ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
<シヤ―ヤ>は水と緑が豊富で如何にもエルフの村といった感じだったが<マナナレナ>は鉱山跡に築かれた埃っぽい村で村の入り口からすり鉢状に低くなる大穴の側面にお店が並んでいる
一番下には坑道ダンジョンがあって、そこでは鉱物系と化石系の素材や遺物も拾えるけれどそれは今回の目的ではない
私達は村で一番大きなレストランを目指して螺旋状の道を降っていった
このまま螺旋状の道を降りて行っても辿り着くけど所々にある階段を使ってショートカットをしていくと斜面の中腹にある目的地へと辿り着いた
今はお昼時なのでレストランから漂う肉の焼ける匂いに釣られそうになるが我慢して窓から中の様子を伺うと予想通りDKBの人達がかなり多く居り、ガラス越しでもジョッキをぶつける音や乾杯の掛け声、賑やかな笑い声も相まってかなり楽しそうだった
「…リンドさんがあんなに笑ってるの初めて見たかも…」
「確かに…」
アスナがリンドさんの様子を見たのか小さく呟いたので私もリンドさんを見つけてみてみると確かに他のDKBの人と楽しそうに笑っていた
「笑い続ける呪いにでもかかったのかな」
キリトさんがそう言った途端ておさんが突然キリトさんの肩に手を回した
「目的違うよな? キリト君?」
「あっはい すみません」
キリトさんは気を取り直して店内を見回しているとシヴァタさんを見つけたのか「いた!」と呟いて素早くウィンドウを開いてシヴァタさんにインスタンス・メッセージを送った
キリトさんのメッセージを見たカウンターに座っているシヴァタさんはこちらに自然な感じで振り向くとあからさまに難しい顔をしたが他のメンバーに声をかけるとカウンターを離れ、外に出てきた
その時には私達は窓から離れて隣の建物の影に身を隠していたのでシヴァタさん以外の人に気づかれるということはなかった
「ついて来い」
シヴァタさんはすれ違いざまにそう呟いたので私達は十分に距離を取りつつシヴァタさんの後をつける
そしてシヴァタさんは村の坂道を数十メートル上った先にある空き家に入ったので私達も周囲に他にプレイヤーがいないかを確認した後、私達も同じ空き家に入って薄暗い内部へと進んだ
しんがりであるておさんがドアを閉めた途端シヴァタさんの明らかに苛立っている声が前方から飛んできた
「何が目的だ!?」
奥の壁に寄りかかって腕を組んでいるシヴァタさんは見るからに怒っているような眉だったのでアスナがキリトさんの背中を突いて耳元で囁いていた
「ちょっと…どういうメッセージ送ったのよ」
「いや…ただカウントダウン・パーティを一緒に企画したALS側のギルメンを教えてほしいとだけ…」
「ホントにそれだけか? 他にろくでもないメッセ送ってないか?」
「送ってないよ… 多分…」
すると私達の会話が聞こえたのかシヴァタさんは怒りから困惑しているような眉になった
「…お前たち 俺とあいつのことを知ってて接触してきたんじゃないのか?」
「あいつって誰ですか? 今夜あるパーティがDKBとALSの共同開催っていう事は知ってますけどそれ以外は…」
私はシヴァタさんが言ったあいつに関して質問するとシヴァタさんはしまったというような表情を見せ、視線を泳がせていたが何かをごまかすかのように2、3度咳払いをした
その反応にアスナは何かピンときたみたいで「成程ね…」と呟くとフードを外し手前に出ると落ち着いた口調で話しかけた
「大丈夫よシヴァタさん 私達はただパーティが企画された経緯を知りたいだけなの それさえ教えてくれたら他のことは詮索しないし、ここでのことは誰にも話さないわ」
アスナの言葉でシヴァタさんはだいぶ落ち着きを取り戻したみたいだがまだ懐疑的な視線で私達を見ると唸るような声を出した
「そんな口約束を信じられると思っているのか?」
「私達もパーティが無事に開催されてほしいって思っているのよ …これは私の推測だけどALS側の企画者から芳しくないメッセージが送られてきてるんじゃないかしら?」
「ど…どうしてそれを…?」
シヴァタさんが驚いたように眼を見開くとアスナはずいっと一歩前進した
「問題解決に協力するわ だから詳しい話を聞かせてもらえる? 出来ればALSの人も一緒に」
シヴァタさんはしばらく苦悩していたが低い声で念押しした
「…本当に約束は守ってもらえるんだろうな?」
「えぇ 剣に誓うわ」
アスナの返事が効果てきめんだったのか何かを決心したように頷きウィンドウを開いてメッセージを打ち始めた
その間にキリトさんはアスナに問いかけていた
「今の一体何がどうなっているんだ?」
それにアスナは得意げな顔をして答えた
「直ぐにわかるわよ」
約3分後、私達の元にやってきたのは全身を鎧で身を包んでおり、結構小柄なプレイヤーだった
頭にもしっかりアーメットを被っており、街中にもかかわらずバイザーをきっちり下ろしているので顔は分からない
そしてそのフルプレートさん(仮)はバイザー越しに私達を睨むとシヴァタさんに向き直った
「シバ これはいったいどういう事だ」
フルプレートさんの第一声はクローズドヘルム特有の金属質エフェクトを帯びているので男性か女性かは分からないがあだ名呼びからも結構親しい間柄なのではないかということが分かった
それとまだそうだと断定したわけではないが身長の低さからフルプレートさんは女性なのではないかと考えた
シヴァタさんは短髪頭を掻き、そのフルプレートさんに弁解するようにして言った
「無理に呼び出したのは悪かった でもそこの4人がパーティに協力してくれるらしい それに…どうもフェンサーの方は気づいているみたいだ」
シヴァタさんの言葉を聞いたフルプレートさんは各所の関節部分をガシャっと鳴らして身動ぎするとやや高い所にあるアスナの顔を見上げて聞いた
「…本当か? なぜ気付いた?」
それにアスナは余裕たっぷりに微笑を浮かべつつ答えた
「シヴァタさんの態度を見てたら解るわよ だって見え見えだもの」
フルプレートさんはしばらく沈黙していたがやがてシヴァタさんの方に向いた
「だから シバは色々顔に出しすぎてるって言っただろう」
「し…仕方ないだろ ナーヴギアが勝手に読み取って表情を変えてるんだから」
「ならお前も密閉式のヘルメットを被れ」
「む…無茶言わないでくれよ…」
シヴァタさんとフルプレートさんのやり取りを見ているうちになんとなくだが2人の間柄を察してきたような気がする…
しかしキリトさんはいまいちわかっていないのかアスナに聞いていた
「なぁ…いったい何が…」
アスナはそれに答えずキリトさんに向かって薄ら笑いを浮かべると一歩前に出てフルプレートさんに話しかけた
「本当に他意はないのよ 私達も今夜のパーティは楽しみにしてるしALS側で問題が起こっていることも知ってる それを解決するために話を聞かせてほしいだけなの」
アスナの言葉に数秒ほど悩んだフルプレートさんは意を決したようにゆっくり頷くといかついガントレットをつけた右手を持ち上げウィンドウを開くと装備フィギアの頭装備部分に指を当て、すっとフリックした
アーメットが外れた中にはオレンジ系色っぽい髪を眉の上で切りそろえた可愛らしい女の子の顔があった
そして先ほどまでのメタリックな声とは異なり、可愛らしい声で話し始めた
「信じます 私アスナさんの事…そしてタコミカさんとテオロングさんの事も尊敬してますから それに私もシバと一生懸命準備したパーティ成功させたいし」
それを聞いたシヴァタさんはほわわんという効果音が似合いそうな表情を浮かべた
キリトさんはそこでようやく2人の関係が分かったのか
「なんでや!」
頭を抱えて叫んでいた
~~~~~~
フルプレートさん改め、リーテンさんは鎧を着たまま古びた椅子のうちの一つに腰かけ、シヴァタさんは隣に、キリトさんとアスナはその反対側に座り、私とておさんは古びたテーブルの短い辺の所に椅子を持ってきてそこに座った
キリトさんは古びたテーブルに身を乗り出すとリーテンさんに質問を投げかけた
「えーっと…リーテンさんはいつからALSに…?」
「12月22日です」
リーテンさんは微動だにせず即座に答えた
「っていう事は4層開放の翌日か… ALSには志願で…?」
「いえ スカウトされたんです これのせいで」
リーテンさんは再び即座に答えると自分の着ている鎧を見下ろした
確かにリーテンさんが装備しているフルプレートアーマーは店で売っているのを見たことがない
もしかしたらモンスタードロップかも知れないが私はモンスターのドロップ品をすべて知っているわけではないのでそこはキリトさんかひま猫さんに聞く他ないが…その必要は無くなった というのもリーテンさんが話してくれたからである
「この鎧はプレイヤーメイドです…と言っても勿論自分で作ったわけじゃないですけれども」
「ま…まじですか… ということは鉄鉱石を何千個も掘ったわけですよね? いったい何日かかったんですか…?」
キリトさんは驚いたのかリーテンさんに対して敬語で尋ねるとリーテンさんははにかんだような顔で軽く首を振った
「キリトさんが私に対して敬語使う必要はないですよ 攻略集団の大先輩ですから」
「は…はぁ…」
それに対してシヴァタさんは何かの感情が漏れ出しているような表情で頷いていた
「それでいいだろ 俺とあんたはため口同士なんだからリッちゃ…リーテンに対してですます口調で話されても妙な感じになるだけだ」
「じゃ…じゃぁそうさせてもらうけれど…」
シヴァタさんはリーテンさんのことをあだ名で呼ぼうとしていたが寸前?で名前呼びに変えて続けた
まぁリーテンさんとシヴァタさんがお互いをあだ名で呼んでいることに関しては話に関係ないので割愛するとして
「で…さっきの話に戻すけど…」
キリトさんが先ほどの話に話題を戻すとリーテンさんは一瞬唇を引き結ぶと重々しい口調で話し始めた
「あの これはシバにしか言ってないことなのでここだけの話にしてもらいたいんですけれども…」
「勿論よ 最初からそういう約束だもの」
「右に同じくです」
アスナと私が即座に答えるとキリトさんとておさんも同意するように頷いた
リーテンさんが頷き返すと説明を再開した
「…私が<はじまりの街>を出たのは1ヵ月ぐらい前の事です 勿論VRMMOは初めてでしたけれどそれまでにネットゲームは色々とやってきたのでただクリアを待つだけじゃなくて自分も攻略集団に加わりたいと思ってたんです シバやアスナさん、タコミカさん達に比べたら随分と遅いスタートですけれど正式サービス開始直後に重金属装備スキルを取ってしまったので防具を揃えるのが大変で…」
「ということは最初からタンク志望だったの?」
アスナの質問に対してリーテンさんは迷うことなく答えた
「はい これまでのゲームでも大体タンク役をやっていたので…<はじまりの街>周辺でイノシシとかを狩って何とか店売りの〖カッパー・メイル〗を手に入れて、これでやっと上を目指せると思ったんですけれど 今度は私を入れてくれるパーティがなかなか見つからなくて こういう状況だから仕方ないと言ってしまえばそれまでなんですけれど、女のタンクなんて信用できないって何度も言われまして」
「性別なんて戦闘には何の関係もないのにね」
憤慨したようにアスナが言い、それに同意するようにして私が頷くとリーテンさんはまぶしそうに目を細めた
「私もそう言い返せれば良かったんですけれど…こうなったらタンクソロで最前線まで行ってやるって意地になっちゃって防具作成用の鉱石を掘りながらレベリングを…」
「確かにタンクはSTRが高いからストレージ容量にも余裕はあるんだろうけれど それでもよく千個以上も掘ったなぁ…」
キリトさんは大いに感心しながらコメントを挟んだがなぜかリーテンさんは視線を伏せてしまった
しかし隣のシヴァタさんが「言いたくなければ言わなくてもいいぞ」と囁きかけるとリーテンさんは頭を左右に振って話を続けた
「確かにこの鎧を作るのに使った鉄鉱石は私一人で集めました 先ほどキリトさんの言った通り千五百個以上掘ったと思います …人に自慢できる話じゃ全然ありませんけれどもね」
「それってどういう意味なの?」
アスナの優しい声に促されたリーテンさんは一拍置いてから話し始めた
今回はここでキリがいいのでここまでにしておきます
それではまた次回に