ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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5層編ももうそろそろ終盤に入ってくるかな…?

それではどうぞ


15話:第5層フロアボスへの道中

アルゴさんが買い集めてくれたポーション類を均等に分配したり、余っている防具を能力が向上する余地のある人に貸し出したりと準備をし終えると時刻は丁度午後3時となっていた

 

オコタンさんによればALSが迷宮区タワーを目指す時間は午後6時の予定なので今から出発しても十分にボスまで討伐できるような時間だけど急いだほうが良いことには変わりない

 

その為道案内はアルゴさんに任せて、私達は最後尾を走ることにした

 

 

キリトさんはメモパッドに何か描きながら唸っていた

 

「う~むむ…」

 

森の間を抜ける小道は舗装されていて足音が響くがそれでもアスナはキリトさんの声が聞こえたのかアスナがキリトさんに顔を寄せていた

 

「何がう~むむなの?」

「いや…」

 

キリトさんはメモパッドを可視化すると私達に見せた

 

「迷宮区に着くまでにフォーメーションを決めないといけないんだけどさ、解ってたけどDPSが多いんだよな…」

「DPSって?」

「ダメージディーラー つまりアタッカーの事だよ このリストだと俺とアスナ、タコミカ、テオ、メラ、ヒマ猫、エギル、ハフナー、キャラメレ、たま、ウルフギャング、ローバッカ、ナイジャン、リオンと半数以上がアタッカーなんだ」

 

キリトさんの言ったことに何か引っかかりを覚えたのか少し考えるとキリトさんに質問した

 

「メラさんって両手槍使ってなかったっけ? それなのにアタッカーなの?」

「確かにあいつは両手槍使ってるけどあいつ自身が両手槍使いの中では例外的な戦い方をしてるんだ だからここではアタッカーに入れてる」

 

キリトさんがそう説明するとアスナは納得したように頷いた

 

「それで続けるけど 純粋なタンクはシヴァタとリーテン、きるやんとじんじんしかいない 残ってる意識と朱猫、ポテト、オコタン、ネズハ、アルゴがCCかな…」

「CCって?」

 

アスナの質問に今度は私が答えた

 

「クラウドコントロールの略称 簡単に言えばモンスターの群れをコントロールする人かな? 他のゲームだとメイジとかに多いけど魔法がないSAOだとデバフ付きのソードスキルでモンスターの弱体化をしたり足止めする役割だね」

「確かに長物武器のソードスキルってデバフを掛けられるソードスキルが多いもんね」

 

頷いたアスナが器用に走りながら腕組みをし、先ほどのキリトさんのように「う~むむ…」という声を出す

 

「…4パーティなんだからシヴァタさんとリーテンさん、きるやん君とじんじんさんにそれぞれのパーティのタンクをお願いして 後はDPSとCCを均等に割り振るしかないんじゃないの?」

「まぁそれが妥当だよな ただボスゴーレムは両手足の直接攻撃しかないがその分威力がヤバイんだ… 通常攻撃はまだしもスキル付きの攻撃は盾一枚じゃブロックしきれない それだけは回避しなきゃいけないんだけど、シヴァタやきるやんはとにかくとして…」

「ギルドに入ったばかりのリーテンさんや今日初めてフロアボス戦に参加するじんじんさんにそんなきつい役回りを任せるのは少し不安ね…」

 

キリトさんとアスナは同時にうーむと唸り、キリトさんは腕組みをしながらリストを睨んでいた

 

正直これをいつもやってるキバオウさんやリンドさんは凄いと思う

 

 

そうこうしているうちに枯れ木の森を抜け、前方に長大な石壁が見えてきた

 

勿論石壁の内側にあるのは街ではなく超巨大な迷路で迷宮区タワーに向かうにはここを抜けていかないといけない

 

勿論迷路の内部ではモンスターも湧くので普通に迷路を抜けようとするのは至難の業だが幾つかのクエストをこなすとショートカットができるし、今回はアルゴさんがいる

 

キリトさんは腕組を解いてスピードを上げると一気にアルゴさんの元へと向かった

 

 

その後、アルゴさんは進路方向を右へと取って石壁に沿うようにして進んだので私達も先ほどと同様アルゴさんの後を追うように進んだ

 

第5層迷宮区はフロアの北東の隅にあり、それを取り囲んでいる石壁の両端は丁度フロアの外周部に面している

 

アルゴさんが目指したのは南東側の端だった

 

勿論というかなんというか道を外れたのでフィールドMOBと何回か接敵してしまい、目的地に到着したのは午後3時45分になってしまった

 

「お疲れサマ とりあえずフィールドの移動はここで終わりだヨ~」

 

アルゴさんの言葉に一同は足を止めた

 

正面には20メートルぐらいはありそうな石壁があり、西側と南側には草も生えていない灰色の荒野が広がっていてその奥には先ほど抜けてきた枯れ木の森が見えていてそれらを傾き始めた冬の日差しがモノトーンに染め上げている

 

東側にはどこまでも広がる空が一望できるがくすんだブルーグレー色の空がなんとなく不吉で目を見張るもほどのものではない

 

私は改めて石壁の方に向き直ったが入り口的なものはここにはない

 

「えーっと…これってどこから入るんだ?」

 

キリトさんが私の疑問を代弁するようにライム水を飲んでいるアルゴさんに質問した

 

するとアルゴさんはグイっと口許を拭うと不敵な笑みを浮かべ、マントの内側から何やら光るものを取り出した よく見てみるとそれは15センチほどの大きさの巨大な鍵だった

 

「それ…ボスクエでゲットしたのか?」

「そーいうコト」

 

アルゴさんは鍵に結ばれている革紐を指でクルクルと回しながら石壁に歩み寄ると風化したブロックに顔を近づけて何かを探し始め、ある隙間に鍵を突っ込んでガチャリと回した

 

すると秘密の通路が現れ…っていうのは私の妄想で実際は石壁が震え、幾つかのブロックが奥に少し引っ込んで…それで終わりだった

 

「なぁ アルゴ…隠し扉は…?」

「ないヨ そんなの」

 

キリトさんの疑問にアルゴさんは淡白に答えると鍵を再びしまい、ブロックが引っ込んでできた窪みに手を掛けるとそのままヒョイヒョイっと登っていった…

 

嘘でしょ? 嘘だと言って…

 

3メートルほど登ったところでエギルさんがアルゴさんに慌てたように声をかけた

 

「おいおい…まさかとは思うがそこを登るのか…?」

 

それにアルゴさんは片手足を引っかけた状態で器用に振り向き、にんまりと笑った

 

「オヤ? フロントランナー一のタフガイさんは高いところが苦手なのかナ?」

「そういう訳じゃねぇけど…これ、落ちたらただじゃ済まないだろ」

 

確かに苦手云々は一旦置いておいてエギルさんの言うことは最もだと思う

 

頂上近くから落ちたら地面は普通に砂利交じりの裸地のため最悪、高所落下で死ぬ可能性もある

 

そう考えているとアルゴさんがウィンクをした

 

「しょーがないナー 特別だゾ」

 

そしてウィンドウを操作すると何やら巨大な物体を次々とオブジェクト化させた

 

それは巨大なクッションみたいなもので梯子の真下にどっさりと積み上げるとアルゴさんがその上から落下した

 

ばっほーんという音が響くがアルゴさんはダメージを受けた様子はない

 

デモンストレーションを終えたアルゴさんは直ぐに立ち上がると近くまで来ていたキリトさんに流し目をした

 

「オイラは最後にこのクッションを回収するから最初はキー坊に譲ってあげるヨ」

「え? お…俺? 別にいいけど…」

 

少ししてからキリトさんはクッションの山を踏み越えて石壁を登っていった

 

 

そして登り終えると下にいる私達に向かって呼びかけた

 

「そこまで難しくない! 落ち着いて登れば大丈夫だ!」

「よ…よっしゃ じゃぁ次は俺が行くぜ!」

 

 

そう叫び返したハフナーさんを皮切りとして次々に登っていってとうとう私の番になってしまった…

 

「落ち着いて 大丈夫だから」

「わ…分かった…」

 

私はアスナに諭されて石壁を登っていった

 

他の人よりは時間がかかったけど何とか頂上へと辿り着いた… 正直もうやりたくない

 

 

しんがりのアルゴさんも登り終え、全員で軽くハイタッチをすると北に向き直った

 

「…確かにこの迷路を真面目にクリアすんのは大ごとじゃなぁ…」

 

そう呟いたのはエギル軍団のウルフギャングさんだった

 

主武器は私やハフナーさんと同じだけど上半身は逞しい筋肉に張り付くように装備している革装備だけなのも相まってどこか歴戦の傭兵的な雰囲気を醸し出している

 

確かにウルフギャングさんの言う通り石壁の上から見下ろす巨大迷路はたとえ地図があっても突破するのは難しそうだった… 多分だけど迷路の構造もβと変わってるだろうし…

 

「ALSはここを夜に…しかもぶっつけ本番でクリアするつもりなのか?」

 

驚きと呆れを含んだ表情でシヴァタさんはオコタンさんに訊ねていた

 

それにオコタンさんは細い口髭に苦笑いを含ませながら頷く

 

「お恥ずかしいですがそのつもりみたいでして… ただ、元βテスターから謎解きのギミックの情報は得ているようで、スケジュール表では1時間で突破する予定になってました」

 

その言葉に思わず私はキリトさんとアスナ、ておさんと顔を見合わせた

 

オコタンさんの言ったβテスターというのは十中八九あの黒マントのどっちかだろう そしてもう片方がALSに紛れ込んでいるスパイの可能性が高い…まぁこの話は今は置いておくとして

 

 

キリトさんに諭されて石壁の上を一列になって移動し、迷宮区タワーとの接合部に設けられた小さな望楼で小休憩を取ることになった

 

ここからはしっかり準備を整えないといけないからね

 

「皆さん これ、よかったらどうぞ」

 

そう言ってふとアスナが取り出したのは例の喫茶店の巨大ロールケーキだった

 

ひま猫さんは知ってた様子だったがほとんどの人が初見のようで釘付けになっていた

 

 

私の分のロールケーキはあっという間になくなったので周りを見回してみた

 

隣にいるておさん以外ではポテトさんとやる気君、キャラメレさんはエギル軍団と一緒に談話しており、意識さんと朱猫さん、リオンさんはどうやらハフナーさんと会話している様子だった

 

めらさんとひま猫さんはネズハさんとオコタンさんと会話をしており、たまさんとじんじんさんはメニューを操作しながら何かを話している

 

リーテンさんとシヴァタさんは…うん…まぁ…仲睦まじそうにしていた

 

キリトさんとアスナはいつもの2人と言ったような感じだった

 

その中で私はまだておさんにこの作戦の説得の件でお礼を言ってなかったなと思い、今のうちにお礼を言うことにした

 

「あの… ておさん 説得の件…ありがとうございます」

 

私のお礼を聞いたておさんは頬を指で掻きながら

 

「あぁ 別に気にしないでもいいよ それと…今回みたいな件の時はたみちゃんはもっと俺に頼ってくれてもいいんだぞ じゃないと俺がいる意味がないだろ?」

「…そうですね… 覚えてたらそうさせてもらいます」

 

私の返事に恥ずかしくなったのかておさんは顔を少しだけ赤くして気を紛らわせるように私の頭を撫でたが不思議と嫌な感覚はなかった

 

 

そこから少し経った後でキリトさんのは立ち上がった

 

「それじゃぁみんな 一応編成考えたから聞いてくれ」

 

そして私達がキリトさんの近くに集まると編成を発表した

 

「A隊がハフナー、シヴァタ、オコタン、きるやん、リーテン、じんじん B隊は俺、アスナ、ヒマ猫、エギル、ネズハ、アルゴ C隊はタコミカ、テオ、意識、朱猫、ローバッカ、ナイジャン D隊はメラ、ウルフギャング、ポテト、キャラメレ、たま、リオン この分け方で行こうと思うんだけどどうかな」

 

キリトさんが班分けを発表すると予想が違ったようで少しざわついていたがシヴァタさんがその空気を引き締めるようにキリトさんに訊ねた

 

「つまりA隊にタンクを集めて 後は均等に分配したっていう感じか?」

「そんな感じだ」

「セオリーとは違うな… タンクを均等に分配しなかったのはなぜだ?」

「そうするにはタンクが少し足りないんだ タンクはシヴァタとリーテン、きるやんとじんじんだけだからそれぞれ違うパーティにするとPOTローテが間に合わない可能性があるんだ それならいっそDEFの高い奴を1つのパーティに集めてそこにタゲを集中させた方がHP管理がしやすいと思う 勿論タンク部隊の負担は増えるけど…」

 

キリトさんの最後らへんの言葉を聞いたシヴァタさんは軽くかぶりを振ると、「それはいいんだが」と前置きをしてからキリトさんに問いかけた

 

「しかし…タンクを固めると広範囲の同時攻撃には対応できないぞ そこは大丈夫なのか?」

「βの話になるけど第5層ボスのゴーレムはブレス等のエリア攻撃はしてこない 基本は両手のパンチ、両足のストンプ、しかも左右別々のタイミングだからヘイト管理さえしっかりできればワンパーティでも防御し続けることは可能だと思う」

 

キリトさんは納得して頷いているシヴァタさんから視線を外してこちらに視線を移すと説明を続けた

 

「勿論最初に俺らがボスをじっくり偵察して想定外の攻撃パターンがないか確かめる 実際に戦闘が始まってからもボスのHPバーが替わるタイミングでは必ず部屋の外に退避できるよう準備をして未知の攻撃パターンに備える フルレイドの半分の人数だけど勝算は十分にあるし、無論犠牲者を1人も出すつもりは無い ―――シヴァタとリーテンが企画してくれたパーティを成功させるためにも、そして2023年を希望ある年にするためにも! みんな…頑張ろう!」

 

キリトさんが後半は激励とも取れる演説を終えるとエギルさんは

 

おっしゃぁ! やったろうぜ!!

 

と拳を突き上げて叫んだので私達もそれに便乗して拳を上げると

 

おー!

 

と叫んだ

 

2022年12月31日午後4時15分 私達は鋼鉄の扉を開いて迷宮区タワーへと足を踏み入れた




班分けの大変さが身に沁みました…

それではまた次回に

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