディアベルさんの存在を利用しているように見えるんじゃないかしら」
「そうかもな… キバオウは最初の攻略会議の時からβテスターへの不満を訴えていた デスゲームになったSAOで通常のMMOみたいに一部のプレイヤーがリソースを独占するという状況があいつにとっては許せない状況なんだろうな そういう意味ではDKBの幹部メンバーとそれ以外の一般プレイヤーの待遇ははっきり違うから相容れないのは当然か…」
「うん…」
確かにキバオウさんの考えは理想的かもしれないけどSAOはMMOであるためどうしてもリソースが一部のプレイヤーに集中してしまう状況になってしまう…
そんな私の考えに同意するようにキリトさんはアスナの膝辺りに手を伸ばしながら言った
「確かにキバオウの情報やアイテム、得たものを公平に分け合うべきっていう考えには一理あるよ デスゲームになってしまったこの世界で一番大切なのはプレイヤーの命だからそれを最大限保護するのは当然だと思う でもボス戦のような極限状態では自分の命と他人の命を平等に扱うのはまず無理だ だからまずは自分を守って、次に身近なプレイヤーを守る みんながそうやっていくしかない…だからアスナ、タコミカとテオも自分を守ることに最大限努力してほしい 高性能な防具を装備することを含めて」
「…うん」
キリトさんの言葉を聞いたアスナは素直に返事をすると軽く咳払いをした
「キリト君の言いたいことは解ったわ だからそんなに押さえなくてもいいのよ 私もこのブーツ気に入ってるし 誰かにあげる気なんて更々ないわ」
「そうか…」
そこでようやくキリトさんはアスナの膝小僧をしっかりと掴んでいることに気が付いたのか咄嗟に叫んでいた
「うおぁ!」
そして素早く右手をコートの懐に引っ込めると慌ててアスナに謝罪した
「ご、ごごごめん! 別にその 足に触ろうとしたわけじゃなくブーツをですね…」
「ブーツを…どうするつもりだったの?」
「ブーツを触ろうと…」
「同じことじゃないの!」
アスナの指摘は確かにごもっともである
しかしアスナはそれ以上はキリトさんに追求せず会話の流れを戻した
「…とにかく ALSにとっては私達も是正するべき対象っていうことよ そういう訳だからそう簡単に内部情報を打ち明けてくれる人なんて… ちょっと待って…」
アスナは眉を顰めるとキリトさんに確認した
「今夜のカウントダウン・パーティ 企画したのってDKBの人達だけじゃないのよね?」
「確かにな… 主導したのはDKBのシヴァタ達だけど目的が2大ギルドの親睦だからALS側にも協力してるメンバーがいるって話だったような…」
「じゃぁそのALS側の人だったら詳しい話を聞かせてくれるんじゃないかしら だってせっかく企画したパーティが抜け駆けボス攻略作戦で台無しになりつつあるわけでしょ? いくら同じギルドだとしても内心ではよく思ってるはずがないわ」
アスナの言葉にキリトさんは少しだけ間を置いてから意味を理解したように軽く膝を叩いた
「成程… もし抜け駆け作戦が強硬派のごり押しで決まったんだったら、穏便派のパーティ企画者は意見を封殺されたような形だからな 色々と言いたいこともあるんだろうけど…」
「けど…?」
「俺の考えすぎかもしれないけど パーティも作戦の一部っていう可能性もなくは無いぞ DKBに年越しパーティの共同開催を持ちかけて主街区に足止めしておいたら作戦の成功率は飛躍的に上がるからな… もしそうだとしたらALS側の企画者に接触しても話を聞かせてくれるはずがない、それどころか逆に警戒されて事態が悪化するかもしれない…」
キリトさんの仮説に私達は言葉が出ずしばらく地面の芝生をプチプチとちぎる他なかった
そして数十秒ほど続けたところでその沈黙を破るようにアスナが言った
「…私はALSがそこまでするとは考えたくない 地下墓地の地下3階にいたモルテじゃないほうの黒マントは間違いなくALSに入り込んでるスパイよ あいつの扇動で強硬派が一時的に優勢になってるんだとしても DKBとの融和を考えてるプレイヤーも一定数いるはずだわ」
正直なところどちらの意見も正しいと言える
キリトさんの考えてる仮説も正しいと言えば正しいと言えるが個人的にはアスナの仮説を信じたいと思っている
まぁ理由としては私の感情だけど…
しばらく考えていると芝生プチプチをやめたておさんがふと呟いた
「…考えても仕方ないしひとまず話だけでも聞きに行こうか」
ておさんの呟いた言葉が聞こえたのかキリトさんはておさんの言葉を続けるようにして言った
「そうだな… ALS単独でのボス討伐作戦は危険すぎるし仮に成功してもDKBとの間に深い溝を残す もし止められる可能性があるんだったら テオの言う通り考えるより先に行動した方がいいな それにこのまま何もしなかったらもしディアベルが復帰してもうまく攻略組をまとめられないかもしれないからな…」
「…そうだね」
アスナは頷くと仄かに笑顔を浮かべ何かを呟いた気がするが肝心の何を呟いたかまではわからなかった
そしてキリトさんは立ち上がると両手をポンと叩いた
「よし それじゃぁ 昼食がてら<マナナレナ>の村まで行くか!」
「ですね でも肝心のALS側の企画者ってどうやって調べるんですか?」
続いて私も立ち上がるとスカートを軽く払いながらキリトさんに聞いた
「アルゴに調べてもらう手もあるけどあいつは今ボスクエにかかりっきりだからここは正攻法で行こう」
キリトさんの方法を聞いた私達は早速<マナナレナ>の村に行くことにした
タコミカのゲーム以外の趣味は読書と裁縫です
それではまた次回に