ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
アルゴさんはNPCのマスターに3倍厚切りロールケーキを注文するとはふーと息を長く吐き出した
「オレっちを無理やり呼び出したんだからボスクエより大事な話なんだろーナ? キー坊」
「勿論だよ」
アルゴさんは不服そうにキリトさんに問いかけるとキリトさんは自信満々そうに答えた
「ALSが抜け駆け作戦を計画した理由が大体分かったよ」
するとアルゴさんの顔に生気が戻ってきた
「それはホントカ? オイラの情報網にも引っかかってないっていうのに中々やるじゃないカ」
「それがちょっと意外なんだよな…」
「何がダ?」
「アルゴなら知ってそうなんだけど…ほらβ時代に5層ボスからヤバイアイテムがドロップしたっていう話に心当たりないか?」
「ヤバイアイテム…?」
そう呟いてしばらくアルゴさんは考え込んでいたがやがて降参と言わんばかりに両手を軽く持ち上げた
「悔しいけど思い出せないヨ でもちょっと言い訳をするとオレっちβの時は情報屋なんてやってなかったからナ ついでにフロントランナーでもなかったカラ 5層ボスにも参加してないシ…」
「ありゃ そうなのか じゃぁもったいぶらずに言うけど…ALSが狙ってるのは『ギルドフラッグ』だ」
「『ギルドフラッグ』? 旗カ? 何でそんなものヲ?」
「確かに武器としては攻撃力は最低のロングスピアだ でもこうやって…」
キリトさんはそう言いながら持っていたフォークをテーブルに立てた
「装備したプレイヤーが地面に突き立ててるとその周囲…確か半径15メートルぐらいだったと思うけどその範囲内のギルドプレイヤー全員にATF、DEF、耐デバフ上昇のバフがかかるんだ」
改めて聞くとヤバイ効果だな… そりゃぁ喉から手が出るほど欲しいわけだ…
「なん…ダト…?」
シヴァタさんと同じような反応をしたアルゴさんはキリトさんが立てているフォークを指さしながら立て続けにキリトさんに質問をした
「そ…その旗竿を持っているプレイヤーは移動可能なのカ? バフの効果時間ハ? 人数に上限は無いのカ?」
アルゴさんの質問ラッシュにキリトさんは1つずつ答えていった
「まず最初の質問の答えだけど半分イエスだ こうやって旗を地面から離せばバフは消えるけど移動してまた立てればすぐにバフがかかる」
「フム…」
「2つ目の質問の答えは旗を立てている限りずっと」
「フムム…」
「3つ目の質問の答えは範囲内でさえあれば多分上限はない」
「フムムム…」
腕組みして唸るアルゴさんの元に私達のロールケーキより3倍ぐらい分厚く切られたロールケーキが運ばれてきた 私もこっちにしたらよかったな…
それをアルゴさんは4分の1ほど切り取って一口で頬張った
「…成程、確かにそれは激ヤバだナ キー坊よ」
「だよな… 確かにこれは彼らの気持ちもわかるよ」
「彼ら?」
アルゴさんが聞き返すとキリトさんは私の方を見ながら話し始めた
「β時代タコミカが他のプレイヤーが投げ捨てたその『ギルドフラッグ』を偶然拾ったんだ 当時はだれも見向きもしなかったんだけど数日後にその真価が分かったら手のひら返しでタコミカに対して主にギルドに所属してるやつらが是非売ってくれってせがんでいたんだよ …中には無理やり奪おうとデュエルを仕掛けたやつもいたけど…」
キリトさんの言ってることは本当のことでフラッグを手に入れてからは1日に何人もトレードを申し込まれたり、中にはデュエルを仕掛けられたりもしたな…勿論返り討ちにしたけど そこからは基本ソロだったな~
私が当時のことを思い出しているとアルゴさんが声をかけてきた
「そうだったのカ… 確かにスペックは魅力的だけどそれで奪い取ろうという考えに至るのは間違ってるナ」
「まぁ デュエルを仕掛けた人に関しては返り討ちにしましたけどね」
「あハハ…」
アルゴさんの言葉に少し暗い雰囲気になったが私が場を和ませるように黒い笑みを浮かべるとアルゴさんは苦笑いしていた
「話題を戻すケド フラッグのスペック面もそうだけどプレイヤーへのメンタル面への影響がやばそうだナ… もし仮にALSがフラッグを手に入れて、それを実際に使った場合 ALSのメンバーは士気が上がってDKBのメンバーは逆に下がるゾ 逆もまた然り…今のギルド間のバランスを崩すには十分すぎる代物ダナ」
「その情報を知ったキバオウが真っ先にフラッグを手に入れるためにボス討伐作戦に踏み切ったとしても可笑しくないよな…」
「確かに…DKBに対して平均レベルで劣ってるALSが『ギルドフラッグ』を手に入れたら人数の差でALSが最強になるのはまず間違いないし…」
キリトさんの呟きにておさんは同意するように話すとコーヒーを飲んで一息ついた
「…なんかずいぶんと静かだけどどーしたんダ? アーちゃん」
「…え? …あっ! いえ、何でも!」
ふとアルゴさんは今まで静かだったアスナに声をかけるとアスナは意識が戻ったかのように慌ててケーキを食べ始めた
その様子を見ていたアルゴさんは何回か瞬きをした後、少し落ち込んだような様子で続けた
「しっかし あのイガ頭一体どこからそんな情報を仕入れてきたのかネェ… オイラの知らない情報を先に摑まれたのは結構ショックだヨ…」
「そりゃぁタコミカの話は結構有名だったし、元βテスターは俺ら以外にもいるだろうから…」
キリトさんの仮説にアルゴさんはニッと笑うと素直に頷いた
「まっ それもそーだナ 今は情報の出所よりこれからどうするべきかダ こんなガチヤバなアイテムがドロップするならALSを直接説得っていうのは無理かもナ」
「あの…少し考えたんだけど…」
ケーキを食べ終えたアスナがセットの紅茶を飲んでから発言する
「いっその事『ギルドフラッグ』の情報をDKBにも共有してしまうのはどうなの? ALSが無茶な作戦を実行しようとしているのはフラッグがどうしても欲しいっていうよりDKBに取られるのが怖いからでしょ? だからリンドさんに公平な分配方法を提案してもらえば…」
「…うん…悪くないアイデア…だと思う…」
アスナの提案にキリトさんは頷いた
「なんだかんだ言ってもリンドは話せばわかるやつだしALSとの話し合い自体には持っていくことはできるかもしれない ただフラッグを共同管理したりましてや分割するなんて不可能なんだよな… 一旦旗にギルド名を登録してしまえばそれを変更できるとは思えないし、もちろん旗と旗竿に分けて持ち合うなんてことも無理だから 結局じゃんけんかサイコロ…もしくは5対5の団体デュエルで勝った方が獲得する…みたいな落としどころしかない気がする…」
「…その提案をキバオウさんが受け入れる…とは思えないわね…」
アスナのつぶやきに対して私達は首を縦に振った
リソースを平等に分配すべきというALS、もといキバオウさんの信念も間違っていないし 深い知識と高い戦闘力を持つDKB、もといリンドさんの信念も間違っていない だからこそこの問題がここまでややこしくなっていると私は考えている
いっその事ディアベルさんが最前線に戻ってきてくれればすべて解決するかもしれないけど一人の人間にすべてを押し付けるのは間違っているし…
私が色々な考えを交錯させているとキリトさんが私達の顔を見ると言った
「…ボスを倒そう」
その唐突な宣言に私達はしばらく何も言おうとしなかったがアルゴさんは空中にホバリングさせていたフォークをロールケーキの残りに突き刺すと一口で頬張った
頬袋を膨らませてながら食べている様子が頬のひげのペイントも相まってげっ歯類みたく見えてきた…
口の中のケーキがなくなってからアルゴさんは問い返した
「それはこの5人でっていう事カ?」
「いやいやまさか」
「β時代100人近くで挑んでようやく倒せたぐらいだからそりゃぁな…」
キリトさんがそれを否定するとておさんがそれに補足するように呆れたような声でキリトさんの言ったことに同意し、ちょっと前に同じような提案をしたアスナがそのことを覚えているのか怪訝な顔をキリトさんに向けた
「じゃぁ誰に頼むの?」
「えーっと…」
キリトさんは指で数えながらこの作戦に参加してくれそうな人たちを順に挙げていった
「まずエギル軍団の4人だろ? それにネズハに…あとはポテト軍団の…何人だったっけ…?」
「私達を除いたら9人ですね」
「それでも19人か…」
「ボスを討伐するんだったらせめてフルレイドぐらいは欲しいですけれどもね…」
私達が唸っているとキリトさんが咳払いをしてアルゴさんに訊ねた
「えーっと… アルゴさん、誰か心当たりは…」
「無理言うなヨ」
流石に今回はアルゴさんも呆れ顔で肩をすくめた
「そりゃぁフロントランナー入りを目指して頑張ってる連中はチェックしてるケド、有望株だからこそ今回みたいな危険なミッションには誘えないヨ 何のためにオイラが下層で攻略本を無料配布してると思ってるんダ?」
「そうだよな… せめてこの人数なら4パーティ24人ぐらいは欲しいよなぁ…」
「いやいや 4パーティでも十分厳しいわよ」
アスナが右手を顔の前でぱたぱたと動かして否定する
「4層のボスも攻略集団のフルレイドにキズメルとヨフィリス子爵がいてようやく勝てたって言ったのは他でもないキリト君じゃない 5層のボスがあの海馬より強いのなら24人いたとしてもどうにもならないんじゃないの?」
「確かに数字的なステータスだけを見たら区切りの5層ボスは一際強敵なはずなんだ…それこそ6層ボスに近いステータスを持ってると思う でもステータスだけがボスの強さじゃない もし仮にβ版からボスが変更されていなかったら24人のレイドでも十分に勝機はある …まぁそこはボスクエの情報とボス部屋の偵察次第だけど」
アスナにキリトさんは説明するように話すとキリトさんは自分の発言で思い出したのかアルゴさんにボスクエのことを聞いていた
「そうだ ボスクエの情報どんな感じだった!?」
「おいおい キー坊 オイラが情報屋っていう事忘れてないカ?」
アルゴさんにそう言われキリトさんがトレードウィンドウを準備するがその前にアルゴさんはニヤりと笑ってボス情報をまとめたと思しき冊子を取り出した
「毎度アリ…と言いたいとこだったケド さっきのフラッグの件でチャラにしとくヨ…結論から言うとボスがゴーレムなのは変わってなさそうダ 詳しいことはその冊子を見てくレ」
アルゴさんは冊子をキリトさんに渡した
「成程…第5層は『大地切断』以前は王国の工業都市で… ボスのゴーレムは本当に強力な魔石を使って作られた戦闘兵器か…」
キリトさんは冊子を見ながら呟いているとアルゴさんは紅茶を一気に飲み干した
「…ただ 今までのフロアボスもβ時代と姿形は同じでも何かしらの変更点があっただロ? 2層の牛ボスはボス自体が1体増えていたシ…」
「そこは偵察で確かめるしかないだろうな…あとはボス部屋からの脱出方法をしっかり確認しておけば…」
そこでアスナが待ったをかけた
「待って! さっきゴーレムボスなら24人でも何とかって言ってたけど まだ5人も足りないのよ? それにエギルさん達やネズハ、ポテトさん達も手伝ってくれるかどうかは分からないし…」
「アニキ軍団やポテト軍団に断られたらもうお手上げだよ その時はリンドに『ギルドフラッグ』の件を説明してキバオウとの話し合いで平和的な解決に至ることを祈るしかない 足りない5人については…」
そこでキリトさんは一呼吸置くと、提案を口にした
「シヴァタとリーテンに頼もう」
「え…えぇ!?」
キリトさんの提案にアスナは目を丸くして驚いていた
「そ…そんなの無理に決まってるじゃない! あの2人、DKBとALSのメンバーなのよ!?」
「だからこそさ 2人が同じギルド同士ならこんなギルドを裏切るような作戦に手を貸してくれるはずはないけど…違うギルド同士だからこそ可能性はあると思う」
キリトさんの仮説を聞いたアルゴさんは「ほほー?」と言いながらにんまりとした
「リーテンってのは最近ALSに入ったフルプレっ子だロ? あの子とDKBのシヴァタがねぇ…? そいつはオレっちも知らなかったナ~」
「ちょっと 駄目よアルゴさん その情報を売ったりしたら」
「ニャハハ 解ってるサ でも確かにキー坊の言う通り2人がそういう仲なら協力してくれるかもナ 愛の力はギルドの規律より強し、だからナ!」
アルゴさんに似合わないようなコメントに私達はちょっとだけ驚いたがキリトさんが気を取り直して続ける
「と…とにかく シヴァタ達がそれぞれ1人ずつ仲間を連れてくればそれで4人加わる 幸いあの2人はパーティの実行委員だからもうすぐ<カルルイン>に移動することになってる だからそのタイミングで村を出て迷宮区に直行すればボス攻略への参加を知られずに済む…んじゃないかな…」
「そこは断言しなさいよね…それであと1人はどうするの? それもリーテンさんかシヴァタさんに頼むの?」
あと1人をどうするのかと聞かれたキリトさんは私の方を向いた
「何とかなるか…?」
「えぇ… そこはしっかりと考えておきましょうよ… まぁこれはちょっとした賭けになりますけどね…運が良ければ一人ぐらいはいけるかもです」
「わ…悪い…」
「でももし仮に来なくても文句は言わないで下さいよ…?」
「そこは解ってる」
私が念押しするとキリトさんは真剣な表情で頷いた
「もう一人はタコミカ達が連れてくるってことでいいのね?」
「それで大丈夫だよ」
そしてアスナの確認にも頷くとキリトさんに「これだけは確認しておきたいんだけど」と先に断りを入れてからキッパリと言った
「もし仮にリーテンさんとシヴァタさんが手を貸してくれたとして、それがギルドにばれて除籍処分とかになっちゃった時 2人をどうフォローするつもりなの? そこをハッキリとしてもらわないと2人をこの作戦に引き入れるのには賛成できないわ」
アスナは揺るぎない視線でキリトさんを見るとキリトさんは覚悟を決めた様子で意見を出した
「…エギルのパーティは丁度4人だからあそこに頼んでみる それが駄目だったら タンクを欲しがっていたポテトにも相談してみるよ …それも駄目だったら俺たちのパーティに誘う」
キリトさんがそう言うとアスナは微笑みながら頷いた
他の4人はロールケーキのセットを注文しましたがテオロングはコーヒーのみを注文しました
それではまた次回に